重力波検出



2015年9月14日午前9時50分,アメリカのaLIGO(advanced Laser Interferometer Gravitational wave Observatory)の研究チームは重力波を直接に検出した。今年1916年はアインシュタイン(1879-1955)が一般相対性理論の方程式を定式化して100年後である。ニュートン(1642-1727)は万有引力を発見して、宇宙空間にある質量のある複数の物体は、空間を通してお互いに引き合い、この引力は無限の時間で伝わることを示したが、何故質量のある物体がお互いに引き合うのか説明出来ていない。それから229年後アインシュタインは一般相対性理論を定式化して、それは質量の存在する物体周りの空間は歪んでいて、そこには力が潜んでいて、もう一つの質量のある物体が現れるとこの力が現れて、お互いに力を及ぼしあうのだと看破した。さらに、この物体が加速度運動すると、空間の歪みが伝搬して波として電磁波と同じ様に光速で伝わることを示した。通常の質量の小さい物体ではこの空間の歪みは小さすぎて観測できないが、質量が極めて大きな物体(例えばブラックホール)では空間の歪みが大きく、その伝搬は波として観測できることを示した。この歪みを波として検出したのが今回の重力波の検出である。今回の重力波の測定は電磁波の発見に匹敵する物理学上の大事件である 。

重力波は時空(じくう)のゆがみが、波のように伝わっていく現象で、アイシュタインの一般相対性理論から予言された物理現象である。誰も重力波を時空のゆがみの現象として検出した人はまだいない。私たちの日常生活では、「時間」と、今はやりの3Dテレビでいうところの3Dに相当する「空間」のあいだに特別な関係があることを意識することは全くない。しかし、私たちが、もし、その「空間」を光の速度に近い速度で移動すると、その「移動」という行為によって、「時間」の進み方が変化するということが体験できるようになる。残念ながら、現代においても、人を光速近くまで早く動かす技術はまだ開発されていないが、原子なら光速近くに加速することが可能で、実際に、光速に近い速度で走る粒子の時間が変化し、空間が伸びる感じで、「時間が伸びている」ことが証明されている。つまり、「時間」と「空間」にはある関係が存在し、ここではそれを「時空の構造」と呼ぶことにすると、もし、重力波が到来すると、その「時空の構造」がちょっとだけ変化する。つまり、重力波は「時空の構造の変化が波となってつたわる」現象といえる。






検出した信号の解析結果から、今回の重力波の元になった事象が起こった時期を13億年前と推定されている。このとき、質量が太陽の29倍を超えるブラックホールと、36倍を超えるブラックホールが、らせん状にぶつかって合体した。この合体が起きた直後に、太陽の3倍に相当する質量がエネルギーに変わり、重力波となって放出されたという。
アメリカ西部のワシントン州のハンフォードHanfordでのデータとアメリカ南東部のルイジアナ州のリビングストンLivingstonデータがほぼ一致して重力波を観測している。下の図はシミュレーション結果。13億年前に発信された重力波が、光の速さで宇宙を伝わり、LIGOが観測を始めて3日目の地球にとどいた。



重力波が伝わる様子。進行方向に垂直な面内で横方向と縦方向に空間が伸び縮みしながら、この空間の歪みが光速で伝わっていく。そこにリンゴが4つあるとそれらの位置が振動する。その様子を図で示したのが下の図



マイケルソンのレーザー干渉計による重力波の原理。鏡やビームスプリッタ―は重力波に対して自由に応答できるように吊り下げられている。重力波がやってくると2つの鏡に位置が作動的に変化して、干渉計の明暗が変化してそれを測定する。その様子を示したのが下の図。



重力波が来ない時(空間が東方的に歪む、上図左)は、レーザーは同じ距離しか進まないので、同じ長さで差は0である。重力波やってくると縦方向と横方向でレーザーの進む距離が変わりこの差を検出できる(上図右とした図左)。








検出した信号の解析結果から、今回の重力波の元になった事象が起こった時期を13億年前と推定している。このとき、質量が太陽の29倍を超えるブラックホールと、36倍を超えるブラックホールが、らせん状にぶつかって合体。この合体が起きた直後に、太陽の3倍に相当する質量がエネルギーに変わり、重力波となって放出されたという。




アメリカ西部のワシントン州のハンフォードHanfordでのデータとアメリカ南東部のルイジアナ州のリビングストンLivingstonデータがほぼ一致して重力波を観測している。下の図はシミュレーション結果。13億年前に発信された重力波が、光の速さで宇宙を伝わり、LIGOが観測を始めて3日目の地球にとどいた。検出した信号の解析結果から、今回の重力波の元になった事象が起こった時期を13億年前と推定している。このとき、質量が太陽の29倍を超えるブラックホールと、36倍を超えるブラックホールが、らせん状にぶつかって合体。この合体が起きた直後に、太陽の3倍に相当する質量がエネルギーに変わり、重力波となって放出された。


GW150914の観測は、重力波を初めて直接検出しただけではなく、初めてブラックホールの存在を観測で実証したのである。又、初めてブラックホール同士の衝突を実証した観測でもある。また,これまで発見されていなかったブラックホール連星が存在したこと、太陽質量の30倍付近および60倍付近の質量をもつブラックホールの存在を示したことも大きな発見である。重力波の発見により、ブラックホールが形成されるほどの「強い」重力場での物理現象がはじめて検証できることにもなった。これまで一般相対性理論は、太陽系などの「弱い」重力場でしか検証されていなかった。GW150914の波形と理論の整合性を検討したLIGOグループは、一般相対性理論の予言と無矛盾である、と結論している。



GW150914は裸の特異点(naked singularity)がないという宇宙検閲官仮説の下で唯一自然界に存在するカー解のブラックホールであろう。GW150914は大きなブラックホールで、このような星はビッグバン後の初期に生まれた種族IIIの星が候補である。第1世代の星(水素、ヘリウムがごくわずかの)である種族IIIの星がブラックホールになったのであろう。種族IIIの星は赤方変位z=10くらいの過去(132億年前)に出来る。(中村卓史京大教授)。



種族IIIの星


ビッグバン後に最初に生まれた星は、水素、ヘリウム、ごくわずかのリチウムを含むだけで、それ以外の重元素をまったく含んでいない。これが種族IIIの星。シミュレーションによると、この星は太陽の100倍もの質量をもつ巨星だったと言われている。 「種族IIIの恒星」は一般に使われている用語ではない。星に二つの種族が存在することは、半世紀も前にバーデ(Baade,W.)が明らかにしている。太陽のように重元素を多量に含む星が種族Iであり、球状星団の星のように重元素の少ない星が種族II。種族IIの星が超新星爆発を起こしたときに生じた重元素を取り込んで、種族Iの星が生じたというのが一般的な考え方である。この考え方を過去に延長し、種族IIの星に先立って宇宙で最初に形成された星を、ここで種族IIIと呼ぶ。


 【ワシントン共同】世界で初めて観測された重力波の発生源となった二つのブラックホールは、もともと100億年以上前に誕生した巨大な恒星だったとする研究結果を、ワルシャワ大などのチームが23日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。  日本や欧州などの重力波望遠鏡も所定の性能を発揮すれば、太陽質量の20〜80倍程度のブラックホール合体による重力波が、1年に約千回は観測できるだろうとしている。  



LIGOの重力波の観測は2017年のノーベル物理学賞が与えられた。受賞者はReiner Weise, Kip Thorn, Bary Barishの米物理学者3人

スウェーデン科学アカデミーの2017年のノーベル物理学賞リリース(二松五男訳)