朝日新聞社記事(2007年12月)

2007年12月19日「住民独学、暴いた核心」



住民独学、暴いた核心

「心ないお客様」

三交不動産(津市)が販売した桑名市内の欠陥マンション問題で、同社を取材した数日後、取材に応じた住民をそう表現した同社名義の文書が、マンションの各ポストに入れられていた。

新聞やテレビで欠陥問題が明るみに出ると「本マンションの実名報道等により(中略)お客様方にご迷惑をおかけすることとなったことは誠に遺憾」などとする文書を同社のホームページなどで公開。報道が悪いと言わんばかりだった。

住民らの怒りは欠陥そのものに対するものだが、それ以上に、こうした同社の対応が住民感情を逆なでした。

住民が欠陥に気付いたのは04年3月の入居開始後すぐだ。複数の住民が各所に生じた亀裂を同社に指摘。同社は「部材の乾燥、収縮による」と許容範囲内の現象とし、欠陥を否定し続けた。

粘り強い住民の追及に、ようやく欠陥を認めた06年12月、同社は販売価格の90%で退去者の部屋を買い取ると提案。だが、3ヵ月しか退去までの期限を設けなかった。

住民らのストレスは、柳生利勝社長ら同社幹部が公の場で謝罪した今年8月の住民説明会で噴出した。部屋を販売価格で買い取るなどと再提示したが、会場には住民らの怒号が響いた。「お金じゃない。誠意をみせて」。年金と長年の貯金で買ったマンションを、わずか半年で退去した元住民はそう語った。

欠陥発覚を受け、同社は「日本建築構造技術者協会」(JSCA)に調査を依頼。「耐震性に問題はない」とされたが、一部住民は「(同協会は)三交不動産から仕事をもらっているから、都合のよい結果を出した」との疑念をぬぐえないでいる。住民らが問題追及にと立ち上げたブログは、今も続く。一生の買い物を台無しにされた怒りはまだ収まっていないのだ。

欠陥問題を明るみにしたのは、住民たちが身銭を切って建築や関係法令を学び、同社を追い詰めたからだ。それがなければ、同社側の圧倒的な知識を前に、泣き寝入りするしかなかっただろう。この事例が、マンション業界に潜む問題の氷山の一角である気がしてならない。(保坂知晃)

欠陥マンション問題

三交不動産(津市)が04年1月に桑名市で分譲した15階建てマンション「サンマンションアトレ益生駅西」(59戸)で、設計や施工のミスでコンクリート製の天井がゆがんで亀裂が生じるなどの欠陥が、ほぼ全戸で見つかった。柳生利勝社長は07年8月の住民説明会で謝罪、同社は全戸を販売価格で買い戻した。補修後に再販売する方針だ。







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(2008/7/1)