女優としての保田圭


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・2004年
 ・羅生門 女たちのまぼろし
・2006年
 ・夏ノ夜ノ夢
 ・ネムレナイト
 ・MAMA LOVES mamboW
・2007年
 ・昭和歌謡シアター『新宿の女』
 ・楊貴妃の漢方薬
 ・ちがいますシスターズ
 ・コースター
・2008年
 ・志士たち
 ・THE☆どツボッ!!
 ・猫目倶楽部(ゲスト出演)
 ・レモンスター
・2009年
 ・ミコトマネキン
 ・エブリリトルシング'09
 ・ロマンチックにヨロシク
・2010年
 ・桃色書店へようこそ(ゲスト出演)
 ・マーダーファクトリー
 ・眠れぬ夜の1×8レクイエム

・映像化された舞台

レモンスター

2008年12月4日〜7日
東京都 シアタートラム
全7公演

モーニング娘。卒業後の舞台出演第11作目。
「レモンスター」という題名からはちょっと想像がつかないくらい、
物語性の強い、内面的で、独特な雰囲気をもった舞台でした。

舞台に最初に保田さんが出てきた時、
「これがもしかしたら保田さんかな?」とは思いましたが、
そう断定出来るまで少し時間がかかりました。
というのも、登場時の保田さんのセリフ回しが、
非常にゆったりとして、落ち着いたものとなっており、
これまでの舞台ではあまり見られなかったものだったからです。
登場時の数分で、
保田さん演じる「夕子」という女性がどのような性格であるのかまで
わかった気になってしまうほどの強い印象がありました。

夕子の根底にあるのは、「静かな諦めと絶望」であったように思うのです。
かつての恋人の清弘君(郷志郎さん)はもうすぐ別の女性と結婚してしまう。
自分は、今居る重い場所から出たいのに出られない。
舞台が進むにつれて明らかになってくる、この夕子の根底を、
登場時の保田さんのセリフ回しは、かなりよく表していたのではないかと思います。

しかしながら、残念な事に、そのセリフ回しに、時々綻びが出てしまうのです。
そしてその綻びから、例えば、「THE☆どツボッ!!」の「綾乃」が、
ひょっこり顔を出したりするのです。
登場時のセリフ回しのパターンが綻び、
それとは全く異質な演技が出てきてしまう事で、
夕子の性格の統一感が薄くなってしまったように思うのです。

勿論、それを「綻び」と言うのは私の個人的な感想です。
保田さんにしてみれば、それは「意図的な役作りの一環」だったのかも知れませんし、
もしかしたら、それは「演出」だったのかも知れません。
私の第一印象の勝手な思い込みで、夕子という女性を、
狭い枠の中に押し込んでいるだけかもしれません。
これはもう本当に個人的な印象の問題であることは理解しているつもりなのですが、
それでも、私の率直な感想としては、
もう少し夕子に性格の統一感があれば良かったのではないかと思ったのです。

舞台の後半で、夕子の「静かな諦めと絶望」に、
ほんの束の間ですが、光が差し込みます。
清弘君の気持ちを受け入れてはいけないという思いと、
受け入れたいという思い。
非常に難しい場面だと思いますが、
もしも、舞台の前半で、もう少し夕子の性格の統一感が出ていれば、
この場面での、差し込む光の強さと短さがより鮮明になって、
夕子の儚さが際立ったのではないかと思うのです。

夕子は、「ちがいますシスターズ」の「小春」と同じくらい、
複雑な立場の女性であり、難しい役だったと思います。
また、「小春」と同じくらい、
所謂「ベースの役」から離れた役だったと思います。
この舞台での保田さんの演技にもう少し安定感があれば、
「ベースの役」以外での得意な役柄が1つ、
ある程度確立されたのではないかという気がするのです。
その意味で、今回の保田さんの演技のブレはとても惜しかったと思うのです。
(2009.5.28)