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・はじめに ・2004年 ・羅生門 女たちのまぼろし ・2006年 ・夏ノ夜ノ夢 ・ネムレナイト ・MAMA LOVES mamboW ・2007年 ・昭和歌謡シアター『新宿の女』 ・楊貴妃の漢方薬 ・ちがいますシスターズ ・コースター ・2008年 ・志士たち ・THE☆どツボッ!! ・猫目倶楽部(ゲスト出演) ・レモンスター ・2009年 ・ミコトマネキン ・エブリリトルシング'09 ・ロマンチックにヨロシク ・2010年 ・桃色書店へようこそ(ゲスト出演) ・マーダーファクトリー ・眠れぬ夜の1×8レクイエム ・映像化された舞台 |
ミコトマネキン2009年4月23日〜5月2日東京都 赤坂レッドシアター 全20公演 モーニング娘。卒業後の舞台出演第12作目。 観劇時は、保田さんの演技に関して、 私は、最初の登場シーンから違和感を感じ、 最後まで上手く付いて行く事が出来ませんでした。 この舞台での保田さんは、他の役者さんに比べて、声が若干小さかったように思います。 舞台での保田さんの発声が小さいというのは、以前から時々言われていたことです。 また、保田さんの声質が、前に通るタイプのものではないことも不利に働きます。 今回の役は、ブティックを経営する裕福な育ちの奥様(役名:那須野詩織)といった感じの役で、 声を張るような役ではなかったわけですが、 それでも、もう少し大きな発声でも良かったと思います。 しかし、私が感じた違和感は違うところにあります。 その時の感想をそのまま書くと、 「台詞がきちんと体に付いておらず、表面的な字面だけが口から出ている」 という感じでした。 比較的早口での台詞が多く、そこは保田さんは得意なわけですが、 その台詞に、私はリアリティを感じることができませんでした。 リアリティの無い言葉が後から後から、ただただ紡ぎ出されてくるだけという印象でした。 稽古が足りなかったんだろうか? 役作りの失敗だろうか? それとも、私の感覚の方がズレているんだろうか? いろんなことを考えながら帰途に着きました。 心の中がスッキリせず、何か以前にも似たようなことがあった気がして思い出したのは、 保田さんが2006年に出演した舞台「夏ノ夜ノ夢」です。 あの時の保田さんの演技を観た時もこんな心境になりました。 あの時は、「役に対して保田さんの舞台経験が少なすぎた」と言えました。 しかし、舞台出演が10作を越えた今、その様に言う事はできません。 DVDを何度か見返してはみたものの、この違和感の原因については、 未だにハッキリとはわからないのですが、 「もしかしたらこれかな?」と思えるものがあり、 以下、それについて書いてみたいと思います。 私がまず引っかかったのは、保田さんの最初の登場シーンでした。 そして、そのシーンでの保田さんの台詞回しが上述のようなものに感じられた為に、 その印象に強く引きずられて、 他のシーンの演技にも上手く付いて行くことができなかった様に思いました。 私にとっては、この舞台の保田さんは、「つかみ」で失敗していたように思えるのです。 保田さんの登場は、結構早口の、ちょっと長めの台詞で始まります。 その台詞は、何らかの状況や自分の心象を説明するというような「説明台詞」ではなく、 相手に問いかけをしつつ、自分も一人で喋り捲るというような「会話台詞」です。 保田さんがこういうタイプの台詞を話すのは、今回が初めてだったように思います。 相変わらず保田さんは、早口の台詞では強みを発揮するのですが、 にもかかわらず、私がその台詞にリアリティを感じられなかったのは、 おそらく、台詞と台詞の間の「間」が上手く取られていなかった事が理由のように思うのです。 通常の会話の場合は、「間」は、自分の台詞と、相手の台詞との間に成立します。 しかし、今回のように、「相手に問いかけをしつつ、自分も一人で喋り捲る」という長い台詞の場合は、 自分の台詞と相手の台詞との間だけでなく、自分の台詞同士の間にも「間」が必要になってきます。 そして、その「自分の台詞同士の間」が十分に取られていなかった為に、 私は、「台詞がきちんと体に付いておらず、表面的な字面だけが口から出ている」 と感じたのではないかと思えるのです。 一つ一つの台詞が早口でも、その台詞と台詞の間には、 やはり十分な「間」が必要なのだと思います。 勿論それは、「適度な時間的長さ」といった単純なものではなく、 おそらくは、逆説的に思えますが、 「台詞同士の有機的な繋がり」といったようなものではないかと思います。 そしてそれなら、より稽古を重ねることで、 もう少し改善されたのではないかという気がするのです。 この舞台での保田さんの台詞の量は、これまでの舞台と比べて、 結構多い方だったと思います。 おそらく「ちがいますシスターズ」の次ぐらいの量になっていたと思います。 しかも、それぞれの台詞が比較的長めのものも多い。 「自分の台詞同士の有機的な繋がり」が、これまで以上に要求されるという初めての状況の中で、 保田さんはかなり苦戦を強いられたのではないか・・・? これが、私が感じた違和感の原因の、とりあえずの結論なのですが、 ハッキリとした確信は未だに持てないでいるのです。 しかしながら、とりあえず、以上の点を脇に置いてからDVDを見返すと、 観劇時に、私に見えていなかったものも見えてきます。 (1)夫:比呂之(武井シュウイチさん)との不妊治療についての会話 〜スッポンのお弁当を食べさせるシーン (2)信君(服部紘平さん)の家庭教師をしている時のシーン (3)信君の告白を受けるシーン これらのシーンでの保田さんの演技には、役柄の年齢や、会話する相手によって、 ハッキリとした演じ分けが見られるように思います。 (1)では、不妊治療についての不安げな様子から一転、スッポンのお弁当を食べさせる時の強気な様子。 夫に対する尊敬と愛情と信頼感に溢れる妻の演技が見られます。 一方(2)では、4年前の、学生か、又は社会人になってからまださほど経ってはいないであろう時期の詩織。 目の前にいる信君が自分に好意を寄せている事など気付かずに、一生懸命勉強を教える、 元気の良い近所のお姉さんといった感じの演技。 さらに(3)では、信君の突然の告白に対して、一線は決して崩さず、 しかし、できるだけ誠実に向き合おうとする、自分に自信を持っている大人の女性としての演技。 違う舞台作品で、それぞれ違う役を演じ分けるというのは、当然今まであったのですが、 一つの役での、今回のような演じ分けというのはあまり無かったように思われ、 とても良かったと思います。 それぞれのシーンでの会話のやり取りなども、 上述の問題点を差っ引けば、決して悪い出来では無かったように思います。 舞台での長台詞を自然にこなすというのは、おそらく、 私などが考えるよりも遥かに大きな力量が必要なのだろうと思います。 これは勿論、今日明日にどうにかなるということではないのでしょうが、 それでも、これまでの保田さんの演技の変遷を観てきた者としては、 保田さんがその力を付ける事は決して不可能なことではないと思っています。 最後に、これは自分でもちょっと気持ち悪いなと思うことではあるのですが、 非常に印象的な事だったので書くのですが、 上述の(3)のシーンでの保田さんがとても印象的で、 おそらくそれは、その時の衣装のせいもかなりあると思うのですが、 本当に洗練された大人の女性という印象で、 保田さんと言えば、おばちゃんだ酒だ揚げ物だポテトチップスだとくるわけですが、 そういったものからの距離があり過ぎて、そこがとても新鮮で、 これは「ちがいますシスターズ」の小春を観た時の印象と似ているような気もするのですが、 今回は相手が年下であるというところが違うわけで、 そうすると「レモンスター」の夕子を思い出すのですが、 あれは話が若干重い感じがするわけで、 台詞で言うと、 信君が店に入ってきた時の、 「そうだ。今日早上がりしたんだって?」の「そうだ。」の言い方とか、 信君が、夫の比呂之よりも自分の方こそ詩織に相応しいという部分を挙げている場面で、 その答えを促すような「はん?」(ここは上手く文字に起こせません)という言い方とか、 ドキッとするような女性らしさ(当たり前ですが)が現れているように思われ、 つまりそれだけこのシーンでの保田さんが個人的に非常に心に残っているのです。 (2009.11.19) |