女優としての保田圭


・はじめに

・2004年
 ・羅生門 女たちのまぼろし
・2006年
 ・夏ノ夜ノ夢
 ・ネムレナイト
 ・MAMA LOVES mamboW
・2007年
 ・昭和歌謡シアター『新宿の女』
 ・楊貴妃の漢方薬
 ・ちがいますシスターズ
 ・コースター
・2008年
 ・志士たち
 ・THE☆どツボッ!!
 ・猫目倶楽部(ゲスト出演)
 ・レモンスター
・2009年
 ・ミコトマネキン
 ・エブリリトルシング'09
 ・ロマンチックにヨロシク
・2010年
 ・桃色書店へようこそ(ゲスト出演)
 ・マーダーファクトリー
 ・眠れぬ夜の1×8レクイエム

・映像化された舞台

ロマンチックにヨロシク

2009年12月2日〜12月6日
東京都 あうるすぽっと
全8公演

モーニング娘。卒業後の舞台出演第14作目。
「レモンスター」に続き、劇団「散歩道楽」さんの舞台に、2度目の客演。
1人の女性を縦糸として、3つの物語が1つに繋がってゆく構成。

保田さんは「スナック聖美の最後の夜」というパートで、
38歳のスナックのママの「聖美」という役です。
ママというと、
「昭和歌謡シアター『新宿の女』」のクラブのママ「篠崎安子」を思い出します。
篠崎安子は女優になる夢が叶わず、クラブのママをしていたわけですが、
今回の聖美は、歌手になる夢が叶わず、スナックのママをしています。
クラブやスナックのママにはそのような一般的なイメージがあるのかわかりませんが、
ついつい余計な事までいろいろ考えてしまうような設定です。(その2)

まず驚いたのが、開演冒頭からのいきなりの保田さんの長台詞です。
DVDで観ると、他の役者さんの台詞を何度か挟みつつ、全体で約6分弱くらいの長さでした。
これは一体いつまで続くんだろうと、久しぶりにハラハラしながら観ていましたが、
同時に、とても嬉しくなりました。
というのも、前々回出演の舞台「ミコトマネキン」でも、
登場時からの長めの台詞があったのですが、
残念なことに、保田さんの出来があまり良くなかったので、
そのリベンジの機会がないものかと思っていたからです。
今回は、「ミコト…」の時よりも遥かに長い台詞になっており、
しかも、「ミコト…」の場合は、相手との「会話台詞」だったのに対して、
今回は、自分の過去を語る「説明台詞」であり、その分、
自分の台詞同士の「間」がさらに重要になってくる状況だったように思います。
私の個人的な願いが叶ったことで、少し甘くなってしまっていると思いますが、
今回の保田さんの長台詞は良かったと思います。
まだ身体にきちんと付いておらず、焦点の合っていない台詞も若干ありましたが、
声は良く出ていて、台詞同士の繋がりにもそれほど大きな破綻は無く、
間延びすることなく、全体としてほぼ一つの形にまとまっていたと思います。
私は「スナックのママ」というのはテレビドラマや映画でのイメージぐらいしかないのですが、
「スナックのママが語る半生」というイメージにぴったり合う演技になっていたと思います。

また、会話の台詞も多いのですが、
このあたりの演技もかなり安定していたと思います。
長年水商売をしてきた女性の、華やかさ、貫禄、落ち着き、厳しさ、後悔、諦め、希望。
そういったものがよく表現されていたように思います。
年齢設定も保田さんの実年齢よりほぼ10歳年上の38歳という設定だったのですが、
私はあまり違和感を感じませんでした。
この舞台のパンフレットに掲載されている座談会で、作・演出の大田善也さんが、
『「スナック聖美の最後の夜」は保田さんありきで考えた話だ』と仰ってましたが、
確かに、この聖美ママの役は、保田さんのはまり役だったと言えるのではないかと思います。

ただ、若干細かい事ではありますが、
舞台の後半で、℃-uteの矢島舞美さんが演じる「真央」という少女の実家に、
聖美ママが電話をする場面があるのですが、
この場面に関しては、保田さんは、
演技にもう少し落ち着きを持たせても良かったのではないかと思いました。
勿論、誘拐と取られてしまう可能性もある、緊張する場面ではあるのですが、
結構な修羅場を経験してきたであろうと思われる聖美ママにしては、
態度がおどおどし過ぎのような気がしました。

舞台の終盤で、最後の営業を終え、もう閉店してしまった店に一人残った聖美ママが、
思い出の歌を歌う場面があります。
私は歌のことはあまりよくはわからないのですが、
保田さん独特の、咽喉に力を入れるような歌い方とか、
語尾をしゃくりあげるような歌い方というのは正直ちょっと苦手なのですが、
この場面の歌はとても良かったと思います。
台本上、盛り上がりのある場面であることにも助けられていたとは思いますが、
小技を使わず、素直で真っ直ぐな歌い方が、とても印象に残りました。

この舞台での保田さんの演技は、
「昭和歌謡シアター『新宿の女』」や、
「楊貴妃の漢方薬」等で散見された演技が、
一つのはっきりとした形にまとまってきたものであるように思われ、
ベースの役以外での、保田さんの手持ちの役が一つ、
ある程度確立された舞台となったのではないかと思います。
(2010.8.26)