[1] 減価償却資産の自己増殖
初年度

6年度

7年度初 子会社へ売却

10年度初 親会社へ売却

12年度 廃棄処分

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目次
[1] 減価償却資産の自己増殖
( 添付図参照 ・ 耐用年数6年寿命12年の機械設備の場合)
[2] インフレ経済ではどうなるか
[3] 物価安定の現状ではどうなるか
[4] 歪められる社会・経済
[5] NTTの赤字決算について
[2]インフレ経済ではどうなるか
インフレ率5パーセントの社会状況下で、減価償却資産の増殖を見てみると次のようになる。
最初の600円の資産は6年後804円となり、その50パーセントの402円が資産増加額となり、次に402円の資産は3年後には465円となりその50パーセントの232円が資産増加額となる。従って、12年後の資産は、600円+402円+232円=1234円となる。
では、最初の600円の設備投資の12年後、同じ程度の設備投資をするとすればいくらあればよいか、物価上昇が12年間で約180パーセントになるので、600円×1.8=1080円となる。従って、実質的な資産増加は、1234÷1080=1.14となり、14パーセントの増加となる。
同様に、8パーセントのインフレ率で計算すると、1375÷1510=0.91となり、9パーセントの資産減少となる。
このように、高いインフレ経済では少々短い耐用年数でも資産が増えることはない。従って、減価償却費による資産減少を、利益を還流することで補うと共に、生産拡大に伴う設備投資資金を銀行等からの借金で賄っていた。
[3]物価安定の現状ではどうなるか
物価が安定している場合は価額の上昇はなく、子会社に減価償却資産を譲渡することで、企業の資産は6年後には300円増え、さらに3年後、子会社から親会社へ譲渡することで150円増え、合計450円増えたことになる。この場合12年間で実に75%の増加となっている。
このように、インフレのない経済に於いての短い耐用年数は、企業の資産を膨らませる働きをする。つまり、経済の低成長下では設備投資も前回の600円でよいとなると、450円の資産圧縮に迫られる (「日本の統計」 によると、1997年の純固定資産は1,307兆円で、この年以降は0.1%の微増)。本来、物の寿命と耐用年数が一致していれば、このようなことにはならない筈である。
[4]歪められる社会・経済
本来、企業財務の資産増加は、決算を経て所得の一部を還元する事によって増加するものであろう。従って、資産を増やす必要が無ければその分株主配当に当てればよい。ところが、減価償却資産の自己増殖によって増えて、そして、その投資先がないとなると、資産圧縮に迫られる。
資産圧縮の方法は、第一に考えられるのが、販売価格を下げ、売上利益を減少させて赤字経営にするのである。競争激化によるもの、と理由付けが出来る。
第2は、リストラで人員削減を進め、退職割増金などをだして赤字経営にする。従業員の解雇を円滑に進めると同時に資産の圧縮もできる。
第3は、借金の返済である。企業の資産は減るが、銀行の資金はだぶつくようになる。
その結果、全体として法人税収が低下してくる。個人経営の場合は累進課税となっているので、丁度、宝石を割った勘定のように、法定耐用年数までは所得は少なくなるが、それを過ぎるとその分の所得が加わり倍加された所得になるからである。従って、個人企業の場合は増税になる場合もある。
このように企業財務のゆがみが、今日の 「デフレ」 や 「財政危機」 「銀行の金あまり・不良債権」 などの問題となって現れている。これらの問題の解決には、7時間労働制・労働制度の改革と減価償却資産・耐用年数30%伸長を実施することである。
[5]NTTの赤字決算について
NTTは、赤字の原因は過剰の従業員にあるとして、部門別の会社を設立しようとしている。勿論、赤字の原因が過剰人員だけにあるのではなく、減価償却費が多すぎることもその一因であるが、減価償却費には目をつむっている。それは、耐用年数は法律で定められているから"正確"と云う前提に立っているからであろう。
NTTの分社化のもようはNHKの 「クローズアップ現代」 で取り上げられ、社員の苦悩が伝わってきた。しかし、組織改編のあとに来るのは本格的な人員削減であろう、なぜなら、現有の巨大な減価償却資産は分割後も残る。それは、競争下での資産増加をつくりだすからである。そして、その資産圧縮の方法は、財務的には、赤字として吐き出されるだろうと考える。しかし、一般的には、正真正銘の経営不振による赤字なのか、資産圧縮のための赤字なのかは、マスコミでは報道されない。
「日本の統計」 によると、1997年の純固定資産は1,307兆円で、その後はほぼ横ばいに推移している。このような現状で、減価償却資産の耐用年数が物の寿命より短いと、企業財務の資産は膨れ、毎年数十兆円の資産圧縮を余儀なくされていると考える。NTTの赤字決算に、この典型的な企業財務のゆがみが見えるようである。 |
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