目次

丹沢の鉱泉(下)
意見:西山を守る会
黄色いチラシ情報
西山尾根道を取り戻そう!!
コラム:ご褒美

おことわり:Web版では広告を掲載していません。
平成16年9月1日号NO.286号 Web版
荻田印刷 TEL・FAX 046-241-8990
1981年創刊 毎月1日発行
編集発行人:荻田豊 上荻野車庫前
西山を守る会ホームページ
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郵便振替口座(名称・西山を守る会)
00260-1-41948
寂しさ惨めさは胸を打つ
新潮文庫
「新版・貧困旅行記」より
丹沢の鉱泉(下)  つげ義春

 沢は二軒めの宿屋から先は、山の割れ目のように急に狭い谷間になり、さらに百メートルほど奥へ行くと、崖の棚に目的の滝の家があった。みすぼらしい宿で、暗い谷間に挟まれているせいか、別所の渓問屋よりもっと寂れた感じで、私は感激でドキドキした。しかし人の気配はない。声をかけても返事がない。玄関もその横の縁側も鍵がかかっていた。縁側の外にバイクがあり、丸いテーブルと椅子が据えてあり、その上に灰皿がある。休業中とは思えないので、ちょっと留守なのかもしれない。私は椅子に掛けしばらく休んでいたが、そうしていても仕方がないので、宿から先の沢の上流の方へ行ってみた。上流には滝がある。

 幅二メートルほど、水深十センチもない惨めな沢に沿って行くと、谷間はさらに細く暗くなり、空は晴れているのに陽も射さない。百メートルほど行くと沢のヘリに小屋があった。ここも滝の家の別棟のようで、ガラス戸から中を覗くと、大きなソファーや家具が雑然と置いてある。自分がこの宿の主人だったら、ここを書斎か別荘にしたら素敵だろうと思った。小屋の中からゴムホースが出て、沢に向かって勢いよく水が噴出している。小屋の中に源泉でも湧いていの煙突があるので、ここで鉱泉を温めているのだろうか。

 小屋からさらに百メートルほど行くと、方丈くらいの小さなお堂があった。昔この谷間で良弁僧正が修行をしていたという、その縁りの堂だろうか。すぐそばに崩れかかった廃屋が草に埋もれていた。ここまで来るととても人は住めそうにないのに、誰か住んでいたのだろうか。ここで生活をするには近くに店屋もない。自給の畑作りするスペースもない。陽も射さず健康に悪い。よほど自分に絶望し、自分を棄てる覚悟でなくては住めないのではないかと見て思った。

 じめじめぬかるんだ道を草を分けて尚も百メートルほど行くと、沢は行き詰って滝が落ちていた。落差十五メートルはど、水量も細い。三方を切り立つ岩壁に囲まれて滝は少し横にひっこんで見えにくい。そのためかなり高い位置に赤い小さな橋が架けられ滝を見物するよう工夫がしてあるが、そうまでして見るほどの滝ではない。しかし、この盲腸の奥のような、暗い袋小路に拝んでいると、なんともいい表しようのない不思議な感銘を覚える。あまりに陰々滅々として参ってしまうせいだろうか。自然の景色でこんな陰気は見たことがない。まったく救いがない。身も心も泥のように重くなる。

 −善人なおもて往生をとぐ いわんや悪人をや−

 唐突に親鸞のことばが浮かんだりして、ここで坊さんが修行をしていたというのが分かったような気がした。
 宿の前に戻ってまた一服して、感激をかみしめたあと引返すと、新築したばかりの宿屋からオカミさんが外へ出ていたので声をかけてみた。滝の家を買取った人はどんな人か訊くと、停年退職したようなオジさんで、家族は東京にいて、オジさん一人で宿をやっていると教えてくれた。「この辺は店屋もないので、時どきバイクで食料など仕入れに行ってますけどネ」と云った。一人で気ままにやれるということは、たいして忙しくないのだろう。私の考えていた案と同じようなことをしているわけで、どんな人物なのかそのオジさんにすごく興味を覚えた。いくらで買取ったのか気になって、

「この辺の土地は高いんですかねえ」

 と訊くと、この辺は調整区域で安いらしいけど、家を新築することはできないと云った。二軒も新しい宿屋ができたのは宮ケ瀬ダム工事で立退きした者が、その補償にこの土地を貰ったので特別なのだと、そんな事情も話してくれた。けれど、ヒマで困っていると云った。

 一般の行楽客にとっては、暗い谷間とちっぽけな滝、中津川の川原は殺風景で、これほどつまらぬ所はないだろうが、私はここが、とくに滝やお堂がすっかり気に入った。鉱泉業のことはともかくとして、こんな絶望的な場所があるのを発見したのは、なんだか救われるような気がした。  (完)
     (昭和六十三年十一月)



 七月号から三回に分けて掲載しました『丹沢の鉱泉』はいかがでしたでしょうか。”つげ義春の世界”は初めてという方も多かったのではないでしょうか。

 掲載の許可をいただくため一月に新潮社気付で手紙を出しましたが、その手紙がつげ氏に届いたのかどうかも分らないまま数ケ月が過ぎました。連絡がつかなくて困つていることを田辺千代さんに話すと「知人の版画家・佐藤囲男さんがつげさんと友だちだから」と北海道まで電話をしてくださり、佐藤氏から「あがた森魚さんが窓口になっている」との情報をいた だきました。今度はあがた氏に仲介の労をお願いする手紙を書き、あがた氏との数度の電話のやり取りでつげ氏の事情を知ることができました。それにより、当紙の判断で掲載させていただくことにしました。

意見

 アメリカインチイアンのナホバ族に”自然は子孫からの借り物である”という教えがあるそうです。
 ”西山の自烈”という子孫からの借り物を為政者におもねるあまり、私たちの代で失うとしたら、子孫に顔向けできません。
 ”為政者とはいっときの存在、先祖や子孫は永遠の存在”と思いたいものです。

  『西山を守る会』代表 花上義晴

黄色いチラシ情報

●テレビ東京『美の巨人たち』を
 『西山を守る会』ホームページ担当の田辺千代さんが本業のステンドグラス史で、3月の『開運なんでも鑑定団』に続き、今度は同じ12チャンネルの『美の巨人たち』に出演し、大正初期から昭和初期に活躍したステンドグラス作家小川三知の業績を紹介します。今番組制作中に東北の旧家から新たに発見された作品も紹介されます。放送は9月25日土曜日午後10時からです。是非ご覧下さい。

●9月の西山登山は12日(日)雨天翌週
 松石寺午前9時半集合。高取山→尾根道→三つ沢。午後3時下山。その後宮本老人憩いの家で意見交換を行います。

市道は市民の財産です。
西山尾根道を取り戻そう!!

『西山を守る会』からあなたに質問です。

 西山問題に関して、二十五の質問を設けました。ご家族でチャレンジしてください。

1.西山の尾根道(荻野高取山〜上飯山・三つ沢間)を歩いたことがありますか。
  ある  ない

2.相模興業株式会社が尾根道の「市道の付替について」申請した書類には上飯山と真弓の自治会長の同意書しか添付されていないことをご存じですか。
  知っている 知らない

3.尾根道はこの二つの自治会の人たちだけが使う道と思いますか。
  思う  思わない

4.厚木市民は二十二万人です。同意書はこの二つの自治会だけでいいと思いますか。
  思う  思わない

5.尾根道やそこに登る道六本は市道です。当然に市民の財産と私たちは認識していますが、あなたは誰のものと思いますか。
  市長  相模興業梶@ 市民

6.相模興業鰍フ「市道の付替について」の申請理由は「岩石採取で掘削するため」です。これは自然破壊であり環境であると思いませんか。
  思う  思わない

7.市は「市道の付替について」市民には十分説明をしたと思いますか。
  思う  思わない

8.尾根道には江戸時代に荻野新宿に在した小林芹江の句碑・発句石があり、「夕焼け小焼け」で有名な中村南紅作詩の「荻野音頭」にもこの発句石が歌われていることを知っていますか。
  知っている  知らない

9.荻野中学校の校歌に高取山が歌われていることを知っていますか。
  知っている 知らない

10.尾根道は八菅山を起点に大山に至る七宿三十ケ所を巡る八菅修験の峰入修行コースであったことや蚕種石やケヌキ石、スズリ石と呼ばれ、苦から村民に親しまれていた自然石があったことを知っていますか。
  知っている  知らない

11.荻野小学校、鳶尾小学校、上荻野小学校、荻野中学校、三田小学校、睦合中学校などから西山はよく見えます。子どもたちは毎日西山を見ています。尾根道廃道はこの景観を子どもたちから奪うばかりではなく、三十年間も自然破壊を見せ続けることになると思いませんか。
  思う  思わない

12.昭和四十九年に相模興業が西山裏側の採石事業によって市道の一部が損壊し、発句石も移動したことがありました。当時市会議員だった花上代表は石井市長に対して損壊した市道と発句石の現状回復の措置をとらせた経緯がありましたが、そのことを知っていますか。
  知っている  知らない

13.尾根道を廃道にしなければ多少は削られても今の稜線は守れました。市はなぜ尾根道を残そうとしなかったのか疑問に思いませんか。
  思う  思わない

14.自治会長から西山尾根道廃止説明がありましたか。
  あった  なかった

15.「市道の付替について」 は平成十五年十二月十五日の都市経済常任委員会で審議されましたが、荻野自治連の毛利和夫会長、小野寺信郎・青木義賢の両副会長のいずれも傍聴していませんでした。これで責任が果たせると思いますか。
  思う  思わない

16.一部の自治会長が、尾根道の廃道に自治会員が意見を言う資格(権利)がないと説明しているようですが、市道は市民の財産ですから当然ある訳ですが、あなたはどう思われますか。
  ある  ない

17.過去に共有林を採石業者に売ってしまったある自治会長が、自治連の会議の席で「売ってしまったから、しようがない」と云っているようですが、山を売ったことと市道の廃止は別なことです。問題を摺り替えている発言とは思いませんか。
  思う  思わない

18.太古からある山がなくなるのです。荻野自治達は尾根道の廃止理由の説明会を市に要求し、全市民を対象に開催すべきだったと思いませんか。
  思う  思わない

19.尾根道である市道の廃止と付け替えは、一私企業の経済活動に市が便宜を図ることと思いませんか。
  思う  思わない

20.山には百年分の採石量があるそうです。採石業者の所有地ですから三十年後も需要があればさらに採石は続くと思いますが、あなたもそう思いますか。
  思う  思わない

21.荻野の里山には絶滅危惧種のオオタカが住んでいます。飯山地区にも営巣地があります。西山採石はこれに影響があると思いませんか。
  思う  思わない

22.市は上荻野三つ沢の敬和荘前の谷戸田で「里山マルチプランニング事業」を展開しています。採石場はその北側奥の山です。矛盾を感じませんか。
  感じる  感じない

23.採石場の計画では一日五百台往復千台ものダンプカーが出入りしますが、どの方面から採石を買いに来るか分りません。飯山街道だけではなく、荻野地区も通行するとは思いませんか。
  思う 思わない

24.鹿・猿・イノシシによる被害が多発しています。西山の採石が始まると野生動物の生活の場を奪うことになり、さらに有害鳥獣の被害が激しくなると思いませんか。
  思う 思わない

25.西山周辺には活断層があります。山を削るとバランスが崩れ地震を誘発する可能性があると思いませんか。
  思う 思わない

暑い夏もオリンピックも終わり、物思う秋が来ました。西山のことをじっくりと考えてください。

コラム:ご褒美

◆八月十一日の日刊紙に厚木市の助役と市議会議長の人事記事が掲載されていました。

◆「西山を守る会」は六月に「神奈川の自然と環境を守る連絡会」(通称かながわグリーンネット)に入会し、翌月の「か がわの環境問題リレー報告会」で池子住宅、丹沢ブナ立ち枯れなど県内十一団体が取り組んでいる環境問題の一つとして西山採石問題を川田利夫副代表が報告しました。

◆この会で知り合った「神奈川オオタカ保護連絡会」にはオオタカ調査の指導をお願いし、丹沢ブナ党の梶谷敏夫事務局長や丹沢大山ボランティアネットワークの池野正世話人会代表には定例登山で現地視察をしていただき、秋には「山ゆりの会」の登山計画もあります。また先月は「伊勢原の自然と環境を守る会」の神奈川新聞紙上への意見広告に名をつらね、今月は県への要求交渉の一員に加わり、十一月は厚木市の大山ロープウェイ計画に反対する丹沢ブナ党主催のシンポジウムに参加します。

◆価値観の近い人たち、季節毎に異なる表情を見せる山を登る楽しさ、オオタカ調査で見つけたホタルの群生地、某党県達幹事長面会、県庁の眺めのいい食堂での昼飯、弁護士との面談など、新たな出会いやささやかな発見・経験が生まれ、日常生活が面白くなってきました。これは西山の山神様が私にくださったボーナスだと思います。

◆それにつけても、この件で沈黙している荻野や厚木市の自称有力者たちは西山と引替えにどんなご褒美をもらっているのでしょうか。