アッシュ編

首の短いキリンのアシュと仲間たち


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アッシュ編

首の短いキリンのアッシュ

これは、たくさんの動物たちが暮らすアフリカでの話。

yuu0007-001.jpg広くて暑い アフリカの大地、サバンナにキリンが群れをなして暮らしていました。

その自慢の長い首を上手に使って、キリンたちは背の高い木の葉をおいしそうに食べています。

何頭ものキリンが木の葉をムシャムシャと食べているすがたはとても雄大です。

その群れの中に一頭、首の短いキリンがいました。

彼の名前は“アッシュ”。

アッシュは前足も後ろ足も体の模様も、他のキリンとおなじなのになぜか首だけが短かったのです。

ちょうど馬の足が細くなったようなその体を仲間のキリンたちは

笑い、罵り、ときにはアッシュを仲間はずれにしました。

「できそこないのアッシュ、生まれたときからその体、いつになったら首がのびるんだい?」

「アッシュは本当は馬の子だろう?だから首が短いんだ。それにしたって体の模様はキリンだなぁ・・・

どっちにしてもできそこないに違いない!!ワハハ・・・!」

仲間からの冷たい言葉にもアッシュは泣くこともなく、いつも笑顔でいました。

「おまえは、何を言われてもヘラヘラと笑っているねぇ、本当にバカな子だ。

首の短いおまえには見えないだろう?

この先でライオンが私たちを狙っている恐ろしい姿が!!」

そう、アッシュはどんなにひどいことを言われても泣くことはありませんでした。

ただ一度お父さんとお母さんが死んだ あの日の夜以外は・・・。

アッシュに本当の家族はもういません。

食事の時間、背の高い木の葉を仲間たちは、おいしそうに食べています。

けれどもアッシュは木の葉まで首がとどきません。

「あのぅ…悪いけどその木の葉、少し地面に落としてもらえませんか?」

アッシュは2つ年上の仲間にお願いしました。

「ったく!!なんて世話のかかるヤツだ。おまえよりも年下のヤツだってちゃんと自分で食ってるっていうのによ! 

まぁ、しょうがないよなぁ、この群れの中でおまえがいちばん背が低いんだからよ!! ほらよっ!」

そう言うと2つ年上のキリンはバサバサと枝ごと葉を地面に落としました。

「どうもありがとうっ!」

アッシュはうれしそうに地面に落ちた葉をおいしそうに食べました。

ある日、木の枝で羽を休めている小鳥がアッシュに話しかけてきました。

「ねぇねぇ、そこのキリンさん」

「ん、僕のことかな、だれ?どこにいるの?」

「こっちこっち!もっと上です」

アッシュは大きな木の横の小さな木の枝を見上げました。

「そうですここですキリンさん。どうもはじめまして」

「やぁこんにちは。僕の名前はアッシュ、わぁ☆君のその羽とてもキレイだね」

「どうもありがとう。ところでキリンさん、わたしあなたをずいぶん前から知ってるんだけど 

なんだか仲間のキリンさんたちは君にひどいことを言っているねぇ」

小鳥さんは、カラフルな羽をパタパタ広げてアッシュに言いました。

「キリンのアッシュさん、あなたおなじ仲間にあんなこと言われて悔しかったり、悲しかったりしないのかい?」

小鳥さんのパタパタと動く羽をしばらく見つめたあと、アッシュはいつもの笑顔で言いました。

「小鳥さん、僕は悔しくも悲しくもないよ」

「またまたご冗談、だってあなたはみんなより首が短いじゃないですか。そのせいでみんなにいじめられてるんでしょう?」

小鳥さんは さっきの倍の速さで羽をパタパタさせました。

「うん、たしかに僕は、みんなより首が短いよね、それは自分でもわかってる。

少しまえは僕も気にしてたよ・・・

・・なんでだろう・・・なんで僕だけ首が短いんだろう。父さんも母さんも首が長いのになんで・・・

どうして僕はできそこないなんだろう・・・どうして僕はこんなすがたで生まれてきてしまったんだろう・・・

毎日泣いてたんだ。悲しくて悔しくていつも父さんと母さんに泣きながら話してた・・・」

小鳥さんは少し気まずそうに羽をとじました。

「でもね」

「父さんと母さんが最期に教えてくれたんだ。僕はけして可哀そうな子なんかじゃないって」

アッシュは自慢げに短い首を上げ、小鳥さんにウィンクしました。「僕は首は短いけど、足の長さはみんなとおなじでしょ?だから首が軽いぶん、みんなより早く走れるんだよ。 昼間太陽がジ
リジリ暑いとき、内緒で仲間の影にかくれて涼しんだり、首が突っかかって通れない場所も僕ならかんたんに通れる。」

「それに、みんなそんなに悪いひとたちじゃないんだ。君が言うようにたしかにちょっと口はわるいけど・・・高いところの葉っぱも文句は言うけど、お願いしたら必ずとってくれるし、僕の見えないところに敵がいたら怒鳴りながらだけど絶対に教えてくれる」

「それに・・・」

「それになんだい?アッシュさん」

「・・・父さんと母さんが死んだとき、みんな一緒に泣いてくれたんだ・・・」

「夜がきて星が光って月が沈んで朝日が顔をだすまで、何も言わずに一緒にいてくれたんだよ。」

「そのとき心からおもったんだ、僕は可哀そうな子なんかじゃない。

生まれてきてよかった、父さんと母さんの子でよかった・・・って。」

小鳥さんは、自分のちいさなちいさな体の中でなにか温かいものを感じました。

「そうですか・・・アッシュさん、じゃあ、あなた今幸せなんですね?」

「うん!」

「でも・・・ときどきやっぱり自分も長い首になりたい!って思ったりしませんか?」

小鳥さんは、ちょっと意地悪な質問しました。

「あはははっ!そうだね、ときどき思うこともあるよ。」

「でもね、小鳥さん僕は長い首にだってなれるんだよ☆」

「え?!」

小鳥さんはアッシュが笑顔でみつめている先に視線をやりました。

「ぅわぁー・・・☆」

そこには、広大なサバンナの地平線に落ちていく夕日に照らされたアッシュの影がありました。

草原にのびるその影の首はアッシュの仲間たちと同じように長かったのです。

「ネッ!」

アッシュの笑顔につられて小鳥さんもにっこり笑顔になりました。

しばらくして、すこし遠くからアッシュを呼ぶ声がしました。

「おーいっ!アッシュ、もう日が暮れるぞ!まったくホントにトロイヤツだなー、夜になって敵が近づいてきてもおまえひとりじゃわかんねーだろ!ホント俺がいないと何にもできないグズなんだからっ!」
アッシュと小鳥さんは顔を見合わせて吹き出しました。

「じゃあ小鳥さん、僕もう行くね」

「はいアッシュさん、いろいろ教えて下さってありがとうございました」

アッシュは自慢の足で仲間たちのもとにむかいました。・・・その途中、小鳥さんにむかって大きな声で言いました。

「ねー小鳥さーん!僕今日も首が短くてよかったことみつけたよ。

僕の首がみんなより短かったから君は気になって僕に話しかけてくれたんだよね? それに次に会うときも仲間の中で僕を見つけるのはかんたんでしょ?みんな似たような模様してるからさ」

そういうとあっという間に仲間に追いつき、楽しそうに帰って行きました。

ひとりになった小鳥さんは 枝の上でクスクスと笑いました。
「アッシュさん、あなた今本当に幸せなんですねぇ・・・よかった・・そう、あなたは生まれてきてよかったんですよ。

あなたが生まれたとき、あなたのご両親がどんなに喜んでいたか・・・この木の下で生まれたこと私があなたのご両親と友達だったことあなたはおぼえていないんでしょうけど。」

「約束は果たしましたよ、私もこれで安心していけます。あなたのご両親が首をながーくして私を待っているのでね・・・」

そういうと小鳥さんは、キラキラ星の光る夜空へと飛んでいきました。  


今もたくさんの動物たちが暮らしている 広くて暑いアフリカでの話。。。