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Unlocked Room 「永世」トリビュート創作小説スペシャル |
| 通常営業/ 日記/ 「永世」 |
| 03/09/23 |
「進井様がみてる いとしき永世」 | Unlocked Room Novels |
| 進井瑞西さん誕生日おめでとうです。 | 原案:のりぽん・ザ・リッパー 作:鍵屋壊夢 |
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登場人物 ------------------------------------ 進井 彗子 (すすい すいす) 日向 元 (ひなた もと) 年未 青 (としみ あお) 高橋 真琴 (たかはし まこと) 九条 里流 (くじょう さとる) 紅蓮 魔雪 (ぐれん まゆき) まる缶ちゃん 鍵屋 壊夢 (かぎや かいむ) ----------------------------------- 「もとせんぱぁい。進井先輩のお誕生日プレゼントは何にしたんですかぁ?」 「え? あ…、もしかして今日だっけ?」 年未青の言葉で、日向元は今日が進井彗子の誕生日だということを思い出し愕然とした。 今まですっかり忘れていたのであろう。頬を一筋の汗が伝い落ちる。 「青は進井先輩が大好きな納豆クッキーをプレゼントするんですよぉ」 元の焦りをよそに、青はえへへ〜とのんきに笑う。 「な、納豆クッキー?」 「はい。納豆を生地に練りこんで焼き上げた手作りクッキーです! 進井先輩、納豆が好きだって 言ってたので」 「それって、おいしいの?」 「納豆好きな人には好評でしたよ。ねー、里流先輩」 青の振りに、九条里流は苦笑気味に頷く。 「ボクが実験台というか毒見役をさせられました。まあ、おいしいと言えなくもなかったですよ」 「まこっち先生はプレゼント何にしたんですかぁ?」 「………」 「まこっちせんせぇ〜」 「え!? ご、ごめんなさい。あ、進井さんのプレゼントですか。本をあげようと思って、いく つか用意しました」 突然話を振られ高橋真琴は慌てたように振り向いた。 「青さん、まこっち先生のお仕事の邪魔しちゃ駄目です」 「はぁ〜い、ごめんなさい。先生いそがしんだよね。原稿ふぁいとだよっ」 「そうですよー。締め切りは明日の朝ですよー」 「が、頑張ります」 里流と青の2人に激励されながら、真琴は泣きそうな顔をして再びモニタに向かった。 真琴は現在CG作成中なのである。 永世女学院・文芸部の部誌「華麗なる永世のために」秋号の表紙がタイトルだけの味も素っ気も ないものになるかイラストつきの見栄えのよい表紙になるかどうかは、すべて文芸部顧問の真琴 の手腕にかかっていた。 「進井さんの『柏松ねえさまの一生』はとっくに出来あがっているし、元さんの『柏松さまが見 てる』は昨日完成。…青さんの『バーチャルネット声優12歳』は?」 「出来てますよぉ。はい、原稿です」 「あ、えらいえらい、ちゃんと締め切り守ったんだ」 里流に頭をなでられ青はほにゃらっと笑った。 「あとは、まこっち先生の表紙イラストと挿絵、それと蓮魔さんの評論…」 「ごきげんよう」 涼やかな声とともに部室のドアが開かれた。紅蓮魔雪が凛とした表情で入ってくる。 まるで名前を呼ばれたので出てきたかのようなタイミングだった。 「はい、里流さん」 里流に手渡された原稿の束はそれなりの厚みがある。 「うわあ、今回はどんなテーマで書いたんですか?」 「『本格探偵小説と萌えについて』よ」 「ふええ、凄いですねぇ」 「あれ、でも、蓮魔さん、萌えって」 「ええ、わたしにはキャラ萌えというのはわからないわ」 魔雪の視線が鋭さをまし攻撃的な色を帯びる。青は魔雪のそんな表情に見惚れているようだ。 「おかげで萌えの概念を理解するために、いろいろなものを読む羽目になってしまって…」 「お、おつかれさまでした」 「元さんはわからないけれど、進井さんはいつものように萌え小説を書いているんでしょう? 対照的な面白さがうまれてくれればいいわね」 椅子に座った魔雪は青を手招きし隣をしめす。魔雪は招かれるままに側に座った青のポニー テールのリボンをほどき、髪を梳りはじめた。 「高橋先生は間に合いそうなの?」 「微妙だと思います」 部誌制作の編集を担当している里流は正直にそう言う。 真琴はますます泣きそうな顔をしていた。 「れんま先輩は進井先輩に何をあげるんですかぁ?」 「あら…、そういえば。もうすぐ進井さんの誕生日だったわね」 「もうすぐじゃなくて、今日ですよぉ」 「そうだったかしら? 元さん、覚えてた?」 「ごめん。わたし忘れてた」 部員たちの話しをよそに、黙ったままずっと進井彗子への誕生日プレゼントをどうしようか と考えていた元は仕方ないとばかりに正直に言った。 「里流さんは?」 「覚えてましたけど、ボクは進井さんとはライバルという設定なので」 「そう。なら仕方ないわね」 櫛をいれ綺麗に整った青の長い髪を、魔雪は丁寧に編みこみ始める。 左右に三つ編みのおさげを形作るつもりのようだ。 鏡を覗きながら青はふわぁという声を出した。 「ふふふ、わたし勉強したのよ、青さん。おさげの三つ編みは”萌え”なの」 「ほへぇ、これが萌えなんですかぁ。れんま先輩も青に萌えますか?」 「さあ、わたしには萌えはよくわからないから」 そんな魔雪と青の様子を見ながら里流と元は小声でつっこみをいれる。 「あんなこと言ってるけど。絶対、蓮魔さんは青さんに萌えてますよね」 「うん、間違いない」 「うにゃー」 窓から部屋の中に飛びこんでくる小さな影と猫の鳴き声。 「あ、まる缶さん、お帰りなさい」 三毛猫のまる缶嬢である。こう見えてもれっきとした文芸部員で、部員名簿にも名前が ちゃんと載っていた。 「あれ、何これ。まる缶さんが何か持ってきちゃったみたいですよ」 毛繕いを始めたまる缶嬢の横に何かの缶詰が置いてあった。元が手にとる。 「わ、鯨肉の缶詰だ」 「えー、どこからそんなの拾ってきたんですかー」 「にゃー」 なぜかまる缶嬢は得意そうな面持ちである。 「遅くなっちゃったなあ。みんな怒ってないかなあ」 「大丈夫じゃないの。進井ちゃんもわたしも原稿は終わってるんだし」 進井彗子の心配をよそに鍵屋壊夢はいたってのん気だ。 部誌の印刷所締め切り前日という大事な日なのに、壊夢の仕事に彗子が無理に付き合わさ れた形で、2人とも部室への集合時刻に大幅に遅れてしまっているのだった。 「でも、今日は元ちゃんと一緒に帰る予定だったのに。遅刻したせいで作業が終わらなく て、帰るのが遅くなったりしたら」 「進井ちゃんは心配性だねえ。帰り遅くなっても元ちゃんがちゃんと守ってくれるって」 彗子が心配しているのは壊夢の言っているようなそんなことではなくて、いや、それも 少しあるのだが、もっと別なことにあった。今日は進井彗子の誕生日なのだ。日向元が そのお祝いをしてくれるのではないかと、帰り道にどこか駅前の甘味屋さんとかに寄っ たりするんじゃないかと、ちょっぴり期待していたのだった。 1週間前の紅蓮魔雪の誕生日には、部員のみんなで魔雪の恰好を真似して驚かせるとい う悪戯をやった。いつもはクールな魔雪があんなに大笑いしたのを彗子は初めて見て、 やってよかったと思ったものだ。 そして彗子の誕生日である。 後輩の青は「プレゼントあげますよぉ」と前から言ってくれているのだけど、他の部員 たちは彗子の誕生日を知っているのかいないのか、それすらよくわからない。 部誌の原稿締め切りと重なってしまい、それどころじゃないという人もいた。 「せめて、元ちゃんだけは…覚えてくれてるといいな」と彗子は願っていた。 もちろん他の皆も大切な友達だけど、進井彗子にとって日向元は…特別なのだ。 「進井先輩、お誕生日おめでとーございまぁす」 部室で彗子をまず出迎えたのは青の抱擁だった。続いて鞄から綺麗にラッピングされた 袋を取り出し彗子に手渡す。 「お約束の通り、納豆クッキーでぇす」 「ありがとう、青ちゃん」 「おめでとう、進井ちゃん。わたしからはコレ」 壊夢からはジュース缶がプレゼントされる。ルートビアだった。 「ありがとうございます。鍵屋先輩」 本当はあまりありがたくないのだが、そんなことはおくびにも出さず、彗子は慇懃に お礼を言う。 「お誕生日おめでとうですよ」 「ハッピーバースデー」 「17歳、おめでとう」 「わあ、里流ちゃんも蓮魔さんもまこっち先生もありがとう。嬉しいです」 魔雪が里流の顔を見てくすりと笑う。 「ライバルといえど、プレゼントはするのね」 「いいじゃないですか。蓮魔さんこそ、本当はちゃんとプレゼント用意してたんじゃ ないですか」 「わたしは詐欺師だから…」 そんなことを言いながら、長い髪をかるく右手でかきあげる魔雪。薄い笑みを浮かべ る艶然とした表情に、周りの皆がどきりとしていることも露知らず。 「…蓮魔さん本人が一番の萌えキャラだとボクは思います」 「そうなの? やっぱり萌えってよくわからないな」 小首をかしげつつ、魔雪はもうひとつ缶詰を彗子に手渡した。 「これはまる缶ちゃんからのプレゼント」 「うわあ、鯨だあ。ありがと、まる缶ちゃん」 「にゃー」 猫の頭をなでなでする彗子。されるがままに目を細めるまる缶嬢。 そして、日向元が青に背中を押されるように進井彗子の前に出てきた。 「元ちゃん」 「す、進井ちゃん。あ、あの、誕生日、おめでとう…」 「うん、ありがと…」 「プレゼントなんだけど、えっと…、女の子同士でこんなプレゼントはどうかなと 思ったんだけど。蓮ちゃんとかさとちゃんとか皆がこれでいけって言うから」 「言い訳しちゃ駄目ですよ」 「さっさと渡したら?」 「がんばれ、もと先輩」 「よっしゃ、そのまま押し倒しちゃえっ」 「これ。プレゼントっ!」 。 ◇◎。o.:O☆oo. 。:゜ ◎::O☆ _, ._☆。∂:o゜ /。○。∂( ゚ Д゚)O◇。☆ / ◎| ̄ ̄∪ ̄∪ ̄ ̄ ̄|:◎: / | 進井LOVE | / ☆。|..Happy Birth Day!!.|☆ ▼ 。 ○i..io.。◇.☆____| 。.: ∠▲―――――☆ :∂io☆ ゜◎∂:.o☆ 翌日、学園の温室で栽培されていた薔薇がいくつも引き抜かれたことが判明し、文芸部 顧問の高橋真琴先生が徹夜空けのぼろぼろの姿で園芸部に平謝りしにいくことになった。 真琴のあまりのやつれようを憐れに思ったのか、お咎めはなかったという。 文芸部部誌『華麗なる永世のために』は無事にイラスト表紙で発行された。 なお、この作品は純然たるフィクションであり、登場人物に似た名前の実在の 人物とは一切関係ありません。 | ||