発達障害について


1.発達障害の兆候と特徴

(1) 発達障害とは
    発達障害とは、児童の発達の途上に生じた発達の乱れ。
    
     IQ70未満の精神遅滞、脳性まひなどの運動発達の障害。
     
     知的障害を伴わない、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム・自閉症・アスペルガー障害…自閉症は社会性、コミュニケーション、
     想像力の障害。基準意外だが、知覚過敏も重要な問題。)

     学習障害(LD、読み・書き・計算のいずれかの障害)・注意欠損多動性障害(ADHD、多動、不注意、衝動性)…等をいう。


(2) 乳幼児期の発達障害の判定
     

  • 発達障害の判定では、行動観察、発達検査(遠城寺式発達検査等)、生育暦、日常生活の様子の聴取、日常生活の母子関係行動チェックリスト、自閉傾向チェックリスト等を実施する。 (発達障害の疑いがある場合は医師の診察を勧めます。)
  • 早期発見・早期療育が鉄則だが、乳児期には問題に気づきにくく、1歳半検診まで問題ないと思われている場合もある。
    運動面・言語面の問題に比べると対人面・情緒面の問題を捉えるのは困難な場合が多い。
  • 通常の心理判定は個別的に子供の気持ちに沿ってかかわるので、軽度の発達障害だと対人面や集団適応の問題が見えないことがある。そのような場合、意図的なかかわりで言語理解、状況理解等を見るが集団場面を見る必要がある場合もある。(意図的な遊びをすると、微妙にずれる)
        

(3) 自閉症のearly sign(0〜1歳     
  • 母子関係行動・自閉傾向チェックリストで、視線を合わせない、あやしても反応しない、人見知りしない、喃語が少ない、睡眠リズムの問題、共同注視の問題等の有無を確認する。
  • ホームビデオの普及で光や音に過敏、ロッキングや奇妙な手の動きを示す、能動性の問題点等も指摘されている。


2.発達障害児との3段階の関わり方

(1) 第1段階…安全と安心    
  • 初対面の子供に出会ったとき、何かをさせようとするのではなく、子供が安心感をもてるよう、そばで子供の気持ちに沿った声かけや援助をする。
    それでも不安があるようなら、離れたところで一定の玩具の扱いを繰り返す。
  • 子供は不快感や不安を上手に表現できないので、気持ちを推測してかかわり方と環境への配慮をすることが重要。
  • 子供に向かって、タイミングの良い声かけ、多少オーバーなしぐさをつけるなどをしてコミュニケーションをとると良い。
  • 発達障害児は環境の変化に弱く、それがいくつも重なると予想外のストレスになっていることがある。
  • 発達障害児は新しい経験の受け入れや場面転換での気持ちの切り替えに多くの時間とエネルギーを必要とするので、環境になじむまではシンプルで見通しのつく日課を組むこと、『逃げ道』や『遠回り』を認めることが必要。
  • (一方で、さまざまな経験をすることも必要。このように無尽する見解が並び立つのが養育・療育の現場である。


(2) 第2段階…『この人と遊ぶと楽しい! この人大好き!』  
   
  • まずは子供が好む遊びに付き合い、少しずつ遊びを広げていく。始めは単純な遊びを繰り返し、子供が飽きる前に少しずつ色々な要素を加えていく。(『桃たろうの繰り返し』)
  • 人との遊びが広がる経験は、自分の興味や意図が理解されるだけでなく相手の意図を受け入れる経験でもあり、気持ちの切り替えや建て直しの土台になる。『目に見える世界』の共有は子供が『目に見えない心の世界』に気づく機会も得られる。
  • 楽しみや喜びのような肯定的な感情を人とのかかわりの中で体験することによって育つものがたくさんある。見通しがつく状況の中で、わくわくする期待感を持つ経験をすることは、自分の欲望を制御して適切に行動する力も育てる。   (共感性の土台・学習意識の土台)
  • 発達障害児は、相手の出方に応じて自分の行動を調整する力(自制心)が弱いので、それが育つような経験をすることが必要。それは人とのわくわくするような遊びの中で獲得されるもののよう。
  • 子供の興味や意図が用意には理解できない場合もある。その場合、子供の意図を推測して、当たらずといえども遠からずと言う対応をする。(実例として職員がピアノに合わせて踊ってみた→情動調律)

3.障害の有無や年齢によらず人間に共通する原理

(1) 自分が理解され受け入れられていると言う実感が重要

  • 子供の「その時その場」の気持ちを推測して受け止めて言葉で伝えると、子供は自分が理解され受け入れられているとの実感が得られる。そうすると、子供は相手の話に耳を傾け、相手の働きかけや提案を受け入れるようになる。
  • どのようなかかわり方をすると自分が理解され受け入れられているという実感を持つかは、その子の特徴やおかれた状況とも関連する。

(2) 自分の手に余る事態に遭遇した時に陥る状態に共通する原理
  • 障害の有無や年齢によらず、自分の手に余る事態に遭遇して圧倒されると、時間に持ち堪えられない。(葛藤を抱えられずに今すぐ何とかしようとする)、思考や判断ができずに気分や調子に支配される、判断より先に行動する等の状態に陥る。
4.PDD、ADHD、被虐待児のそれぞれの特徴と対応の仕方

(1) 発達障害と愛着障害に共通する特徴
  • 発達障害児か被虐待児か区別が困難なケースも時々ある。専門家の中にも両者の区別ができるという人とできないという人がいる。最近のように発達障害の診断が多くつくようになると、確かに両者の区別はこんなんになったと言わざるを獲ない。
  • 単純に考えれば、おおよそ以下の(2)〜(4)の違いがあるが、実際には複合する場合が多くある。ウェイトのおき方が違うだけで、かかわり方の基本は同じ。発達障害児とのかかわり方は通常の子供のかかわりの基本。

(2) 「理解できずに行動する」広汎性発達障害の子
  • 広汎性発達障害の子は、周囲の状況や他人の気持ちへの関心を向けたり理解することが困難で、自分の興味のままに行動する。そういう特徴を個性として受け止めることが必要。
  • 自己中心的とも思える言動が目に付き、ついお説教したくなるが、逆効果。ルールを視覚的に何度でも確認できるような工夫や、後述の『実感』への働きかけが奏功する場合がある。(始めから髪にルールを書いて貼っておくのも良い。)
(3) 「わかっていてもやめられない」ADHDの子
  • ADHDの場合、周囲の状況はある程度理解しているが、刺激にすぐ反応してしまい大事なことがお留守になってしまう。そのような子は叱責を受けることが多いと情緒的な問題を抱えて攻撃的になっていく。
(4) 「不安に衝き動かされる」被虐待児
  • 愛着のタイプで特に問題となるのは、接近と回避のように本来両立しない行動をとるタイプ。愛着障害ゆえの不安の強さから甘えや攻撃的行動がある。この場合、環境や養育者が安定していることを理解して安心できるようにすることが最重要。
  • 発達障害と愛着障害は重なる部分が多い。

5.発達障害児とのかかわり方の手がかり

(1)予防的な対応としての『遊び』=『肯定的な感情を伴う関わり』の重要性
  • 発達障害児、特に虐待が重複する子は、いわゆる問題行動があるので叱責や制止が多くなり、そうなってからでは受け止めようとしても心のそこから出来ない気持ちを養育者が抱きがちになる。幼稚園・学校でも集団の秩序維持のための叱責が多くなる。
    ところが、そういう子は大人のそんな心に敏感で、本当に自分を受け入れるのか不安で確かめる行動に出るが、
    それがたいてい困った行動なのでますます受け入れ難いとの悪循環が生じる。
  • そうなる前に子供と一緒に楽しい経験をすることが大切。長い時間でなくても、毎日決まった時間に、子供と遊ぶ時間を設けるのが効果的。大工仕事や料理も良い。

(2)見ることは学ぶこと
  • 子供は「見る」ことで多くの刺激を受けている。「見なさい!」…と促すのではなく、見たくなるようにする。
  • 「見ること」は日常生活のさまざまな場面名で応用が出来る。「見ること」を上手に使うと身辺面の自律にもつながる。
  • 広汎性発達障害の人にとって『見える世界』だけでは想像することの困難な『見えない世界』、特に『暗黙の了解』は依然として高いハードルで、当たり前だと思えることが分かっていないことがあることを理解する必要がある。

(3)言葉の発達を促す関わり
  • 言葉は「必要があって使う」という側面もあるが、むしろ本質は「必要がないのに話したい」という点にある。そこに言葉を育てるポイントがある。
  • 子供が自由自在に話せるとしたら、こう言いたいだろうということを、タイミングよく代弁する。動作に伴う声かけも効果的。
  • 子供に言葉を合わせたり子供の言葉を訂正したりするのは逆効果。(自分の言葉が否定された気持ちになる。)子供の表現が不十分でも「社会ではそれでは通用しない」と言うのではなく、「他の人には分からなくても、私には良く分かるよ」という姿勢が大切。
  • 子供に言っても分からないと思って予定を伝えないことがあるが、音なの想像以上に子供は人の話を理解できる。日常生活での言語理解力は、知能検査で測る言語理解力と少し違う。一方で案外理解していない場合もある。
  • 子供の気持ちを推測して、それに添って対応することが必要だが、一方で、先回りしないことも大切。
  • 「視覚的手がかりを示すことが大切」とは良く言われることだが、「見ること」は言葉の理解力をかなり補う。補うだけにとどまらない重要性がある。その原初的ともいえる様態が幼児期に見られる。…『見ることは学ぶこと』

6.いわゆる『問題行動』について

(1)自傷行為・他害行為
  • 自傷行為は自分の意図がはっきりしてくる乳児期後半以降出現する。やりたいことに集中できるよう保障すること、日課の見通し、場面転換が少ないこと、子供の意図や気持ちの受け止め、人と遊ぶ楽しさを十分経験して人に頼れることが必要。
  • 怒りや悲しみなどのネガティブな感情を適切に処理されずに溜め込んでいると、暴言・暴力などとなってあらわれることがある。そのようなケースでは思春期になっても本当の内省ができない状態でいる場合がある。
  • 言語理解力が不十分な場合、説明によって危険を知的に理解することは困難だが、感覚的に理解することは可能。そのためにも、日常生活での関わりにめりはりが必要。
  • そのような行動や症状が出たら、環境の変化やその他の負担になることがないか、日常生活を振り返ってみようというサインと捕らえてみる。

(2)『実感』について
  • 『実感』は発達障がい理解のキーワードの1つと考えられる。『実感』には、「実感がないと考えられない」という側面と、「実感に浸ってしまう」という側面とがある。
  • 能力のバラつき方が明確な傾向を示さず、微妙な条件の影響を受けているようなケースでは、日常生活においても傾向がわかりにくく、「わかっているのに、やる気がない」などと誤解されやすいことがうかがえる。

(3)落ち着きのなさやパニックと気持ちの切り替え・立て直し
  • 遊びの広がりと発展は発達を促進する。たとえば、気持ちの切り替えや立て直し、相手や状況に応じた行動調整能力等の対人面の成長だけでなく、注意力・集中力も改善される。
  • 気持ちの切り替えは、原則的に@『気持ちを受け止める』⇒A『状況や見通しを伝える』⇒B『気持ちの切り替えのきっかけを掴む』という段階を踏まえる。子供が将来ストレス場面に置いて自分で気持ちを切り替えられることが目標。
  • 楽しみや喜びだけでなく、思うようにならない経験に伴う悲しみや怒りも大切。これを大切に扱うことが、子供の対人的・情緒的・言語的発達を促す。そのような経験を適切な時期に適切にすることが大切。
  • 発達障害児は、特に虐待体験があればパニックを起しやすくなるが、虐待体験がなくても、失敗体験などの記憶がちょっとした刺激で甦ってパニックを起すことがある。
  • 重篤な虐待ケースは、安心できる環境でも精神的に『戦闘状態』なので、些細な刺激でフラッシュバックが起きて唐突にパニックになるが、周囲には原因が分からずにいることがある。
  • そのようなケースでは、安定状態とパニック状態とが断片的で人格的に統合されないため、成長が阻害される。上述のその時々の対応では不十分で、ふだんから人との関係の中での達成感を友多雨肯定的経験の記憶が蓄積されると多少の刺激でパニックにならず、また人と話すことで立ち直ることもでてくる。

(4)集団不適応について
  • 集団に入れるのに適した時期がある。集団に入れることを急ぎすぎると、かえって子供の成長にマイナスになる。またそこが配慮のある環境であるかどうかも重要。
  • 集団を誘う場合は、『根気良く、しかし諦めも良く』という方針でいく。子供は設定場面に参加せずに見ているだけでも刺激を受けていることを忘れないでいる必要がある。
  • 幼稚園や学校で細かいことで注意されていると、子供は自分が否定されたように感じて反発する。頻繁に注意されていると、旧友との関係にも影響する。集団不適応が長く続くと、すっかり自己評価が下がってしまう。
  • クラスの中で役割を持たせることは有効。得意なことに関する当番などをやってもらうことが多いようだが、苦手なことに関する役割を持たせるやり方もある。

(5)学習障害
  • 心理検査で、ふだんの生活の中では見えにくい子供の特徴がわかり、どのような援助をすれば良いかの手がかりを得られる。