T、教育の意義と目的

 

T-1 人間の教育の必要性

 

(1)       人間とは何か

☆カント『教育学』

人間は教育されねばならない唯一の非造物である

人間は他の動物が持つ本当は違い、理性を持って生まれてくる。しかしその理性は『未開の状態』であるため、それを開く教育が必要となってくる。

 

☆人間をめぐる定義

ホモ・サピエンス=知性人(リンネ)

他の動物に比して、人間の本質は理性的な思考を行うことにあるとする人間観。

ホモ・ファーベル(faber=ingenious)=工作人(ベルグリン)

「道具の使用」によって人間は文化を獲得し、労働を行い、今の文明を築いたという考え。

ホモ・ルーデンス(ludens;ラテン語で遊ぶ(ludo)の形容詞形)=遊戯人(ホイジンガ)

食べるため、生きるため以外に遊ぶという行為を行う生物は人間だけであり、それが人間の文化の源泉である。

ホモ・デメンス(ローレンツ)

人間は本能とのつながりが断ち切られた存在である、そのままでは錯乱してしまうので,精神の安定を確保するため,各種の文化を発達させたとする考え。

象徴的動物(カッシーラー)

人間の感覚と行動の間には言語をはじめとする象徴系が介在し,人間は現実世界を理想に近い状態へと改変して行く存在であるとする考え。

社会的動物(アリストテレス)

人間は家族を基本単位としながらも、他者と共同して社会を作り、集団として行動する習性を備えていたからである。また、共同行動のための言語を発達させ、人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果、すなわち文化を次世代に受け継がせることができる唯一の種である。

考える葦

パスカル『パンセ』

人間は自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である

 

☆ルソー『エミール』

人間の誕生時は『弱いもの』『無一物』『具純なもの』だが、それによって援助=保護、養育、教育が不可欠なり、人類の進歩や発展を導いた。→『子どもの発見』

 

☆アドルフ・ポルトマン

就巣性=孵化後のある期間、親に養われて巣内に留まる性質(留巣性)

離巣性=雛(ひな)が孵化後比較的早く巣離れする性質

生理的早産=誕生後基本的行動が可能になるまでおよそ1を要する(1年早産)

 

(2)       野生児の例

野生児=ヒトの子でありながら幼少期に長期間、他の動物に育てられるなど人間の社会環境から遮断された状態で生きてきたもの(世界に50例ほど)

          インドの2人の少女(カマラとアマラ)

          フランスのアヴェロンの森で発見された少年(アヴェロン野生児)

          人間の可能性の幅の広さ

          人間が人間となるためには人間の敢行で育ち、人間としての教育・学習が必要

→臨界期=発達過程において、その時期を過ぎるとある行動の学習が成立しなくなる限界の時期

 

(3)       文化の伝達と創造

人間は、生まれ時代、社会の文化を身につけることによって社会に適応しうる(社会化)とともに、社会もまた文化を伝達することでその存続が可能となる。しかしそれは遺伝的な伝達ではなく、後天的に教育を介して行われる。また単なる伝達でもなく、創造と変革がなされていく=ホモ・ルーデンス。

 

T-2 無意図的教育と意図的教育

無意図的教育

自然環境や社会環境の人間に及ぼす自然的な影響

(とりたてて人間を教育しようとする意図や計画がなくても、日常、社会生活そのものが自分自身をつくる糧となる)

意図的教育

一般的に教育と言われるもの。学校教育が最も意図性、組織性、系統性が高いが、家庭教育や社会教育も意図的教育である。

家庭教育=家庭関係を通して言葉や基本的習慣、役割学習など人格の基礎などを養う

学校教育=読・書・算の基礎、人類の文化遺産の体系的習得、集団活動を通しての社会性・道徳性の獲得

社会教育=学校以外の社会の様々な場や機会を利用して展開される学習活動

          上の全てを統合的に捉え、意図的教育として体系的に配置すべきと考えるのが生涯学習である。

 

U-3 教育の目的

☆日本古来の教育目的の変遷

三船(さんせん)の才=漢詩・和歌・管弦の三つの才能を兼ね備えていること(古代貴族)

弓馬の道=武術の鍛錬(中世武士)

文武両道=学問と武芸の両方の兼備(近世武士)

算用帳合=算術(近世町人)

1890年 教育勅語公布

『父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ・・・』(徳目=仁(思いやり)・義・忠・孝)

『一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ・・・』(滅私奉公=私心を捨てて公のために尽くすこと)

1947年 教育基本法公布

(前文) 

われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。

 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を普及徹底しなければならない。

 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

(1)

教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。

☆目標を人格の完成に置き、個人の価値を尊重し、心身の健康が重視される=ひとりひとりを重視

@教育の目的A教育の方針B教育の機会均等C義務教育D男女共学E学校教育F社会教育G政治教育H宗教教育I教育行政J補則

教育基本法→教育全体の目的、理念の明示

学校教育法→各学校段階ごとの目的、目標の明示。

学習指導要領→教科内容、各教科ごとの目的と内容の基準

これらに則り、地域特性、児童生徒の特質、父母や教師の教育観を考慮し学校独自の教育目標を定める。

※建学の精神は、私立校学校の教育目標の基礎。