U、学習指導

 

U-1 教授と学習

          学校教育の2つの方法

@          学習指導・・・教材を媒体する教科指導

A          生活指導・・・教師と生徒の直接的なふれあい

 

          学習指導における人間形成的側面

          訓育

教育活動(学習活動や生徒指導など)による児童生徒の人格の育成

教授→教科教育の教育的側面

訓育→道徳や教科外の教育的側面

※但し、教科の学習の中にも人格形成的側面はある。

          陶冶

広義には人間の内面的な精神生活の形成、狭義には文化や知識・技能の伝達・受容を意味する

1、                           実質陶冶・・・具体的、個別的な知識や技能それ自体の習得、教科の内容そのものが意味をなす

2、                           形式陶冶・・・思考、感情、意志などの諸能力の形成を重視し、生活一般の中での思考力や態度に影響を及ぼす

ex.かけ算を通じて計算の知識や技能を習得するが、同時に生活場面でそれが有効なときを判断し、思考する。

          学習の転移

獲得された知識・技能はや精神活動は、他の物事の学習を助ける

 

U-2 学習指導論の系譜

ソクラテスの産婆術(自分は何も知らないことを自認するソクラテスは、自分は話相手が自分の力で真理に到達することを助ける産婆のようなものだと述べた)→中世教会の暗記→ルネサンス・宗教改革→児童生徒の人間性の開発

(1)コメニウスの教育法

近代教教育の父と呼ばれるコメニウスは、その主著『大教授学』において教育論を展開。

☆直感的教授法・・・認識は常に直感から始まるため、あらゆるものをできるだけ多くの感覚に訴え指導せよ

☆世界図絵・・・・・世界初の絵入り教科書

(2)ルソーの教育法

子どもは小さな大人ではなく、大人とは違った固有の存在である。→子どもの発見者

児童の心性に応じ、知識記憶の強要ではなく、遊びや表現活動を重視し、体験的な方法をとる

(3)ペスタロッチの教育法

          メトーデ

直観、陶冶、心理化、これらのキーワードを統合したもの。人間の内面と外界の統合と分離を繰り返させながら、子どもを成長させるための教授手段

          開発教授・・・頭(知的能力)、手(技術力)、心(道徳力)3つの能力の調和的な発達の方法。自然の順序に従って諸能力を開発することを目的とする教 授法

教育とは外部から与えるものではなく、児童生徒の内部に備わっている諸能力を内部から発展させるものであるというルソーに共鳴

(4)ヘルバルトの教育法

『管理』『教授』『訓練』の3本柱

          教育的教授・・・教育の目的は品性の陶冶にあり、それを知識や技能の学習をとおして行おうとする

教授のない教育などというものの存在を認めないし、また逆に、教育しないいかなる教授も認めない(一般教育学)

          5段階教授法

ヘルバルトの4段階教授法『明瞭―連合―系統―方法』を、ツィラー『分析―統合―連合―系統―方法』を経て、ラインが『予備―提示―比較―総括―応用』としたもの

(5)デューイの教育法

児童と児童を取り巻く環境との相互作用を重視する。教材に興味をもち、体験的な学習をとおして、相互作用を繰り返すことにより望ましい学習が行われる。

(6)その他の学習指導法

@          プエブロ・プラン

1888年、プエブロ(コロラド州)の教育長サーチを中心に一斉授業(学習)と自学学習との結合をはかり、個別学習を説いた。『理想の学校』が公にされている。

A          動的個別学習

1913年、バークを中心にサンフランシスコで行なわれ、教科ごとに、進度・能力に応じて学習グループを構成し、課題をもらう。

B          プロジェクト・メソッド

キルパトリックにより提唱。ウィネトカ・プランやドルトン・プランを踏まえ、デューイの経験主義教育を具体化。『目的―立案―遂行―評価』の4段階を経る学習法。学習者は生活の中から課題を見つけ、自主的これを解決。

          ウィネトカ・プラン・・・1919年米国シカゴ市郊外にある小都市ウィネトカの公立小学校で、ウォッシュバーンが創始した。共通必修教科と集団    的・創造的活動からなる。前者では客観テストによる評価を行い、進級は個別化された。

          ドルトン・プラン・・・1908年、アメリカのヘレン・パーカスト女史が提案した教育法。1人ひとりの能力、要求に応じて学習課題と場所を選び、自主的に学習を進めることのできる『ドルトン実験室案(Dalton Laboratory Plan)』を提唱しました。

C          モリソン・プラン

ヘルバルト派のモリソンの理論。科学型・鑑賞型・実技型・反復練習型に分け、その中で学習単元を設けて教育を進めるという理論。科学型に関しては、新たな5段階教授法『探求―提示―類化―組織―発表(または反唱)』を提示。

D          有意味受容学習

オーズベルが提唱。

有意味学習・・・機械的学習に対する語である。教材は機械的に学習されるのではなく、有意味に組織化されて、認知構造を変化させるように、1つのまとまった組織として学習される

受容学習・・・発見学習に対する語である。教材は、何かを発見させるための素材としてではなく、学習されるべき最終の形として提示される。

学習すべき教材よりも抽象性・一般性・包括生の高い情報である先行オーガナイザーを手がかりに、自分の認知構造の中に新たな概念を形成し、学習を容易にする。具体的操作期以降に有効とされ、言語的教科に有効と言われる。

E          範例学習

1951年の西ドイツ『チュービンゲン決議』により提唱。大量に存在する価値の中から基礎的・本質的な事例のみを精選し、それを深く学ばせる。教師、教材との「出会い」も重視する。

F          ドクロリー法

1907年ベルギーの首都ブリュッセル郊外のイグゼルに設立された『生活による、生活のための学校』の教育方法。子どもの欲求と興味を中心とし、生活を理解し参加する生活総合カリキュラムと、『観察・連合・発表』の3段階の学習活動とでなる。

 

U-3 日本の学習指導論の変遷

(1)明治期における学習指導

1972年                  学制発布以来、中世の寺院での教育を経た寺子屋(手書き、個別指導、友教えを特徴とした)での学習が転換を迫られる。個別指導→一斉教授、友教え→教師の号令による指導。

1879年 教育令発布(学制廃止)。学制は西欧諸国影響のものであったが、日本の土壌に会わず、アメリカ式に。

1881年                 小学校教員心得が出される。管理体制の強化→注入主義が中心に。

伊沢修二や高嶺秀夫がペスタロッチ理論を日本に導入

明治20年代 ヘルバルト派の教授法導入(ラインの5段階教授法)

明治30年代 教育が注入主義、画一化、定式化をはじめる

(2)大正期における学習指導

          大正自由主義教育

教育勅語が存在するため、教育の目的をそれに、方法を児童中心主義に、という理想と国家権力の狭間で板挟み。

          木下竹次の合科学習

(3)戦後の問題解決学習

終戦直後 問題解決学習=デューイの『Learning by doing』@問題の把握A仮説設定Bその検証の3段階

→系統的な知識を軽視しているとの『はいまわる経験主義』という名の批判,基礎学力の低下との批判

60年代  『系統・構造』重視の学習指導=ブルーナーの『発見学習』,教育の現代化運動・学問中心カリキュラム

→教科内容が高度になり,児童生徒の学業不振が問題に

70年代  『人間性の育成』重視の学習指導=『落ちこぼれ』『積み残し』現象への反省から『学校の人間化』を目指す

→『ゆとりと充実』がキャッチフレーズに、『分かる授業』という言葉も

80年代以降 『新しい学力観』に立つ学習指導=小学校『生活科』、中学校『選択教科』の導入

→個性重視の原則が叫ばれる

21世紀に向けて 98(高校は99)『生きる力』を育むための学習指導要領

→総合的な学習の時間、完全週休5日制、『個に応じた指導の充実』『コンピューター等の情報手段の活用』

 

U-4 学習形態

          一斉学習・・・学級の全員に同じ内容を同じ時間の中で同じように指導する

長所→学習の方向づけを図る導入段階や学習をまとめ、新たな課題を見つける終末段階に有効

短所→教師指導の注入的な学習に陥りやすい=児童が受け身に、知識や技能の習得だけに留まる

          グループ(小集団)学習・・・学級内をいくつかのグループに分けて進める学習形態

@          同質グループ 能力や興味・関心などが同じグループ

A          異質グループ 能力などが異なる児童生徒が構成しているグループ

長所→考えを率直に出し合い深めていくことが多くなる学習形態、1人ひとりの役割が明確になり、主体的な参加意欲の向上

短所→人間関係の問題、目標が不明確な場合の学習成立の疎外

          個別学習・・・1人ひとりの能力、興味・関心に応じた方法をとる

スキナーのプログラム学習やオープンスクールは、この形態をとる。一斉教授の中の個別化と、全てを個別化する2つの形態をとる。

上述のドルトン・プランとウィネトカ・プランも、この1つの例となる

          その他の学習形態

@          ティーム・ティーチング

1958年にケッペルにより提唱。子どもと教師を幾つかのグループに分けて学習。各々の教師の専門知識を生かせる上に、子どもに対する細やかな対応が可能に。平成5年度より、そのための加配教員が認められる。

A          助教法

18世紀末から19世紀初頭にかけ、ベルランカスターにより提唱。多数の子どもを教えるために、学力の高い子どもをモニター(助教)、つまり教師の補助者として他の生徒の指導にあたらせる方法。モニトリアル・システムとも呼ばれる。

B          バズ・セッション

1948年にフィリップスにより提唱。子どもをグループに分け班別討議をさせる方法で、討議中ハチがブンブンいうような様子になるためこの名称がついた。別名6・6討議(6人づつ6分行う)とも言う。

C          ゲーリー・システム

ワートによって提唱。中高学年の児童を2群に分け、一方が普通教室 で学習する間にもう一方が運動場や特別教室で特別教科を学習するという方法。教室利用の効率化が目的。別名、プラトゥーン・システム。

D          イエナ・プラン

1925年にペーターゼンによって提唱。学年別学級を廃し、低学年・中学年・高学年の集団各々に指導する側と指導される側の両方の立場を経験させる。学校を共同体としてとらえ、父母と教師とが自主的に経営した。

 

U-5 新しい学習指導

          平成8年 第15期中央教育審議会が『21世紀を展望した我が国の教育の在り方についてー子供に『生きる力』と『ゆとり』をー』と題した『第1次答申』を発表した。

          生きる力

          他人と協調しつつ自律的に社会生活を送っていくために必要となる人間の実践的な力

          紙の上の知識だけでなく、生きていくための『知恵』とも言うべきもの

          過去の知識を記憶するのではなく、初見の場面でも、課題を発見し、思考し、解決していく資質や能力

          あふれる情報の中から、自分に本当に必要な情報を選択し、主体的に自らの考えを築き上げていく力

          理性的な判断力、合理的な精神だけでなく、美しいものや自然に感動するといった柔らかな感性

          良い行いに感銘し、間違った行いを憎むと言った正義感や公正さを重んじる心

          生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観

          他人を思いやる心や優しさ、相手の立場になって考えたり、共感することのできる温かい心、ボランティアなどの社会貢献の精神

          内在する自立心、自己抑制力、自己責任や自助の精神、さらには、他者との共生、異質なものへの寛容、社会との調和

          1998年の教育課程審議会答申を受けて、1998,99年に学習指導要領の改正が行われた。

          特色ある教育

          豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること

幼稚園・低学年 しつけ。善悪の判断指導の徹底、ボランティアの重視。

小学校     人物・文化遺産中心の歴史学習の徹底

中学校     歴史の大きな流れの把握、国土や歴史への理解と愛情。国際協調の精神と国際社会に生きる日本人としての資質。

中学・高校   外国語の必修化と話す・聞く教育の重視

          自ら学び、自ら考える力を育成すること

体験的な学習・問題解決学習の充実化、知的好奇心・探求心・論理的な思考力・表現力の育成、情報に関する学習

          ゆとりある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること

従業時間数の削減、授業内容の厳選と繰り返し学習による基礎の徹底、中学に置ける選択幅の拡大

          各学校が創意工夫を生かした特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること

総合的学数の時間の創設、授業の単位当りの時間や授業時数の弾力化、教科の内容に応じ、目標や内容を複数学年まとめるなど基準の大綱化

          発見学習

ブルーナーが『教育の過程』の中で提唱した学習指導法。科学上の発見と同様の思考過程を子どもたちに辿らせることにより、知識を習得させる方法。

『どの教科でも知的性格をそのままに保って、発達のどの段階の子どもにも効果的に教えられる』

『発見というのは、以前には気づかなかった諸関係の規則正しさと、諸観念の類似性を発見することであり、それによって子どもは自分の能力に自信を持つ』

          完全習得学習

ブルームの提唱した学習理論。学級の95%以上の児童生徒に学習内容を習得させようとする考え方に立ち、そのための学習方法・学習評価を工夫しようとした。

→教育目標を明確に設定し、その下位目標をもつ学習単元が設けられる。学習終了後、形成評価が行われ、目標に達成していない場合は、補助教材などでさらに学習が行われ、完全に学習を習得させる手が打たれる。

@          診断的評価

単元始め、学期始め等に、生徒の基礎基本の理解の程度をはかるために活用する。

A          形成的評価

ある程度の授業期間における生徒の理解度を調べ、生徒へのフィードバックをするとともに、 教師の指導法へのフィードバックとするために活用する。これは目標到達度評価である。この場合用いるのは絶対評価が適切である。

B          総括的評価

授業の単元ごと、学期ごとに行うもので、主に成績作成のために活用する。この場合用いるのは教師作成テスト、標準テストで、相対評価が適切である。

          適正処理交互利用(ATI)

個人差に対応しようとする学習理論である。『Aptitude Treatment Interaction』の訳語。全ての児童生徒に合う学習指導を求めず、1人ひとりの適正に応じてその処理(方法)を変えるのが良いとするクロンバックの理論に基づいている。学習目標は同一で、そこへのアプローチを此処に応じて変える。適正とは、その学習者の興味や意欲、能力差、内向的な性格か外向的な性格かなどを示す。

          CAI(Computer-Assisted Instruction)

コンピューターを利用して学習支援する教育方法。各自のペースに応じて、ステップアップしながら学習できることや繰り返し学習が可能なこと、またシミュレーションなどを用いて問題解決学習も可能。また生徒児童の関心も引きやすい。