W、人格と適応

 

W-1 人格とは何か

          ラテン語の『ペルソナ』(仮面)を起源に持つパーソナリティーの訳語

          仮面を起源にしているところに『可変性』と他者からの『可視性』が表われる

          道徳的・価値的側面は、心理学用語しては含まれない

          正確は、ギリシャ語の『刻み込まれたもの』を起源に持つキャラクターの訳語である。よって人格との違いは、個人差異を生じさせる基礎的で固定的な面、特に感情や意志の側面を指すことになる(但し明確な区別がなされているとは言いにくい)

 

W-2 人格の諸理論

(1)       類型論

人間の多様な性格を少数の典型的な性格像()に当てはめることで理解を平易にしようとする立場

@          クレッチマーの理論

          分裂気質(細身型)、躁鬱気質(肥満型)、粘着気質(闘士型)3類型

          学問的には価値はなくなっている

          分裂気質→統合失調症、抑鬱気質→抑鬱病、粘着気質→てんかん(けいれんや意識障害をもたす病)

A          シェルドンの理論

          消化器系の発達した肥満型の内胚葉型、骨や筋肉の発達の良い中胚葉型、神経系が発達した遅長い体系の外胚葉型の3類型

          それぞれに対応する人格として、前から内臓緊張型、身体緊張型、頭脳緊張型を考えた

          クレッチマーに通じるところが多い

B          ユングの理論

          心的エネルギー(リビドー)が個人の外に向かいやすいか、内に向かいやすいかによって、外向型と内向型に分類

          外向型は、環境の影響を受けやすく、情緒の表出や行動化が自由で社交的である

          内向型は、自己に関心が集中して内省的となり、行動も控えめである

          これらに意識の4つの基本機能=思考・感情・感覚・直感を加え、8つの人格類型を考えた

C          シェプランガーの価値観の類型

          デュルタイが感性型。英雄型・瞑想型の3つの性格類型を作る

          その弟子であるシュプランガーは理論型、経済型、審美型、宗教型、権力型、社会型の6つの類型を築く

D          その他の理論

          シュウナイダーの10種類の精神病質類型(高揚型、抑鬱型、気分不安定型、爆発型、自己顕示型、自己欠乏型、狂信型、意志欠如型、情性欠如型、無力型)

→類型型は、人格を全体としてまとまりのあるものと理解するため、中間型や混合型がとらえられないという限界がある。人格形成や人格変化という動的視点、人格に影響を及ぼす社会的要因が考慮されないという問題もある

(2)       特性論

人格を構成する基本的要素を分析的手法で明らかにして、それぞれの要素ごとの個人差を組み合わせて人格全体を理解しようとするもの。類型論に比べ、比較的多くの基本的要素(特性)を持つ

@          オルポートの理論

          人格特性ということばを初めて用いる

          人格は特性の総和である

          同一文化に内での共通特性と個人特性に分けた

          共通特性を、人に向かって行動しているときに現れる表出的特性と環境に適応しようとするときに現れる態度的特性に分けた

          心誌(サイコ・グラム)を作成

A          キャッテルの理論

          因子分析法を用いて特性を抽出

          35の表面特性、12の根源特性を見出した

B          ギルフォードの理論

          知能の構造モデルの提唱者

          YG性格検査法の基礎となるモデルを作成

          社会的外交(S)、思考的外交(T)、抑鬱性(D)、回帰性傾向(C)、のんきさ(R)5つの特性を見出す

          一般的活動性(G)、支配性(A)、男子性対女子性(M)、劣等生(I)、神経質(N)5つの尺度と社会適応性のための尺度が公案された

C          アイゼンクの理論

          類型論と特性論を統合するものとして評価されている

          特性よりも基本的な次元として類型をおき、その下に特性、特性の下位に習慣的反応、更にその下に個別的反応の水準があるという段層構造を考えた

D          ビッグ・ファイブ論

          80年代に入って、特性の内容と数に再び注目が集まる

          外向性因子、情緒不安定因子、誠実性因子、調和性因子、開放性因子の5つの基本的特性次元

(3)       力動論(フロイトの理論)

意識や行動として表面に現れた現象が生じたメカニズムについて、無意識過程を含めて、どの力同士が作用し合って生まれるものかを考察していく立場

@          エス、自我(エゴ)、超自我(スパー・エゴ)

          エスとは無意識的側面で、人間のあらゆる活動の源であるリビドーと呼ばれる性的エネルギーの貯蔵庫であり、判断過程を持たない本能衝動の即時的短縮的解放を目指した快感原則に従って機能する。またここには幼児期における観念などが抑圧されている領域でもあり、これは後に述べる神経症発生のメカニズムにも関係してくる

          自我は人格の中の意識的で知的な部分で、外的事実と精神内界を認知し、現実的合理性に適切な反応をはかろうとする現実原則に従って機能する。自我防衛機制(適応機制)もつかさどる

          超自我は意識から無意識にまたがる存在であり、幼児期から両親や社会の働きかけによって形成された道徳性や良心、価値観である理想原則に従って完全性を望み、エスの衝動を抑制し、自我機能を道徳的な方向へと導こうとする

A          夢分析

現実原則と理想原則が働き続ける自我と超自我によって、夢は常に検閲を受けている。夢分析は、変装の結果である夢を頼りにして変装のからくりを解読し、純枠な願望をつきとめていくことである

B          自己理論(ロジャースの理論)

          来談者中心療法(非指示的カウンセリング)の創設者

          人が自分自身についてもつ概念を自己概念という

          自己概念と経験が一致しているほど健康的な人格状態で、一致していない領域が大きいほど不健康な人格状態である

          カウンセリングによって自己概念を変容させ、経験と一致させることを可能とする。これは人の感覚や経験の世界を重視していく立場であり、現象学的自己理論という

C          場の理論(レヴィンの理論)

          ゲシュタルト心理学の立場(全体は部分の寄せ集めではなく、意味のある存在)

          人格は環境()から離れて存在するものではなく、常に環境との関係において理解される

 

W-3 人格の測定

(1)       質問紙法

          もっとも一般的な検査法

          実施が容易で、短時間に多くの資料が集めることができる

          結果表示が明瞭で客観的である

          測定概念の妥当性や検査結果の信憑性が高い

          自己判断に基づく検査であるため、無意識的な歪曲が生じる可能性と本人自覚された特性しか測定できないという短所

@          YG性格検査(谷田部ギルフォード性格検査)

          ギルフォードの研究を基礎に谷田部達朗が日本人用に作成

          社会的(外的)適応に関する12の特性を検査

          それぞれ10項目、計120項目を『はい』『いいえ』『どちらでもない』(3件法)で答える

          A(平均型)、B型(不安定型)C(安定消極型)D(安定積極型)E(不安消極型)5つの類型に分類

A          MMPI(ミネソタ多面人格目録)

          ミネソタ大学のハーザウェイとマッキンレイによって、精神病理学的不適応を識別することを目的として作られた

          質問は550項目で作成

          4つの妥当性尺度と10の臨床尺度で示される

          3件法で回答

          具体的で理解しやすい質問が並ぶ

          妥当性尺度によって、無意識的に回答を歪めたり、不注意な回答をした場合にチェックできるようになっている

          臨床尺度は、心気症、躁鬱症、ヒステリー症、精神病質的偏り、性度、偏執性、精神衰弱性、精神分裂症、軽躁症、社会的内向性の

B          MPI(モーズレイ性格検査)

          アイゼンクの研究の基本的人格特性である内向性―外向性と神経症的傾向の2つを測定することを目的として検査

          80項目

C          EPPS

          エドワーズが作成

          達成、追従、秩序、顕示、自律、親和、他者認知、救護、支配、内罰、擁護、変化、持久、異性愛、攻撃の15の欲求特性を測定する225の質問項目

(2)       作業検査法

          人格の影響が現れやすい一定の作業(精神作業)をさせて、その作業過程と作業量、正確さなどから人格をとらえようとする検査の総称。内田クレベリン精神作業検査がそれにあたる

(3)       投影法

          直接的に観察の困難な人のこころの特徴が、外の観察可能な反応の中に反映されていると仮定する

          実施に習熟が要求され、解釈に主観が混入されやすいなどの問題点をもつ

@          ロールシャッハテスト

シミを見て、なに見えるか判断

A          SCT(文章完成検査)20答法

問題に対して20通りの答を思いついた順に回答

B          TAT(主題統覚検査)

18枚の絵画をもとに空想の物語を述べさせる

C          PFスタディ

24の欲求不満場面を表わした線画を用いて、不満を漏らす人に対する返答を回答する

D          バウムテスト

描画法の代表で、バウム=木を書かせるテスト

E          ソンディテスト

18枚の顔写真6組を提示し、もっとも好きな顔と嫌いな顔を選ばせる

F          HTPテスト

家・人・木を描かせる

(4)       行動観察法、面接法

          行動観察法は人を比較邸自由度の高い条件下において、定められた観点で行動を記述し、その資料に基づいて人格を理解することを目指す

          面接法は他の資料では得られないような豊富な情報を、面接者の意図に応じて収集するのに適している

(5)       検査結果の利用

          複数の検査を組み合わせて総合的な診断を行うことをテスト・バッテリーという

          守秘義務の必要性

          フィードバックに関しても注意が必要

 

W-4 欲求

(1)       欲求理論

欲求=生活体の内部で生理的・心理的に必要なものが不足または欠乏しているとき、それを補うための行動を起こそうとする緊張状態

@          本能と欲求

生得的(1次的・生理的・基本的)欲求=生命維持や種の保存に関係した生理的な基礎を持つもの=本能

生理的均衡維持(ホメオスタシス)以外に、外部の刺激によって喚起される活動維持に必要な刺激を求める欲求=内発的動機も備わっている

※内発的動機=感性動機・好奇動機・操作動機・接触動機など

社会的(2次的・後天的・派生的)欲求=生命維持には直接関係しない、経験を通じて形成され主に社会の中で自分を位置づけようとするもの

A          マズローの欲求階層説

人間の欲求は階層的な秩序を持っていて優先権をもった欲求を満たすと次の階層の欲求に向かう

生理的欲求→安全欲求→所属・愛情欲求→承認・自尊欲求→自己実現欲求

B          マレーの心理発生的欲求

人格を理解することは、その人がどのような欲求をもっているかを知ることである

(2)       欲求と行動

@          欲求と誘因

誘因=欲求が向かう外的要因

A          欲求不満と欲求不満耐性

欲求不満(フラストレーション)=欲求が生じていながら満たされないでいる状態

→発達の初期の段階で適度な欲求不満を経験し、これに馴れ、対処法を学習することによって耐性が形成される

B          欲求不満に基づく反応

@、欲求不満―攻撃仮説

欲求が阻止されると必ず自他に向けての攻撃行動または攻撃行動への潜勢力が引き起こされる

A、欲求不満―退行仮説

欲求の阻止が発達的に以前の段階でとられた行動様式を引き起こす

B、欲求不満―固着仮説

不適切なある行動パターンを異常に維持させる

C          葛藤の基本形

葛藤(コンフリクト)=複数の欲求が互いに競い合い、対立して、一方の欲求を満たすと片方が満たされない状態

@、接近―接近型葛藤

2つ以上の目標がともに正の誘意性をもち、同時にかなえることができない場合である

A、回避―回避型葛藤

2つ以上の目標がともに負の誘意性をもち、どちらも避けたいがそれができないという場合である

B、接近―回避型葛藤

ある欲求の対象が同時に正と負の誘意性をもつ場合である

C、2重接近―回避型葛藤

日常生活によく見られるもので、同時に2つの目標が提示されるが、どちらも正と負の誘意性を備えている場合

(3)       心的外傷後ストレス障害(PTSD)

過酷な体験が心的外傷体験(トラウマ)となり、不安や不眠、抑鬱感、疲労、過度の緊張が生じる。また、フラッシュバックなどによる外傷的出来事の再体験も特徴的な症状として知られている

 

W-5 適応と適応機制

適応=人が自らの欲求を満たしながらも環境と調和している状態、あるいは調和をはかろうとする過程

(1)       社会的適応と自己適応

社会的適応=自己の欲求の充足と社会的状況からくる要請との間で調和が保たれていること

→所属集団への同一化が高く、対人関係が安定し、社会規範が遵守され、他者の評価が高くなる

自己適応=自己の欲求と自己の価値観や目標といった内的枠組みとの間で調和が保たれること

→自己評価や自己受容の水準が高く、充実感や自己存在感、自己効率感が高い

(2)       適応機制(自我防衛機制)

自我はエスの表出と外界との調和を図りながら現実的に適応する機能を担うが、過大な負担に直面すると、必ずしも適切とはいえないが自我の破綻を逃れるための仮の手段をとって衝動を抑制しようとする

@          合理化

自分が行った失敗や不満の心の動機を隠し、もっともらしい理屈をあげて弁解する機制

A          投射(投影)

自己の内に存在する認めがたい欲求や感情を、他者がもっていると認知する機制

B          取り入れ(同一視)

他者が自己に期待している態度や価値観を取り入れて自分の基準とし、それに従った行動をとるようになる

C          抑圧

不満や葛藤などの原因となる欲求や動機は、それを意識していると苦痛であるので、意識の背後(無意識)に押しやられる機制

D          補償

ある面における自己の不満をカバーするために、他の面で努力を払って満足を得ること

E          代償

ある感情が向けられている対象を別の対象に置き換えることで欲求不満の解消がなされる場合

F          昇華

置き換え、補償などの機制によって、本来の欲求が社会的・文化的に価値の高い目的に向けられ、努力すること

G          反動形成

自己のある弱点に対する非難を避けるためにこれと正反対の行動や態度をとること

H          退行

解決することが困難な状況において、自我が合理的な対処法を放置して、より未発達な段階に逆戻りすること

I          逃避

困難な状況から逃避することによって不安から逃れようとする

J          固着

一定の感情や行動のパターンあるいはその対象が固定して、流動性を欠く状態

K          攻撃

破壊的行動や反抗的態度により欲求不満を解消する機制

 

W-6 不適応行動

(1)       ストレスと神経症

ストレス=自律神経に変異を生じさせるような生理的・精神緊張負荷状態

@          ストレッサー(ストレス源)としての『ストレス』

A          負荷状態としての『ストレス』

B          ストレス反応としての『ストレス』

神経症=精神的な精神異常状態もしくは身体症状を指し、脳や神経系の器質的な異常が想定されない場合

(2)       子どもの不適応行動

非社会的行動=人が自分の社会的立場を無視したり、考慮し得ない個人的・消極的行動のために、間接的に社会に影響を与える行動

反社会行動=社会の秩序を乱し、道徳・倫理的規範を無視したりする全ての行動

@          チック

不随意かる急速に繰り返される無目的な筋肉の動きを伴う神経症性習癖で、親の干渉や口やかましさによって生じることが多い

A          かん黙

正常な言語能力を持ちながらも心理的原因によって話せない症状を言う。生活の全場面で話せない全かん黙と、家庭や親しい友人の前では話すが、それ以外の人前、例えば知人や先生の前で話せない場面かん黙がある。後者の方が多く、長期にわたることが多い。

B          不登校

狭義には、登校したいあるいは登校しなければいけないという意志を持ちながら、登校できない心理的苦痛を体験している状態だが、最近では、怠学も加えて学校に行かない状態を全て含みこむ

【不登校の分類】(文部省)

@、学校生活に起因する型

A、遊び・非行型

B、無気力型

C、不安など情緒的混乱の型

D、複合型

E、意図的な拒否の型

F、その他

→無理な登校刺激(当校を勧めること)を与えず、子どもの訴えに耳を傾ける姿勢で働きかけを継続する

C          拒食症

神経性無食症とも言い、思春期前期の女子に特に多い、極度に食事を拒否して体重が激減し、放置すると死に至るなどの重度の状態に陥る。時に過食して自責的になって吐く行為を繰り返すこともあるので、それを含んで摂食障害ということもある。

D          いじめと自殺

E          非行

F          スチューデント・アパシー

無感動・無気力・無関心を特徴とし、特別の理由がないのに学習活動や社会への関心や意欲を失ってしまう現象を指す。また、学業や仕事などの重要な社会的役割(本業)を避けつつも、サークル活動や趣味、アルバイトなどの副業には熱心であることを指す退却神経症という概念が我が国では提唱されているが、近年では全面的な退却を特徴とするひきこもりが増えている

(3)       発達障害

@          自閉症

言語発達の遅れが著しくオウム替えしのような表現が多い、呼びかけに応答せず視線も合わせようとしない、対人関係を作ることが困難であること、上半身を前後に揺すったり意味のない日課や儀式に固執することなどを特徴とする

A          ダウン症

染色体異常によって生じ、親の高齢出産での出現率が高い精神発達遅滞である。身体諸機能の発達不全、知的障害がみられるが、社会性の発達はよく、豊かな共感性や模倣意欲を持っている

B          学習障害(LD)

学業不振児と異なり、主としてその子どもの中枢神経の機能障害に基づくと思われるもの。知能に全般的な障害はなく、読み・書き・計算・概念形成などの特有な能力の習得や使用に著しい困難をきたすこと、落ち着きのなさ、情緒不安定、注意集中困難などの特徴を示す

C          注意欠陥多動性障害(ADHD)

不注意な言葉や動作が多発する(注意欠陥)、絶えず落ち着きがなく動き回る、衝動的な言動が頻繁に見られる(多動性/衝動性)などの症状が6ヶ月以上続くもの。

(4)       病理水準と境界例、精神病

病理水準=人格の病理性の程度を指し、具体的には神経症、境界例、精神病の順で重くなる

@          境界例

精神病と神経症の教科異常に位置づけられた状態を指す。人格の崩れはそれほど深刻ではなく心理的な反応性も見られるが、症状が激しく気質性も認められることから神経症の範疇にも入れられない水準を言う。

A          統合失調症

妄想、知覚、自我障害、作為体験、幻聴への応答などの陽性症状と、自閉、感情鈍麻、かん黙などの陰性障害が特徴的

B          躁鬱病

現在は感情障害あるいは気分障害と解され、うつの様相しか示さない単相()性のうつ病が圧倒的に多くなっている。鬱病の患者は義務感が強く自責的になり、自殺に結びつくことが多いので、治療として第1に義務からの強制的解放が必要となってくる

 

W-7 カウンセリング

(1)       カウンセリング

@          心理臨床の意義

臨床心理学は、ある個人のより適応した状態を目指した、診断と治療的かかわりを両輪とした心理学の特殊領域である。最近、このうちの人間的な関わりの態度をより重視して、心理臨床と呼ぶことが多くなっている

A          指示的カウンセリング

クライエントが悩んでいるのは適切な情報が不足しているためで、正しい情報を積極的に与えれば自ら解決できると考えられる場合の方法。カウンセラー主導のカウンセリング。

B          非指示的カウンセリング

@、ロジャースの来訪者中心療法

ロジャースは『何が本当の問題で、それはこれからどう変わっていくかを知っているのは本人だけである』と述べ、本人が主体的に自己理解を深めて自己選択していく立場。治療が成功するための必要十分条件であるとして6つの条件を挙げた

ア、1条件

2人の人間が心理的な接触を持っている

イ、2条件

1の人(クライエント)は不一致の状態(自己概念とのズレ)にあり、傷つきやすいか、不安の状態にある

ウ、3条件

2の人(カウンセラー)はこの関係の中では一致しており、統合されている

エ、4条件

カウンセラーは、クライエントに対して無条件の肯定的な関心を経験している

オ、5条件

カウンセラーは、クライエントの内面照合枠に共感的な理解を経験しており、この経験をクライエントに伝達するように努めている

カ、6条件

カウンセラーの共感的理解と無条件の肯定的関心をクライエントに伝達することが、最低限度は達成されている。

A、ラポール

カウンセラーとクライエントの信頼関係を言う。互いが個別世界に触れあっている、直接に関係しあっていることを意味する。ロジャースの大条件と同義。

B、カウンセリング・マインド

人間観と治療論を前面に出した関わりを実行しようとする姿勢。すべての人の自己実現傾向への信頼、その人の固有の世界の尊重と理解、行動選択における自己決定の尊重などである。

(2)       心理療法

@          フロイトの精神分析法

抑圧された無意識内内容、特に幼児期の体験を意識し、それらを洞察することを通じて、症状が消えることを目的とした治療法

@、自由連想法

クライエントのこころに思い浮かんだことを全て話すように要求して連想を繰り返してもらい、無意識が次第に意識に浮かび上がってくるようにする。抵抗(無意識が意識に浮かび上がる過程で不安を感じ連想を停止する)や転移(幼児期に感じた感情をカウンセラーに向け、自分に特別な感情があると誤認)などが生じることがある

A、夢分析

A          ユングの分析心理学

クライエントの夢や空想、絵画などの創造的活動や親和的モチーフを通して、クライエントの無意識のイメージ世界の活性化をはかる。イメージを解釈するのではなく豊かにしていくことが大切であると考える。

B          行動療法

心理学において実験的に確立された学習理論に基づいて不適応行動を治療する試み。これは外に現れる行動を変えることができれば、自ずとこころの内面にも変化が生じるという考えのもとで成り立っている。

@、系統的脱感作法

クライエントが不安を引き起こすとき、不安と相対立する反応を起こすことにより、不安が統制されることを応用したもの

A、自律訓練法

自己暗示をすることによって、自律神経の動きを自分でコントロールし、リラックス状態を作ることができるようにする。

C          遊戯療法

言語を媒体としたコミュニケーション能力の発達していない子どもを対象に行われるもの。遊びそのものが子どもの衝動や欲求を解放させる効果を持つ一方、遊戯室内での、カウンセラーとの治療的人間的関係の経験が、日常での偏った対人関係を修正したり、人格発を促進する効果をもつと考える

D          箱庭療法

ローエンフェルドが遊戯療法を改良し作品を作らせる世界技法を考案、やがてそこからカルフがユング心理学の影響を受けながら箱庭療法を考案し、大人もその対象となった。カウンセラーによって提供された自由で安全な保障された空間の中で、クライエントは創造活動に専念することにより自己治癒力を発揮することができる。また、この活動を通してクライエントの内的世界が展開されるのでクライエントの状態が理解することも可能である。

E          集団療法

@、心理劇

集団の場で、参加者は監督、助監督や役者、観客として即興的にアクションを行い、この中でさまざまな体験をし、創造性と自発性を働かせることによって、カタルシスと新しい行動可能性を獲得する。そして、演技を通じて、自己への洞察と他者との共感を深める

A、エンカウンター・グループ

性別や年齢、職業の異なる1015名前後の参加者と12名のファシリテータによって構成され、35日の合宿形式で実施される。自由な討論を通じて、自己理解、他者理解が進み、心理的に成長するとともに、胎児関係の改善と発展を目指すものである

F          認知行動療法

@、認知療法

ベックによって提唱され、認知過程の極端な歪みを修正することにより鬱病やパニック障害などの情緒反応を治療するもの

A、論理療法

エリスによって創設され、合理情動行動療法とも呼ばれる。人の反応は刺激によってのみ生じるものではなく、刺激の解釈などの認知的変数によって生じると考える。そして問題を引き起こすことに関連する思考スタイルを非合理な信念とよび、これを合理的なものに改めさせることが目標となる。論争したり、合理的な信念で行動させるホームワークを行ったりする

G          森田療法と内観療法

H          その他

@、催眠療法

暗示によって理性的思考が緩んで想像の世界に入り、想像自体が現実味を帯びるような意識状態(催眠性トランス)を用いた心理療法の総称

A、短期療法

短期間で治療を成功させようとする心理療法の総称時間の制限、指示的な関わり、現在未来志向、問題解決重視

B、家族療法

家族集団を研究と治療の単位として扱い、個人の問題を家族という脈略のなかでとらえようとする療法の総称。

C、その他

ゲシュタルト療法、アサーション・トレーニング(相手と自分をともに尊重しつつ、自分の考えを率直に表現するための自己表現のトレーニング方法)など