X 道徳教育
X-1 道徳と道徳教育
(1) 道徳とは
●小学校指導要領解説 道徳編
『道徳は、自らを見つめ、自らに問いかけることから出発する。それは、外に表われている自己と内なる自己との対話を意味する。このことを通して、より積極的な自己像を描き、未来に夢と希望をもって力強く生きようとするところに主体性が確立され、自律的な人間が形成される』
『道徳は、他者とのかかわりにおけるよりよい生き方を求めるものでもある。個人の生活は、個人の独自性と相互依存性をもって営まれている。自己を主張すればするほど、ますます自己が他者とのかかわり合いのの中にあることを自覚する。他の人との心の交流を深め、人間愛の精神に支えられることによって、人間は力強く生きることができる』
『道徳は、自然や崇高なものとかかわりをもっている。人間は自然との日々の触れあいによって、様々な思考や感情を発展させ、豊かな心を形成する。自然は、直接、間接に人格の形成に大きな影響を与えるのである。また、人々は美しいものや崇高なものとのかかわりを通して、人間としての在り方や生き方の自覚を一層深めていく』
『道徳は、人間社会におけるよりよい生き方を求めるものである。人間社会は、人格としての個人と個人がかかわり合いながら生活をともにするところに成り立つ社会集団である。そこには、独自の規範や価値観が存在する。人間は、様々な社会集団とのかかわりの中で価値観を形成し、また、積極的にかかわることによってそれらに愛情をもち、自己の役割や責任を自覚して共に成長を図ろうとする』
→教師自身の自己探求心が重要=教師自身が考え始めることが道徳教育の第1歩
(2) 道徳教育の基盤
教育基本法第1条にある『目的』に記される『人格の完成をめざし』というものが、道徳教育の『目標』である。
(3) 人間はかけがえのない存在という認識
子どもたちが成長する際、自分の持っている能力を能動的に発揮し、変化をおそれず、絶えず成長し続けて生きることの喜びを確信できるような生き方が可能となる道徳性の育成
X-2 道徳性と道徳教育
(1) 道徳性を養う
●道徳性
・ 道徳的であることや道徳的行為ができること
・ 人間存在の在り方に関わるもの
・ 全人格的なまとまりを持つ特性
☆構成要素
・ 道徳的習慣
道徳的行為が繰り返された結果、習慣として身についた日常行為=生活習慣
・ 道徳的心情
善を行う喜び、悪を憎み嫌う感情、善を志向する感情
・ 道徳的判断力
ある状況内で、どのような考えや行動が善であり悪であるかを判断する知的な力
・ 道徳的実践意欲
心情・判断を基礎として、道徳的価値を実現しようとする意志
・ 道徳的態度
意志に裏付けられた具体的な行為への身構え
(2) 道徳的実践力と道徳的実践
道徳の時間の目標→道徳的実践力を育成する
教育活動を通じた道徳教育の目標→道徳性を養う
X-3 学校における道徳教育
(1) 道徳教育の位置づけ
● 学校教育法施行規則第24条
『小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭及び体育の各教科(以下本節中「各教科」という。)、道徳、特別活動並びに総合的な学習の時間によって編成するものとする』
→道徳は、教育課程の4領域=教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間の一角を占め、年間35時間が割り振られている。
● 学校教育法施行規則第53条
『中学校の教育課程は、必修教科、選択教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間によって編成するものとする』
(2) 道徳教育の基本方針
●平成10年小学校指導要領『第1章 総則』の『第1 教育課程編成の一般方針』
@ 学校における道徳教育は、学校の教育活動全体を通じて行う
・1958年の道徳の時間から変わっていない大前提、
・教育とは、全人格的な営みである
A 道徳をはじめ、各教科、特別活動及び総合的な活動の時間の特質に応じて指導を行う
・各教科の目標内容には、道徳的価値が内在している。よってその目標達成や理解を内容への理解の深化は、道徳的価値の内面化につながる
B 教師と児童及び児童相互の人間関係を深める
・あらゆる場面において好ましい人間関係を構築し、安定した中にも互いに切磋琢磨しようとする教育環境の形成が必要である
C 家庭や地域社会との連携を図る
D 豊かな体験を通して
・ボランティア活動や自然体験活動
E 内面に根ざした道徳性の育成を図る
● 中学校指導要領
@ 教師と生徒及び生徒相互の人間関係を深める
A
人間としての生き方についての自覚を深める
B 家庭や地域社会との連携を図る
C 豊かな体験を通して
D 生徒の内面に根ざした道徳性の育成を図る
● 高等学校指導要領
@ 自己探求と自己実現に努める
A 国家・社会の一員としての自覚に基づき行為しうる発達段階にあることを考慮
B 人間としての在り方生き方に関する教育
C 道徳をはじめ、各教科、特別活動及び総合的な活動の時間の特質に応じて指導を行う
D 道徳的実践力を高める
E 自律の精神や社会連帯の精神及び義務を果たし責任を重んずる態度を養うための指導
(3) 道徳教育の目標
● 平成10年改訂学習指導要領『第3章 道徳』の『第1』
『学校教育を通じて、道徳的な心情、判断力、実践意欲と態度などの道徳性を養うこととする』
(4) 道徳教育の内容
教科を指導に付随して行われる道徳教育が一面的・断片的になるのに対して、道徳の時間では、意図的・計画的に教育が行える。よって、学習指導要領に示された内容は、道徳の時間の内容といってよい。
● 内容
1,主として自分自身に関すること
2、主として他の人とのかかわりあいに関すること
3、主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること
4、主として集団や社会とのかかわりにかんすること
(5) 指導計画の作成
X-4 道徳の時間の指導
(1)道徳の指導に関する事項
● 平成10年度改訂小学校学習指導要領『第3章 道徳』
『各学校においては、特に低学年では基本的な生活習慣や善悪の判断、社会生活上のルールを身に付けること、中学年では自主性、協力し助け合う態度を育てること、高学年では自立心、国家・社会の一員としての自覚を育てることなどに配慮し、児童や学校の実態に応じた指導に応じた工夫をすること。また、高学年においては、悩みや心の揺れ、葛藤等の課題を積極的に取り上げ、考えを深められるように指導を工夫すること』
『児童自らが成長を実感でき、これからの課題や目標が見つけられるよう工夫する必要がある』
『校長や教頭の参加、他の教師との協力的な指導などについて工夫し指導体制を充実すること』
『ボランティア活動や自然体験活動などの体験活動生かすなど多様な指導の工夫、魅力的な教材の開発や活用を通して、児童の発達段階や特性を考量した創意工夫ある指導を行うこと』
(3) 資料の活用
@長文や難解な文は避ける
A資料を読解するとう扱いは避ける
→深く気づかされる1カ所にを見出すような発問の工夫
B資料の解説は避ける
C資料の印象に残る提示方法
Dあらかじめの難解な部分の補足説明
(4) 指導方法の多様化の工夫
@話し合い
・自覚は、自分と異なる他人を媒体してより一層深まる
→他人の価値観と出会うことを通して、自己を見つめ、自己の価値観を補充、深化、統合していく
A教師の説話
教師の体験談や願い、時事の話題の提示、ことわざや格言などの参照
B読み物の活用
・優れた読み物は、児童生徒の心に深い感銘を与えたり、心情を養うのに役立つと共に、経験を広げ、各種の場面に応じた道徳的価値観を体験させる上でも効果的な方法である
C視聴覚素材の利用
D役割演技(ロールプレイング)
・演技的な表現方法を通して児童を主題の展開に参加させるもの
E『心のノート』の活用
2002年3月に作成された小学校・中学校全ての児童・生徒に配布されたもの。
● 心のノートについて(依頼)
『児童生徒が身に付ける道徳の内容を、児童生徒にとってわかりやすく表し、道徳価値について自ら考えるきっかけとなるものであり、学校教育活動全体において活用され、また、学校と家庭等が連携して児童生徒の道徳性の育成に取り組むよう活用されることを通して、道徳教育の一層の充実を図ろうとするもの』
→教科書とは違い、児童生徒が自ら道徳的価値について考えるきっかけを提供するもの
● 心のノートの活用により期待されること
@児童生徒が自主的に学習に望むことにより、主題に対する興味・関心を高め学習への意欲を高めることができる
A副読本などの内容や道徳的価値について、児童生徒の理解を深めたり、学習した内容をまとめたり、考えを整理したりすることを助けることができる
B児童生徒が道徳の時間の学習を継続的に振り返ることができ、また自らの心の成長を記録することができる
X-5 道徳教育における評価
● 平成10年改訂小学校学習指導要領『第3章 道徳』の第3の5
『児童の道徳性については、常にその実態を把握し指導に生かすよう努める必要がある。ただし、道徳の時間に関して数値などによる評価は行わないものとする』
● 平成10年改訂小学校学習指導要領『第1章 総則』の第5の2の(10)
『児童のよい点や進歩の状況などを積極的に評価するとともに、指導の過程や成果を評価し、指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること』
(1)評価するにあたっての教育者としての姿勢
・ 極めて慎重な態度
・ 客観的に見る力
・ 生徒を信じ、願う姿勢
・ 児童生徒との信頼関係を深め、児童生徒を受容し、尊重する姿勢
・ 相互の共感的な理解
(2)評価の方法
@ 観察
A 面接
B 質問紙
C 作文