Z 同和教育
Z-1 同和問題
☆ 定義
【同和対策審議会答申 第1部『同和問題の認識』】(1965)
『いわゆる同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位におかれ、現代社会においても、なおいちじるしく基本的人権を侵害され、とくに、現代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという、もっとも深刻にして重大な社会問題である。』
→基本的人権
【日本国憲法第11条】
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の尾国民に与えられる
【日本国憲法第13条】
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
【日本国憲法第14条1項】
すべて国民は、法の下に平等であって、人権、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
☆ 問題性
【同和対策審議会答申 第1部『同和問題の認識』】
『近代社会における部落差別とは、ひとくちにいえば、市民的権利、自由の侵害にほかならない。市民的権利、自由とは、職業選択の自由、教育の機会均等を保障される権利、居住及び移転の自由、結婚の自由などであり、これらの権利と自由が同和地区住民にたいしては完全に保障されていないことが差別なのである。これらの市民的権利と自由のうち、職業選択の自由、すなわち就職の機会均等が完全に保障されていないことがとくに重大である。
☆ 心理的差別と実態的差別
@ 心理的差別
『心理的差別とは、人々の観念や意識のうちに潜在する差別であるが、それは、言語や文字や行為を媒体として顕在化する。たとえば、言語や文学で封建的身分の賤称をあらわして侮辱する差別,非合理な偏見や嫌悪の感情によって交際を拒み,婚約を破棄するなどの行動にあらわれる差別である』
A 実態的差別
『実態的差別はとは,同和地区住民の生活実態に具現されている差別のことである。たとえば,就職・教育の機会均等が実質的に保障されず,政治に参与する権利が選挙などの機会に阻害され,一般行政試諸策がその対象から疎外されるなどの差別であり,劣悪な生活環境,特殊で低位の職業構成,平均値の数倍にのぼる高率の生活保護,きわだって低い教育文化水準など同和地区の特徴として指摘される諸現象は,すべて差別の具象化であるとする見方である』
Z-2 同和問題の歴史
☆ 近代以前
『封建社会の身分制度のもとにおいては,同和地区住民は,最下級の賤しい身分として規定され,職業,住居,婚姻,交際,服装等にいたるまで社会生活のあらゆる面できびしい差別扱いをうけ,人間外のものとして,人格をふみにじらていたのである』
☆ 明治期
1871年 太政官布告61号(解放令)『今より身分職業とも平民同様たるべし』
→形式的な解放令にすぎず,身分と職業が平民なみにあつかわれることを宣明したにすぎなかった。つまり差別と貧困から解放するための政策は行われなかった。=封建時代とあまり変わらない悲惨な状態
1872年 壬申戸籍の作成
→廃止された旧身分が記載され,各地で一層の差別問題を引き起こす
☆ 大正期から敗戦まで
・米騒動の際,各地で多数の同和地区住民が参加
1922年 京都で全国水平社が結成
→同和問題の重要性が認識されるようになる。国は地方改善費の名目で同和地区の環境改善を行い始める。しかし不十分であり,貧困状態は変わらず。
☆ 戦後の状況と同和対策審議会の設置
1946年 部落解放全国委員会(水平社運動からの移行)
1955年 部落解放同盟と改称,運動の大衆化が進む
1958年 同和問題閣僚懇談会設置
1960年 総理府に同和対策審議会が設置される。
☆ 用語
・備作平民会
1902年.三好伊平次らが岡山で結成。差別改称のため部落民自身による生活改善運動を展開
・中央融和事業協会
1925年に,内務省が水平社に対抗して設立。27年に他の部落改善・融合団体と一本化。
・オールロマンス事件
1951年に京都市保健所の職員が部落を極めて露悪に描いた『特殊部落』という小説を雑誌『オールロマンス』に掲載。これに対して,部落解放委員会が,劣悪な生活環境を放置していた市の行政責任を追及。結果,京都市は積極的な施策を行うこととなる。この事件が以後の地方公共団体の、同和行政への取
組を推進させるきっかけになったといわれる。
・全日本同和会
保守系の部落解放運動組織として,現自民党のテコ入れで結成。後に様々な批判から一部分裂し,全国自由同和会を結成。現在では,政府が意見聴取する対応団体とし,自民も連携している。
・全国部落解放運動連合会
部落解放同盟から分離独立した共産党と連帯する部落解放運動組織。部落差別の認識,運動の進め方などで解放同盟と対立
→全解連は共産党,解同は社会党の関係が強かった(水平社以来の社会主義の伝統)が,社会党解党により,解同は共産党以外の政党全てと関係を持つように。
全解連→1985年 国民的融合論(部落差別はなくなりつつある)にたって,21世紀に部落差別を持ち越さないとの方針を打ち出す。解同が掲げるような特別施策は,部落差別を固定化するとして反発。一般行政の中で対応することを求める。
解同→80年代に階級理論闘争から自主・強制・人権の社会という第3期運動へと展開。その後,部落解放基本法を制定を目指す。また国際的な反差別運動も展開し,IMADR(International Movement against All Form of Discrimination and Racism)を結成する。
Z-3 同和問題に関する法令・答申・意見具申
☆ 同和対策審議会答申ん
1965年に同和対策審議会が『同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本的方策』についての内閣総理大臣諮問への答申。今日でも同和対策の憲法と呼ばれ,是にもとづいて1969年に同和対策事業特別措置法
@位置づけ
『いくまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり,日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。したがって,審議会はこれを未解決に放置することは断じて許されないことであり,その早急な解決こそ国の責務であり,同時に国民的課題であるとの認識に立って対策の探求に努力した。』
A中心課題
『同和地区住民に就職と教育の機会均等を完全に保障し,同和地区に滞留する停滞的過剰人口を近代的な主要産業の生産過程に導入することにより生活の安定と地位の向上をはかることが,同和問題解決の中心課題である』
『同和対策は,生活環境の改善,社会福祉の充実,産業職業の安定,教育文化の向上および基本的人権の擁護等を内容とする総合対策でなければならない』
☆ 同和対策事業特別措置法
1969年制定。79年までの時限立法であったが82年まで延長される。
1,生活環境の改善
2.社会福祉の推進
3,職業の安定
4,教育の充実
5,人権擁護活動の強化
などの同和対策事業の具体的な施策の目安となる。差別化解消事業の推進を自治体の責務,それへの協力と基本的人権の尊重を国民の責務とする。
☆ 地域改善対策特別法
1982年5ヵ年の時限法として制定。同和対策事業特別措置法の残された課題の解消を目指す
1.部落解放運動団体によって事業の適用が差別されないようする
2,『ねたみ差別』への対応
→同和→地域改善に名称変更。『公正な運営』を目指す。
☆ 地域改善対策協議会意見具申『今後における啓発活動のあり方について』
1984年に意見具申。実態的差別の解消は進むも,心理的差別の解消が立ち遅れる。
@地域改善対策の現状と問題点
ア,ねたみ差別の表面化。『環境改善のための事業量の拡大が他の施策の拡充整備を抑制したり,周辺地域の状況に比べて不均衡を生じさせる等そこに摩擦を生じさせる事例』の存在+同和問題に対する国民の理解不足
イ,就職や結婚に関する心理的差別の解消の遅れ,
A啓発の具体的方法
『基本的人権にかかわる同和問題は決して特定の地域のみの問題ではなく,国民1人ひとりと密接に関連しているという認識を深めるためにも,啓発はあらゆる生活の場を通じて行われねばならない』
B啓発の実施主体の役割について
『同和問題が国民的課題であるという趣旨は,国民の1人ひとりが基本問題に主体的に取り組むことによってはじめてその最終的な解決が可能となるということであり,その意味においては,最終的な啓発の主体は国民であるといえる』
☆ 地域改善対策協議会意見具申『今後におけ地域改善対策について』
1986年に意見具申。
『地域改善対策推進により,同和地区の実体は大きく改善をみ,同和地区と一般地域との格差は,平均的にみれば相当程度是正された。心理的差別も解消が進んでいる』
『昔ながらの差別意識が一部に根強く残されているとともに,新たな差別意識を生む様々な新しい要因が生じている』
@行政の主体性の欠如
A同和関係者の自立,向上の精神の涵養の始点の軽視
Bえせ同和行為の横行
C同和問題についての自由な意見の潜在化傾向
→1987年 地域改善対策特定事業に関る国の財政上の特別措置に関する法律が制定
☆ 地域改善対策特定事業に関る国の財政上の特別措置に関する法律
1987年に制定。5年間の時限立法だが,5年延長。さらに15事業に限り5年延長
→2002年3月で失効。今後は同和問題は人権問題の1つとして取り組む方針が示唆される。
Z-4 同和教育
☆ 同和教育とは
わが国の社会に根強く残存する部落差別を中心とした封建的な差別を除去し,国民すべてが自由で豊かな生活ができる社会の形成を目指して行われる教育のこと。
☆ 中心課題
『同和教育の中心課題は,法のもとの平等の原則に基づき,社会の中のに根強く残っている不合理な部落差別をなくし,人権尊重の精神を貫くことである。この教育では,教育を受ける権利(憲法26条)および教育の機会均等(教育基本法3条)に照らして,同和地区の教育を高める施策を強力に推進するとともに個人の尊厳を重んじ,合理的精神を尊重する教育活動が積極的に,全国的に展開されねばならない。特に直接関係のない地方においても啓蒙的教育が積極的に行われねばならない。』
☆ 学校における同和教育
あ,小中高それぞれにおける教育活動全体を通しての同和教育を各教科,道徳,特別活動等の特質にも十分配慮しつつ充実させるとともに,児童,生徒の発達段階に即した系統的な指導を実施しなければならない
い,職員の同和問題に関する知識,理解を深めることが不可欠であり,このための研修等を一層充実させる必要がある。
う,家庭において父母が同和問題を正しく理解した上で子どもに接することが欠かせない。そのため学校と家庭が,PTAの協力を受け,連携をとりながら,同和問題の学習を進めていくことが重要。
☆ 社会同和教育
対象地域の人々に教育の機会を提供し自らの学習を促進させ,また,すべての国民が,公民館等における学級や講座,社会教育関係団体などの活動の中で,同和問題を積極的に正しく理解・把握する学習を進めること