山の神    Kobe university school of medicine

                                        ski club 松浦 敬憲

                       古川 竜也

       〜前書き〜

このreportを作成しようということで、二人の意見が一致した最も大きな理由は、一回生のスキー合宿を経験して、スキーにおける理論の必要性を強く感じたからです。あらゆるスポーツにおける、うまくなるためのステップは、次のようになっていると考えます。1、正しい理論の理解?2、理論に基づいたイメージの構築?3、必要な動作を行うための身体能力の獲得?4、実践。従って、正しい理論を理解することがうまくなるための第一歩なのです。そしてそれがきっと早い上達につながるであろうし、スキーを楽しむことにもつながると思います。だから今まだ自分なりの理論が確立されていないなと思う人にぜひとも読んでほしいです。できるだけわかりやすく理論を表現するために、イメージ図を使うなどして説明しましたが、きっと意味不明な部分、わかりにくい部分が出てくると思います。何でもいいから松浦、古川に指摘あるいは質問してください。

 スキーというのは極めてevidenceのないスポーツだなと思います。人それぞれに考えがあり、どれが正しいのかわかりにくいし、どう違うのかもわかりづらい。速い=うまいとも言えるし、美しい=正しいとも言える。これを作成するにあたって参考とさせてもらったのは、僕達が習っている蔦原コーチ、下村コーチ、高野コーチの理論、そしてスキージャーナルです。

今のスキーテクニックは日々進化しています。これから述べることが古い考えになる日が来るに違いない。だけど例えば外足荷重だとか重心の移動を意識するといったようなcoreとなる理論は不変です。そして変化している部分をよく見ると、それがsimpleなものへの変化であるように思えます。一番simpleで合理的な滑りが最速かつ最も美しい。

 スキーをするにあたって一番大切なことは、「スキーを楽しむ」ということです。苦しみながら競技スキーのみをがむしゃらにするなんてナンセンスだと思う。フリースキーもたくさんしてほしいし、コブ斜面もチャレンジしてほしい。ジャンプを楽しむのもいいと思う。板を折ったらダメやけど() そうしてスキーというスポーツをもっともっと好きになってほしい。それが一番素晴らしいことだと思います。フリーの時間は一緒に滑りに行こう!

 最後に、僕たちも一人前にこんなのを作っていますが、スキーの腕はまだまだです。もっときれいに速く滑りたい。みんなで頑張っていきましょう!

                  

       


〜目次〜

   このreportは大きく二つに分かれます。最初にターン理論について説明しています。

  次にその他の役に立ちそうなことを少しばかり付け加えています。好きなところから読んでください。なお大事なところには下線を引いて、ポイントがわかりやすいようにしています。

  ターン理論

   1、ターンにおける前提

   2、重心落下理論

   3、ターン構成

   4、ターンにおける理想と現実

   5、スタンス

   6、ライン取り

   7、姿勢

   8、ストックの役目

  ☆おまけ                      

1、 スキーの手入れについて

2、 オフトレの必要性

3、 スキー時に必要なものとは

4、 山の神とは


☆ターン理論

1、ターンにおける前提

  カービングとスキッディングの違い

    ターンにはカービングターンとスキッディングターンの二種類があります。カービングターンとはできる限り減速要素を排除したズレのないターン、スキッディングターンは減速要素(抵抗)を作ってずらすことでスキーの進行方向を変えるターンです。スキッディングは上半身を中心として下半身を左右に振る振り子のようなイメージ、カービングは足を基点にしたメトロノームのイメージです(image)。もちろんスピードを競うアルペンスキーにおいてはカービングターンが中心となるターンです。今から説明していくターンはカービングターンのことです。だけどスピードをコントロールして滑るのもとても綺麗だしコブなどではすごく大切。(picture)で両者の違いを理解できるはずです。

 ではカービングで曲がるとはどういうことなのでしょうか。板に力を加えると板はしなります。これを、板のたわみと言います。つまりたわませることでできたエッジのカーブとスキーが持つサイドカーブの両方を利用してそれにのって曲がるのがカービングターンなのです(image2)

   (エッジ:スキー板のサイドについている金属の薄長いもの。エッジを立てる(エッジング)とは、片側のエッジを雪面にくっつけ食い込ませることである。)

   (サイドカーブ:カービングスキーは見てのとおりエッジにカーブがかかっている。だからエッジを立てるだけでも曲がってくれる。このカーブのことをサイドカーブという。その程度を示すものとして回転半径(R)という指標がスキー板には設定されています。)

   そして、最も効率よく板をたわませるには重力と遠心力の合力が、板の面に対して垂直にかかればよい、つまり合力の向きと外足の傾きが同じになればよいということになります(image3)。そうするためには重心を板より内側に持ってくる必要があります。そして、速くなればなるほど遠心力が大きくなるわけだから、それに応じて内傾角(image3α)も大きくなるわけです。

  ・基本は外足荷重

   これはスキーの長い歴史を見ても不変の原則です。近年のカービングスキーの登場でより重心を内側に入れていくことができるようになって内足を使うようになりましたがあくまで主役は外足です

  ・スキー板は常に平行であり、かつ前後差をつくってはならない(image4-1)

  ・大回りと小回り

   どちらも基本は同じです。板の長さ、回転半径の違い、それから自分の板へのたわませ具合によってターン弧の大きさが変わってくるということです。

    股関節、膝、スキー板のそれぞれの向きは常に同じ方向を向き、上体は常にフォールライン方向を向いている(image4-2)

 

 2、重心落下理論

  ・斜面を降りるとき最速は直滑降である。

    当たり前ですね。つまり重心が、できる限り妨げられることなくまっすぐに落ちていくことが最速なのです。したがって、重心の落下運動を妨げない体の動きをすることが大切になります。(image5)はそれをうまく表現しています。重心はまっすぐフォールライン上を落ちていき、その下で板がターン弧を描いている。極めてsimpleで合理的な運動です。

   (フォールライン:直滑降で真下に向かって降りる時のライン)

  ・重心を体の内側へ持っていく

    重心をできるだけまっすぐ落とすにはまず体の内側に重心が入らないといけない。その練習方法を一つ提案しておきます。

☆思い切りスタンス(足幅)を広くして内足の真上くらいに重心を持ってくるようにしてターンする(image6)。このとき内足の膝を両手でおすようにするとやりやすいです。これでしっかりと重心を内に入れることができるようになったら(image6)の右図のようにスタンスを狭めていきましょう。内足が重心よりも外側に行くようになれば完璧です。

 3、ターン構成

  ・ターンの分け方

    ターンの分け方はさまざまな方法があります。このreportのなかでは、ターンを@荷重期A加圧期B解放期に分けて説明していきます(image7の@~Bに対応)(image7)は、ターンにおける板の動くライン、重心の動くライン、どこからどこまでがどの期にあたるかを、示したものです。外側のラインが板のライン、そして内側のラインが重心のラインであることはもう一目瞭然ですね。この図は、ターンを説明する際に最も大事なポイントを非常に明確に示しているのでとても大切です。荷重期は、加圧のための体勢を作る準備をする局面、加圧期は、スキー板に対して意図的に力を加えエッジングする場面、解放期は、次のターンを始めるためにスキー板にかかっている力を解放し、エッジを解放し体の傾きを戻して、次のターンの荷重期への準備をする場面です。なお、便宜上こう区切っていまからそれぞれの部分における運動の説明をしていくわけですが、大切なことは、これらの部分が滑らかに移行していかなければならないということです。(picture2)で説明すると、1〜3コマ目が加圧期、3〜5コマ目が解放期、5〜7コマ目が荷重期です。なお、加圧期の中でちょうどポールの横を通過する、つまりスキー板がフォールラインを向く部分をターンmaxと言います。写真をよく見てだいたいのイメージをつかんでくれたらと思います。

  ・@荷重期

    この部分で最も大切な運動は、重心のフォールラインへの落とし込みと、それと並行して始まる上半身の内向と、全身の内傾角の形成です。荷重期に入るときはもうすでに両スキーのエッジ(角付け)が切り替わっているので(picture2の4〜6、この動作を切りかえしもしくはクロスオーバーと呼びます)、@重心(上体)をフォールラインに向け落とし込み、A上体をターン内側に内向(上半身がスキーの進行方向に向かって内側をむくこと)させ、B両膝をターン内側に向けて傾けていきます。意識としては、ターン前内側に上半身を落としていくようにします。こうすることで、身体の内傾角度が、少しずつ深まっていき、スキー板をカービングさせるために必要な傾いた状態を作ることができるわけです。このとき滑っている感覚の中ではスキー板は、体よりも後ろ(山側)にあり、荷重期の弧を描いてくることによって体の横にスキー板が追いついてくるというイメージです。(image7)の重心の動きのラインをみてください。荷重期の始まりで重心が、フォールライン方向へと落ちているのがわかると思います。また、意識するのは重心をターン内側そして、フォールライン方向に落として、スキー板に適切に角付けできる傾いたポジションをつくることだけで、自分からスキー板を押したり加速させたりする感覚は持たないということです。なお僕達が一番注意しなければならないことは、ターン前半の段階で決して上体の外向傾姿勢をとってはならないということです。(image)を見てください。黒い矢印が上体の向き、白い矢印がスキー板の進行方向を表しています。()だとスキーの進行方向に対して上体は内向していますが、(×)の場合はスキー板に対して上体が正対あるいは外向してしまっています。このような状態でターンを続けていくと、外スキーが内スキーに比べて後ろにいってしまい、内足荷重となり、次の加圧期で内倒してしまい次のターンへの遅れや、加圧期でのズレの原因となります。また、ターン前半での内向というのが、(2、ターンの前提)の最後で述べた上半身は常にフォールライン方向をむく、と同じことを言っていることも理解しておいてください

   (内倒:字のごとく内側に体が倒れてしまうことを意味しますが、非常に難しい言葉です。先に加圧期と解放期の説明を読んだほうがわかりやすいと思います。内倒を一言で言えば、加圧期において内倒してしまっている=スキー板に圧をかけられるポジションにいないということです。ただし、内倒してはいけないのは、加圧期と解放期であって、荷重期で内倒気味になったとしてもしっかりとターンmaxで肩のラインを水平にすればよいということです。なぜなら荷重期の、腰と上体をターン内側に落としていく運動を大きくすれば、必然的に内肩は外肩にくらべて下がってくるからです。デモ選手の連続写真などをみると、特に重心移動の大きい大回りなどではほとんどの選手が荷重期では内傾角を深く取って、その結果上体も傾き内肩も下がった状態になっています。大切なのはその次の段階でしっかりと上体を真っ直ぐにするということです。(image)をみてしっかり理解してください。)

   ・A加圧期

    加圧期とは、自然に発生する外力を意図的なエッジング(加圧)操作を行うことで、解放期での加速力の原動力となる反発力としてスキー板に蓄える部分です。スキー板がフォールラインをむく直前から加圧期は始まります。行う動作としては、腰をターン内側にいれて、強い外向傾姿勢をとり、雪面をしっかりとホールドすることだけです。腰を入れる方向は、ターン弧やスピードに合わせて変わりますが、基本的には斜め前、横方向です。このようにスキー板がフォールラインに絡む部分で腰を入れてエッジングし、外傾姿勢をとれば、板が雪面をしっかりとホールドし、ターンmax以降の弧をオートマティックに描くことができます。(image10)

    (外傾姿勢(アンギュレーション)(image11picture3)を見てください。外足の軸に対して上半身が外側に傾いています。この状態を外傾姿勢といいます。内倒の説明でも述べましたが加圧期でしっかりとスキーを操れるポジションでいれることが大切で、そのために必要な姿勢というのが外傾姿勢であると考えてください。)

     もう少し詳しく説明しましょう。加圧期は、スキー板に圧を加えることで、板のセンターに力がかかって板にたわみを作る部分です。このたわみをつくるというのが加圧期においての最もポイントとなることです。なぜなら、たわみによってつくられたエッジのカーブに乗ることで、ターンmax以降のターン弧が自動的に作られるだけでなく、そのたわみを解放することにより反発力が得られ、それをうまく利用すれば、切り換えも楽になるし、うまく推進力にかえることができれば、解放期においてスキー板を走らせ加速していくことが可能になるからです。なお注意しなければいけないのは、必要以上の力をスキー板に加えることは、スキーがずれる原因になるということです。自分なりの加圧量というのを練習で知ることが大切です。木村公宣はスキー板を押さえる程度の力しか加えていないと言っていますし、皆川健太郎はスキー板を足と雪面でパックするイメージ、佐々木明はポールを通過する瞬間にターンを仕上げてしまうつもりのイメージで思い切り腰を内側にいれる意識を持っているようです。そして念のため言っておくならば、加圧期においても、やはり上体の向きは、つねにフォールラインを向いていて、加圧期には骨盤、膝、足首は、スキーの進行方向に正対していなければならないのです。

    ・B解放期

    ここは加圧期で意図的にスキーに力を加える動作をしたあと、エッジングでためた反発力を加速力へとかえていく局面です。ターンmaxから続く,雪面をホールドするという運動を行ったあと、傾いている体を起こし、スキー板の軌道と体(重心)をクロスオーバーさせながら、スキー板のエッジを切り換え次のターンの内側へ重心を落としていくための準備をすることになります。要はターンから次のターンへの切り換えをする部分です。外向傾姿勢、つまり上半身がしっかりとフォールラインをむいている上体をキープしながら加圧期にためた圧を徐々に解放していくようなイメージで、よいしょと体を起こしてやるとよいでしょう。この反発力をうまく利用してスキー板を加速させながらエッジを切り換え、また次のターンへ入っていくことが、最終目標となります。(picture4)をみてしっかりとイメージを持ってください。ターン後半で一番注意しなければならないことは、体がスキー板に対して遅れてしまい、お尻が落ちてしまったり後傾になってしまわないことです。こうなってしまうとうまく板に圧をためることができなくなるだけでなく、次のターンの内側への重心の落とし込みのタイミングが遅れてしまいます。こうなってしまう人は、なぜそうなるのかを自分なりに考える必要があります。もちろん筋力不足であったりする場合もありますが、しっかりと体を前に持っていって、体がスキー板より後ろにいってしまわないよう注意することが大切です。

・切り換え方法

  切り換えが解放期における主要な運動要素であることは上で述べました。ここでは、その切り換えの技法について説明します。ただしこのテーマは非常に理解するのが難しいので、難しいと感じた方はあまり気にしなくて結構です。

  まず、技法として、オーバークロス型の切りかえ(ストレッチング、伸身抜重ともいう)と、アンダークロス型の切りかえ(ベンディング、屈伸抜重ともいう)の二種類があり、実践的な滑走の中では、その時々のスピードや雪面状況に応じて二つをミックスした形、つまりミックス型を使っていることを理解してください。(picture5)はオーバークロス型、(picture6)はアンダークロス型、(picture7)はミックス型の切り換えをしています。順に説明していきます。

  オーバークロス型とは、切りかえ時に自発的に重心位置を上げることで抜重し、身体の重心がスキー板の上を通り越していくタイプの切りかえ方法です(picture5)を見てください。2コマ目で加圧期が終わり、3コマ目から解放期に入っていくのですが、5コマ目で一度重心位置を上げるために身体を持ち上げて抜重しているのがわかると思います。この切りかえの特徴は、見ての通り一度立ち上がってから次の荷重期にはいっていくことです。これの利点は、解放にかかる時間が長いのでその分スキーを加速させることができるということ、欠点は、切りかえに使うスペースに余裕があるときでないと使いづらいということです。つまり、フリー滑走や入りやすい(ポール間の距離が長い)ポールセットに適していることがわかると思います。

  次にアンダークロス型の切りかえです。これは、加圧期に圧を受けたスキー板が鋭く山側に回りこんだ結果、身体の下をすばやく通過し、次のターンを始動できる位置へと動いていくタイプの切りかえ方法です(picture6)を見てください。1コマ目は加圧期が終わった状態でその後解放期に入っています。このときに、オーバークロス型とは違い、2コマ目から4コマ目までほぼ腰の位置が上下に動いていないのがわかると思います。この切りかえは加圧期に強い雪面からの圧を受けていること、つまり高速で滑走していることが条件になります。オーバークロスと同じ感覚で重心位置を保つようにして切りかえればうまくいくと思います。この切りかえの特徴は、すばやく次のターンポジションをとらえられることと、スキーヤーが体感する重心の谷側への移動量が少なく上体を安定した状態に保ちやすいことの二点です。したがって、リズムの早いSL、フリー小回り、振り幅のきついGSなどで多用されています。ただし、読んでておそらくオーバークロスの方が簡単そうに見えると思います。実際マスターするのは難しいし、しっかり圧を受けてない状態でやると後傾のくせがつきやすいので、しっかりと加圧期に外力を感じられるようになり、次のターンの荷重期に身体を落としていくことができて、なおかつフォームが安定してきたらこの切りかえに挑戦してみるとよいのではと思います。

  最後にミックス型です。これは、言わば前二つの間を取ったようなものです。トップレベルのスキーヤーは、自発的な運動で身体とスキー板の位置を入れ替えるオーバークロス型の切りかえと、前のターンの圧を利用して入れかえるアンダークロス型の切りかえを、その時々の滑走スピードや雪面状況にあわせてミックスした形で使います。それぞれの切りかえ法には、切りかえのスペースやスピードに対する余裕があるときに適したオーバークロス型、タイトなスペースや大きな圧を得られる状態での滑りに適したアンダークロス型という特徴があるので、それぞれの特徴をいかせる形にミックスした切りかえの運動を行い、滑走スピードやターンサイズに合った重心移動を行っているわけです。このようなミックス型の切りかえを行うためのポイントとして意識することは、前のターンで受けた雪面からの圧に対応した運動を行うことです。そうすることで、板の推進力を活かしながら身体の重心位置を的確に次のターンの内側に運んでいくことができます。具体的には、雪面から受ける圧が弱い時には、重心を動かして切りかえる運動の比率(オーバークロス)が大きくなり、圧が大きな場合は、その圧を利用して切りかえる運動の比率(アンダークロス)が大きくなるということです。この運動を行う上で意識することは、まず正しい姿勢を保つこと。姿勢については7,で詳しく説明しています。もう一つはスキーの板を基準にし、それに身体の動きを対応させていくこと。そうすることで、雪面からの圧を感じやすくなるし、その結果切りかえ時に重心を移動する運動が、方向、量、時間という3つの要素がうまくマッチした合理的なものになるのです。(picture7)でいくつか紹介しておきます。ただし注意してほしいのはミックス型というのはそのときの状況にマッチした運動を総称して言っているのであって、アンダー、オーバークロス型と違って決まった型というのは存在しないということです。従ってこれらのpictureは一見アンダー、オーバークロス型に区別できるかもしれません。しかしそれは裏をかえせば、僕達が実際にすべる時には、このターンはオーバークロスでいこうなどとは考えず、そのときの状況にあわせて二つの技法をうまく合わせて切り返していくべきだということなのです。ぜひ前述の二つの切りかえの技法がマスターできたときには、ミックス型の運動を意識して滑ってみてください。

  ・上半身の向き、板と重心の位置関係

    今で一応ターンを分けて説明し終わったのですが、上半身の向き、重心の位置についてすこしまとめたいと思います。それぞれの段階で説明したのをまとめると次のようになります。

 

上半身の向き

重心と板の位置関係

荷重期

内向

重心は板より前の意識

ターンmax

板と正対

板と同じライン

加圧期〜解放期

外向傾

板と同じライン

     

   

 

 

 

重心と板の位置関係については、(image12)をみてもらえればわかると思います。決して重心()が板よりも後ろにいかないことが大切です。次に上半身の向きですが、同じく(image12)を見るとわかるように、常にフォールライン方向を向く意識をもてばよいということです。これは、重心が落下するのをできる限り妨げないためであるのとともに、上半身の動きが、下半身の動きの先行動作となっていることを示しています。荷重期では、先に上半身が内向し、そのあと下半身、つまりスキー板が回ってくる、加圧期〜解放期では切り換えですばやくスキーのエッジを切り換えるための準備動作として、外向傾姿勢をとって、重心を次のターンの内側へ、落としやすくしているのです。また、少し難しいことですが、この加圧期〜解放期にかけての外向傾姿勢によって作られる上半身と下半身の間のねじれは、次の荷重期において捻転力に変わり、それはスキー板をすばやくフォールラインにむかせるための力になります。そしてこの力を最大限に活かして滑るのが佐々木明選手です。

 4.ターンにおける理想と現実

    さて、今まででターンの理論に関しての説明の主要な部分は、一応説明し終わりましたが、このような理想のターンは決してあらゆるポールセット、雪面状況で実現できるわけではないということは、頭に入れておいてほしいのです。例えば急斜面でしかも振り幅のきついところを滑る際に、すべてのターンを理想的にクリアしていくのは不可能に近いでしょう。その際はターン前半にスキーをまわして、ここからならカービングできるという場所までスキーをもっていく必要がありますし、ゆるい斜度の直線的なポールをクリアしていく時は、重心落下だけでは十分な加速が得られないので、ターン前半に意図的にスキーに圧を加えてその反発で身体に推進力を与えて前へ前へと体をひっぱっていく動作も必要です。またスキーはバランスのスポーツです。滑っている間にいろんなリカバリーをしているし、それでもしばしば上体がつぶれたり後傾になるものです。バランスが崩れたときに、自分の身体能力、運動神経、頭脳をフルに使って、一つでも多くのターンをこの理想のターンに近づけていかなければならないのです。(picture8~11)で、順番にフリー大回り、フリー小回り、GSSLの見本となる写真を載せましたので、参考にしてください。

5、スタンス

スタンスとは足の幅のことです。基準としては、GS(大回転)ならば肩幅より少し広め、SLならばほぼ肩幅です。ただしそれぞれの局面において適切なスタンスをとっていくことが必要です。具体的には、(1)両スキーの雪面に対する角度が等しくて、(2)速度に合った内傾角がとれて、(3)安定感のあるスタンスがよいということです。(image13)を見てください。次の4つの図はターンmaxにおける下半身の姿勢を模式的に表したものです。@、Aは上の3つの条件をきちんとみたしています。@は高速、Aは低速です。このように速度に見合った、内傾角とスタンスが必要です。Bはスタンスが広すぎるため(1)が満たされていません。これだと安定感はあっても、重心が内足より内側に来ていないので重心落下を使ったターンは難しくなりますし体全体を使ったターンは不可能です。Cはスタンスがせますぎて上体が内側に入りすぎています。(3)の条件がみたされていないため、このまま滑っていくとターン後半で内倒転倒につながるおそれがあります。佐々木明のように手をつければ別ですが‥。もちろん多少の個人差はあって当然です。自分に適したスタンスを自分でみつけることが大切です。

6、ライン取り

ライン取りに関してはいろいろ考え方があるのですが、ここでは僕たちのレベルで一番有効に思えることをいくつか紹介しようと思います。

1、                 基本的にはターン弧を半円と考え、ポールの横で1/4円二つに分ける。

2、                 ただし意識としては、早めに加圧期を終わらせて、解放期、荷重期を長くとっていくようにする。この意識を持つことで、次のターンに遅れにくくなるしまた直線的に攻めることも可能になる。

3、                 できるだけポールの近くを通る。できることならポールに当たっていく。

7、姿勢について

ここでは最近あらゆるスポーツにおいて大変注目されている“姿勢”について説明します。ここではそのポジションをパワーポジションということにします。

具体的には骨盤を立てて背筋を伸ばして、母指球と小指球にのってたちます。そうすれば、後傾の原因になる猫背には決してなりません。例えば身近な例でいえば、イチロー選手なども打席で構えるときにこの姿勢をとっています。参考にしてみてください。ただ注意しなければならないのは、日本人の骨盤が欧米人に比べて元々寝ているので、単に骨盤を立てて背筋を伸ばすだけでは背中の筋肉に負担がかかってしまうということです。したがって、このようにならないためには、肩関節をやわらかくすることが必要です。こうすることで、背筋を過度に張った状態を緩和することができます。ストレッチを普段からするようにしてください。そしてまた、この姿勢を普段の生活からとるようにすることが非常に有効です。

なぜこのパワーポジションが大切なのか?それは、この姿勢がもっともバランスがよく、なおかつ体のバランスをくずさせる外的要因にすばやく対処することのできるポジションだからです。このポジションはあらゆるスポーツで注目されていますが、スキー界では特に注目されています。それは、スキーがバランス感覚を必要とするスポーツであるのにくわえ、ハムストリングスの動きが重視されているからです。このポジションは骨盤を立て腰高の姿勢を保つので、ハムストリングスの動きを最大限に使えるのです。

いきなりこの姿勢をスキーでとるのは不可能だし危険です。まずは陸上でこの姿勢を作れるようになることが必要です。バランスボードの上やランニング中やインラインのときにこの姿勢をとるよう意識して徐々にこの姿勢に慣れていってください。

8、ストックの役割

一見ただ持っているようにしか見えないストック。しかしそこにはすごく大切な役割が隠されています。ストックというより腕の動きにその要素が含まれると言ったほうがよいかもしれません。以下にいくつか挙げてみます。

@     バランスをとる

片足で立つとき、手をポケットに入れると入れないではバランスに大きな差が出ますよね。スキーでも同じです。つまりバランスをとるのに腕は大きな役割を果たしているのです。

A     ターンの先行動作としてストックをついたり前に出したりする。

これもすごく大切です。SLでは荷重期にすばやく体を次のターン内側に傾けていく必要があり、その先行動作として解放期にストックを体の横につく(picture12)し、GSでは解放期に体をおこしていくための先行動作として、腕を前に出したり(picture13)します。

B     体のバランスが崩れたときのリカバリーとしてストックをつく。

例えば加圧期から解放期にかけてお尻が落ちてターンが遅れてしまったときは、無理矢理ターンを終わらせて次のターンに入っていかなければいけません。そんなときには、うまく体の内前側にストックをついて体が落下していくのを止めて、突いたストックを軸に回るような意識で次のターンに入っていくとうまくリカバリーできます。このテクニックもワールドカップでよく使われています(picture14)

次に、カービングターンをするときの基本的なストックの突き方についてふれておきます。ポイントとしては、1,上体を落としていく直前に、その動作を先行する意識で体の横、少し前に突く 2,決して強く突かず、ポンと突いたあとは力を抜く 3,突いた所を中心に回っていく意識を持つ の三点です。(image17)でおおまかな運動を理解してください。

最後に、関節の話を少ししようと思います。車の運転をしている人を想像してください。うまい人と下手な人の見た目の違いは何でしょう?一番の違いは、ハンドルをもつ時の腕ではないでしょうか。うまい人は肘の関節を適度に曲げています。上手くない人は腕を伸ばしてハンドルを必死でにぎりしめていることが多いのです。関節が機能するためには必ず適度に曲がっていなければなりません。突っ張った状態では急な変化にすばやく対応できないのです。スキーでも同じことが言えます。腕を精一杯前に伸ばしている人をゲレンデでよく見ると思います。腕を前にするのは大切なことですが、そこで関節を伸ばしてしまうと逆効果です。肘の関節が固まってしまうと肩関節も動きが制限されてしまいます。このような状態ではうまく上半身のバランスをとることができなくなりますから、バランスのスポーツであるスキーにおいては極めて不利です。“関節は適度に伸ばす”これ、重要です!


☆おまけ

1、スキーの手入れについて

スキーの主役はなんと言ってもスキー板です。だから、スキー板は大切に使ってほしい。そのためにはワクシングという作業は不可欠です。ワクシングは、板が雪面でよく滑るようにするためだけでなく、スキー板の保護のためにも大切な作業です。だからここでワクシングの基本的な作業手順を説明しておこうと思います。でもここでは一番基本的なことしか書きません。なぜならワクシングはちゃっちゃと終わらせてしっかり体を休める時間も取ってほしいから。短時間できちんとワクシングをしてください。以下に手順を示します。ただし、文章ですべてを伝えるのは限界があります。詳しいやり方は詳しい人に聞いてください。

まずは、汚れ落しをします。一日滑った板はとても汚れ傷ついています。まずは、板をきれいにするのです。

@     水滴をトイレットペーパーできれいにふく。

A     スクレーパーでスキー板にできたケバなどを取り除く。

B     ブラッシングする。

C     ファイバーテックスで拭く。

次にワックスがけをしていきます。次の日に板がきちんと滑るように丁寧にワックスをかけてください。

@     ベースワックス(DOMINATORZOOMもしくはSWIXCH)をアイロンで溶かして滑走面に塗り、滑走面にワックスを染み込ませる。SWIXCHに関しては、次の日の雪の温度によってワックスの番号が変わってきます。詳しい人に聞いて適したワックスを塗ってください。

☆アイロン使用上の注意☆

1,適切な温度で。(ワックスが容易に溶け、面から湯気の出ない温度)

2,同じ部分にアイロンを当てすぎないこと。(滑走面が焼けてしまいます。)

3,ファイバーペーパーを板とアイロンの間に挟んで、ワックスを染み込ませやすくするとともに滑走面に傷がつくのを防ぐこと。

4,アイロンを使わないときはアイロンの面が地面につかないように気をつける。

5,アイロンを使う前にトイレットペーパーで面をふくこと。前の人が使ったワックスが自分のものと違うときに混ざってしまうのを防ぐためです。

6,非常に忘れやすいことなので特に注意してほしいのですが、ワックスをたらすときはかならずバイスを緩めてください。急な温度変化で板が歪むのを防ぐためです。

Aしばらく乾かす。ワックスは急には固まらない。板は二本あるわけだから、一方を乾かす間に一方に塗るようにして、作業効率を上げてください。

Bワックスが固まったらスクレーパーで余分なワックスを取る。滑走面に染み込んでいないワックスが残っていることは板の滑らない原因になるので取り除かなければならないのです。

☆スクレーパー使用上の注意☆

1,両手で同じ力を加えて、場所によってワックスの取れ方が違ったりしないようにはぐこと。

2,スキー板の前から後ろへ向かってはぐ。

3,スクレーパーの滑走面に対する角度は45度くらい。

4,スクレーパーはスクレーパーシャープナーでまめに研いでおくこと。角が丸まっていると作業効率がさがる。

5,はぎすぎて滑走面まではいでしまわないこと。

C     ブラッシングする。この作業は板に入っているストラクチャーにたまったワックスをかきとるためにします。ストラクチャーとは滑走面に意図的につくる溝で、水の通り道となるものです。ナイロンブラシでまずブラッシングし、次にナイロンよりも細かい馬毛のブラシで、仕上げてください。

D     最後に静電気防止と細かいワックスをとるためにファイバーテックスで滑走面を吹く。

以上が一番基本的なワクシングです。なお、終わったあとまわりを掃除することもマナーとして覚えておいてください。試合の前日のワクシングでは、この後もう一回レース用のワックスを塗ったりします。なお、スキー板は非常にデリケートなものなので、きちんとワックスをしていても、しばしば滑走面やエッジに傷がはいります。また、滑れば滑るほどエッジは丸まってしまいます。だから、次の年もちゃんと板が使える状態にするためにオフシーズンにはかならず、チューンショップへチューンナップにだしてください。それについては後述してます。そのときに、ストラクチャーとエッジの角度を指定しなければならないのですが、これは人によってさまざまなので、よくわからない人は必ず詳しい人に聞いてください。僕は身をもって体験したのですが、エッジの角度が1度違うだけで、板はまったく正確の違うものとなってしまいます。自分にあった角度、ストラクチャーをぜひ見つけてください。

  2、オフトレの必要性

オフトレでみんなが集まって一緒に運動することはとても大切なことだと思います。何たって部員とコミュニケーションをとれる貴重な場です。だから、できるだけたくさんの人に来てほしいなと思っています。

オフトレの一番の目的は体力の向上だと思います。スキーはああ見えて非常に激しいスポーツです。筋瞬発力も全身持久力も必要だし、関節や筋肉の柔軟性もいる。だからそれらがまんべんなくついていくようなメニューを組まなければならないと思っています。皆さんもこのメニューは何のためにしているのかということを考えてやってほしいなと思っています。あとインラインもとてもいいオフトレです。インラインはスキーとたくさん共通性を持っていてしかも前後バランスの許容範囲がスキーに比べてせまい。だから、スキーのフィーリングをオフの間に忘れないためにやるのもいいし、バランスのトレーニングにも最適です。ぜひ皆さんやってみてください。

3、スキーに必要なものとは

スキーをするには道具が必要です。これがまた多い‥。だけど、大切に使えば長持ちするものもあるし、安くて高性能なものもある。選ぶときはよく後のことを考えて選んでください。以下に大切かなと思ったものの選び方について書いておきます。かなり私情も入ってます‥。

スキー板:一番難しいマテリアルです。個人的意見としては、一本で済ますならば、女性は150センチくらいR10程度のデモ板かやさしめのレース板、男性ならば155~160センチR12くらいのレース板がよいとおもいます。短い方が前後バランスが悪い分しっかりしたポジションが必要になるし、また長い板に比べて曲がりやすくカービングを習得しやすい。またそれをそのままSL板として使えるから、二本にするときにGS板だけを買えばよいからです。GS板に関しては、男性は175~185センチ、女性は165~175センチを目安にするといいかなと思います。

ブーツ:必ずしっかり足にあったものを選ぶこと。ポイントは足の指が適度に動き、脛に圧をかけたときに変な痛みや違和感がなく、その時にかかとが浮かないこと。ブーツに関しては妥協は決していけません。ジャストフィットなものを探してください。買った後にシェル出しやインソール作成をするのも大切です。ブーツの硬さに関して言えば、過度に硬いものは下腿を使いにくいし、軟らかすぎると前後バランスが安定しにくいし、板に的確に力を伝えにくい。自分のレベルにあったものを見つけることが大切です。お勧めはテクニカディアブロ、ノルディカドーベルマン、ラングCOMPです。

ストック:アルミとカーボンがあります。それぞれに長所短所があるんですが、僕はどちらでもいいとおもいます。軽いのが好きならカーボンを、少し重めがいいならアルミを選んでください。女の子はカーボンの方がいいかなと思います。あとSLは少しがっしりしたものを選んだほうがポールを倒しやすい気がします。おすすめストックはやっぱりキザキかな。日本製だからかしてグリップがすごく手にフィットします。値段も割りと安いです。

ビンディング:スキー板とブーツをくっつけます。女性なら解放値11、男性なら13くらいまであれば十分です。そんなにどれも変わらないのでデザインや値段で決めてオッケイです。ただお勧めするなら断然MARKERPISTON CONTROLのついたもの。その効果はワールドカップでも実証済みです!

インナー():インナーは実はとても大切です。寒いとやる気が失せてしまいますから。体温調節機能と発汗性に優れたものがいいと思います。スキーのためだけに買うのはもったいないけど冬のオフトレとかでも着れるから(僕は現にそうしてます)暖かくて薄いものをぜひ買ってください。今の科学繊維はすごいですよ!お勧めはCWXのダブルサーモとUNDER ARMORcold gear。前者は程よくぴったりで大体5000円、後者はまるで第二の皮膚。値段は6500円くらい。僕はCWXを使ってます。あとユニクロアウトラストフリースもお勧めです

インナー():これも必須アイテム。別に普通のタイツで全然いいですが、こだわる人にはぜひともCWXを勧めたいと思います。僕も愛用していますが、これには筋肉のサポート機能がついているので、履くだけで筋肉痛が軽減されるのです。イチロー選手も愛用してます。僕はこれもオフトレで多用してます。少し値段ははるけど、お勧めです。

靴下:別になんでもいいのですが、五本指ソックスはあったかくて、足裏感覚もいいからおすすめです。

ヘルメット:結構目立つパーツなのでかっこいいものを選んでほしいです。チンガードという顎を守るバーがついていると安心してポールにあたれます。機能的に優れているのはスワンズ。個人的に気に入ってるのはジローとboeri。かなりかっこいいです。

ゴーグル:別に安いのでいいけれど、メットと同じメーカーにするとフィットします。あとメット対応になっていて、曇り防止のためにダブルレンズになってるものにしてください。僕が気に入っているのはSMITHとボレー。ちなみにSMITHは蔦原さん使用ブランド!

グローブ:男の子はポールにあたる機会が多いと思うからパッドの入ったものがお勧めです。女の子はとにかくあったかくて水をはじくもの。お勧めはデサント。値段が安くてパッドも入ってて暖かいです。

ここで参考として、僕のスキー時の服装を紹介しておきます。まずは寒いとき。上半身はインナー(cwx)の上にワンピを着てその上にフリース、一番上にスキーウェアかポール用のジャケットを着ています。下半身はcwxの上にワンピ、その上に短パンかウェアをはいてます。暖かいときは、上はインナー、ワンピ、ジャケット、下は冬と同じ。いろんな重ね方があると思うので先輩に聞いたりして自分にあったスタイルでスキーを楽しんでください。