世界にはたくさんの国があります。その国の数だけ、言葉や文化もあります。
そういった違った文化背景で生まれ育った子どもたちが、日本の学校へたくさん転入しています。
文部省発表の「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況に関する調査結果」によると、平成11年9月1日現在で、日本国内の各種公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒の総数は、1万8,585人となっています。そして、その数字はまだまだ増加傾向にあります。
彼らは、様々な問題に直面しています。言葉はもちろん、習慣や考え方の違いにより日本人との摩擦が生まれ、イジメや引きこもり、校内・家庭内暴力、不登校、不就学にまで発展してしまうケースも多々見受けられます。
彼らに全く問題がないとは言いません。が、受け入れる側が相手の国の習慣等を理解していれば避けられたかもしれない事例もいくつかあるように感じます。
すべての国や例を網羅することは不可能ですが、私が知っている限りのいろいろなケースをご紹介することによって、少しでもトラブルを未然に防ぐことができればと考えました。
その他諸外国の様子や、お気づきになったこと、また勉強・調査不足や不備な点のご指摘等、ご意見をいただけるとありがたく存じます。
メール宛先:mict@candypot.net
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日本の学校の校則の厳しさと授業時間の長さに驚く(抵抗を感じる)。
アルゼンチンの学校は、例えるとすれば日本の大学のような雰囲気。服装は自由(白衣のような上着だけ指定されている)、飲み食いも自由。
校内に売店がある場合も。
午前中もしくは午後の、半日の授業。家庭訪問や授業参観は一切ない。問題があったときにだけ、親が学校に呼び出される。
しかし、小学校2年生よりテストに合格しなければ落第させられるので(1年生は落第なし)自主的に勉強している。
体育の実技はあまりなく、バレーボールやサッカーくらい。運動会、理科の実験、美術(図画・工作)、家庭科はない。
音楽も理論ばかりの授業で、歌を歌ったり楽器を演奏したりすることはほとんどない(全くないところもある)。
なので、恥ずかしくてイヤだ、という声を時々耳にする。先生が無理強いするのですっかり嫌いになった子どもも。
家庭科、理科の実験等はおおむね喜んでやっている様子。
算数の、割り算の記号が違う国がある。(大抵は「÷」だが、アルゼンチンでは「:」)
割り算の筆算の方法が違う。日本式で計算しろと言われ、混乱して割り算が全くできなくなった子どもがいた。
テスト等の、○×のつけ方が違う。正解のところだけチェックマークを入れる国もある。
掃除を自分でしない(掃除する専門の人がいる)国が多い。学校でも掃除の人を雇っている。
家でも掃除はメイドの仕事。だから、部屋の床や道路にゴミを捨てることを何とも思っていない人たちがいる。
反対に「掃除する人たちの仕事を作ってやっている」という考えでいることもある。
いつまでもゴミを手に持っていると逆に「汚いものは早く捨てなさい」と親にその辺に捨てるよう怒られる。
「ほうき」を見た事がない人もいる。
また、雑巾を素手で触ることに非常に抵抗感がある。
大抵、雑巾は、何というのでしょう、タイルなどの水を切る掃除道具(ガラス拭きに似た、ワイパー状のアレ)か、モップの先に引っ掛けて使うもので、
「あんな汚いものを手で触るとは何事か!」という考えの人が多い。
当然、親も同じ考えなので、「ウチの子はメイドじゃない」「何故、手でしなくてはならないのか」と苦情を訴える場合もある。
台拭き、床拭きの区別もないことが多い。つまり、床を拭いたその同じ雑巾で、机やガスコンロ、調理台を拭く、ということ。ひどい場合は食器まで拭いてしまう。
私は初めて見たとき、ものすごいショックを受けた。ご注意あれ。
給食のある国のほうが少ない。
ケース1 日本食
母親か祖母が日系の場合、母国でも日本食あるいはそれに似た味付けの料理を作り、口にしていることが多い。
大抵ははじめて口にする味。ごはん、味噌汁、しょうゆ味。
冷たいおかずに慣れていない人々もいる。魚を食べない人々もいる。
ケース2 味付け
世界の料理の中で、砂糖を使った甘い味付けの料理は日本食くらいかと思われる。
食べなれていないので、その甘いおかずが食べられない(煮物等)。
香辛料をたくさん使う国、反対に全く使わない国。
アルゼンチンやブラジルは香辛料を使うことはまれなので、日本の子どもが大好きなカレーライスが嫌いな場合が多い。
ケース3 宗教
ご存知のように、イスラム教では豚肉・貝類を、ヒンドゥー教では牛肉を食べることがご法度となっている。
特にイスラム教では、ハラルという祈祷済みの印のない肉は食べることができないし、また、肉を扱った手・器具で調理することも禁じられている。このために、大混乱した学校現場があった。
田中かすみ様より「ムスリム児童生徒の宗教生活を保障するための具体的な支援のありかた」の資料提供をいただきました。是非ご一読ください。
ケース4 弁当
弁当を知らない人々がいる。また、冷たい食事に抵抗を感じる人々もいる。
母国で弁当というと、大抵はサンドイッチ等手軽なものばかりで、中にはスナック菓子を昼食代わりにする場合もある。
どうやって作るか、何を入れるかもわからず、その為にイジメにあったということがきっかけで、中国版「命の電話」である関西生命線が、96年に1冊の本を制作、自費出版。カラーでていねいな内容。
「外国人のためのお弁当」(日 漢 英)関西生命線 編集 発行 1200−
問い合わせ先 : 関西生命線
大阪市西区江の子島1-5-12-501
TEL&FAX 06-6443-3562
ケース5 お茶
「お茶=紅茶」である場合が多い。
食事をジュースと一緒にとる国がほとんどで、水筒にジュースを入れてきたり、缶・ペットボトルのジュースを持ってきてトラブルになる。
赤ちゃんに、哺乳瓶に入れたコーラを飲ませている人が多いお国柄、どうしても清涼飲料水が手放せない様子。
余談だが、夏、「喉が渇いた」と水道に口をつけてゴクゴクと水を飲み、ついでに頭から水をかぶってボトボトの濡れねずみになって、しょっちゅう先生に注意されている南米出身の子どもがいた。
ケース1 歯磨きの習慣のない国がある
ケース2 下着を着けない国がある
鉄棒などのときに初めて発覚し、先生・クラスメートが大慌てする。
ケース3 暑いから、とすぐに服を脱ぎだす
ケース4 アクセサリー・香水をつけて登校する
ごく普通の生活習慣として、アクセサリー・香水・化粧を当然の身だしなみと考える文化がある。
よく問題になるのが、女児のピアス。
日本人のつけるピアスとは意味が違うことがある。我々は「ピアス=おしゃれ・装飾物」だが、他国では「女性である証」。
女の子が誕生すると、必ずといっていいほどピアスを開ける。母親からの大切な、初めての贈り物なのである。
それを何の説明もなしにはずせ、と命令されることは、「お前は女ではない」と宣言されているようなもの。
私自身、娘を連れて初めてアルゼンチンへ里帰りした際に主人の両親(特に母)や親戚、知り合い等から口々に「どうしてピアスをしないのか」「プレゼントしてやるから今すぐ開けて来い」と言われた(まるで母親失格のように)。どちらの国の学校に通うことになるのかわからないし、日本の学校事情を説明して納得してもらった。
ケース5 ハンカチ・ティッシュ
ティッシュを多用するのは日本人くらいかと思う。箱入りティッシュやポケットティッシュなど、アルゼンチンでは売っていない。
ではどうするかというと、「ハンカチ」が登場する。鼻をかむのも「ハンカチ」。(主人は未だにハンカチで鼻をかんでいる)
最近、「人前で(しかも食事時に)鼻をかむとはけしからん」といった投書を新聞等で見かける事が多いが、海外では反対に「人が食事をしているのに、横で鼻をズルズルいわせるなんてけしからん」「鼻をズルズルさせているのはしつけが悪い(マナー違反)」という声をよく耳にした。しかし、食事中にくしゃみをするのは大変なマナー違反らしい。実際、すごく叱られたことがある。
トイレのあと、手を洗わない
トイレが不潔であるという認識はある。が、それ以上に、誰もが触る「蛇口」が不潔であるという認識が高く、そんな不潔な蛇口にわざわざ触ってばい菌をつけるなんて…と考える人も多くいる。
私の知っている限り、アルゼンチンでは手を洗う人のほうが稀である。
紙を流さない
南米では、紙を流すとパイプがつまるので横のゴミ箱へ捨てるよう、わざわざ張り紙がしてあることが多い。
反対に、紙を捨てるのは常識なので、「このトイレは紙を流しても大丈夫」と張り紙がしてあることもある。
日本での習慣、流してよいもの、いけないものを最初に説明しておくのもいいかもしれない。
使い方がわからない
和式トイレの使い方がわからなくて困る、という声を耳にすることがある。(子ども・成人に限らず)
その他、どうやって流すのか、ドアの鍵の閉め方、スリッパを履きかえるのか否か。
トイレの場所を教えるときに、これも確認することをお勧めする。
「どうしてこんなにお金がかかるの?」
日本の学校で必要な物を考えてみてください。
制服(夏・冬)、体操服(夏・冬)、通学用カバン、上履き、体育館用靴、水筒、リュック、ノート、筆記用具、絵の具、色鉛筆、習字道具、リコーダー、三角定規、コンパス、はさみやのり、水着、置き傘、お道具箱、裁縫道具…。
普通は学年に応じて少しづつ買い揃えていくものですが、転入・編入となると、一度に揃えなければなりません。その出費が大変です。
子どものために買ってやりたくてもお金がない、また、どうして他人の物を借りて使ってはいけないのか、という声もあります。
その他にも、修学旅行などの積み立てや毎月の給食費等々、どんどん請求されるものの、保護者も日本語がよくわからず、何のためのお金なのかが理解できずに支払いを拒み、問題になったことがありました。
「10歳過ぎたら働くべき」
諸外国の中には、「10歳を過ぎるともう子どもではない。働いて家計を助けるべきだ」と考える人々もいます。
自分がそういう風に育ってきた保護者なら、自分の子どもも…と考えるのは当然です。
子どもが日本の学校になじめないのをいいことに?、学校へ行かせず工場などで働かせている事例を耳にします。
これは、保護者の責任ばかりではなく、介入するブローカーや斡旋業者が問題である場合もありますが、根本的な考え方の違いもあり、解決するのはなかなか難しいようです。
外で働かせてはいないものの、両親共働きのために、小さな兄弟の面倒を見るために学校を休まされているケースもありました。
同国人がかたまって住んでいる地域の場合、非番の人や、赤ちゃんを抱える女性が代表で近所の子どもたちの面倒を見ていることがあり、その方が体調が悪かったり、都合がつかなかった時に、変わりを引き受けさせられるというケースもありました。
両親とも帰宅が遅いため、家事一切を任されている女の子。
両親が同時に夜勤のため、一人で、または小さな兄弟の面倒を見ながら不安な夜を過ごす子ども。
そういう生活に気がついた近所の日本人から「子どもたちだけで何かあった場合、どうするのだ」「親がいないので騒いでうるさい」等々の苦情が相次ぎ、アパートを追われることになった家族。
根深い問題です。
事前の話し合い
日本人には当然のことが通じない場合がほとんどだという意識で、丁寧すぎるくらいのご説明をお願いします。
特に、必要な経費のこと、規則のこと(欠席・遅刻・早退の連絡、転居・転校時の手続き等)、行事のこと…。
子どもに対しても、規則や行事のことは説明してあげてください。
日本の祝日や休校日、長期休みがわからず、オロオロしている子どもがいます。
学校からの通知文
出稼ぎで来日している人々の場合、きちんと日本語を勉強したことのない人が大勢います。
日本語を勉強しても、「話し言葉」と「書き言葉」の違いで、文面をよく理解できないことがあります。
また、漢字はよくわからなくても、かな・カナ、ローマ字は読める人がほとんどでしょう。
ですから、通知文(お知らせプリント)には、ご面倒でも振り仮名をつけて差し上げてください。
取り出し授業
「何故、みんなと離れて別な教室で(場合によっては別な先生と)勉強をするのか」「何の勉強をするのか」を本人はもちろん、他の日本人生徒にもよく説明をしてあげてください。最初だけでなく、折に触れてお話していただきたく思います。
最初はみんな覚えているのですが、時間の経過と共に忘れてしまい、「アイツはバカだ」「このクラスの勉強についていけないから別なところへ連れて行かれている」「特別扱いを受けている」といったイジメに発展することがあります。イジメにならないまでも、本人がそういう意見に傷つき、取り出し授業を拒否するようになったこともありました。
最初は外国人で珍しくてチヤホヤされているけれど、そのうちにお互いのカルチャーショック・摩擦が起こり、無視される・大喧嘩が勃発する場合が多いです。思春期にかかるとその傾向はより強く、学年どころか学校全体から無視され、先生にもお荷物扱いされてノイローゼ・不登校になり帰国した生徒がいました。二度と繰り返したくない過ちです。
過信しないで
子どもの語学習得能力には舌を巻きます。あっという間に友達と日本語でケンカをするまでに上達する子どももいます。
でも、過大評価しないで下さい。
「話し言葉」と「書き言葉」の違いのほかに、「日常使う言葉(生活日本語)」と「授業・教科書の言葉(学習日本語)」の違いがあります。
何でもない会話は全く問題ないけれど、教科書に書いてある言葉、テストの問題の言葉、授業中の先生の言葉はわからないことがあります。
もう、友達と話せているから大丈夫、ではないことを頭の片隅にでも置いておいて下されば幸いです。
母国をわすれないように
日本語をはやく覚えてもらいたい為に、「家でもなるべく日本語を使うように」「両親も日本語を勉強するように」とおっしゃる先生がいらっしゃいます。私は、自分の受け持った生徒には「家では自分の国の言葉で話すよう」言っています。
先述したとおり、子どもが言葉を覚えるのは本当に早いです。でも、一方で子どもは日本語しか分からない、親は母国語しか分からないといった、親子でコミュニケーションがとれなくなるケースが多発しています。また、帰国後に言葉がわからなくて日常・学校生活に支障が出るといった問題も出ています。
よほどその言語を熟知していない限り、私たちが彼らの母語を教えることは不可能です。かといって、他に教えてくれる場所もほとんどの場合ありません。一番手っ取り早いのが「家庭・家族」です。
言葉だけでなく、折を見て母国の歴史や地理、習慣、文化等の話もするよう、子ども・親の双方にお願いしています。
母国に誇りをもち、そして、日本のことも好きになってもらうために。
もっとほめて
「ひらがなが読めない」「漢字がわからない」「日本語がわからない」「勉強についていけない」…出来ないことばかりに目が行ってしまいがちです。教えることのプロの先生方に「釈迦に説法」で申し訳ないのですが、でも、もっとほめてあげてください。
子どもたち自身、できないこと・わからないことだらけでコンプレックスのかたまりのようになっています。愚痴を言う相手もなく、当り散らす訳にもいかず、自信喪失で落ち込んでいるところへ、まわりから(先生やクラスメイト)「あいつはできないから」などと言われて大爆発を起こすのも無理はありません。言葉がわからなくても、そういう雰囲気は敏感に察知します。
どんなちっぽけなことでもいい、なんでもほめられるものはほめてあげてください。
市販図書
ようこそ日本の学校へ−日本語指導が必要な外国人児童生徒の指導資料− 著:文部省 発行:(株)ぎょうせい \971(税別)
*外国人児童生徒受入れ時の調査票例(ポルトガル語・中国語・スペイン語)
*学校から家庭への連絡文例(ポルトガル語・中国語・スペイン語)
登校、所属(クラス)、学校で使うもの、昼食、集金、学校スケジュールの変更等、学校行事、保健、その他
外国人児童生徒のための日本語指導 編集:東京外国語大学留学生日本語教育センター 発行:(株)ぎょうせい
<第3分冊>中国語版 文法説明 \1800(税別)
<第4分冊>ポルトガル語版 文法説明 \2200(税別)
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中国帰国者定着促進センターのメーリングリスト「子どもメール」の情報ポックスに、小学校の国際教室を長年担当されている兵庫県の村山勇先生の書かれた文献があります。すぐに使えるノウハウが一杯で、とても参考になります。
ぜひ一度ご覧下さい。