メールで寄せられた質問と回答

※質問者名は匿名,役職は省略させていただきます.

 FAQ1★分野 : 音声生成 ◎内容 : 声門下圧

 FAQ2★分野 : 信号予測 ◎内容 : フラクタル信号の予測

 FAQ3★分野 : カオス検定 ◎内容 : Wolfのアルゴリズムについて

FAQ1

Q:分からないことがあります

 初めまして、***と申します。
 分からないことがあります。
 声門下圧と口腔内圧は同じことなのでしょうか。
 もし、同じことであるならば、声門下圧について詳しく教えていただけませんか?
---2002/06/29---

A:
 長岡技術科学大学の古賀です.
 
 はじめまして.
 
 音声(母音)は,肺から押し出された呼気が,気管支,気管,
 声門,声道,口腔を通過することによって生成されます.
 声門の内部には一種の振動体である声帯が存在し,
 この振動によって音声の基本周波数が決定されます.
 
 問題の声門下圧は,この声門の入口(呼気の流入口)の圧力の
 ことで,一般的な音声生成モデルでは,肺,気管支,気管内部の
 圧力変動を無視して声門下圧 Ps を一定値としたモデルによって単純化
 しています.これは初代のモデルであるJ. L. Flanagan氏らの
 1質量モデルで単純化されたものの影響でしょう.
 
 一方,口腔内圧はその名の通り,口腔の中の圧力ですが,
 口腔内部でも場所によって圧力が変動しますのでその総称という
 感じです.私の音声生成モデルでは,口腔も声道の一部と考えており,
 声道内部の形状の変化がそのまま圧力の変化につながり,
 母音などの意味のある音声波形が形成されるのです.
 
 より詳細は,私のホームページ
 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/~koga/papers.html
 の「生体信号生成」に関する論文が参考になるかと思います.
 特に,
 James L. Flanagan, "Speech Analysis Synthesis and Perceptio, 2nd
 ed.", Springer, New York, (1972).
 は素晴らしい書籍です.
---2002/07/01---

Re:
 古賀先生
 今回はどうもありがとうございました。
 声門下圧と口腔内圧について、疑問が解消されました。また、論文を紹介していただ
 きありがとうございました。
---2002/07/02---

補足:僕は学生ですので気軽に質問してください(古賀)


FAQ2

Q:フラクタル時系列について

 古賀博之  様
 
 突然のメールで失礼いたします。
 ホームページを拝見させて戴きご連絡をさせて戴きます。
 ***と申します。
 
 私は複雑系の知識は全くないのですが、フラクタルに興味があり個人で調べ
 ております。なにぶんにも素人なものですのでご専門でご研究をされて
 いらっしゃる方のご意見をお聞かせ願えればと思いご無礼を承知でご連絡
 させて戴きました。
 
 ホームページのお手元にある論文集の中に「フタクタル理論に基づく解析」
 にある"フラクタル的な性質をもつ時系列の一予測手法とその応用"について
 興味があり、自分でも論文を取り寄せたり時永先生の「複雑系による経済
 モデル分析」なども取り寄せました。
 
 VBを使って資料を元にプログラムを作成し、fBmのデータを使って実験して
 見ましたがこの論文の様な結果にはなりません。
 プログラムにミスがあるのか?資料をそのままプログラムにしただけでは
 不十分なのか、または理論自体に無理があるのか原因が解りません。
 (これを作るのに2年近く掛かってしまいました。)
 
 そこで古賀様にお尋ね致しますが、このアルゴリズムで本当に予測として
 使えるかどうか古賀様のご感想をお聞かせ願えないでしょうか。
 時永先生に直接お尋ねしようか?とも考えましたが内容が失礼に当たる
 のではと思い差し控えました。
 
 論文にある様に観測データに対してはなぞる様に上手く出力出来るのですが、
 未知データに対してはインパルス応答で出した期間データをそのまま出力
 しているのに過ぎない気がしています。
 論文にある様にb倍しても同じではと考えますが如何でしょうか。
 
 突然のメールでのご無礼をお許しください。
 ご多忙とは存じますがご解答いただければ幸いです。
 宜しくお願い申し上げます。
---2002/10/24---

A:
 長岡技術科学大学の古賀です.

 質問に対して,私なりの返答をさせていただきます.
 ただし,この対象となっている論文についての私の関心は
 フラクタル次元の推定法である最尤推定法であったため,
 予測に関しては私もシミュレーションにより実際に検証した
 わけではありません.

 この手法はfBm信号の有する自己アフィン性をうまく利用する
 ことによって,過去に観測されたフラクタル信号を時間軸で
 スケーリング変換することで同じ性質を有するフラクタル信号を
 予測信号と称して生成しています.

 さて,予測対象の信号がある一定の自己アフィン次元(または,
 Hurst指数)を有する信号だとすると,その一部と全体の構造は類似し
 ているため,例えば,時刻[0,T-1]の範囲の信号をそのまま時刻[T,2T-1]
 の時間に利用しても(絶対値のシフトが必要ですが),そのまま
 予測信号を生成することが出来ます.しかしながら,実際の観測信号を
 扱う場合に[0,T-1]の信号のHurst指数が必ずしも時刻[T,2T-1]において
 同じであるとはいえません.
 この手法は予測対象信号が完全なfBmである必要があり,それが成立し
 ないような観測信号においては難しいと思われます.

 もし,貴方の実験データが完全なfBmであるならば,プログラムの誤り
 を除くと,フラクタル次元が高すぎるためではないかと思われます.
 同論文の表1の結果を見てもわかるように,フラクタル次元が高くなる
 と予測精度が低下します.これはフラクタル次元の高い信号はそれだけ
 自己相関特性が低いため,あまり過去のデータを利用するとその分
 性能が低下するのだと思われます.そのため,過去のデータのフラクタ
 ル次元を推定し,それに見合った係数 a,b を定めなければなりません.

 これまで,
 フラクタル信号ではありませんが,実際の生体信号などから観測される
 カオス信号を予測しようとする研究が盛んに行われています.例えば,
 株価の変動の予測なども行われています.代表的なものとして,

私どもの研究室での

「周期カオスニューロンを用いたカオス性を有する時系列の学習」
   シィハヌー ネティ,中川匡弘
  電子情報通信学会技術研究報告NLP2001-5(2001)pp.27-34.

および,

非線形予測の文献 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/~koga/papers.html#PREDICT

などが参考になるかと思います.
---2002/10/24---

Re:
 古賀博之  様
 
 早速のご解答ありがとうございます。
 ***です。
 
 > もし,貴方の実験データが完全なfBmであるならば,プログラムの誤り
 > を除くと,フラクタル次元が高すぎるためではないかと思われます.
 > 同論文の表1の結果を見てもわかるように,フラクタル次元が高くなる
 > と予測精度が低下します.これはフラクタル次元の高い信号はそれだけ
 > 自己相関特性が低いため,あまり過去のデータを利用するとその分
 > 性能が低下するのだと思われます.そのため,過去のデータのフラクタ
 > ル次元を推定し,それに見合った係数 a,b を定めなければなりません.
 
 恐らくプログラムミスだと思います。
 ご解答の内容を元にもう少しがんばってみます。
 
 > この手法は予測対象信号が完全なfBmである必要があり,それが成立し
 > ないような観測信号においては難しいと思われます.
 
 先ずはfBmデータを使って検証したいと思いました。これが出来ないと
 応用は出来ませんからね。
 古賀様くらいに成られるとパと間違いを見つけて修正されるのでしょうが、
 なにせ素人なものですので、苦労します。
 
 > これまで,
 > フラクタル信号ではありませんが,実際の生体信号などから観測される
 > カオス信号を予測しようとする研究が盛んに行われています.例えば,
 > 株価の変動の予測なども行われています.代表的なものとして,
 >
 > 私どもの研究室での
 >
 > 「周期カオスニューロンを用いたカオス性を有する時系列の学習」
 >    シィハヌー ネティ,中川匡弘
 >   電子情報通信学会技術研究報告NLP2001-5(2001)pp.27-34.
 >
 > および,
 >
 > 非線形予測の文献 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/~koga/papers.html#PREDICT
 >
 > などが参考になるかと思います.
 
 ありがとうございます。
 題名を聞いただけで理解できそうにありませんが一度取り寄せて勉強させて
 戴きたいと思います。
 
 本日は貴重なお時間をさいてご解答戴き誠にありがとうございました。
 今後益々、古賀様のご研究のご発展をお祈りしております。
 
 本当にありがとうございました。
---2002/10/24---


FAQ3

Q:question

 初めまして。
 ****といいます。
 この度ホームページを拝見させていただきまして、
 メールさせてもらいました。
 
 今卒業研究で、Wolfのアルゴリズムによる音声のリアプノフ指数の解析を
 行っています。
 もう、まとめの時期にきているのですが、
 思うように実験が進んでいません。
 
 質問があるのですが、
 Wolfのアルゴリズムは何を解析するために作られたものか
 知っていますか?
 音声以外のなんらかの解析をするために作られたのではないか?
 音声の解析に向いているのだろうか?
 と疑問を持ち始めました。
 
 もし知っていることがあれば、
 何か教えていただけると助かります。
 
 急なメールですいませんでした。 失礼します。
---2003/02/12---

A:
 長岡技術科学大学の古賀と申します.
 
 Wolfのアルゴリズムについてですね.
 
 簡単に言うと,
 Wolfのアルゴリズムはカオス力学系のリアプノフ指数を算出するための方法です.
 
 一般的に,Henon写像やLorenzアトラクタなどの方程式が既知である場合は,
 微小時間の写像が定式化できるため,ヤコビ行列を求めることができます.
 (従って,リアプノフ指数の計算が容易にできます.)
 しかしながら,音声信号などの場合には,もとの力学系(音声器官)の方程式
 なんて誰も知りませんし,全ての信号を観測することは不可能です.
 そこで,ヤコビ行列の推定を行う必要があります.
 
 Wolfの方法は,そのヤコビ行列を推定する1つの方法でして,
 ノイズなどの混入に強い手法であると聞いたことがあります.
 私の研究における音声信号の解析では,東北大のSano先生とSawada先生によって提案
 されている手法を用いています
 (日本ではこちらの手法の方法が一般的なようで,東大の合原先生とかも使っていま
 す.)まあ,どちらを利用するにせよ,うまくヤコビ行列を推定できれば,
 音声のリアプノフ解析が可能です.
 
 Sano先生とSawada先生による方法は,
 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/~koga/papers.html#LYAPUNOV
 を参照してください.(教科書的なものにも載っています)
 また,WolfのアルゴリズムとSano,Sawadaのアルゴリズムの拡張が,
 Gyoergy Barna and Ichiro Tsudaの論文です.
 
 また,音声のリアプノフ解析については,
 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/~koga/papers.html#MINE
 の
 the Proc. as a Special Issue of Journal of Korean Physical Society, Vol. 40,
 No. 6, pp. 1027-1031, (2002)の論文(PDFで落とせます)や,
 Technical Report of IEICE, NLP2001-10, (2001-05), pp.67-74
 が参考になろうかと思います.後者は日本語です.
 ああ,そうそう,私のページhttp://pelican.nagaokaut.ac.jp/~koga/study/Lyapunov.html
 にもある程度解説が載っていますので参考にしてください.

 また,私以外の研究者では,
 http://pelican.nagaokaut.ac.jp/~koga/papers.html#VOCALANALYSIS
 の上から3つはカオス性の解析が行われています.

 参考になりましたでしょうか?
 また質問がありましたら,お寄せください.
---2002/02/12---

Re:
 ○○大学の**です。
 
 わざわざありがとうございました。
 また質問をすることがあるかもしれませんが、
 宜しくお願いします。

 失礼しました。
---2002/02/12---

補足:卒業前なのにこれからリアプノフのプログラムを組むのは大変でしょうけど,
がんばってもらいたいものです.

 質問には出来る限り迅速にお答えします.まあ,学生ですので革新的な意見が交換
出来るかどうかは甚だ疑問ですが,発展的な議論が出来ればと思います.内容は,
カオス・フラクタル・音声信号(生成と解析)が主ですが,
脳波の解析や,プログラミングについても意見が交わせればと思っています.
koga@pelican.nagaokaut.ac.jp
またはメッセージリストまで


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2003/02
by Hiroyuki Koga