日本が地図上を動く??




注意書き


この話はなかなか難しいので興味のない人は読んでも意味不明だと思います。

でも地図を眺めているだけでおもしろいなどという人には興味深いかもしれません。

そういう人はもう知っているかもしれませんが・・・




さてさて本題に入ります。

「日本が地図上を動く」とは一体どういう現象でしょう?

最近地震が頻発していて、そのための地殻変動で東西南北に数十センチ移動したとかでしょうか

確かに地殻変動で日本列島は動いています。

しかし、今回日本が動いた距離はなんと、約450メートル!これは相当な距離です。

これはどういことなのか、これから順を追って見ていこうと思います。




@地球は球じゃない


これはみなさんご存知かもしれません。

地球は赤道半径と極半径の距離が異なります。

赤道半径の方が極半径よりも長いのです(地球の円周ではなく、地球の中心から極地点、赤道上の点までの距離)。

つまり、地球は横に膨らんだ回転楕円体ということになります。

ちなみに世界基準における地球の


赤道半径は、6378137.00m
 極半径は、6356752.31m


その差は実に21384.69mです。

つまり横に約21km長いわけです。




A地球の大きさ、各国で誤差?


次は、地球の大きさや距離や地図などを表すときの基準、つまりものさしについてです。

実はこのものさし、世界各国バラバラの基準で定められています。

@で出てきた回転楕円体のことなのですが、各基準によって赤道半径、極半径がそれぞれ異なっています。

例えば、


          ベッセル楕円体(1841)--赤道半径 6377397.155m-----使用国 日本
          国際楕円体(1924)-----赤道半径 6378388.00m------使用国 ヨーロッパ、南米各国
          クラーク楕円体(1866)---赤道半径 6378206.4m-------使用国 アメリカ
          GRS80楕円体(1980)---赤道半径 6378137.00m


日本は一番上の、ベッセル楕円体をなんと1841年から使用してきました。

現在、地球を最もよく近似している楕円体として広く用いられてるものはGRS80楕円体で、1980年に採択されたものです。

これが世界基準と言うわけです。

ベッセル楕円体と、GRS80楕円体の誤差を比べてみると、


                               ベッセル       GRS80

                    赤道半径:   6377397.155m   6378137.00m   -739.84m
                    極半径 :   6356078.963m   6356752.31m   -673.35m


こんな感じになります。

この楕円体を元に、各地の緯度・経度が決定されるのです。




Bこんな細かい数値はどうやって測る??


GRS80楕円体の、赤道半径6378137.00m、極半径6356752.31m。

こんな「31cm」なんて、この馬鹿でかい地球をどうやって測るのか、そんな疑問も出てくると思います。

それが科学の進歩なんですかねえ。


現在2つの方法で測定がなされています。


一つは、VLBI(Very Long Baseline Interferometry、超長基線電波干渉法)

数十億光年離れた準星(クエーサー)からの電波を複数地点で受信して
同じ信号の受信時刻の差(遅延時間)から相互の位置関係を測るものです。



もう一つは皆さんおなじみGPS(Grobal Positioning System、全地球測位システム)です。

高度約2万kmの6つの円軌道に4つずつ(計24個)配された米国防総省が管理する
GPS衛星からの電波を利用し、緯度、経度、高度などを測るものです。


これらによってこのような正確な数値が割り出されていると言うわけです。

日本では明治時代、地球全体を統一的に測量することは技術的に不可能だったため、

天文観測を基に測量をしていたための誤差であり、決して測量の出来が悪かったために生じたものではありません。




C日本測地系から世界測地系へ


上で示したベッセル楕円体を基にして緯度・経度を定めるものを 日本測地系 、
GRS80楕円体を基にしたものを 世界測地系 といいます。

VLBIやGPSにより地球規模の観測ができるようになった今日では、

日本測地系は、地球全体によく適合した測地基準系であるとは言えなくなってしまいました。

そこで平成13年6月12日に測量法の一部が改正され、

明治時代から平成14年3月31日まで使用してきた日本測地系が、

平成14年4月1日から世界測地系を適用することになりました。




D日本測地系は、世界測地系とどのくらい違っているか?


例えば、日本測地系の経緯度で表されている地点を、世界測地系の経緯度で表わすと、

東京付近では、経度が約−12秒、緯度が約+12秒変化します。

これを距離に換算すると、北西方向へ約450mずれることに相当します。




E何がかわる?


別に生活がどうなるとか、そんなことは全くありません。


・地図上の経線・緯線がズレてきます・・・・・・・・・まあ、地図は同じで線だけ引き直せばいいこと

・日本全国に埋められている基準点の改正・・・これは大変。国土交通省の皆さん、頑張ってください。ちなみに全国で、

                            一等〜四等三角点103,284点、水準点・電子基準点21,199点


・各地にある緯度経度ちょうどの位置にあるモニュメントの価値がなくなる。

等等


この最後のモニュメントについては2通りの方法で回避できるらしいです。

一つはモニュメントごと、世界測地系の新しいポイントまで引越し。
もう一つはモニュメントの位置をそのままにして、その緯度経度を世界測地系で中途半端な数値で表す。




まあ、長々と述べてきましたが、結論を言えば、日本測地系が世界測地系になったことによって

約450m地図上を移動したってことです。







参考資料:「世界測地系移行の概要」http://www.gsi.go.jp/LAW/G2000/g2000.htm(2004/10/29)



special thanks M.S氏


2004年 10月 29日