1994年の冬、僕は、武蔵小杉の駅にいた。 ある小説家に逢う為に...。
 彼の名前は、結城 匡。

彼の遺した小説『怪物の映画』は、その当時の僕を魅了していた。
膨大な文字量。残酷で美しい世界観。...何より、肉体の「死」を

しつこいまでに綿々と描き乍ら、「それ」を笑い飛ばそうとしているような
彼の「死生観」と「笑い」の感性に、ハマった!

目前の彼は、大時代的な容貌をしていた。 脂ぎった黒髪。低く、よく通る声

「憂鬱」な光を放つ、瞳を持っていた。                             
自分の知識の豊富さに、うんざりしているように感じた。
結城君は、「俳優」としての僕を「映画」の中で見ていてくれて、評価もしてくれていた。
それが、とても嬉しかったのだった。

...新しい映画を創る為に、彼の感性が欲しいと思って、
ミ−ティングに参加してもらう事になった。
初めての16ミリ長編。
...しかし、その
ミ−ティングも暗中模索といった最中...

彼は沖縄の海で事故死してしまった。

生前、この「怪物の映画」を映画化していいか、聞いた。
「やれるもんなら、やってみな」という彼の眼差しが今も見える様である。

それから数年して、僕は結城君の仏前にいた。

そして、「絶対やる!」と誓ったのだ。