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美術の窓 2010年8月号 展覧会プレビュー
詩人 船木倶子さんとの紙上コラボが実現しました
佐藤緋呂子展2010
永遠の女性を秘めて 船木 倶子
幼いころ読んでもらった「このはなさくや」のお話が始まりだったと、佐藤緋呂子さんが話してくれたとき、
画家の謎がすうっと解かれた。
本には絵がなかったので、どんな人かしらとよりイメージが膨らんでいったのだと。
画家は一貫して、雪のような肌をもつたおやかな、それでいて大地のゆるぎなさを秘めた女性を画布に現してきた。描きつづけて、画家は想う。このはなさくや姫は雪深い秋田の、身近なひとではなかったか。
二十年ほど前になるが、訪ねたパリは銀色をしていた。その印象が画家をモノクロームと抽象世界にも向かわせる。それは雪の白と冬の夜空の漆黒であるのだが。
「幻遥」の流れの元には朱が潜んでいる。熱を宿したそれは地球の中心に向かって流れる。永遠の女性を秘めてやがてそれらはひとつになるにちがいない。
画家とおなじ故郷をもつわたしには「冬 AKITA」は男鹿半島の荒磯海。ロシア颪(おろし)が吹きつけてくる。そこで育まれたものの根源にある風景だ。毎年の秋田での個展は自身の何かを確認するためでもあるかもしれない。
墨と岩絵の具がなせる抽象。画のまえに佇んでいると、空気はやわらかさを増してくる。
これらの作品はフランス・ストラスブールで開催の「ヨーロッパ現代アートフェア」に〈東洋の誘惑〉と題して出品される。
ふなきともこ 詩人