【目次】
1 まぼろしの定理
2 2007年麻布中【4】と解法
3 N社3年テキスト「算数 予科教室(旧版)」との関連
4 補足 2007年開成中【4】と入試傾向の共時性
5 東京大学の入試問題を小学生向けに翻訳した問題

1 まぼろしの定理
 雲もほとんどない、初夏の暑い日のことです。
ピタゴラスは、散策して、とある寺院の庭に差しかかりまますと、せみの声がとぎれることもなく聞こえてきました。 少しの風もなく、ピタゴラスは汗ばんできました。寺院の庭の敷石は一つひとつが直角二等辺三角形をしていて、それがびっしり敷き詰められているのが見えました。


 直角二等辺三角形というのは、たとえば、サンドイッチのパンの形です。サンドイッチは正方形のパンに具をはさんで、斜めに2つに切って作ります。なぜこうすると思いますか。直角のところを手で持って、ほかの2つのとがった角から食べ始めると食べやすいのです。多分ですが。
直角二等辺三角形の形をしたサンドイッチ

で、直角二等辺三角形の石は、小さな正方形に見えたり、大きな正方形に見えたりもしていました。そうした模様を見ながら散策していると、ふと、頭に電撃的な衝撃を受けたのでした。大発見をしたのです。それは今日私たちが「ピタゴラスの定理」と呼んでいる定理でした。

 ピタゴラスの心は、空を飛んで帰りました。家に帰ったピタゴラスはエジプトで買ってきた紐の輪を部屋いっぱいに広げました。
 ピタゴラスは、エジプトで算数文化をたくさん仕入れ、インドではゴーダマブッタ(お釈迦様)から仏教を学びました。ブッダから数概念輪廻を学びました。
 そうした旅は、近所に住むタレスの勧めによるものです。タレスという人は商人で、算数の大家でもありました。タレスは、イソップとも交流がありました。イソップは、奴隷で、寓話作家です。イソップ物語「ロバと商人」の商人のモデルと伝えられています。
数の概念とは、大きな数、例えば、ガンジス川の砂の個数ほど大きな数を考え、その数が、そのまた、砂の個数だけある数を考え、その数が、そのまた砂の数だけあることを考えることを学びました。ピタゴラスはそれまで想像もできない数が、ブッダによって、想像できるようになりました。
輪廻とは生き物の魂は、死んでもまた生まれ変わるものだということです。そのとき、ピタゴラスは強い安らぎと感銘を受け、自分の魂を磨き上げようと心に誓いました。
 さて、エジプトで、買ってきた紐は輪になっていて、結び目によって、正確に12等分されていました。
 ここで質問です。このひもは何に使うと思いますか。
 輪を3メモリ、4メモリ、5メモリに分けた点を手で持って、ピンと張ると、直角三角形になります。つまりこのひもは、「携帯直角三角形」だったのです。
携帯(けいたい)
携帯(けいたい)とは、身につけたり、手に持ったりすることです。「携帯電話」に限りません。

 ピタゴラスは、自分の発見した考えによると、3×3+4×4=5×5になるはずだと思いました。

3×3=9、4×4=16、5×5=25
9+16=25
なるではありませんか。
 エジプトでは、そのころ、あまり、その意味や理由を教える習慣はありませんでした、ピタゴラスはその理由を自分ではしっかり理解したのでした、
 ピタゴラスは驚きました、この驚きは何と表したらいいでしょう、
 それは、誰も見ることができない「神様が持っている手帳」をのぞき見たような気持でした。
You ain't heard nothin' yet.(あなたはまだ何も聞いていない)・・・・・・
 映画の字幕作者はこれを「おたのしみはこれからだ」と訳したというからすごいですね。名訳といわれています。
 実は、このとき、ピタゴラスはもう1つの定理を発見していたのです。そうして15メモリのひもの輪を発明しました、3メモリ、5メモリ、7メモリに分けた点を持って、ピンと張ると、120°ができます。「携帯120°」です。
 いっぺんに2つの大発見をしたピタゴラスは、自分の才能におののき、気絶しそうになりました。
 ピタゴラスは、旅の後、学校を作りましたがそれは、自分の得た知識を広めたいと思ったからです。学校は評判を呼び、国中の若者が集まりましたので、時の政府が不安になったほどでした。
 ピタゴラスは、翌日の、授業で、
「ごらん、この12等分紐で、こうすれば直角が作れる。こっちの15等分紐では、120°が作れる。」と得意げに話しました。

 生徒たちは思わず「おー」と歓声をあげましたが、少したってから、質問が起きました。
「ピタゴラス先生、12等分紐で正三角形が作れるから、その1つの外角が120°になるので。120°を作るだけなら、15等分紐はいらないのではないですか。」

12等分紐で120°を作る。

 ピタゴラスは真っ赤になって言いました。
「オッホン。この15等分紐の話はなかったことにする。誰にも口外(こうがい)してはならない。」
と新しい戒律(かいりつ)ができました。

口外(こうがい)
他人に話を漏らすこと。

戒律(かいりつ)
信者が信仰生活において守るべき規律・規則。

  
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2 等角図形 2007年麻布中
問題
【4】 図の点線は平面を同じ大きさの正三角形でしきつめたものです。
図1の正三角形の面積を1cm2とするとき、次の各問いに答えなさい。

(1)図2の三角形の面積を求めなさい。
(2)点線の交点を頂点とするような、面積が13cm2の正三角形を1つ、答えのらんに書きなさい。
■解法■
 (1) 正三角形で囲んで、周りを引く。

4×4−3×3=7(cm2)
★答え★ 答え 7cm2
■別法■
 頂点を通る、等角方眼の線に沿って真ん中の正三角形とその他の三角形に分ける。

1+2×3=7(cm2)
★答え★ 答え 7cm2
《参考》
 正三角形以外の普通の三角形の場合は「別解」の方を使います。この種の正三角形に限って考える場合には、「解法」の方がよいでしょう。

(2)点線の交点を頂点とするような、面積が13cm2の正三角形を1つ、答えのらんに書きなさい。

解法

答え 次の図

《参考》
13cm2にこだわらずにどんな正三角形ができるのだろうかと考えると、すぐできると思います。


     
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3. N社3年テキスト「算数 予科教室(旧版)」との関連
ところで、N社の3年生用のテキストでは次のような問題があります。
問題1
[1] 図は1辺(ぺん)の長さが14cmの正方形です。4つの同じ大きさの直角三角形を切り落(お)とすと、残(のこ)りのしゃ線部分(ぶぶん)は正方形になりました。

(1) しゃ線部分の面積(めんせき)を求めましょう。
(2) しゃ線部分の正方形の1辺の長さをもとめましょう。

■解法■
(1)


周りの直角三角形の面積は6×8=48(cm2)の長方形2個分ですから、
全体の正方形14×14=196(cm2)から引いて、
196−48−48=100(cm2)
となります。

(2) 100=10×10
 ですので、1辺の長さは10cmになります。
★答え★(1)100cm2 (2)10cm

問題2
 図は1辺の長さが1cmの正三角形のタイル(△)をしきつめたものです。

(1) 1辺の長さが11cmの正三角形の面積はタイル何こ分になりますか。
(2) しゃ線部分の面積はタイル何こ分になりますか。
(3) しゃ線部分は正三角形になります。1辺の長さは何cmになりますか。
■解法■
(1)数えると、121個あります。
(別解)11×11=121(個)

【参考】
 目の前に小さい正三角形は何個あるかといわれれば、数えればよいのです。しかしたくさんあるときはまとめて計算すればよい。例えばたし算,
1, 1+3=4,1+3+5=9、1+3+5+7=9,1+3+5+7+9=16
すると、かけ算
1×1、2×2,3×3,4×4,5×5に自分で気づいてくれるねらい。

 ついでに、次のような図形でも同じように解けます。
小さい正方形は何個?


小さい台形は何個?


 小さいL字形は何個?


 このように、相似の図形の個数は平方数で表せます。
(2) 下の図で、白い三角形は4×4=16(個)が3つと、1×1=1が1個になるので、

16×3+1=49(個分)
(3)7×7=49なので7cm
 付け加えると、3辺の比が3:7:8の三角形の三角形は7の対角が60°になります。この問題はその証明になります。

 ついで言いますと、3辺の比が3:5:7の三角形の三角形は7の対角が120°になり、3辺の比が3:5:7の三角形の三角形は7の対角が120°になり、3辺の比が3:8:7の三角形の三角形は7の対角が60°になります。



問題3
 図3のような、面積がそれぞれ3cm2、7cm2、13cm2の正三角形で囲まれた三角形ABCを、答えのらんに書きなさい。ただし、頂点A、B、Cは点線の交点になるようにします。また頂点A、B、Cの記号も書き入れなさい。また三角形ABCの面積を求めなさい。

解法
次のようにかく。


(2) 平行四辺形で囲み周りを引く。

6×2−(2×1+1×2+3×1)
=12−7
=5(cm2)
★答え★ 5cm2

 小学三年生のころこんな問題に出会えたらなんと嬉しく思ったことだろうと思って書きましたが、最新版では削除されているかもしれません。
 私は、N社に初めて入社したころ、テキストもテストもつまらないと感じましたが小学生だからこんなものかと思いました。最初の勤務地は茅ヶ崎校でした。茅ヶ崎なんて、行ったことのない、まるで旅行のような気がして、改めてN社の大きさに驚きました。授業で気づいたことは、ものすごく優秀な子どもがたくさんいたことです。
 子どもたちのノートは、完璧に予習をしてきて、ところどころ、ポイントまで書き加えられていました。なので、授業では、テキストの内容は数分で終わらせ、発展的な、高校レベルのことを教えますと、はたせるかな、砂が水を吸い込むように理解してくれたのでした。
 ある子が「僕は将来先生のような塾の先生になりたい」と言い出す始末でした。塾教師になりたいとは親が聞いたらなんと思うかととてもあせりました。親は大学教授とか医者とか弁護士になってほしいと望んでいるだろうと思い、「塾教師なんかを目指すんじゃない」といっておきましが、この発言は少しもめごとになったようです。

 3年生のテキストは、5、6年になって入試問題が解けるようになるための準備ですから、入試そのままを扱わないように、世の算数読み物などを参考に入試問題に先駆けて、幾分遊びの要素も取り入れたものをと配慮して作りました。この「タイルのしきつめ」に限らず、「さいころころがし」など、3年のテキストと同じ問題が続々出るようになって、戸惑いました。
 N社の3年のテキストは、世の算数読み物などを参考に入試問題に先駆けて作ったものです。
 しかし入試に出してくれたことはとても心強く思いました。
「こんなの試験に出るの」という不満がN社内部でもおこっていたからです。
 私立中学の先生も、意気に感じて応援してくれたのだと思い、感謝しています。
   
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4. 補足 2007年開成中【4】と入試問題の共時性
 さて、今年2007年麻布中の【4】と開成中の【4】を見ると、入試問題の共時性ということを感じさせます。
開成中の 問題図の

 面AKH、ないしは、面AJIHは、影の直角三角形、AEH、AHE、HKEなしにはかきえないでしょう。このあたりに、麻布中【4】の(3)(4)との共通性を感じます。


 共時性とは、しばしば同じ時期に、直接的な因果関係が説明付かないことが起こることを言い、ユングは心理学に意味ある偶然ということで用いました。ソシュールは「通時性」と対比させ言語学に用いたのでした。「共時性」・「通時性」はその後、文化人類学を始め、いろいろな分野に援用されるようになってきました。入試傾向の分析に初めてこの概念を用いたのはN社です。

【4】 図のような直方体があります。1は辺FG上にある点で、AB=1cm、AD=6cm、AE=2cm、GI=1.5cmとなっています。3つの点A、H、Iを通る平面が、辺BFと交わる点をJ、辺EFを延長した線と交わる点をKとします。

(1) FJ、FKの長さを求めなさい。
(2) (ア) 4つの点A、E、H、Kを結んでできる三角すいの展開図をできるだけ正確に書きなさい。
ただし、三角形AEHはすでにかかれているので、それに続けて解答用紙の定められたわくからはみ出さないように書くこと。
(イ) 4つの点A、H、I、Jを結んでできる四角形の面積を求めなさい。

(2007年 開成中)
 タレス、ピタゴラス、釈迦、孔子は同じ時代の人です。その当時、人々の間には、迷信を含め、いろいろな知恵がバラバラのままに累積されていたのでしょう。そのジグゾーパズルのバラバラなピースをみて、欠けたピースをてんでに補って、思想を確立したのでしょう。その、そうしようとする気運のたかまりに共時性というものを感じます。 
 私たちは、受験生に合格を取ってもらいたく、過去問を分析します。すると、「なぜかこういうのはまだ出ていないなあ」という、欠けたピースに思い当たります。数年後にそれらがあちこちで出たりしますと、これもまた共時性かなあと思います。
 また、開成中【4】の(2)の(ア)には、よく出る「三角錐の正方形展開図」の発展形と見られる意味もあります。これらは通時性です。

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5. 東京大学の入試問題を小学生向けに翻訳した問題

 整数を平方して、できた整数をもう一度平方してできた数を5倍したとき、できる整数の下2桁は何種類かあります。それをすべて答えなさい。
   
2007年 東京大学前期文科「3」改題

解法
10を平方すると10×10=100
100を平方すると100×100=10000
さらに5倍すると50000
十の位が1、一の位がaである数を平方すると、下2桁に関係するのは、

20×a+a×a
これを5倍したとき下2桁に関係するのは
5×a×aである。
 整数 → 平方 → 平方 → 5倍 → 下2桁を考える
というとき、さかのぼって考えると、1回目の平方をしたときの一の位の数だけが最終的な下2桁に関係する。さらに、初めの一の位の数だけが最終的な下2桁に関係するとわかる。
 1  すべての整数を一の位で分類 0  2  3  4  5  6  7  8  9 
2   平方する  0 1  4  9  16  25  36  49  64  81 
 3  一の位で分類  0 1  4  9  6  5  6  9  4  1 
 4  平方する  0 1  16  81  36  25  36  81  16  1 
 5  20で割って余りで分類  0 16  1  16  5  16  1  16  1 
 6  5倍する  0 5  80  1   80 25   80 80  5 
★答え★ 0,5,80,25
もとの問題
第3問
正の整数の下2桁とは、100の位以上を無視した数を言う。たとえば2000,12345の下2桁はそれぞれ0,45である。mが正の整数全体を動くとき、5m4の下2桁として現れる数をすべて求めよ。
2007年 東京大学前期文科「3」
 Webは無制限ということで、本来なら、とっくに、「まだ書きたいことがあるのですが、紙面の都合で……」などといって、やめるのですが、つい、だらだらと書いてしまいました。書いているうちに、かえって、書きたいことがたくさん沸き起こり、そのために調べたり確かめたりする必要があり、その時間が取れなくなってきました。締め切りというものもありますので、今回は、この辺で切り上げたいと思います。難しく感じたところもあったかもしれませんが、難しいことを書いているわけではありませんので気楽に読んでくだされば、受験算数がしだいに身近に感じていただけることでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。(つづく)
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