高齋正さんのエッセイ 52


映画『世界最速のインディアン』


 試写会の案内をいただき、『世界最速のインディアン』という映画を見にいった。雨の中を見にいっただけの価値があった。

 この『インディアン』というのは、ハーレーと並び称せられたアメリカの『インディアン・モーターサイクル』のことである。アメリカ原住民のことでもなければインド人のことでもない。

 監督:ロジャー・ドナルドソン。

 主演:アンソニー・ホプキンス。


 ニュージーランドに住む老ライダー。ニュージーランドの2輪最速記録を樹立したことがあり、1920年型のインディアンを速度記録用に改造して、どの位のスピードがでるのか、アメリカ・ユタ州のボンネビル・ソルト・フラットに持っていき、そこで走らせるのが夢である。

 お金がない。あるのは情熱とマシーンを改造する技術力だけ。

 年齢の関係で身体が衰えていることを知っており、走らせる体力のあるうちに、あそこで走らせたい、と願っている。そして、借金して実行にうつす。

 彼の情熱と人柄に、人々が協力し、ついに彼は念願の『塩の平原』で自分で改造した1920年型インディアンを走らせる。


『ハーレーダビッドソン80年史』を翻訳した時に、ハーレーのことを本当に理解しようと思ったら、ライバル関係にあったインディアンという2輪のことを知る必要がある、と信じていた。インディアンの歴史については、『レッド・アイアン・スキン』という本がある。やや大判で、重く、文字が小さい。それだけたくさんの情報が詰まっている本である。ずっと前に根ながら読んだが、今では仰向けになってこの本を支えるだけの腕力がない。


 これは“夢”を追いつづけた人間の物語である。バイクのメカニズムの枝葉末節はどうでもよい。

 ボンネビルは1992年に行った。湖が干上がって塩の平原となっている。東の端にソルトレイクシティーがある。モルモン教の本拠地であり、食事をしながらワインを飲めないことが不満であったが、それ以外は好きな都市である。

 ソルトレイクシティーから毎日片道200キロを走って、走る場所まで通った。

 現在の速度記録は音速を突破しており、ここでもそのスピードには狭すぎるという。


 短い字幕のスーパーでは解説のしようがないが、連中はマイル表示でやっている。

1マイル=1.6093km

 概算で、1マイル=1・6キロ でよい。

 これを知っていると、端数のある速度が目標となっている理由がわかる。

 320キロが目標なのは、200マイルが目標なのである。そのあたり、マイル表示の字幕スーパーにすると、日本人には感覚としてスピード感がわからない。メートル法で数値を書くと、なんでそんな半端なスピードが、ということになる。


 字幕スーパーに間違いがあることに気がついた。1カ所だけである。

 クルマの専門用語では間違うことがある。配給元の社長さんに伝えておいたが、公開までに修正できればよいと思う。修正がきかなくても、些細な疵にすぎない。


 試写会でいただいたパンフレットを紹介する。

2007年の正月に劇場公開という。


高齋 正

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