四季のエッセイ        @

お袋さん

 お袋さん生存の仲間はもう一人もいない。
 あゝ、寂しい限りである。思えば、母体の子宮という袋の中で、胎児としてこの世にお目見え、大学を卒業、就職したあともずっと甘えさせてもらってきた。お袋さん抜きではわが人生を語ることはできない。
 鎌倉幕府の北条政子は、御袋様の名を頂戴
していた。初代将軍源頼朝との激しい恋。頼
家、実朝の母。頼朝の死後は剃髪して、自ら
尼将軍を名乗る。頼朝生存の時代には頼朝の浮気相手の女の邸宅を打ちこわしてしまう激情を見せていたが、部下の侍たちからは御袋様と慕われる一面を持っていた。
 いま、平成の子たちもお袋さんと呼んでいるのだろうか。