四季のエッセイ        @

和傘いずこ

 蕪村が春雨を詠んでいる。
 春雨やものがたりゆく蓑と傘
 この二人、きっと淑女とその恋男に違いない。一人は傘、いま一人は蓑。やさしい春の雨にしっぽり濡れて、何を語らいあう。
 いま外科医院の玄関にいる。ラッシュの雨の駅前大通りを、傘の列が行く。赤、白、黒と色は違うが、一人の例外もなくコウモリ傘
だ。蛇の目に番傘は、もう昔のことか。
 しとしとと雨の当たる音を耳に伝えてくれるあの和傘はどこへ行ったのだろう。女性らしい細身の蛇の目、男性らしい骨太の和傘。ひろげた時、ぱりぱりと広がる音。人はなぜ和傘を忘れ去ったのだろう。
 いまや京都に和傘の老舗は一軒という。