花菖蒲

   四季のエッセイ        @
 三日、近畿がいっせいに梅雨入りした。
 朝日夕刊一面が花ショウブ、読売がアジサイの写真を添えて大きく報道している。
 花ショウブが美しく咲くから梅雨が好き、と言ったのは江戸二千石の旗本松平定朝だ。咲くのはわずか三日間だけ。その間、刻々と花の姿が変化するのを「花が芸をしている」と評する。雨に濡れ、風にもてあそばれて、まことに儚い花ショウブの改良に費やした時間は何と六十年に及ぶ。京都奉行として赴任した際には仁孝天皇に花を献上している。花菖培養録が国立国会図書館に現存する。
 足首のほこり叩いて花菖蒲   一茶
 草鞋に溜まったほこりが風に飛び花菖蒲を汚しては大変と、ほこりを払う心配り。