海鼠

   四季のエッセイ        @
 憂きことを海月に語る海鼠かな 
 蕪村の高弟・召波の、滑稽にして悲哀あふれる句である。水面を漂っているのに食用に適さないからとヒトに獲られることもない海月に、海底にいながらヒトに狙われて食べられる海鼠が身の不運を語りかけている。
 海の鼠と書くように、その外見はネズミやミノムシに似てグロテスクそのものだ。
 生きながら一つに氷る海鼠かな  芭蕉
 尾頭のこころもとなき海鼠かな  去来
 この世で初めて海鼠を食せし人、その胆力敬すべし。まさに親鸞の再来なりと書いたのは夏目漱石『吾輩は猫である』だった。
 祇園の料亭に並ぶと、その味は絶品。
 誰だ! 鼠などと罪な名をつけたのは。