四季のエッセイ        @

応挙と犬

 円山応挙と草を食む馬……。日本画家、小室翠雲が紹介するエピソードはこうだ。
 応挙が草むらで馬を写生していると、ひとりの老婆が近づいて語りかけてくる。「あんた、その馬の目は駄目だよ。馬は草を食べるときは目を閉じる。目を開いて食べていたら草で目が傷つくじゃないか」という。応挙、
すっかり狼狽して馬の目を描きなおす。
 応挙は、幽霊も描いたが、犬の絵も多い。
フランス印象派のセザンヌたちより百年も早く精細な写実主義を確立している。なかでも応挙犬と呼ばれるほど犬を描いて定評があった。まん丸い顔、垂れた耳、むっちり可愛いのは、秋田犬の仔犬だったのだろうか。
 門弟千人、光格天皇の寵愛一身に受ける。