千鳥の嘘

   四季のエッセイ        @
 ウソという名の鳥がいる。この鳥、嘘はつかない。よく嘘をつくのは、千鳥だ。
 千鳥は、巣を樹上でなく地面に作る。だからヒナが敵に襲われやすい。そこで親鳥は酔っ払いのようにあっちへよろよろ、こっちへよろよろ、酔ったふりして敵をおびき寄せ、巣から遠ざける。実に巧みなフェイントだ。これを千鳥足という。でもそれは見せかけ。
酔った人間の千鳥足と違う。いざ走ると、人間のスピード・ランナーも及ばない。
餌を見つけた時もそうだ。他の鳥に横取りされないよう、やはり千鳥足になる。
 秋深まって、物悲しくチッ、チッと鳴く。万葉に山部赤人の歌がある。
 ぬばたまの夜ふけゆけば千鳥しば鳴く