第十・十一講 補充

 みなさん、こんにちは!
 一年間お疲れさまでした。
 授業でふれられなかった『平家物語』の補充をアップします。
 最後大急ぎになってしまって申しわけありませんでした。
 10行目あたりからくり返しますね。

10行目

 □主上いとどしく夜のおとどを出でさせ給ひもあへず、かしこへ行幸なって紅葉を叡覧なるに、なかりければ、「いかに」と御たづねあるに、

 「主上」は「高倉天皇」ですね。
 「夜のおとど」は「夜の御殿」。「帝のご寝所」という意味です。
 高倉天皇は、朝、寝室をお出ましになるやいなや、まず「かしこ(あそこ)」=「紅葉の山」へお出ましになって、紅葉をご覧になりました。
 ところが、紅葉がなかったので、「どういうことだ」とお尋ねになります。

 □蔵人奏すべき方なし。

 蔵人は天皇に申し上げようがありませんでした。
 「奏す」は「天皇に申し上げる」。
 こまかくいうと、「べき」は可能の助動詞、「方」は「方法」です。
 「蔵人は、天皇に申し上げることのできる方法がない」。
 これが直訳。

 □ありのままに奏聞す。

 それで、蔵人は「ありのままに天皇に申し上げる」わけです。
 「みやづこが紅葉を全部はき捨ててしまって、残りはお酒を温めるたきぎにしてしまいました」と。
 すると・・・。

 □天気ことに御心よげにうち笑ませ給ひて、

 「天気」は「天皇のご機嫌」でしたね。
 「ことに」は形容動詞「異なり」の連用形。
 意味は、「@普通と違っている A格別だ」。
 「御心よげに」は「心地よさそうに」。
 「天皇はご機嫌も格別で、いかにも気持ちよさそうにお笑いになって」。

 □「林間暖(字がないのでこれにします。本当は、「日」のところは「火」です)酒焼紅葉」という詩の心をば、それらには誰が教えけるぞや」

 「林間暖酒焼紅葉」というのは、白居易という人の漢詩の一節で、「林間、酒をあたたむるに紅葉を焼く(林のなかで酒をあたためるために紅葉を焼く)」という意味。
 みやづこが紅葉の枝や葉っぱでお酒をあたためたでしょう?
 「みやづこは漢詩なんか知らないはずなのに、どうして漢詩のまねをしてそんな風流なことをしたのだ。誰がみやづこにその漢詩を教えたんだね」。
 天皇は部下たちの失態をかばってやるために、そんなギャグをいったわけですね。
 
 □「やさしうも仕りけるものかな」とて、かへつて御感にあづかつし上は、あへて勅勘なかりけり。

 「やさし」は「@つらい・恥ずかしい A優雅だ・上品だ B感心だ」という意味。
 ここはAです。
 「(漢詩のまねをするなんて)優雅なことをいたしたものだね」。
 そういって、かえっておほめにあずかったので、決して天皇のおとがめはなかった。
 問四を見てください。

問四

 天皇はほめたわけですから、空欄のところにはいい意味の選択しを選ばないといけません。
 悪い意味の3「心憂くも(「心憂し」は「つらい」という意味)」とか、5「すさまじうも」({すさまじ」は「興ざめだ」)はダメ。
 これではほめたことになりません。
 2「厳めしうも」は「おごそかにも」という意味。
 4「尊くも」は「尊いことに」という意味。
 みやづこは漢詩のまねをしたわけですから、2も4もしっくり来ないと考えて、1の「やさしうも」を選びます。

問五

 本文から推測される高倉天皇の人柄や性格はどんなものかを明確にする問題です。
 正解は3と8。

 3は「寛容」です。
 天皇は大事な紅葉を台無しにされても怒らなかったわけですから、「心が広い人」と考えていいでしょう。
 
 4は「風流」です。
 天皇は紅葉が大好きで、漢詩の教養ももっている人ですから、「風流人」と考えていいと思います。

 1の「典雅」は「正しくて上品」という意味。
 「典雅な作品」「典雅な和歌」というように、ものごとについていうことばで、「典雅な人」「典雅な天皇」というように、人については使わないことばです。
 だからダメ。

 2の「忍耐」は「耐え忍ぶ」ということですが、天皇が本気で怒ったら我慢なんかする必要はないので除外します。

 4の「機敏」は論外。別に天皇がすばしっこい行動をとったわけではありませんね。

 5の「率直」は「飾らずありのまま」という意味。率直な人だったら「なんでそんなことをしたのだ」といって怒っていたかもしれません。

 6の「沈着」は「落ち着いていて物事に動じない」という意味。「物事に動じない」というほど、大事件が起こったわけではないからダメ。

 7の「華美」は「ぜいたく」ということ。紅葉が好きな天皇を「ぜいたく」というのはおかしいですね。

問六
 
 テキストの付録、111ページをご参照ください。