ユリワサビ
暮らしとの関わり
 石黒には、まれに見られる野草である。それもほとんどが家や田畑の近くで見られるので、もとは人によって植えられたものが野生化したものではないかと思われる。
 石黒では、ユリワサビは「葉ワサビ」と呼ばれていた。これに対して、「ワサビ」ないしは「馬ワサビ」と呼ばれたものはセイヨウワサビ〔右下写真〕のことで、畑の端に植えている家が多かった。
 ユリワサビは料理法がやや難しいことから、あまり食材として用いられず、村に持ち込み植えられることも少なかったのではなかろうか。
 植物図鑑などでは早春に葉や茎をさっとゆでておひたしにすると書かれたものが多いが、ただゆでただけでは苦いばかりである。
 いずれにしても石黒では純粋な野生のユリワサビは分布していないと言ってよいと思う。下の写真のユリワサビは筆者が昭和40年〔1965〕頃に栃尾市の田代から採取して来て生家の屋敷内に移植したものである。移植してから30年ほどは細々と生き続けていたが、現在では年々増え相当大きな群生を見せている。
 ちなみに、苗の採取地の栃尾市(2006年長岡市と合併)の田代は、山古志地区と隣接していたため、中越地震で甚大な被害をうけて村は現在(2011)、消滅の危機にあると聞く。 筆者は二十歳代前半の3年間をこの村の田代分校で過ごした。そこは海抜420mの小さな盆地状の美しい村であった。村の南側には「くら」と呼ぶ石黒の城山に似た景観の山があり秋の紅葉は見事であった。その山の裾に通じる道沿いの斜面にユリワサビが群生していて花期には全面が白くみえるほどであった。この時にユリワサビの若葉を、「おひたし」にしたものは酒のつまみとして絶品であることを知った。 ただし、これは村人から調理したものを頂いたものであり、当時、自分で料理すると苦いばかりで、身上である辛味は全然出なかった。
 その後、60歳代半ば、石黒の生家跡に庭づくりを始めたころ、生家の庭の片隅に移植したユリワサビが、何故か(無意識な内にも目をかけていたのであろう)俄然繁茂し始めた。摘んで家に持ち帰り家人から辛味を出す料理の仕方を色々試みてもらい別紙のような料理法を知ることが出来た。
 今日(2018.12.21)に石黒に行くと積雪10pほどであったが、ユリワサビの葉は鮮やかな緑色を保っていた。ユリワサビが常緑で越冬すること初めて知り驚いた。(右下写真)

 
(写真上 2007.4.25 上石黒 右上下 下石黒)


         残雪の脇のユリワサビ

撮影2012.5.19下石黒

             ユリワサビの群生

       撮影2009.4.2下石黒 記録的な少雪

写真2017.4.25下石黒

                  果実期
撮影2013.5.28下石黒


              栽培種

撮影2009.4.16下石黒


解 説
アブラナ科
 北海道から九州まで自生する。 ワサビに近い種類であるが谷沿いの斜面などに生える多年草
 根茎はワサビにしては細く横に長くはって伸び、先が斜上して腎臓形の葉を数枚つける。常緑で越冬する。(下写真)
 花期は4月。15pほどの茎を数本たてて先端に直径1pほどの十字形花冠(写真上)をつける。 花が終わると小さなアブラナの果実の形をした小さな果実をつける。
 秋から冬にかけて上部は枯れるが葉の付け根の部分が太く残る。
 名前の由来は、冬に葉柄の基部が肥厚し、ユリ鱗茎(りんけい)に似た形になり、香味がワサビに似ていることによる。



      葉の形
撮影2011.6.25下石黒

   ユリワサビの花実

     撮影2009.4.20下石黒

    花軸を長く伸ばす
撮影2010.5.10 下石黒

  ワサビとしては細い根茎


 撮影2012.5.20 下石黒

 常緑で越冬するユリワサビ
  (リョウメンシダイワガネソウと共に)

撮影2018.12.21下石黒

  西洋ワサビ〔馬ワサビ

     撮影2008.8.7大野