竹内三統流における修行の階梯
竹内三統流に入門した者はその修行の状況に応じて、
段階的に流儀の技法体系を学習することが許可される。
竹内三統流柔術の技法体系は
「専手」「体之曲尺」「乱捕稽古」に続いて
「居業相伝−中極意相伝−小具足腰廻相伝−目録相伝
−打合捕相伝−甲身組打−中−活傳−斎手−後捕脇捕傳−皆伝」
となる(「肥後武道史」より)。
【初伝の段階】
入門直後は「専手」(12ケ條)及び「体之曲尺」(8ケ條)を修練する。
この20本について相当の技量と認められると、
これらを綜合して「乱捕」稽古を行う。
爾後、人格的側面の成長を主たる判断基準に、
実技的な技量を参考材料として
「居業」「中極意」「腰廻」「小具足」「打合捕」を
学習することを許可される。
「打合捕」の体系を相伝する時に、
各術の名称を列記した「小具足腰廻」目録を授与される。
【奥伝の段階】
「小具足腰廻」目録を授与された者は、
続いて
「甲身捕」「中(アタリ)」「死活」「口伝二十三個条」
「斉手八個条」「後捕脇捕」「神伝五件捕手」「高上位」
「印可必勝伝六個条」などの体系を学ぶ。
この内、技法体系は「甲身捕」「斉手八個条」「後捕脇捕」
「神伝五件捕手」「高上位」「印可必勝伝六個条」。
他は、口伝覚書に該当する知識や道歌である。
これらの体系についても、人格的側面の成長を主に、
実技的な技量を参考材料として、
師範が妥当と認めた門人にのみ教授される。
この段階の体系に習熟した者に対しては皆伝目録が授与され、
師範の資格が与えられる。
【技法体系】
その1.天保12年(1842年)竹内三統流創建当時の「伝次第」の記載内容より
(1)(初伝):専手・12手、返投・8手、居業捕・10手
(2)中極意 :清眼・5手、腰廻捕・6手、小具足捕・6手、打合捕・5手
(3)奥伝 :奥斉手・8手、甲身捕・12手、後捕脇捕・4手
(4)神伝 :悴家之捕手・5手 付武者搦、必勝5ケ条、十三ケ大秘
その2.「肥後伝来の武術 竹内三統流柔術」に記載された技法目録より
(1)初伝
@初段(初心者・始めの階級の意):
⇒ 専手十二本、体之曲尺八本
A居業(初段の科目を一年至自一年半学び、卒へたる者):
⇒ 居業捕十本
B中極意(居業の科目を一年以上学びし者):
C小具足(中極意清眼・同腰廻捕の科目を学び一年以上の者):
D目録(これ以前に学びしものを初伝と云ふ):
⇒ 初伝を学び卒へて一年以上をすぎたるものにつき、
人物を主として考慮し、師範から申し渡さる。
(2)奥伝
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技法 |
本数 |
備考 |
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甲身捕 |
12 |
これより奥伝の段階。具足着用を想定した技法。 |
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死活 |
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当身に関する修行課題。14種の急所に関する学習。 |
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活中(アタリ) |
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仮死状態にある者を蘇生させる術。 |
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極意二十三個条 |
23 |
敵に向う際の心得を説くもの。口伝の内容を筆記したもの。 |
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8 |
竹内久勝師範が諸国武者修行時に工夫した技法の体系。(註1) |
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後捕脇捕 |
4 |
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5 |
竹内流「神伝捕手」の内容。(註2) |
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印可必勝伝六個条 |
6 |
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(註1)斎手:作州本家の竹内流武術においては、「斎手」とは剣術の体系を指し、
久勝師範が武者修行にて工夫した技法体系は「久勝先生必勝八ケ條」として
伝承されている。
(註2)神伝五件捕手:個々の型名については、作州本家の竹内流武術の神伝捕手と
5本中の4本迄が同じ(但し、内容には幾分の異なる点有り)で、1本が
異なる。
【補足】
古流武術では流儀毎に流儀の修行カリキュラムが定められており、
各課程を修了した証として切紙・折紙等の免状が授与されている。
初伝−中伝−奥伝−免許−皆伝というような段階が一般的には
イメージされるものであろう。
作州本家の竹内流においては「達者」「目録」「次臈」「免許」「印可」
という独特の称号を用いている。
竹内三統流においては、矢野廣英先生の時代には
「初伝」「中極意」「奥伝」「神伝」の4種類が
制定されていたという処であろうか。
島田先生が修行された明治時代後半においては
「初伝」「奥伝」に簡素化されていたようである。
階梯をひとつ昇格するということは、それ以前の段階で学ぶべき内容
(技術体系)について一通りのことを修得したと認められた証であり、
技量・見識・人格を踏まえて、次の段階の内容を学んで良いという許しを
与えられたということである。
古流武術では修行の段階に応じて学ぶべき内容が準備されており、
次の段階を学んだ者は、それ以前に学んだ事柄を総合的に理解し、
より深く研鑽することができるようになる。
例えば、表型の返し技(裏型)を学ぶことで、
その表型をかける際の注意点、呼吸、要領といったものを
具体的に理解し、体現することができるようになる。
つまり、表型の錬度を上げることができるようになる訳である。