安価で簡単なアンテナの作り方


講習会で合格された方と交信する機会が何度かありました。合格された方の半数以上が144MHzや430MHzに初めに出て来られるようです。

近くの局なら強力に入感するのですが、1kmも離れると弱くなってしまいます。
そのような方の設備を聞くと、「ハンディ機に付属のホイップアンテナ」と言う方が多かったです。

ハンディ機に付属のホイップアンテナということは、室内から電波を出しているようです。木造なら多少良いかもしれませんが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造だと、部屋がシールド状態になっていて、電波が部屋から外に出て行きません。木造でも金属の外壁材を使用しているとシールド状態ですね。

例え小さなアンテナでも良いので、ベランダや屋根の上にアンテナを設置するだけで、電波の飛距離が確実に伸びます。

中学生や高校生ハムの皆さんは、ハンディ機を買ってしまうと、もうおこずかいがなくなってしまい、外部アンテナにまで手が回らないとも聞きました。

そこでこのページを作りました。予算はずばり\3,200-です。(同軸ケーブル込み)
簡単にできますので、ぜひ作ってください。

作るアンテナは「430MHz用hアンテナ」です。


hアンテナとは

1/2λダイポールアンテナの変形で、動作原理はダイポールアンテナと同じです。
垂直偏波とするように、エレメントの展開方向を90度変えただけです。


材料

同軸ケーブル 5D2V
(5DFBでも良い)
長さは何mでもよいが、
短いほうが減衰が少なくて良い。

アンテナを設置する
ベランダや屋上に届くまで。
5D2V 15mで\2,000-くらい。
5DFBの方が減衰が少ないが高い。
3D2Vでも良いが、少し減衰が大きい。

近所のOMさんに使い古しをもらえばタダ!

(古い同軸ケーブルを使うときは、
網線が錆びていないことを確認しよう。
網線が錆びていたら、その部分は
切断して捨てること。)
コネクタ BNCコネクタ
5D2V用
無線機に合ったコネクタにする。 5D2V用BNCコネクタは\1,000-くらい。
ビニールテープ \100-くらい。
たばねるチューブ 100円ショップで買えば\100-。
合計 \3,200-

必要な工具

カッターナイフ、ニッパ、千枚通し、ペンチ、半田ごて(同軸ケーブルを半田付けするのに必要)

(自分の持っていない工具がOMさんに借りよう。)

作り方

A.絶縁体スリーブを作る。

同軸ケーブルの網線を折り返して、ラジアルとするのですが、この部分が同軸ケーブルそのものと近いと、SWRが下がりません。
実験したところによると、8mmは必要なようです。

そこで、同軸ケーブルとの間の距離を保つために、絶縁体スリーブを作ります。これは絶縁体なら何でも良いのですが、今回は「たばねるチューブ」を利用します。

加工前の同軸ケーブル
1 同軸ケーブルの外皮に切れ目を入れる。

初めに先端から180mmの部分を
外側から一周切れ目を入れる。

次に、その切れ目から先端に向かって
縦に切れ目を入れます。


カッターナイフを使用する。
よく切れる刃を使うのが望ましいが、
力を入れすぎると編線まで切れてしまうので、
注意すること。

切れ目を入れる部分は先端から180mmの
位置とし、長さはあとで調整する。
2 外皮をはがす。

3 たばねるチューブを巻いて、
ビニールテープで固定する。


4 3の工程をさらに4回繰り返して
厚みをつける。
















巻く開始点をずらしていき、
なだらかに膨らむようにする。
5 網線をほぐす。

千枚通しのような、先のとがったものが
あるとやりやすい。
6 網線をたばねる。
7 網線を折り返す。 ここで長さの調整をします。
SWR計を使用して調整することも
できますが、ない場合は、
単純に根元から170mmで
切断してしまってください。
(芯線、網線とも)
8 網線を固定する。



防水テープ(自己融着テープ)で巻く。
ビニールテープでも良いが、防水性は
防水テープよりも劣る。

防水テープを巻いた場合は、さらに上から
ビニールテープを巻く。
9 完成 見てくれはあまり良くないですね。

 


コネクタを接続する

アンテナからの同軸ケーブルを無線機に接続するためには、コネクタを使用します。
430MHz帯ですと、M型、N型、BNC型、SMA型など、様々なコネクタが使用されていますが、無線機に合ったコネクタを使用します。
ハンディ機では、BNC型か、SMA型のどちらかが使用されています。
今回はBNC型コネクタの接続方法を紹介します。無線機にSMA型コネクタが使用されている場合は、変換コネクタを介して接続します。

BNCコネクタの取付方法を説明します。

1 工具を用意する。 半田ゴテ
ハンダ
ニッパ
ペンチ
カッターナイフ
モンキーレンチx2
2 コネクタの
部品を並べる。
細かい部品もあるので、
なくさないようにしよう。

左から

本体
中心コンタクト
クランプ
ガスケット
座金
締付金具
3 加工前の
同軸ケーブル
5D2Vです。
4 締付金具、
座金、
ガスケットを
予め通しておく。
これを忘れると
やり直しになります。
5 外皮を剥く。
加工後
網線を切らないよう
注意しよう。
6 クランプを
はめる。
テーパーのついている
部品です。
7 網線をほぐす。
加工後
先のとがったピンセットや
千枚通しのようなもので、
ムラなくほぐす。
8 網線を折り返す。
9 網線を切断する。
加工後
ニッパは切れる方がよい。
10 絶縁体を取り去る。

加工後
芯線を切らないように
慎重に。

3D,5Dタイプの場合、
絶縁体が少しはみ出る
くらいがちょうど良い。
11 中心コンタクトを
芯線に取り付ける。




加工後
ピンが曲がっている

補正後
ハンダ付けが必要。

予め部品に半田ごてをあて、
予熱を加えてから
ハンダを流し込む。

ピンと同軸の方向が
同じになるようにする。
12 本体を
取り付ける。






中心コンタクトが先端まで
出ていることを
確認しよう。

最後はモンキーレンチで
締め付ける。
13 完成

設置

アンテナは必ず屋外に設置します。
室内で使用すると、室内でホイップアンテナを使用するのと同様の効果しかありません。
(このアンテナは性能的にはハンディ機用ホイップアンテナと同じくらいの性能であり、屋外に設置することに意味があるのです。)

簡易的には、紐やビニールテープで設置します。
防水や強度のことを考えると、Uボルト等の金物が欲しいところですが、金額が掛かります。

手摺につける時は、アンテナそのものが手摺に接しないようにする必要があります。

周囲に障害物があると、電波の飛びが悪くなります。
屋根の下よりも屋根の上の方が良いです。より高い方が良いのです。

アンテナが他の金属に触れると、SWRが悪化し、アンテナとして正常に機能しなくなります。
(同軸ケーブルの部分は他の金属等に近づけてもかまいません。)

100円ショップやホームセンターに様々な用品が売られていますので、それらを流用してみましょう。
自分は100円ショップで購入した「さおかけ」を流用しました。
「突っ張り棒」なんかも流用できると思います。皆さんで流用のアイデアを考えてみてください

同軸ケーブルはエアコン用の穴から引き込むか、窓を少し開けておくか、はたまた壁に穴を開けてしまうか、などの方法で室内に引き込みます。
冬は寒いけれど、使うたびに窓を開ける? 窓のわずかな隙間を通す、「隙間ケーブル」という商品もあります。


調整

上記の寸法のまま製作してもSWRは1.3以下にはなります。

(SWRは低いほど、整合状態が良い=アンテナから効率よく電波が放射される、ということになります。1.0が最良の状態で、2以下なら実用範囲です。)
作りっぱなしでも良いのですが、SWRメーターを使用して測定してみると調整が可能です。

高い周波数でSWRが落ちている場合は、アンテナが短いので伸ばす必要があります。
低い周波数でSWRが落ちている場合は、アンテナが長いので短くする必要があります。
スリーブ部分が細くて、ラジアル部分と網線の距離がないと、SWRが落ちません。
芯線と編線が接触していてもSWRが落ちません。

エレメントを切り過ぎると、伸ばすのが困難なので、慎重に、少しずつ(2mmくらいずつ)切り詰めていきます。


使用感

実際に使用し、室内アンテナとどのくらい聞こえ方が違うか実験してみました。
ビルの谷間のモービル局の聞こえ方で比べてみると・・・

アンテナ アンテナの
全長
設置場所 相手の信号
(無線機のSメーター)
聞いた感じ
ハンディー機用
ホイップアンテナ
30cm 鉄筋コンクリート造
3階室内
了解できるが、
かなり雑音が混じる
今回製作した
hアンテナ
40cm 3階屋上
ベランダに設置
Sメーターは全て点灯するが、
高利得GP使用に比べると
わずかに雑音が混じる
高利得
基地局用
GPアンテナ
4m 3階屋上から
マストで3m上げて設置
雑音無し

ハンディー機用のホイップアンテナと今回製作したアンテナはほぼ同じ長さなのに、
屋外に設置したというだけで、明らかに聞こえ方が違います。

まだ、ハンディ機のホイップアンテナのみで運用している皆さん! 外部アンテナを設置して、より多くの仲間とお話しましょう!


次のステップ

市販品を使えば、見た目もかっこいいし、安定した性能が得られると思います。
ただし、上記のような簡易アンテナではありませんから、金額は掛かります。
予算が許せば、以下の方法が次のステップとして良いと思います。

モービルホイップを使用する方法

モービルホイップは本来は自動車に取り付けるために開発されたものですが、家で使用しても何ら問題はありません。
ベランダ等に取り付ける金物も各種発売されています。
その際に必要となる部材と、参考価格は以下のようなものです。
必要部材 ■144MHz 430MHz DUAL BAND モービルホイップ
■ベランダ取付け金具
■同軸ケーブル (5DFB 10m)・・・長さは任意
■同軸コネクター(MP-5×2個)
■変換ケーブル (BNCP-MJ)
※ハンディトランシーバーの方に必要
参考価格 ¥13,000- (税込みの実勢価格)

グランドプレーンアンテナ(GP)を使用する方法

グランドプレーンアンテナは家に設置されるように開発されています。
ベランダ等に取り付ける他、屋根の上にも設置できるような金物が発売されていますので、より条件の良い場所に設置できます。
写真と予算は以下の通りです。
必要部材 ■144MHz 430MHz DUAL BAND GP ANT 長さ約2.5M
■アンテナマスト 32mm 1.6M
■マスト固定金具
■同軸ケーブル (5DFB 10m)・・・長さは任意
■同軸コネクター(MP-5×2個)
■変換ケーブル (BNCP-MJ)
※ハンディトランシーバーの方に必要
参考価格 ¥23,000- (税込みの実勢価格)

さらに次のステップ

八木アンテナ等のビームアンテナを使ってみると、また面白いと思います。

同じお金を掛けるのなら、短波等の他の周波数にチャレンジするのも良いでしょう。

いずれにしても、このステップに到達する頃には、電波の上にも仲間ができているでしょうから、いろんな人に話を聞いてみると良いと思います。


(JF2JOU/JG2TSL)

撮影協力:トヨムラ静岡店
測定協力:JM2RUV