交信の方法


アマチュア無線は片道通話

アマチュア無線を全く知らない方が間違えやすい、ごく初歩的なミスに、次のような考え違いがあります。
それは、アマチュア無線の通信の仕方も、有線電話と同じように考えてしまうことです。

有線電話では、話しながら聞くことが出来、聞きながら話すことが出来ます。つまり、お話している2者間の話は同時に両方に届きます。
しかし、アマチュア無線は、この方式ではありません。

トランシーバーを使って話し合う2者は同じ周波数を使用し、しかもトランシーバーであるために、
送信をしている時には受信部の機能は働かず、受信しているときは送信機能は動作しないように作られています。
ですから、話をしようとしている2者が同時に送信すれば、どちらかのトランシーバーも受信していないわけですから、
電波にのった話し声はお互いの方向に向かっていくだけです。
反対に、両方が受信していたのでは、いつまでたってもスピ−カーから相手の声が聞こえてこないということになります。

そこで大切なのは「どうぞ」という一言です。
自分が話したいことを話し終わったら、「どうぞ」と言い、相手に送信を促し、自分は受信に回ります。
逆に相手から「どうぞ」と言われて、こちらが話す番に回ってきたらどうしたら良いでしょうか?
 話し始める前に「了解」と言って、こちらが送信を始めたことを相手に伝えます。

送信の始めに「了解」、終わりに「どうぞ」
これは基本的なことですが、アマチュア無線の交信をスムーズに行うための重要なルールですので、忘れないでください。

コールサインをアナウンスしよう

アマチュア無線をやるには、試験を受けて、それに合格しなければなりません。
合格して、さらに無線局の開局申請をして「無線局免許状」を受けると、それぞれにコールサインが与えられます。
このコールサインは、世界中に1つだけ割り当てられるもので、自分以外に同じコールサインを割り当てられている人はいません。

アマチュア無線の交信では、このコールサインを使用して行います。
自分が誰なのかを示すのにコールサインを送信するのです。
「静岡の大村が送信しています。」と言っても、静岡には大村さんがたくさんいることでしょう。
でも「JO2DBRです。」と言ったら、それは1局しか特定できないことになります。
例え家族でも、個人局のコールサインはそれぞれに与えられます。

有線電話では電話番号を回してつながれば、相手としかお話できません。
しかし、アマチュア無線では、同じ周波数を使用して交信できるのは自分がお話したい相手だけではありません。
そこで、自分が誰と交信しているのか、コールサインを送信して明示するようにします。

交信には「了解」と「どうぞ」が重要とお話しましたが、ここにコールサインもくっつけて送信します。
<相手のコールサイン>こちらは<自分のコールサイン>
の順で送信します。

実際にはこんな感じです。

了解。JO2DBRこちらはJG2TSL。今日は雨降りで大変ですね。梅雨ですから仕方ないですけれど。
こちらもさっきまで出かけていましたが、傘をさしても服が濡れてしまいましたよ。
大村さん、今日はいかがお過ごしですか? JO2DBRこちらはJG2TSL どうぞ。

了解。JG2TSLこちらはJO2DBR。私は今日一日、家にいましたので濡れはしませんでしたが、雨降りは嫌ですね。………

アマチュア無線では、ラウンドQSOと言って、1対1ではなく、数人を交えてお話することがあります。
その時は、コールサインの呼び方を少しアレンジして、次に誰が送信するのか指定して送信を終了するようにします。
そうしないと、数人いるうちの誰が次に送信して良いのか分からなくなってしまうからです。

特定呼び出しと不特定呼び出し

アマチュア無線を使うと、いろんな人とお話することができます。
お話する相手は自分で決めることができるので、自由に交信相手を選ぶことが出来ます。
でも、やはりルールがないと、スムーズに交信を始めることができません。
そこで、いくつかの決め事がありますので説明します。

交信したい相手が誰か指定する時は相手のコールサインを言います。
それを呼んでいるのが誰であるのか、相手も分からなければなりませんので、自分のコールサインも言います。
単純なことですが、こんな感じです。
「JA2JNAこちらはJG2TSL どうぞ」

ちなみに、相手のコールサインも自分のコールサインも3回までは繰り返してもよい決まりになっています。
このように相手を指定して呼び出すことを特定呼び出しといいます。
これを聞いて応答する時も同様にコールサインを言って交信を始めます。

アマチュア無線では誰とでも交信できるのですが、自分が誰でもいいから交信しようと思ったらどうしたら良いのでしょうか。
そんな時に使うのが「CQ」という言葉です。
これは、「誰でもいいから交信しましょう。」という意味合いで使います。

特定の相手を呼び出す時には相手のコールサインを言いましたが、その代わりに「CQ」と言うのです。
「CQ」と1回言っただけでは、少し分かりにくいので3回言うのが決まりになっています。こんな感じです。
「CQ CQ CQ こちらは JG2TSL どうぞ」
この場合も自分のコールサインは3回まで繰り返して良いことになっています。

CQを少しアレンジして、地域を指定することもできます。
その場合はCQの後にその地域名を付けます。具体的には
「CQ北海道 CQ北海道 CQ北海道 こちらはJG2TSL どうぞ」みたいな感じです。

RSリポート

 アマチュア無線では、コールサインを互いに確認し、実際の交信に入ったらRSリポートを互いに交換します。
RSリポートとは、自分のところで相手の電波がどのように聞こえているかを示したもので、2桁の数字で表します。
RSのRは了解度を示し、5段階で表します。    一方、RSのSは信号強度を示し、9段階で表します。
1− 了解できない
2− かろうじて了解できる
3− かなり困難だが了解できる
4− 実用上困難なく了解できる
5− 完全に了解できる



   1− 微弱でかろうじて受信できる
2− たいへん弱い信号
3− 弱い信号
4− 弱いが受信容易
5− かなり適度な強さの信号
6− 適度な強さの信号
7− かなり強い信号
8− 強い信号
9− きわめて強い信号
無線機にはSメーターというのが付いているので、これを読んでSとしてしまっても構いません。
しかし、慣れてくると、大体の信号強度が聞いた感じで判断できるようになるので、わざわざSメーターを見る必要はありません。

以上のことから、RSが59であれば、最も良い状態ということになります。
逆に11は最悪なのですが、Rが1では了解できないわけですから、こんなRSリポートを送る人はいません。
同様に21というRSリポートもめったに使われません。

慣例的な例で言うと以下のような感じです。

バリバリに強い→59
まあまあ強い→57
普通に強い→55
ちょっと弱いかな→53
弱いな→51
ギリギリ→41
ほとんど聞こえない→31

パンドプランと周波数

アマチュア無線には、いくつかの電波形式があり、それぞれに特色があります。
SSBは省電力で済む割には、電波が弱くても了解しやすく,遠くの局と交信するのに適しています。

FMは電波が強い時は音が良いので、近くの人とのんびり話すには最適です。
しかし,SSBを使用して送信している人の電波をFMの受信機では復調できないので、
交信相手とは電波形式が一致している必要があります。

同じ周波数で様様な電波形式の人が電波を出すと互いに混信になってしまうので、バンドプランというのが定められています。
これは、どの周波数にはどの電波形式の人が出て良いのかを法律で決めたものです。


430MHz帯を例にとって説明しましょう。
例えば、430.000MHz〜430.100MHzまでは電信、つまりモールス符号を使った交信しかしてはいけないことになっています。
430.100MHz〜430.800MHzはSSBしか使ってはいけないことになっていて、FMでは使ってはいけません。
FMで使って良いのは431.40〜431.90MHz、432.10〜434MHzです。
438.00〜439.00MHzはどの電波形式でも使用しても良いことになっているので、FMでも使用可能です。
また、434.00〜435.00MHzと439.00〜440.00MHzはレピータ用の周波数となっていますので、
レピータ使用目的以外では使用してはいけません。

また、規則正しく交信ができるように、ルールが決められています。
それは偶数の周波数を使うということです。
これはSSBに比べてFMは混信に弱いからで、SSBでは多少の混信でも了解できるのがFMでは混信があると了解が困難になるからです。
実際には433.00MHz,433.02MHz,433.04MHz,433.06MHz,433.08MHz…を使うことになります。
こうすることで無用な混信を避けることができます。

バンドプランの表を見ると、433.00MHzは「呼び出し周波数」となっています。
「コールチャンネル」「メインチャンネル」とも言うこの周波数は他の周波数とは違った役割を持たせているので注意してください。
その名の通り、呼び出すための周波数で、CQを出しても、誰かを呼び出しても構いません。
沢山の人がこの周波数を聞いているので、呼び出しが終わったら他の周波数に移って交信を続けることになります。

SSBでは、バンドプランで定められた範囲内であれば、どの周波数でCQを出しても、誰かを呼び出しても構わないのですが、
バンドプランとは別に慣例的に「この周波数はこういう風に使う。」と決められている周波数があります。

例えば、21.295MHzは珍しい地域から電波を出している局が良く使う周波数ですし、
50.110MHzは海外の局を呼び出すための周波数です。
これらの周波数で国内同士の交信を行うと、だれかに注意されてしまいます。

通話表

アマチュア無線の交信では、その音が明瞭でないことがあります。
雑音が混じったり、他の局の混信を受けたりして良く聞こえないことがあるのです。

アルファベットは26文字ありますが、その中には発音の似たものがあり、
このような状況の時はDがG に聞こえるかもしれませんし、LがM に聞こえるかもしれません。

「JG2TSL」と聞こえたので応答してみたら、実は「JG2TSM」向けの呼び出しだったなんてこともあり得ます。
そこで、通話表が登場します。フォネティックコードともいいます。

「JG2TSL」を通話表を用いて言うと「ジュリエット ゴルフ ツ− タンゴ シアラ リマ」となります。
和文通話表 欧文通話表
朝日のア はがきのハ A アルファ
いろはのイ 飛行機のヒ B ブラボー
上野のウ 富士山のフ C チャーリー
英語のエ 平和のヘ D デルタ
大阪のオ 保険のホ E エコー
為替のカ マッチのマ F フォックストロット
切手のキ みかさのミ G ゴルフ
クラブのク 無線のム H ホテル
景色のケ 明治のメ I インディア
子供のコ もみじのモ J ジュリエット
桜のサ ヤマトのヤ K キロ
新聞のシ L リマ
すずめのス 弓矢のユ M マイク
世界のセ N ノベンバー
そろばんのソ 吉野のヨ O オスカー
タバコのタ ラジオのラ P パパ
チドリのチ りんごのリ Q ケベック
ツルカメのツ るすいのル R ロメオ
手紙のテ れんげのレ S シアラー
東京のト ローマのロ T タンゴ
名古屋のナ わらびのわ U ユニフォーム
日本のニ ゐどのゐ V ビクター
沼津のヌ W ウイスキー
ネズミのネ かぎのあるゑ X エックスレー
野原のノ 尾張のヲ Y ヤンキー
おしまいのン Z ズルー
アルファベットにしか通話表がある訳ではなく、当然、日本語にも通話表はあります。
「あ」から「ん」まで、全部使いこなすまでには大変に思えるかもしれませんが、使っているうちに慣れてきます。

「こちらの名前はかたぎりです。」と言うと、「かたじりさんですね。」と答える方がたまにいます。
そこで、「こちらの名前はかたぎりです。かわせのか、たばこのた、きってのきに濁点、りんごのり、でかたぎりです。」と言えば間違えることはありません。

最近はこの通話表を使えない人もいるようなのですが、本当に基本中の基本なので、良く覚えて下さい。
こちらの言おうとしていることを正確に伝え、相手の伝えようとしていることを正確に理解するためには非常に重要なのです。
日頃の交信から通話表に慣れ親しんでおくことで、非常通信の際などには威力を発揮することと思います。

なお、欧文通話表には、標準で定められているものの他にいくつかがあり、使われています。しかし、奇抜なものは使うべきではありません。
和文通話表は1通りしかありません。

ログブック

テープレコーダーにでも録音しておけば別ですが、電波で交信したことは、次の瞬間には消えてしまいます。
交信したことを紙にでも書いておけば、交信の記録を残すことができます。
かと言って、話したり聞いた内容を全て記録するのは大変なので、重要なことだけを記入しておくことになります。
この記入する冊子をログブックといいます。日本語では業務日誌といいます。

ログブックにはどんなことを記入するのでしょうか? 実際のログブックのコピーを添付しますので、見てみてください。

1996年4月17日、23:28に熊本市のJA6IFK局と50MHzSSBで交信しています。
この時のRSはこちらから52を送り、相手からは53をもらっています。
そして、通し番号30898のQSLカードを送っています。

同じように、4月23日にはJG1KSRカセさんと、4月25日にはイタリアTolenoのI6LVT Vittorioさんと交信しているのが、このログブックから分かります。
このように記録を残すことは後々の役に立ちます。

次にイタリアの局と交信したいと思ったとき、4月25日であれば、夜の21:20頃であれば14MHzで交信ができるだろうと予測できるからです。

ログブックは無線ショップで市販されているものもあるので、アマチュア無線を始めたら、必ず購入してください。
普通のノートに線を引いて作っても構いません。

最近はパソコンを使用したログも普及しています。
Hamlogといったフリーウェアもありますので、インターネットで検索してみましょう。

QSLカード

ログブックに交信記録を記入しても、それは他人から見れば、それが本当かどうかは判別できません。
そこで、交信した当事者同士でQSLカードを交換します。
QSLカードは交信証とも呼ばれ、交信したことを証明する証明書です。


QSLカードは写真を使用したものなどカラフルな物もあり、これを収集するのも楽しいものですが、重要なのはデータ欄です。
ここには交信の記録の内容、そして「確かに交信しました。」という一文とサインもしくは印が記されます。

QSLカードを送るために、カードに1枚ずつ切手を貼って、住所を書いてポストに投函しても構いませんが、
たくさん交信すると出費も手間も掛かるので大変です。そこで「QSLビューロー」を利用することになります。

QSLビューローは世界各国のアマチュア無線連盟に置かれていて、日本では「日本アマチュア無線連盟」(JARL)が運営しています。
現在は島根県にあります。

例えば100枚分のQSLカードを送ろうとしたら、その100枚を小包でQSLビューローに全部送ってしまいます。
そうすると、QSLビューローでは届いたQSLカードのあて先のコールサインを頼りに仕分けを行ないます。
QSLビューローにはそれぞれの局宛のQSLカードがどんどんたまります。
2ヶ月に1回、そのたまったQSLカードをそれぞれの送り先に送る決まりになっています。
静岡では奇数月の月末に届くことになっています。
QSLビューローからは沢山のQSLカードが一回に届くので、これが来るのはいつでも待ち遠しいものです。
QSLビューローを使うにはJARLの会員になる必要があります。

無線用語

アマチュア無線の交信では、無線用語が使われます。Q符合はその中でも基本的なものですが、その中のいくつかを紹介します。
QRM 混信 QRN 雑音
QRO 出力を大きくすること QRP 出力を小さくすること
QRV 電波を出すこと QRT 電波の発射を止めること
QRZ こちらを呼んでいるのは誰ですか?
QSB フェージング(電波が強くなったり弱くなったりする現象)
QSO 交信 QSP 伝言
QSY 周波数を移動すること QSL 1.了解 2.QSLカード
QRA 名前 QTH 住所
Q符号以外にも様様な略語があります。
FB すばらしい
DX 遠方
OM 先輩
WX 天気
73 またお会いしましょう
88 またお会いしましょう(女性向け)
シャック 無線室
スタンバイ 受信、待機
ファイナル 最後の送信
モービル 乗り物による移動局、自動車
リグ 無線機
ローカル 近所
ロケーション 地形
ワッチ 受信
 覚えるのは大変と思いますが、慣れてくると自然と使えるようになります。
他にも様々な無線用語があって、得意になって言いまわしている人も見受けられますが、あまり格好の良いものではありません。

アマチュア無線の交信だからと言って特殊な言葉を使わず、むしろ普通の言葉を使って交信する方がスマートに聞こえることもあります。
略語も適材適所に使うべきです。

(JG2TSL)