母さんったらひどすぎるよ。私ってそんなに太っていないのに、ご飯をくれないんだもの。おわんの前でずっと待っててもくれないんだもの。にゃぁって言わないとあげないよだって、ばかにしないでよ。

 ここに隠れちゃおうかな。だめだ、ここはこの前見つかっちゃった。
 それに、今日なんて何回母さんを呼んだと思ってるんだよう。何回も何回も外へ出てくださいって呼んだんだよ。

 母さんの言うとおり、にゃあにゃあにゃぁって呼んだんだよ。
 じいちゃんの介護で忙しいって言ってさ、ちっとも外へ出てくれないんだもの。

 おしっこしたいのに、一人でしろって言うの?
 ああ、でも怖いなあ。一人で来ると怖いなあ。何回も母さんと来たことある道なのになあ。

 時々車がブウォーッて通るのよねえ。

 知らないおじさんが竹を一本持って散歩してるのよねえ。いつだったかその竹で自分ちの犬を折檻してたよ。怖かったなあ。

 よく見なくっちゃね。右見て。左見て。
 もう一度右を見て。 

 でも、まだ引き返さないよ。母さんにはほんと腹が立つんだから。

 父さんは優しいのにね。いつだってご飯くれるんだよ。アジよりワチが好きだって分かってくれるし、一切れ100円もするんだぞうって言いながらお刺身くれたり。

 でも散歩とトイレの付き添いは母さんの役目でしょうが。
 どうして、すぐ出てくれないんだよう。
 
 私が外で昼寝したいとき、今までは、母さんは庭のよう草取りをしてくれてたじゃないのよう。

 いい季節になったんだから、一緒に外でのんびりしたいのに、分かってくれないのだから、いやになっちゃうよ。

 ここの角っこ危ないぞ。確認、確認。
やっとここまで来た。
ここなら見晴らしがいいから、周りがよく見える。



 危険はないかしら。

 いつだったか白い猫さんに出あったの、ここだったよね。そうそう、あのお家がそうだ。
まずは安心できそうね。

 ずっうと前のことだけど、初めて家出したときは、あんまり腹を立ててたんで、水神さんまで行っちゃったなあ。雨が降り出して、それでも頑張ったけど、誰も迎えに来なかったんで、3時間ぐらいで帰っちゃったなあ。

 なんで腹を立てたんだっけなあ。
これからどうしようかな。


まだ母さん忙しいのかな。

もう、優しくしてくれるかな。散歩行ってくれるかな。
あい姫の家出
 あい姫は、腹を立てていました。母さんが、ちっともあい姫の言うことを聞いてくれないからです。今日こそ家を出てやる。決心したのです。
 あい姫は、その日、半日家に帰りませんでした。父さんと母さんが、ずっとあい姫を探していたことを知りません。でも、いつもよりたっぷりあるご飯に、満足のあい姫でした。