2005年の、春になったばかりのある日のことです。
 寒の戻りで、ここしばらく寒い日が続いておりましたが、今日は、うって変わって暖かな昼下がりです。
 
 まだ、お母さんがお昼ご飯を食べているときから、あい姫はお母さんを呼んでいました。

「お母さん。早くして。」
「早くしないと、雀さんにとられちゃうよ。」
「お母さんがいないとだめなんだってば。」
「ここだよ。」
「ここが私の基地だよ。お気に入りなのよ。
 とっても暖かいのよ。」

「やったあ、まだ誰もいないよ。」
「お母さん、そこで見ててね。きっと見ててね。
 犬のチビが来たら、教えてね。」

あい姫は、基地の中へ入っていきました。
 基地の中はすくもがいっぱいありました。
あっ、すくもっていうのは、籾殻のことですよ。
おばあさんがすくもって言うので、うつっちゃいました。暖かいのです。殻と殻の間に暖かい空気がどっさりありますからねえ。
 どうやらこの基地は、おばあさんが忘れたものらしいですね。大根や人参の種を蒔いた上にすくもをかけた残りでしょう。それをあい姫は、自分の基地にしたのでしょう。
あい姫は、ほんの少しだけ寝る前の身だしなみをいたしました。そして、あっという間に眠ってしまいましたよ。

「お母さん、お願い。ずっとそこにいてね。
 どこへも行かないでよ。畑のご用事あるんでしょ。
 草取りしなきゃならないんでしょ。私が起きるまで、
 畑にいてね。」

眠いのに、必死でお願いをいたします。
 この基地には、魔法がかけられているかもしれません。睡眠薬でも飲んだように、すうっと眠りに落ちたあい姫です。
 
 さて、このあと、お母さんは、約束を守ったのでしょうか。




                        おしまい