壁エレメントモデルにおける梁の軸剛性について、関連するパラメータの説明とその影響に関するまとめです。
壁エレメントモデルとは、フレーム内に配置された壁をモデル化する方法の一つです。これは、図1(a)に示すように、壁の剛性を表す鉛直の弾性体と、それをフレームに接続する水平の剛体とで構成されます。ここでは、鉛直の要素を「壁柱」、水平の要素を「壁梁」と呼ぶことにします。
壁エレメントモデルの剛性マトリックスは、両端に剛域を有する梁と同様に、壁柱部分の剛性マトリックスと壁梁部分の釣合マトリックスを用いて誘導することが出来ます。壁エレメントモデルの詳細についてはこちら(PDFファイル)をご覧下さい。
図1 壁エレメントモデル
壁梁の釣合マトリックスは以下のように求められます。
壁梁には図2のような力が作用します。ここで、壁エレメントモデルは壁梁の端部でフレームの節点にピン接合されるので、壁梁端部に曲げモーメントは作用しません。
図2 壁梁の釣合マトリックス
この中で、剪断力と曲げモーメントは静定なので、力の釣合により以下の関係式が成り立ちます。
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一方、軸方向は不静定ですので、剛体としての力の釣合では式を誘導することが出来ません。そこで、軸方向は、Ja端側の剛比がαjay、Jb端側がαjbyである弾性体と考えると以下の式が得られます。
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このαjayとαjbyが壁梁における軸方向の剛比です。
このように、壁梁は軸方向において理論上の剛体とすることが出来ないために、壁エレメントモデルの剛性マトリックスには壁梁の軸剛性を入力する必要があります。
ここで、壁梁の軸剛性に他の部材より十分に高い剛性(例えば、他の部材の100倍の剛性)を入力すれば、擬似的に軸方向を剛体とした計算を行うことが出来ます。
但し、軸剛性に極端に大きな数値を入力すると、応力計算の計算誤差が大きくなりますので注意が必要です。
壁梁の軸方向に対する剛比は未知節点荷重のみに影響を与えます(未知節点変位には影響しません)。よって、図3(a)のように壁が柱に支えられている場合、係数は計算結果に影響しませんが、図3(b)のように壁が支点に接続する場合には水平方向の支点反力に影響します。「試してみた!」−「【ktEStress-F2D】壁エレメントの壁梁軸剛比」で実際に計算を試していますので、参考にご覧ください。
図3 壁梁における軸方向剛比の影響
このように、壁梁の軸方向に対する剛比は、壁が支点に接続されている場合の支点反力を決める数値です。これは、図4(a)のように単純な矩形をした壁の場合は0.5で良いと思われますが、(b)のように開口がある場合や(c)のように柱が傾斜している場合、どのような値が適切なのか検討の必要があると考えます。
図4 壁の形状と軸方向剛比の関係