講演・学習会報告 
民主党政権のもとでの憲法問題の行方


―安保改定50周年、衆院比例定数削減、地域主権を通じて―
講師:柳 重雄氏(九条の会・久喜世話人、弁護士)
日時:2010年11月23日(火)

 昨年、長年の自民党一党独裁に嫌気のさした国民は、圧倒的多数の支持の下、民主党政権を成立させました。しかしながらその期待は大きく裏切られたといっていいでしょう。1年以上が経過した現在、政権の混迷はとどまるところを知りません。民主党政権はいったいどこへ向かおうとしているのか。憲法はどうなるのか。第1回目の今回を皮切りとして学習を深めていきたいと思います。今回学習した部分を簡単にまとめて紹介し、次回の参考にと考えます。

●憲法を見る基本的な視点
 日本国憲法はその前文で、平和主義・平和の下に生きる権利を保障している。九条で「戦争をしない」「軍備を持たない」と定めた。日本国憲法の根本精神は平和主義にある。法体系はこれに基づいてできているはずである。現実的にそうなっている。憲法体制の中身は平和主義で貫かれているはずである。したがって、戦後の法体系の基本的な仕組みは、戦争をしない前提でつくられている。これを称して憲法体制・憲法秩序という。これが戦後60年の間に危機的状況に追い込まれ、侵害され続けている。それは安保体制によるものである。九条は侵略戦争だけでなく、自衛戦争も否定していると当初は解釈されていた。それが、自衛戦争は否定していないと変わってきた。安保も改定から50年経ち、本質が変わってきて現在に至っている。それは軍事同盟化し、極東安保から地球的規模の安保へと変わった。その中に自衛隊も組み込まれてきた。自公政権の下で、軍隊を持てるよう、明文改憲が狙われてきたが、国民の力で阻止されてきた。憲法体制と安保体制とは相容れない関係である。

●日本国憲法における国民主権
 最も大切なものの1つである。明治憲法下の天皇支配の国ではなく、国民が支配する国ということである。それは正当に選挙された国民の代表による議会制民主主義の国を意味する。国民主権の下、法的にも具体的に民主主義のありようが定められている。

●衆議院の比例定数の削減は何をもたらすか
 1993年から小選挙区比例代表制が採用されてきたが、どういう意味を持ってきたか。ここでの定数削減は保守2大政党による専制国家を作り出す。憲法改正が容易になる。

●日本国憲法における基本的人権の保障
 民主主義とは多数決原理であるが、この基本的人権の保障とはその一方で、少数の利益を守ることである。多数決の時、少数派を排除しないことである。どんな人であっても、人間としての尊厳を保障することである。基本的人権には2つある。1つは、表現、思想、出版、批判の自由ということである。自由権である。政府はこれを取り締まってはならないのである。もう1つは、社会権・生存権である。資本主義社会の下で、人が生きていけないようなことにならないよう、政府が保障するものである。弱者を守るということである。

●小泉政権における新自由主義政策
 規制緩和、構造改革が進み、格差社会が生まれた。ワーキングプア、非正規雇用が増大した。これにノーを突きつけたのが政権交代のはずであった。

●地方自治
 日本国憲法では地方自治が保障されている。地方自治をどうやって発展させるかが大切なのだが、これまで進められてきた地方分権は、地方に権限は渡すが金は渡さない、地方は国の下請け化される方向である。国は国防、外交に専念し、他は地方に任せる。そして地域ごとに競争させられ、地方はばらばらになる。そして民間が入りやすい状況がつくられ、民間任せになることが増え、住民は切り捨てられる。民主党政権下での地域主権改革とは、地方自治の破壊である。道州制の導入も目論まれている。結局は国の責任放棄、財政削減が狙いであり、福祉は切り捨てられる。民主党の掲げた「住民第一」は嘘ということになる。

●民主党政権の誕生
 自民党の新自由主義政策と利益誘導、財界との癒着、官僚主導政治に嫌気がさした国民が選んだのが民主党政権であった。これまでの政治が否定される、安保体制にもメスが入るかと期待を持たせたが、鳩山退陣、菅内閣成立となり、元の木阿弥となりつつある。

●民主党政権の本質
 @安保懇談会報告にみる安保体制の深化、集団的安全保障として、集団的自衛権の行使、自衛隊の海外派兵が進む。県民無視の沖縄問題への対応。県民がどんなに反対しようと、沖縄問題は国の行う問題で中央政府が決めるという姿勢。
 A保守2大政党化を狙う。自民党と変わりなし。
 B新自由主義政策、構造改革の推進。大衆増税路線。企業は減税。
 
 最後に、民主党政権の誕生によって、憲法改悪の危機は遠のいたのではという「期待」があったが、決してそうではない。今まで述べてきたこと、どれをとっても危機は深化しているということで、話をしめくくられた。 (K)