本講義は、早稲田大学大学院政治学研究科において2006年にスタートした博士課程進学希望者を対象とする方法論の夏季集中セミナーです。前期の方法論(経験)で学んだことを踏まえて、その上級編として開講します。そこでの目標は、経験的分析の根幹をなす記述的・因果的推論の方法を、二通りの方法でより深く身につけることにあります。第1は、前期の方法論講義の応用編の延長として、政治学の分野で評価の高い研究を方法論的に検討すること、第2は、受講生が計量分析に基づく研究をレプリケート(再現・追試)することで、因果関係推論の際に重要な変数のコントロールなどをより実践的に理解することです。
なお、本講義は同志社大学で西澤由隆先生が開講される方法論講義との合同授業です。また、本年は京都大学法学部の曽我謙悟先生をゲストコメンテーターとしてお迎えします。
(1)経験的分析上級編
前期に引き続き文献を方法論的に読み込む訓練をします。新規に検討する作品は以下の通りです。
- ロバート・パットナム『哲学する民主主義』
- ベネディクト・アンダーソン『増補版 想像の共同体』
- Ansell & Samuels, “Inequality and Democratization” Comparative Political Studies December 2010.
- Carles Boix and Susan C. Stokes, “Endogenous Democratization”World Politics, Vol. 55, No. 4 (Jul., 2003), pp. 517-549.
- Barbara Geddes, “What causes democratization” in Oxford Handbook of Comparative Politics.
(2)計量分析レプリケーション
以下の計量分析に基づく論文の一つを選んで、レプリケーションを行ったうえで、その結果を報告してもらいます。
1)Stephen Biddle・Stephen Long(2004)”Democracy and Military Effectiveness” Journal of Conflict Resolution, Vol.48 No.4; p. 525-546.
- 論文の命題と仮説、実証の操作化について、簡潔に整理しなさい。
- Table 1の3つの回帰分析をリプリケートしなさい。
- あなたなりの仮説を作り、それを回帰分析のモデルを改変し(つまり従属変数の入れ替えなどを行い)検証しなさい。
2)Curini, Luigi; Willy Jou and Vincenzo Memoli 2014 “How moderates and extremists find happiness: Ideological orientation, citizen–government proximity, and life satisfaction” International Political Science Review Vol. 35 (2) 129-152.
- 論文の命題と仮説、実証の操作化について、簡潔に整理しなさい。
- Table 1の6つの回帰分析をリプリケートしなさい。
- 著者の「幸福度についてのイデオロギー仮説」に関して、あなたなりの仮説を作り、それを回帰分析のモデルを改変し(つまり従属変数の入れ替えなどを行い)検証しなさい。
3)曽我・待鳥の『日本の地方政治』の補論の分析;時系列クロスセクションデータの方法論的検討
曽我謙悟・待鳥聡史『日本の地方政治』名古屋大学出版会,2007年.
- 第1章,第2章第1節,および補論を読み,論文の命題と仮説、実証の操作化について、簡潔に整理しなさい。
- 表補-1(補論28頁)の分析結果(モデル1から6のすべて)をリプリケートしなさい。
(3)計量分析準備ワークショップ
TAによる準備ワークショップ・相談会を早稲田キャンパスにて行います。
2015年7月28日 13時から16時
進行表
8月4日 午後1時30分開始
(1)計量分析のリサーチデザイン
- Boix & Stokes, “Endogenous Democratization” World Politics.
- Ansell & Samuels, “Inequality and Democratization” Comparative Political Studies December 2010.
- Barbara Geddes, “What causes democratization,” in The Oxford Dictionary of Comparative Politics.
8月5日 (終日)
(2)レプリケーション発表
一人30分のプレゼン、そのあと質疑・講評するという方式で行います
8月6日
(3)名作に学ぶ方法論:『想像の共同体』を読む
(4)名作に学ぶ方法論:『哲学する民主主義』を読む
(5)まとめ
稗田健志「政治理論と実証研究をつなぐ環」『年報政治学』2015-1を題材に、西澤、曽我、久米の鼎談を行い、その後研究デザインについてのまとめ的討論を行う。
課題及び成績認定
成績認定は、セミナーでの各自二つの報告(レプリケーション報告・文献報告)及び討論への参加に基づいて行います。なお、報告はいずれもパワーポイントを利用してください。発表担当は事前に決定しますが、各自全ての文献を読んでおくようにしてください。
パソコン貸し出し
- セミナー参加者には、SPSSをインストールしたパソコンを貸し出します。
- ただし、統計分析ソフトは、何を用いてもかまいません。以下のリンクからダウンロードできるソフトRは無料です。解説書については、以下を利用すると良いと思います。
飯田健『計量政治分析 (Rで学ぶデータサイエンス 14)』(共立出版)
- R ダウンロード (別ウィンドウが開きます)
http://www.jichi.ac.jp/saitama-sct/SaitamaHP.files/statmedOSX.html
http://socserv.mcmaster.ca/jfox/Misc/Rcmdr/installation-notes.html
- ネット上の参考になるサイト (別ウィンドウが開きます)
http://www2.kobe-u.ac.jp/~yyanai/jp/quant-methods-stata/
開催場所
早稲田大学軽井沢セミナーハウス (別ウィンドウが開きます)
http://www.waseda.jp/student/kosei/seminar-house/karuizawa.html