蔵辻ヒカル詩集

【春】 2005/05

 
 4月17日 晴れ
 彼女が僕の部屋にやってきた
 
 僕は歓迎の意味を込めて
 缶ビールを用意
 それを股間に挟んで
 「のんで♪」
 って言ったんだ
 
 そしたら彼女
 しばらくの沈黙のあと
 「変態」
 って言ったんだ
 
 あわてて僕は
 「ごめん冗談」
 って言いかけたけど
 彼女はそのまま僕の部屋を飛び出した

 
 
 4月24日 曇り
 あれから彼女は音信不通
 
 一週間たったけど
 無言の一週間が
 君の最後の答えなのかい?
 答えは変わらず
 「変態」なの?
 
 君の笑顔が見たくてさ
 いたずら心でやったのさ
 缶ビールのんでねってさ
 「変態」なの?
 
 そりゃそうだよね
 「変態」だよね
 股間に缶ビールだもんね
 君の言うとおり僕は変態
 
 
 5月1日 曇りのち雨
 「別れましょ」ってメールが来た
 
 正確に言うと
 「お願い別れて」
 もっと正確に言うと
 「だいっきらいになったから
 私の前から消えて    ウザイ」
 
 別れの秋でもないのに
 卒業の春でもないのに
 出会いの春なのに
 僕はフラレちまった
 
 春は変態のシーズン
 だから僕は変態デヴュー
 はやく梅雨にならないかな
 きっと僕の変態も雨で洗い流してくれるはず
 
 でもきっとね
 夏の僕は
 ハイビスカスの香り漂う南国の
 きれいな海辺の砂浜で
 缶ビール片手にナンパしてるんだろうね
 
 「変態」
 素直に受け入れられないけれど
 なぜだか悪い気はしないね
 春のせいかな
 
 

蔵辻ヒカル詩集