

What is 狼の報酬.
「狼の報酬」とは、現在、中堅の声優として御活躍中の星野充昭氏が、20数年前の大学在学中に制作した8ミリ自主制作アクション映画の題名です。このストーリーは、青年賢人が星野氏の了解を得て、自主制作映画「狼の報酬」に登場したキャラクターを使っての続編としてストーリーを書いています。
オンラインストーリー:第1話<コルトコマンダー>
場所は東京、時間は深夜。とある鉄筋作りの古ビルの一室、2人の男がテーブルを間にしてスチールの椅子に座っている。年齢は2人とも30歳代後半とも40歳前半とも見える。
「さて、何の話から始めようか?」とスピーカが言うと、「ほら、この間の新大久保でビルが吹っ飛んだあの事件から話したらどうだ」とキシダが合いの手をいれる。
「そうだ。あれはおかしな仕事だった。」とスピーカ。
闇の組織からスピーカが依頼されたのは、「指定された日の夜11時に、新大久保にある「YYビル」の「山守組」事務所に泊まり込みの組員を全員抹殺し、ある人物が、事務所内に荷物を運び込むための障害を取り除くこと。」であった。
YYビルとは、すなわち広域暴力団「山守組」の組長「山守義男」の頭文字をとって付けられたビルである。当然、その7階建ての小さな雑居ビル「YYビル」の2階に、組の本部事務所があった。
「山守組」事務所の泊まり番の組員は、事前に調べたとうりであれば5人のはずであった。
指定された日の午後10時45分、スピーカは「YYビル」の裏口から合い鍵を使って進入した。
当日彼が用意した仕事の道具は、サイレンサー付きコルトコマンダーである。なぜ、彼が銃弾のパワーを低下させるサイレンサー付きの銃を用意したかというと、ビルが繁華街に面しており、また今回の依頼が組長の暗殺ではなく、単に泊まりこみの人間を周囲に知られず処分することだったからである。そのキシダが改造したコルトコマンダーには、サイレンサーを取り付けるため、わざとガバメント用の5インチ銃身が取り付けられており、そのはみ出した1インチの部分にサイレンサー用のネジ切りが施され、容易にサイレンサーを取り付けられる作りとなっていた。
ビルの裏口から、事前に頭に覚え込んだビルの見取り図から、1階の下級組員控えの部屋を探しだし、中にいた組員二名に、コマンダーから必殺の銃弾を心臓と頭に撃ち込む。アダルトホームページに夢中になっていた二名の男は、何が起きたか認識も 出来ないまま、45口径の銃弾に脳髄を粉砕され、絶命する。直ちにスピーカは弾装を交換し、コマンダーに銃弾を補充する。さらに、抜き取った弾装にも4発の銃弾を補充する。
2階に通じる階段を拳銃を構えながら上ってゆくと、明かりの灯った本部事務所のドアの中から男たちの談笑する声が聞こえる。ドアに近ずいたスピーカは、左手をノブにかけゆっくりとまわしドアを開ける。ドアを開けたスピーカは、部屋の中の男三人がソファから腰を上げる間も与えず、一人に1発ずつ銃弾打ち込む。さらに、うめいている男たちの頭にとどめの銃弾を撃ち込む。
脳髄をまき散らして、3人は息絶えた。時計を見る。針は10時55分を指している。
部屋の片隅で油断なくまわりに気を配りながら、スピーカは拳銃の弾装を交換した。5分間という時間が無限の長さに感じられるようにゆっくりと経過し 時計の針が11時を指した時、スピーカは階段を重たい荷物を引きずって上がって来る音を聞いた。
すかさずサイレンサ付きコルトコマンダーを入り口の方に向ける。重たいスーツケース引きずりながら部屋に入って来たのは、初老の男であった。スピーカは即座にこの男が今回の仕事の依頼者であること、また、スーツケースの中に詰まっているのが、ダイナマイトかプラスチック爆薬かビル一つ吹き飛ばすのに十分な爆薬であることを直感的に理解した。
スピーカは、おそらく中国系と思われる悲しげな目をした男と目を合わせると、「俺の仕事は終わったよ。」と声をかけ、部屋を後にした。
1Fまですばやく階段をおりると、裏口から外に出た。まだ、パトカーのサイレン音も聞こえない。スピーカは後ろを振り向かずに町の雑踏の中に姿を消した。
「そのあとは俺が話そう。」とキシダが話始める。「その男が噂に聞いた爆弾屋だろう。そいつが事務所に爆弾を置いて帰ったあと、11時10分頃、山守組の幹部や組長の家に電話が入る。事務所の人間が殺されたと言う匿名の電話がね。そして約30分後の11時40分ごろに事務所に組員が集まって、殺された連中を発見して大騒ぎさ。今後のことを愛人宅の組長と若頭が電話で話しているとき、12時に事務所の時限爆弾がドカンというわけさ。」
スピーカがあとを続ける。「4キロくらい離れたところで、爆発の音を俺は聞いたぜ。」 「おかしな仕事だった。」
→これで、第1話は終わりです。
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<オンラインストーリー第2話:シュマイザーMP40>
1987年3月、今から11年前のその日、スピーカは香港にいた。落日の大英帝国から香港がその母国中国へ返還されるまでの10年間、英国政府は増税を重ねてその植民地「香港」から増税による
最後の搾取を行い始めていたその頃、また香港の町も少しづつ変貌をとげようとしていた。
彼、スピーカがそのような町「香港」に来ていた理由は、ただ一つ、ほかでもないスピーカがプロの「殺し屋」となるきっかけとなった「あの事件」、それを境に姿を消した「沈黙」、かつての相棒の姿を香港で見かけたという消息を、風の便りに聞いたからである。
そして、そのとき、スピーカは九龍城(カウルンセン:中国返還まえに取り壊された啓徳空港近く、日比谷公園ほどの規模の暗黒視界)の中にいた。ビルからビルへ建築基準などどは無縁の建て増しを行い、そうまさにビルがガン細胞のごとく増殖したとしかいえない建物の中にスピーカは、いた。
日本であらかじめキシダが手配してくれていた案内役の中国人、「李」という名前のおしやべりな男の先導で、さまざまな匂い、香辛料とか腐った野菜、肉、また汚水のまざった悪臭を超越した臭気の中、階段を上層階へ上って行く。スピーカは、ぬるぬるした階段に足をとられないように注意しながら必死に歩いて、軽々と進む李についていった。
広東語がわからないスピーカは、「沈黙」の消息を訪ねるため、李のあとについて九龍城の中に住むあたりをつけた何人かの人間を訪ねて歩くしかなかった。
油と腐った肉、魚と野菜の鼻をつく悪臭、そして通路を塞ぐように積まれた荷物や腐りかけた木箱、天井と壁からしたたり落ちてくる汚水がスピーカたちの行く手をはばんんだ。
約小1時間も李の後をついて、3人の人物と会い「沈黙」の消息を訪ねたが、有効な情報は得られなかった。
さてもう一人と李が言う相手を訪ねるためスピーカが歩き始めた時、李が廊下の蔭にさっと隠れた男に大声で叫んだ
。その蔭に向け、李が懐から取り出した2インチ銃身のリボルバーをいきなり撃つ。大音響が廊下に響く。李がまた叫ぶ前に、9ミリパラベラム弾を鋭く連射する音が通路に響き、10数発の銃弾が、李の体を蜂の巣にして吹き飛ばした。銃声を聞くや埃だらけの床にはいつくばったスピーカは、李が倒れるとき落としたリボルバーをつかむと、10メーター先の暗闇の銃声のした場所に2発撃ち込む。サイト(照準)の狂った古い銃であるが、スピーカの腕前からして確実に手応えがあった。
シュマイザーMP40を持った中年の中国人が、暗闇からのっそり現れ、倒れる。スピーカは男に駆け寄り、体をさぐる。スピーカは男が所持していた中国製トカレフ(黒星)を予備弾装とともに奪いとり、そこまで来た時の通路を出口を求めて記憶をたよりに駈け戻る。背後から叫び声と、銃声が響くが、もうそんなことにはおかまいなしだ。
どこをどう通ったか、九龍城を抜けたスピーカは、途中の路地裏で銃を捨て、タクシーを拾いヒルトンホテルに帰りついた。
翌日の飛行機で、スピーカは日本へ戻った。
尚、この事件は、香港の新聞には報道されなかった。
<オンラインストーリー第3話:ガンシューティング、H10年8月21日公開>
その日、スピーカはパワーブック1400Cの起動音を目覚まし代わりに、アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコ市内のとあるホテルで目を覚ました。朝食も早々に、ホテルに手配してもらっていたレンタカーを走らせて、ダウンタウンから30分、目的の射撃場「シスコ・レミントン・レンジ」に到着する。
ここでは、スピーカはGunマニアの商社マン「ジロウ タカハシ」ということになっており、約半年に一回、特別に保管してもらっているタカハシ所有の10数丁の銃を撃ちに来る。ここの射撃場オーナーMr.J・レミントンは、例によってキシダの古い友人とのことであるが、過去にどういういきさつがあったのか、どういう関係なのかスピーカは知らないし、また興味もなかった。
ともかく、Mrレミントンにキシダから託されたパワーブック2400Cのパッケージを渡すと、Mrレミントンは、「キシダはiMacを買ったかね」と話かけてきた。適当に応対したのち、スピーカはあらかじめたのんでおいたレンジの一角をスピーカ専用に占有して、こらから一週間、半年ぶりに、腕が錆び付かないよう数千発の銃弾を撃ちまくる予定である。
8月のカリフォルニアのぎらつく太陽の下、まず、コルト45・オートマチックから撃ち始める。45オートは25ヤードの距離にある標的の10点圏内に3発が命中、4発が8点、9点に命中した。半年ぶりにしてはまあまあのものだ。すばやく、弾装(マガジン)を交換し、続けて6発、銃の薬室内に一発銃弾を残して、次のマガジンと交換し、その要領で、瞬く間に約100発の銃弾を消費した。次に、S&Wのミリタリー&ポリス38口径5インチバレル(5インチ銃身)を選び、慎重に標的を狙いながら引き金を引く。スピードローダーですばやく6発の銃弾をつめかえ、だんだん6発を撃つスピードを早めてゆく。120発ほど撃ったところで、銃を4インチ銃身の357口径のマグナム拳銃コルトパイソンに換える。このパイソンは、最近の品質の落ちたコルト社製品ではなく、まだ素晴らしい品質をコルトが誇っていた20年ほど前に製造された物で、Mrレミントンから譲り受けた銃である。357口径の発射の衝撃音が周囲を震わせる。マグナム特有の反動が、両手で保持した銃を45度の角度に跳ね上げる。銃弾は、9点、10点圏にほぼまとまる。あいかわらず、素晴らしい銃と感服する。
さらに、銃を9mmオートマチックのベレッタ92F、グロック17L、S&WのM645、44マグナムのS&W M29リボルバーの各銃を、一丁100発前後ずつ、交換して次々に撃つ。
拳銃をひととうり撃って、しばし休憩したのち、MrトンプソンがコルトM16スポーター、M14ライフル、30-06口径ウィンチェスターM70、AK47ライフル(7.62×39mm)、ルガー77(.300Mag)などを用意してくれている300ヤードのライフルレンジに移動する。
まずM16から撃ち始めるが、イヤープロテクタを付けていても、拳銃とは段違いのライフルの衝撃音と反動がスピーカの体をふるわせる。着弾は、弾装を交換して、40発ほど撃ったところで、段々、感覚がよみがえって来て、ライフルスコープで覗くと着弾が7点圏から9点、10点圏にまとまり始めているのがわかる。
拳銃同様、100発ほど撃ったところでつぎの銃、M14に交換する。7.62mm弾を使用するM14は、小口径5.56mmのライフル弾を使用するM16に比べ、よりライフルらしい強力な反動が肩に加わる。TV、映画の作り物の世界と異なり、非力な拳銃弾の数倍の強力なパワーを持つライフル弾は、正確に狙い、命中させれば、人や猛獣を確実に死の世界に送り込む。無心になって標的を狙い、引き金を引くスピーカの脳裏を、20年前の事件、相棒の「沈黙」に裏切られ、銃弾を浴びせかけられたあの事件の場面が、一瞬よぎる。
口径の異なるライフルを取り替えながら、500発の銃弾を消費するころには、もう午後2時近くになっていた。Mrトンプソンと銃談義をしながら、サンドウィッチの遅い昼食をほうばる。30分ほど休憩したあと、あすのお楽しみ、Mrレミントンのプライーベートレンジ(シスコ・レミントン・レンジから数キロ離れた広大な空き地)へのおさそいがある。すなわち、レミントン氏所有のフルオートのサブマシンガン、アサルトライフル、マシンガンを特に親しい仲間だけで、廃車の車などをターゲットに撃ちまくろうというのである。
明日の約束をして、スピーカは再びピストルレンジに戻った。こらから、拳銃の速射の練習を行うつもりである。
こんなことで、スピーカの米国の休日は消えてゆく。
一週間後、再びスピーカは米国を後にした。
(ショートストーリーシリーズはこの第三話にて完結)