私たちの研究所では,
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● 空調システムの解析と制御 ● プロセス制御系設計用CADの構築 |
という大きなテーマに取り組んでいます。空調とはエアコンのことで,とくにビルのような大きな建物の空調制御を研究対象にしてきました.制御方式はPID制御に始まり,状態フィードバックに基づく最適制御,さらにH∞制御に代表されるロバスト制御へと進展してきましたが,結局のところ制御方式はつぎの図に帰着されます.
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コントローラの中身はPIDに代表される古典制御に比べて,ファジィ推論,ニュートラルネットワーク,遺伝的アルゴリズムなどを使ってコントローラを設計する手法へと発展しています.
またジャイロによるセンサは当研究室の独自のテーマで趣味を兼ねて取り組んでいます.回転体(コマ)の力学の初歩的な概念を身近な実例とともに解説した著書「コマの不思議」が端緒となり,特別講演やテレビ出演にひっぱりだされ,以来ジャイロに関する研究のテーマが私たちの研究所のお家芸のひとつになりました.
それでは,当研究所にてこの数年来行われている主な研究を紹介しましょう.
空調システムの制御では,主として室内の温度・湿度を調節することが問題とされるが,近年省エネルギー化と高度情報化の要求により,空調システムの制御はエネルギー管理と遠隔監視と結びついて増々発展しつつある.
およそ100年以上も前に,米国東部における冬季の暖房にサーモスタット,コントローラ弁が導入され,自動制御系として実用化されたにもかかわらず,空調システムを制御工学の立場から接近するようになったのは比較的近年になってからであった.多変数,干渉,分布系といった対象のもつ複雑さはどのプロセスでも共通した特徴であるが,ディジタル制御の導入によって,化学・鉄鋼プロセスなどに比べて空調システムは大きく水をあけられた.
とくに,空調システムでは換気のために外気を取り込むことによる外気温の変動,室内の熱的負荷の変動にともなう外乱の影響下で稼動し,運転の動作点が常に変動している点に通常の化学プロセスとは違った特徴があり,これが制御を難しくしている.
動作点での操作量を昔から手動リセット量とよび,これが制御を実施するさいにプラントに供給される基本量となる.本研究では,モデル化の難しい空調システムの動作点をいくつかの計測量から推定し,つぎの制御周期において動作点からの変動分を求めて,最適操作量として加える.このようにして,今までより制御性のよい安定な制御を実現しようとするものである.
2゜プラントの特性変動を考慮したPIDコントローラ
プラントの特性が変化しても安定性を保証し(ロバスト安定で),かつ外乱の影響を受けにくい(低感度である)こと,目標値の変化に対してはできるだけ速く追従すること(速応性)の2つが制御系の目的であります.
PIDコントローラはP動作,I動作,D動作と構造が限定されているために性能は制限されるが,PIDゲインの変更が制御系に与える影響を経験的に知ることができる利点から現在でも広く利用されています.しかしながら,プラントの特性値が変動するさいに満足な性能が得られないのが通常です.そのため当研究室では,プラントの特性変動で生じるモデル化誤差を予め見積もり,特性変動があってもロバスト安定性を保証するPIDコントローラの調整法を明らかにしてきました.
状態フィードバックに代表される最適制御に対抗する形で,古典制御すなわち周波数領域における制御理論への見直し,回帰として,さらにロバスト制御の実現手法として20年ほど前にH∞制御理論が登場しました.しかしながら,このH∞制御理論が大きな発展を遂げたのは,実にこの10年ほどのことです.
H∞制御の本質はフィードバック制御によって与えられた伝達関数の大きさをある値以下にするところにあり,H∞補償器の設計問題はリカッチ方程式を解くことに帰着されますが,プラントと同じ次数の高次の補償器になることが知られています.
この研究では,PIDコントローラとH∞補償器とを比較して,PIDコントローラの利点を再認識するのが狙いです.
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本研究は,評価関数に省エネを考慮して,空調機による室温制御系におけるPIDコントローラの調整法の開発を主眼としています. 快適な空間をつくるという目標と省エネの概念とは,逆行するものとらえられがちですが,本研究を通して相対する概念の融合を図りたいのです.制御精度を高めるには当然消費エネルギーは大きくなります.省エネを必要以上に重要視すれば,制御しない方がよいということになります. しかし,本研究では制御弁などの要素に機械的な損傷を与えてまでも,制御精度を高めることに意味はないと考えて,消費エネルギーより操作量の変化に視点をあて制御方式を検討しようとしています. |
空調制御 |
空調システムの研究を調べると,数学モデルがすごく厳密にわかっている要素から,部屋のモデルのように,すごく粗っぽく未知の部分だらけのものまで混ざっているのが実情です.
そこで,冷たい空気が部屋に入って,暖かくなった空気が外気と混じり合って,また冷たくなって元に戻っていく様子を物理的法則にしたがって,お風呂の数学モデルをつくったようにモデルづくりを行ってきました.
私たちは今まで統計的な手法でモデルをつくってきましたが,そのとき,多くの専門家から建物の特徴との関連を訪ねられて往生しました.ですから,怪しげな物理モデルであっても,それによって空調制御の理解を助けることが本研究の狙いです.
ビルの空調では複数の空間をもち,空調空間の温度・湿度をVAV制御という制御方式で制御するのが一般的になりつつあります.VAV(Variable Air Volume)制御とは可変風量制御といい,室内を冷房するための吸収熱量を給気風量により調節し,室内温度・湿度を制御する方式です.
この研究では,2つの空調空間の温度・湿度の制御問題をとりあげ,空調制御における消費エネルギーを考慮して最適化問題を解き,PIコントローラのゲインならびに操作量(給気風量と加湿器の冷水流量)の観点から効率のよい制御方式を提案することが狙いであります.
空調システムにおける温度・湿度制御
領域モデル |
従来の自動制御系では,図に示すようにコントローラは1台でした.このようにコントローラが1台のとき,目標値変化に対して追従性がよくなるように調整すると,外乱に対して抑制力が甘くなります.そこで,外乱に対して抑制力を増すように調整すると,目標値変化に対して応答が振動的になり,これまたよくありません.
その結果,下の図に示すような2台のコントローラをもつ2自由度コントローラの調整法についていくつかの成果を提案されました.プラントのパラメータ(時定数,むだ時間)が変動しても,制御系の安定性が保たれるとき,そのシステムはロバスト(頑強)であるといいます.
本研究では,プラントのパラメータが変動する際のロバスト性をもった2自由度コントローラを調整するルールを探ろうとしています.
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1自由度制御系 |
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2自由度制御系 |
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ジャイロスコープ(単にジャイロという)は、コマの重心で支えることにより重心の影響をなくし,コマの回転の影響のみを見ることができる装置です. ジャイロは,元来,17世紀頃から地球の運動に関する研究のために解析され,フーコーによって命名されました.その原理がわかっていたにもかかわらず,ジャイロを利用した装置が実用化されたのは,性能のよいモータが生まれた今世紀にはいってからです. 本研究では,コマの動作原理からジャイロ式力(フォース)センサへの応用例までを勉強します.そして力がベクトル的に作用したとき,力の大きさと方向を同時に測定可能となるサーボ式センサへと拡張します.定常的に加わる反作用トルクに対し,補償トルクを加えることで打ち消しますが,現実的には問題があります.外乱トルクに対して,フィードバック機構のみで打ち消すことを検証しているところです. |
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| 近年,コンベアライン上に運搬される物体の質量の要求にともない,質量測定器(はかり)により秤量された計測データに関係のない誤差信号が重畳さている問題があり,その対策が重要な課題となっています.とくに,コンベアライン上で秤量する場合には,コンベア本体ならびに秤量物の固有の振動による周期的な誤差成分が発生しやすいのです. まず,秤量物がコンベアライン上に搬入され,荷重受部を通過していくさいの,秤量物とロードセルを含むコンベアラインの動的モデルを構成します.そして,低い秤量物の固有振動成分をローパスフィルタによって除去し,その過渡応答から秤量物の質量を計測したいのです. 秤量物の長さが計量コンベアの長さより長くなると,複数個の計量コンベアによって秤量しなければなりません.そこで問題となるのが計測可能である条件を吟味する必要があります. さらに,秤量物の底板に反りがあったり,計量コンベア間に微小な段差により,出力波形が等分布荷重の場合と異なった形となってきます.現在この問題について検討中であり,最終的には秤量物の間隔をできるだけ短くして秤量方式の効率を上げることが本研究の狙いであります. |
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すでに,コンベアライン上に連続して搬送されてくる秤量物の質量測定に関してはある精度内で実現できることを報告してきた.現在は,秤量と同時に秤量物の形状(大きさ)をも測定しようという研究テーマに取り組んでいる.
| 私たちの研究所では,みんなが生き生きと自信をもって人生を謳歌するためには, “与えられた仕事をこつこつとやり遂げること” だと考えています.研究の内容は、とても地味ですが,仕事を積み重ねることにより今までより一回りも二回りも大きく成長した先輩たちを何人も見てきました. |
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この研究所では,
とたえず自問自答する人,教科書に書いてある事項をひとつひとつ疑う人を大切にしています. うまく仕事をやっていくには,
であります.でも,このおじさんは信念を変えないのです. |