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イラク自衛隊派兵違憲裁判の会
ニューズレター静岡NO.5
初口頭弁論当日、39名の傍聴席に対し80名以上が傍聴を希望し裁判所前に列を作った。
残念ながら抽選に漏れた方と、抽選に間に合わなかった方たちは口頭弁論終了まで裁判所内
で待機し、終了後弁護士会館で報告集会を行った。
さて、10時から開催された口頭弁論は
最初に原告渡辺修孝氏の訴えが、東京訴訟との重複のため取り下げられたことが確認された。
続いて、訴状陳述が行われた。最初に福地明人代理人が、訴状の補充及び訴訟の意義等につ
いて事前に用意された準備書面(別項参照)を朗読、引き続いて訴状の要旨の説明を中村順
英代理人と望月正人代理人が口頭陳述した(訴状参照)。
最後に被告(国)答弁書の陳述(朗読省略)が行われ、約30分で終了した。
福地弁護士の訴状要旨(第4項イラク派兵の違憲・適法性)
1.本件イラク派兵の違憲・違法性について。
まず、本件イラク派兵は、日本国憲法第9条に違反。
日本国憲法第9条は、その第1項において、「戦争を放棄」し、戦争に至らない「武力行使」
「武力による威嚇」をも禁じている。そして、第2項では、第1項でかかげた戦争をしないとい
う目的のために、国が「陸海空軍その他の戦力」を保持しないこと、交戦権をも認めないこと
を規定し、国に対し、戦争のための実力を持つこと、戦争を行う法的権利が認められないこと
を規定している。
この憲法第9条の解釈に関して、これまで、歴代内閣は、「自衛」のための「必要最小限度の
実力」を持つことは、憲法第9条に違反しないとの解釈をとってきた。しかし、本件イラク派兵
は、他国による日本への武力攻撃、侵略行為がないのにもかかわらず、自衛隊が自ら外国の領土
に出向いて行って、「武力の行使」をする結果となるもので、自衛の範囲を超える点で、憲法第
9条に違反することは明白。
2.次に、政府は、本件のイラク派兵は、「国際協力」「復興支援」を行うものであるから、
「武力の行使」に該当せず、憲法第9条に違反しないと主張している。
イラク派兵の目的そのものが「人道復興支援活動」であったとしても、その人道復興支援活動
を行っている際に起こりうる「武器の使用」も武力行使に該当することは明らか。この点、政府
は、憲法が禁ずる「武力行使」と正当防衛による武器使用は異なると主張するが、この区別は実
際には曖昧で、区別することは不可能だ。自衛隊による部隊としての武器使用の可能性を認めた
派遣である限り、それは憲法の禁じる武力行使に該当することは明らか。
3.さらに、本件イラク派兵は、憲法の禁止する「交戦権の行使」にも該当する。
この「交戦権」の意味につき、政府自身は「相手国の領土の占領、そこにおける占領行政」に
加担することも交戦権の行使に当たると説明。そして、本件イラク派兵において、自衛隊はイラ
クでCPAの指揮下に入り、占領軍の一員として、占領支配の一翼を担い、イラクの領土の占領行政
に加担している。本件イラク派兵が交戦権の行使に該当し、憲法第9条2項に違反することは明
らか。
4.本件イラク派兵は、国連憲章に違反し、憲法第9条の趣旨にも違反している。
国連憲章は、言語に絶する悲哀を人類に与えた二度にわたる世界大戦を始めとする戦争の惨害か
ら、将来の世代を救うという決意を宣言し、国連加盟国に対し、如何なる方法による武力の威嚇、
行使を慎むべきことを命じている。この例外として認められるのは、国連憲章第7条による集団
措置としてなされる武力行使と「武力攻撃が発生した場合」の個別的・集団的自衛権の行使とし
ての武力行使の二つの場合に限られる。
しかし、この度の米英によるイラク攻撃は、安全保障理事会の決定に基づいておらず、また、米
英等に対するイラクの武力攻撃に対する自衛権の行使にも当たらず、武力行使が許される二つの
例外的場合に該当しないことは明白。したがって、この度の米英等によるイラクの軍事占領は、
国際法上達法な「侵略行為」に当たり、その米英主導のCPA指揮下で、軍事占領に加担する自衛隊
の行為それ自体も「侵略行為」「占領」に他ならない。憲法第9条は、このような国際憲章の理念
を具現化したもので、この理念に反する本件イラク派兵が塞法第9条の趣旨に反することは明ら
か。国連加盟国の内、フランス、ドイツ、ロシア、中国等、圧倒的多数の国がイラク占領に加担
しない立場に立っており、こられの国々と同じ立場に立って、暴力による支配の過ちを訴えてゆく
ことこそ、日本が国連憲章を尊重し、国際協調主義のもと、真の国際貢献と国際平和のために進
むべき道と言えるのではないか?
5.次いで、本件イラク派兵が、イラク特措法に違反している点について述べる。イラク特措法
第2条3項は「現に戦闘が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行
為が行われることがないと認められる」地域においてのみ、自衛隊の活動を実施できる旨定めて
いる。
しかし、すでにイラク国内全土が戦闘状態にあることは公知の事実。自衛隊の駐留するサマワも、
オランダ軍と民兵組織との交戦が行われる等しており、その例外ではない。したがって、憲法第
9条違反はさて置くとしても、本件イラク派兵は、その法的根拠となっているイラク特措法に規
定される「非戦闘地域」の要件を充足しておらず、その違法性は明白。
国側「答弁書」を提出!
「平和的生存権」を「争訴性なし」と全面否定!
10月1日、第一回法廷(口頭弁論)に際して、国側から「答弁書」が提出された。5月26日提出
した私たちの「訴状」に対する「回答」である。全80ページの内おおよそ2/3が、自分に都合の
よい判例(平和的生存権を否定した過去の判決)を証拠として提示し、残り1/3でそれらを説明
(主張)するというものであり、当然ではあるが、名古屋、札幌をはじめ他地域の答弁書とほと
んど同じ内容となっている。以下その内容を要約して報告する。なお、12月10日の第二回法廷で、
原告側弁護団によるこの答弁書への「反論書」が提出されるので、反論は次号に譲る。
■国側の主張は要約すると次の2点である。
一点は、「原告らの『自衛隊派遣によって、戦争や武力行使をしない平和な日本に生存する権利
=平和的生存権が侵害された』との主張は、裁判に値する具体的・法律的な争訟性=紛争性がな
いので却下されるべきである」つまり『門前払い』すべきである。
二点は、「賠償請求するには、現実に損害が発生していなければならないのに、自衛隊イラク派
遣はそれ自体原告に向けられたものではないので、原告の利益を損害することはありえない」。
したがって、損害賠償請求自体『失当』である。
1.原告の訴えは「争訟性なし」という点について。
裁判所が審判することができる場合は、当事者間(原告と被告)に具体的な権利義務や法律関
係の存否に関する紛争があって、かつ法令の適用により終局的に解決することができるもの、つ
まり、法律上の争訴性があるものに限られる。
@しかし、イラク自衛隊派遣は、原告たちに向けてなされたものではなく、具体的な権利義務や
法律関係の存否になんら影響を与えおらず、原告個人の権利ないし、法律上の利益に直接の影響
を及ぼしていない。
A裁判上で救済が得られる権利は、具体的・個別的権利でなければならないが、原告の主張する
「平和的生存権」は、学説(二人の学者の著書を紹介)や判例(いくつかの判例と6個の判例を証
拠提示)によっても、その権利は抽象的・不明確・不明瞭であり、きわめてあいまいなものであ
る。「平和的生存権」の「平和」とは、理念ないし目的としての抽象的概念であって、その具体的
な意味・内容を直接憲法前文から引き出すことは不可能である。それが、具体的訴訟での違法性
の判断基準になるとは考えられず、「平和的生存権」は、ただ政治の面において平和理念の尊重
が要請されることを意味するのみである。
2.損害賠償請求自体が「失当である」という点について。
@「平和的生存権」は、前記のとおり国民に保障された具体的な権利とは認められずまた、国家
賠償法上保護された利益でもない。
A自衛隊イラク派遣はそれ自体原告に向けられたものではない。原告の利益を損害することはあ
りえない。
B国家賠償法の損害賠償請求では、原告の利益が現実に侵害されたことが必要であり、侵害の危
険性が発生しただけでは足りないところ、原告らは、現実に侵害が発生したことについて何ら主
張していない。以上から主張自体失当である。
以上がまず出された国側の主張である。総じて“争訟性なし”のこのハードルを私たちも何と
かクリアーしなければならない。弁護団は今、この論理を打ち崩すべ「法理論的」立場から反論
書を準備している。
私たちは私たち原告のそれぞれの立場から“人間論的”肉声でもって大反論を行なっていこう
と考えています。ぜひ反論・異論を寄せてください。
なお、「答弁書」全文をほしい方は1000円(送料込み)で販売しますので、
事務局(054−263−0989)へ申し込みください。 事務局 森 正孝
全国の取り組みについて(全国弁護団会議に出席された塩沢忠和弁護士の報告から)
1.北海道
原告は箕輪登元衆議院議員一人
(1)2004年1月28日提訴
道内弁護士109名が代理人(同弁護士会の4分の1以上)すでに3回の弁論期日
次回11月1日
(2)主張の内容
@イラク特措法及びこれに基づくイラク派兵は「専守防衛」の憲法9条に違反する
A自衛隊法違反
Bイラク特措法自体にすら違反
2.名古屋
(1)2004年2月23日1262名で第一次提訴 4月14日、7月10日追加提訴
現在3045名 現在も原告募集中
(2)原告は全都道県市民原告に天木直人氏、池住義憲氏も
(3)訴状自体が“ですます調”ホームページからダウンロード出来、各地で訴状学習会、原告
全員が陳述書を書く。若い学生たちに運動が広がりつつある。
3.大阪
(1)2004年4月30日 原告20名で第一次提訴 7月26日402名で第二次提訴
(2)小田実氏や鶴見俊輔氏らが中心
(3)9月16日弁論 来年5月26日最終弁論(最終弁論の日が決定しているのは名目としては裁判
をスピーディーに進めるということだが、実質的に弁論が制限される)
4.東京
(1)「イラク派兵違憲訴訟の会・東京」による「毎日毎日提訴運動」いずれ集団訴訟
(2)注目は波辺修孝氏
500万円慰謝料請求、23566円の航空券代金立替金債務不存在確認請求
5.山梨
(1)8月6日(広島原爆記念日)に225人で提訴
(2)「派兵は決定的違憲」論に基づく主張:「決定的違憲」違憲にも程度がある。自衛隊は憲
法上よくても、イラク派兵は決定的に違憲であるとする論
6.今後の提訴予定
仙台、京都、岡山
第三回法廷以降の原告陳述者を募ります!
私たち原告団としては、直接ナマの声を裁判所に聞かせなければならないと考え、今後の法廷も、
毎回2人から3人の原告の陳述を行ないたいと考えています。前例があまりないそうですが、裁判
所との交渉にあたる弁護団にがんばっていただき、ぜひ実現させたいと思っています。
そこで、法廷で直接意見を述べたいと思う人はぜひ申し出てください。おおよそ一人10分程度
です。
また、事務局からお願いにあがるかも知れません。そのときにはぜひよろしくお願いします。
原告全員に「陳述書」を書いていただきます
「イラク自衛隊派兵」への思いを、年内にまとめて下さい!
全員が法廷で直接陳述できればいいのですが、それは無理なことなので、それに代わって原告が
文書で「陳述書」をつくり裁判所へ提出したいと思います。文章が苦手な人は一行でも二行でも、
また長文でもかまいません。
来春早々には提出したいと思いますので、年内にはまとめて下さい。形式等は次号「ニューズレ
ター」でお知らせします。
●第二回法廷12月10日(金)に決定!
五人の原告陳述と国側「答弁書」への反論を予定!
第二回口頭弁論が12月10日に決定しました。一時間半をたっぷり使って、次のような法廷内
なります。第一回と同様、多くの原告・サポーターの参加をお願いいたします。
■日時:12月10日午前10時〜11時30分
■集合:午前9時30分(45分から抽選)静岡地裁前
■法廷内容
1.原告五人の陳述(陳述順序は未定)
@桜井規順さん(69歳・元国会議員・裁判の会代表ー「満州開拓団」の体験と護憲運動をもとに陳
述)
A中川 弘さん(63歳・キリスト者・原告団長ーキリスト者の立場と日常の生活者の立場から陳述)
B石川重尾さん(79歳・川柳歌人・静岡空襲被害者一空襲の直接被害者としての体験をもとに陳述)
C李 憲一さん(50歳・在日朝鮮人二世一戦争の悲惨を最も知る者としての在日の立場からの陳述)
D森 正孝さん(63歳・原告団事務局長一日本のアジア侵略史を調査研究してきた体験から陳述)
2.弁護団による国側「答弁書」への反論
■報告集会 午前11時30分〜弁護士会館
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