風の唄
風の唄〜第一話〜
〜青春香〜
人は過去をさまよう・・・・・
未来を見つめたいにもかかわらずさまよう・・
たださまよう・・・・・
人はそこに何を見い出すのか・・・・・
・・・・・とか、言って・・・・
別に推敲もへったくれもないアドリブな詩を作ってみる
これを真面目に作ってるようなら
死ぬほど恥ずかしい思いをするのだろうな・・・・・
俺、常盤 修吾はすっかり受験が終わり、
進学校も決まって卒業式の準備に取り掛かってるとこを
抜け出してきた。
学校からは近いが、このバカ高い桜の木に登って寝ていれば
間違いなく見つからない。
この場所を見つけたのは中1の2学期ごろかな・・・・??
春風を香り、草花のざわめきを聞く・・・・・
この何気ない事がもうすぐできなくなる・・・・
大した思い出もないのだが、やけに寂しい・・・・
「ああ〜・・眠っ」
つぶやきながら、ぐらりと落ちそうになったので
必死にバランスを取り、重力に反抗する。
俺、反抗期・・・・ふ
「・・・・・」
ただボケーっと時が過ぎるのを待つ
・・・・・気づいたら夕日が出ていて、
辺りをオレンジ色に染めていた。
ようやく背中が痛いのに気づく。
「あたたた・・・・」
桜の太い枝から飛び降りる。
・・と、眼前に見慣れた顔が広がっていた。
「お、何だ成美か。」
「何だじゃ、ないでしょ!
また準備サボって!あんたも主役なんだよ?」
「分かってるって〜」
「嘘!」
成美とは幼馴染の相馬 成美の事。同い年だ
家は俺の隣の隣。
幼馴染でも、漫画みたいに恋に発展していく気配も無い。
仲が良すぎるのか・・・・??
「本当に明日は参加しなよ!」
「分ーたよっ!」
すでに聞き飽きて、
俺の体の中には免疫の出来てる台詞をはいて
成美は校舎に消えていった。
・・・・・何だか面倒見のいい妹みたいだ。
俺はふと、思った。
「・・・さて、帰るか〜〜」
やる事もないので、俺は家にふらふら帰っていった。
夕日もそろそろ沈みそうだ・・・・・。
風の唄〜第二話
〜幼馴染〜
3月5日 晴れ
「くぁ・・・・・・」
布団にこもりたい衝動を抑えつつ起き上がる。
「眠・・・・」
深夜3時ごろまでアニメやバラエティを見てりゃ、
そりゃ眠くなる訳だ・・・・・
3月になってもまだ寒い・・・・・
桜は結構咲いてるが・・・
腰を曲げながら並木道を歩く。
よく考えたら・・どうせ授業もすべて一段落ついて
授業は卒業式の準備やらなんたらだけなのに
それをサボる俺は何で登校してるんだろう・・・・・??
・・・・・まぁ、いいか
どうせこの学園生活もそろそろ終わりを告げる。
そのわずかな時間をこの辺で過ごすのも悪くない。
「よぅ!常盤、今日はやけに早いな。」
悪友の坂野 裕樹が俺が伏してる机によっかかり
気さくに話しかけてくる。
こいつと俺はガキのころからいくつもの修羅場をくぐってる。
ろくでも無い事ばかりだが・・・・・
「常盤、知ってるか??」
「知らない。」
「そ、そういわず聞いてくれ。」
「・・・・・・」
このバカを追っ払うには無視が一番有効だ。
「相馬 成美に彼氏ができたらしいぞ。」
「・・・・・・」
成美に彼氏だと・・・・・??あの女に??
・・でも俺には関係ないことだ。
「・・俺には関係ねぇよ。」
「??お前と相馬は幼馴染じゃないのか??」
「そうだよ!それがどうした!」
意味も分からず、怒鳴る。
・・なぜ俺はそんなにイライラしてるんだろう・・・・??
「・・常盤」
「あ・・・??」
「自分に素直になれよ、じゃな」
意味深な言葉を残し、先生が入ってきたので
坂野はいそいそと自分の席についた。
風の唄 第三話
〜出会い〜
「・・なんだかなぁ」
心の中の謎のもやもやが取り除けない。
やはり成美の事・・・・??
い、いや!俺は何を考えている!
適当にその場で作成した曲を口ずさむ。
夕焼けに反射した桜の花が幻想的だ。
「・・・・・ん〜??」
公園の中をふと見ると何やら黒い物体がうごめいていた。
まさか地球を奪いにきた宇宙人??・・いや、有りえん。
Who are you??
目をこらして見るとどうやら人間の女の子のようだった。
夕日に反射して見づらかったのだ。
と、その時、その子が俺を察したのかばっ、とこっちを振り返る。
「・・・・・・」
どうしていいか分からず、とりあえず微笑んでみる。
彼女は何事もなかったのようにまた首を戻す。
何をしてるんだろう・・・・??
個人的に興味をそそられる。
何気に少女の方に近づいてみると・・・・・
「・・・・??」
彼女は地面をじっと見つめていた。
その視線の先には蟻がいて、餌らしき弱った蛾を運んでいる。
驚いたことにその蟻はたった一匹でその蛾を運んでいる。
蟻のでかさはその辺のよりは巨大だったが、
蛾はそいつの何十倍はあろう、蟻から見ればモンスターのような
やつだった。
「・・すごいよね、私にはこんな事は到底できない・・」
少女が振り向かず言った。少しギョッとする。
まぁでも、透き通った綺麗な声だ。
「こんな小さな蟻が・・私なんかよりずっと根性ある。」
「そうだな・・蟻は命がけだから。」
自分でも何を言ってるのかよく分からない・・・・・
と、その時、少女がこっちを向いてくれた。立ち上がるのと同時に。
少し、ベージュのかかった肩まである髪・・
透き通った瞳。
紅く薄い唇。
少女はその唇でわずかに笑っていた。
「・・・・・・」
よく分からんが心に熱いものを感じた。
「その制服・・留園学園の生徒・・さん??」
「ああ、そうだよ。もう卒業だけど」
少女はよく見れば俺くらいの年でウチのではない制服を着ていた。
「あの、私、一週間位前にここに引っ越してきたんですけど・・
もう3年生で卒業って事なんで高校から通うことになったんです。」
「へぇ、そうなんだ。それでどこの高校??」
「瀬美高校。」
・・・・・・なんてこった。
公園でたまたま会った少女が同い年で、
しかも行く高校も一緒なんて・・・・・
・・運命??
心の中でバカな事を考える。
でも、ひとつだけ言える事があった。
・・・・・・嬉しい
・・なぜだろうなぁ・・・??
その後、近所の事とかを15分くらい話して、別れた。
話してみた感想は・・・・・・
変わった子だなぁ・・・そう思った。
でも決してマイナスの印象ではなかった。
風の唄 第四話
〜卒業・前編〜
・・・・・・この日が来た。
3月17日、卒業式だ。
いつもと変わらない風景。
でも、何かが違った。
もう感じられなくなる景色への
切なさなどがあるのだろう・・。
いつも通りギリギリで校舎に滑り込む。
俺、グッドスキープレイヤー、ふふ・・。
すでにクラスメイト供は席につき、
卒業式の時間が来るのを待っている。
「よぉ、常盤。」
いつも通り、坂野が椅子ごと俺の席にやってくる。
こいつとは事の成り行きで
同じ高校に行くハメになった・・・・ハァ。
でも成美はもっと遠い高校だ。
無理もない。
あいつは俺らよりずっと頭がいい。
昔は算数のテストで常に勝利をキープしてたのになぁ・・・・。
そうこうしてる間に時間が来た。
のそのそと整列し、会場である体育館に向かう。
「え〜・・皆さんは人生の分岐点にいる訳でありー・・」
・・くぁ〜
あくびをかみころす。
ったく・・どこの学校でも校長の話は長いんだな。
最後だから聞いてやろうとも思ったが、2分でやめた。
なんとなく天井を見上げる。
高1のころにバレーボールで遊んでいたら
天井にひびをいれてしまった・・。
それが目に入った。
「・・・・ふぅ」
小さい溜め息を付きながら右斜めの席に座ってる、
成美の後姿を見つめる。
「・・・・・・・・・」
意味も分からず、いらいらした気分になる。
ちくしょう・・・・!
俺は心の中で嘆いた。
全く意味不明だ。
やっと一連の流れがすべて終わり、
卒業式のある意味メインである。
写真撮影や告白タイムにうつる。
教室にふらっと行くと、生徒があふれていた。
嬉しそうにカメラにポーズしている奴もいるが、
友達を囲んで泣いている奴もいる。まちまちだ。
俺は適当な友達と写真の撮影を行った。
ただ、坂野はシカトだ。
どうせまた同じなんだから記録する意味もない。
「・・・・ふぅ、疲れた。」
担任の最後の挨拶等が済み、速攻下駄箱に向かう。
「う〜〜〜〜む」
さすがに今時、下駄箱にラブレターを入れる奴はいないか〜。
もてる男達の下駄箱をくまなくチェックする。
と、俺の前に人影があった。
「あ、君は〜・・」
影はあの時に公園にいた少女だった。
そういえば名前を聞いてない。
「え〜と・・名前・・」
少女は、はっと気づいたような顔をして言った。
「私、山瀬 ゆりあって言います。
あの・・常盤君、話があるんです・・・・・。」
・・この子俺の名前、どうやって調べたんだ??
いや、それより何だ!?このベタなシュチュエーションは!?
・・でも告白って感じじゃないな・・・・なんとなく。
俺は彼女の誘導されるがまま、裏門に向かった。
風の唄 第五話
〜卒業・後編〜
桜の舞う見慣れない帰路・・・・・。
一体彼女は俺をどこに連れて行く気なんだろうか?
・・と、そこへ
「!!!!!!」
前方斜め45度くらいの所に成美が歩いていた。
それだけなら驚きはしないだろう・・ただ
男と一緒だった。
「??どうしたんですか?常盤君?」
「あ、あ・・いや・・。」
急いで視線を戻す。
男は顔は見えなかったが、微妙に長くサラサラの髪。
後姿は結構いい男だった。
「・・・・・・・・・」
来た事もないこの道は大量の桜の木に囲まれ、
太陽がいい加減に照っていて、
凄く綺麗なところだったがそれどころじゃない・・・・・
知ってはいたが現実を直視したらさらにショックを受ける。
・・・でも俺は成美の元カレでも何でもない・・・・・。
なのにこんなにショックで腹が立っている・・・。
なんなんだよ・・俺は
あれこれ考えてる間に山瀬の家につく。
「・・・・うぉ〜」
恐ろしくでかい屋敷だ。
なるほど、確かに彼女はそんな雰囲気がする。
もの静かで・・でも何かオーラのようなものがあって・・・・。
「さぁどうぞ。」
山瀬は門を開け、俺を誘導してくれる。
家に呼んでどうする気なんだ・・・??
まさか愛の告白って訳じゃないだろう。
じゃあ・・何だ??全く予想がつかなかった。
彼女は巨大な家のドアを開けた。
これまた豪勢な玄関が覗ける。
「お嬢様、お帰りなさいませ。」
・・・・・これは執事というのか??
始めて見たぞ。
「そちらは常盤様ですね??お話は聞いています。
どうぞ、こちらへ。」
「あ・・はぁ、どうも」
・・話って??
とりあえずいつも家に上がる時とは比べ物にならないような
丁寧さで靴をそろえ、お邪魔する。
恐ろしく広いリビングのソファーに座らされる。
・・はぁーー。
俺は心の中で大きく溜め息をついた。
正直俺は、こんなフカフカで豪華なソファーよりも
家の狭い部屋にある、馴染み深い安物ソファーの方が断然落ち着く。
執事がお盆に紅茶のような物を乗せてきた。
そして3人そろった所で執事が口を開いた。
「実は常盤様にお願いがあるのです。」
「お願い・・・・・ですか。」
なんだかぎくしゃくしてるのが自分でもよく分かる。
今度は山瀬が言った。
「常盤君に・・ボディーガードを頼みたいんです。」
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・は?
今、ボディーガードっていったよな??
え??意味分からん。
「・・意味不明・・ですよね」
うん、ごもっとも。
「実は最近、お嬢様にストーカーのような輩が
ひっついているのです。」
ストーカー??まぁ、こんな豪邸に住むお嬢様なら
そんな奴がいても不思議じゃないが
問題なのは・・・・・・・
「なんで俺なんすか??
他にちゃんとしたボディーガードを雇えば・・・・・・。」
山瀬が静かに透き通った声で返答した。
「常盤くんじゃないと・・駄目なんです。」
「・・・・・・・」
俺じゃないと・・・・駄目??
な、なぜ・・??
しばしの沈黙の後、執事が言った。
「私もその事を推したのですが・・
お嬢様がどうしても、というので・・・お願い致します。
お礼はいくらでもしますので・・!」
「・・・・はぁ、あ、いやお礼なんて・・・・・。」
困った事になってしまった・・・・・。
こんな状況で断るわけにはいかないし、
守る相手が一般人ならまだしも、
こんな豪邸に住む、お嬢様ときている。
・・でもこのままじゃ・・なぁ
「・・分かりました、受けます。」
とりあえずそう発言した途端、山瀬と執事の顔が一斉にほころんだ。
「ありがとうございますっ!」
二人同時に言った。
その喜びの反面、俺は心の中でひどく大きな溜め息をついた・・
・・ったく面倒だな・・
でも正直、あまり嫌ではなかった・・。
ただめんどくさいだけ・・。
こうして俺と山瀬は瀬美学園での登下校を
供にする事になった・・・・・・。
第六話〜最終話