今日はオレの運命の日だ。 この結果しだいで・・・大丈夫だ、やれる事はすべてやった。 って、テストはもう終わってるだけど・・・。 今は今日来るはずの結果を待っている。 朝の内に届くって言うからドキドキして待ってるのに・・・ 全然来なくって・・・ 「耕治、大学からの通知来たわよ」 下から母さんの声がする。 ・・・さてと、どうなっているかな?
Pia☆キャロットへようこそ!!2 アフターストーリー 〜前田耕治、日野森あずさ〜

「はぁ・・・遅いな耕治君・・・」 腕時計をちらりと見ながら私は溜息を一つ。 今日は約束の日、大学が合格していたら夏休みにバイトしたこの街の駅で待ち合わせになってる。 約束の時間は一時。今、一時五分をまわったところ・・・。 「耕治の奴落ちたんじゃないの?」 そう言って話しかけてきたのは矢野真士君。 耕治君の親友で私の友達、バイトの時いろいろあったけどもうすっかり仲良くなってる。 「・・・一緒に勉強して、テストが終わった後も大丈夫って言ってたのに・・・」 はぁ、本当に落ちちゃったのかしら? 「・・・」 真士君が急に真顔になってる。 「・・・あの、あずさちゃん、一緒に勉強って・・・どこで?」 「どこでって、図書館とか、耕治君の家とか、私の家で・・・」 どうしてこんな事聞くのかしら? 「じゃ、じゃあ二人はあんな事やそんな事やあまつさえこーんな事まで・・・」 「あ、・・・(////)」 そんな事・・・ポッ バシッ 「いてっ、冗談だよ冗談、もうちょっと手加減してくれよ、耕治」 「あれでも手加減したつもりだぞ、・・・遅くなってゴメン、あずさ」 私の前には、大好きな、前田耕治君が居いました。 「・・・十分の遅刻はどう説明するのかしら?」 あずさの顔が怒ってる。 「な、なかなか通知が届かなくて、それで届いたあとも開けるのにちょっと手間取って・・・」 「おまえなあ、そんな物は来たらすぐぱっと見ればいいだろう」 真士の奴が突っ込んでくる。 「一週間も間が空くと自信も無くなって来るんだよ・・・」 真士のほうにそう言ってやる、そしてあずさに向き直り・・・ 「それで合格がわかった飛んできたんだけど・・・ダメ?」 「・・・そっか、なら仕方ないわね」 あずさの顔が緩む、なんとか怒られずにすんだな。 「ほっ・・・」 「・・・その代わり、キャロットでデザート一品おごってね、耕治君」 「ぐっ・・・!!」 「まあまあ、3人そろった事だしキャロットへ行こうぜ」 真士が場をまとめる。 もっと早くまとめろよ。 「それにしても耕治があそこに受かるとはな、世も末だな」 「ほっとけ」 「知ってるあずさちゃん、こいつバイトの時赤点ぎりぎりで追試免れた男なんだぜ」 「いちいち言うな!」 「くすっ、うふふふふ」 耕治君と真士君、今までちゃんと見てきたわけじゃなかったんだけど、本当に親友なんだよね。 「あずさ〜」 耕治君が私に助けを求めている。 そろそろ助けてあげましょう・・・ 「赤点ぎりぎりだった割には私と勉強した時、私のわかんないところ教えてくれたけど・・・?」 「そう、そこなんだよ。夏休みが終わったらコイツ急に成績上げて、おかげで俺は置いてきぼりだよ」 「・・・耕治君が夏のバイトの合間で成績を上げたって事よね・・・」 それってすごい事よね。 「どう考えてもおまえにそんなヒマがあったとは思えん! 何をした、白状しろ!!」 真士君の目がいっちゃってる。 「ぐ、ぐるしぃ・・・は・な・せ・・・」 「まあ、真士君おさえて」 「えっ、・・・ははは、スマンな耕治」 「けほっけほっ、・・・殺す気か!!」 「まあそれは置いといて、どうやって成績を上げたんだ?」 真士君がズズっと耕治君に詰め寄る。 私はしばらく傍観してようかしら、おもしろそうだし。 「・・・いいか真士、オレは前から言ってる通り、忙しい合間を縫って普通に勉強しただけだ」 あずさと仲直りする為に東奔西走して本当、たいへんだったしなあ。 「普通に勉強? そんなんで成績が上がったら苦労しねえよ!」 あの時はかなり必死だったし、普通に勉強って言うか猛烈に勉強だったけどさ。 「・・・それで納得してくれないんだったら、オレの実力だと思ってくれ」 時間を見つけてはジョギングしたり課題やったり・・・よくやったな。 「くそっ、俺は負けねえからな!」 何に負けないんだか・・・。 「話が一段落した事だし、そろそろキャロットへ行きましょう」 あずさがオレ達の間に割ってはいる。 そうなんだよ、晴れて受験生の身から解き放たれたオレ達は、 再びキャロットでバイトをする為にこの街に来たんだ。 ・・・真士は初めてだけど。 「でもいきなり押しかけてバイトさせてくれるのか?」 真士の奴が弱気な事を言う。 「一応ミーナに言付は頼んであるし・・・」 「電車待ってる間にキャロットに電話入れておいたし・・・」 「「大丈夫なんじゃない」」 オレとあずさがそろって言うと真士の奴が不機嫌な顔をする。 「・・・へいへい、そうで御座いましょう」 「オレ達なんかしたか?」 「・・・はぁ、俺も彼女欲しいなあ・・・」 思いっきり溜息をつくと真士は天を仰いだ。 「ねえ、真士君どうしたの?」 あずさがオレに聞いてくる。 「さあ、わかんない」 ホントに真士の奴どうしたんだろ。 そんなこんなでオレ達はキャロットへ向かった。 「いらっしゃいませ、ピアキャロットへようこそ」 自動ドアを抜けオレ達を待っていたのは、 「お久しぶりです葵さん」 「こんにちは」 「ど、どうも」 「あら、久しぶりねぇ」 皆瀬葵さんだった。 「ところで耕治君、あずさちゃんとはどうなったのよ?」 にやついた顔をして肘で小突いてくる葵さん。 「え、えっとその・・・」 後ろであずさと真士が怪訝そうな顔でいる。 葵さんの言葉が聞こえなかったんだろう。 オレが答えられずにまごまごしていると・・・ 「葵、なにやってるのよ」 涼子さんの声がした。 「分かってるわよ、席はこっちね」 葵さんに案内され俺達は席につく。 「注文が決まったらアタシか涼子、それに美奈ちゃんで近くにいる人を呼んでね」 そう言って葵さんはカウンターからべつの席へ料理を運び始めた。 「・・・お帰りなさいでいいのかしら、久しぶりね二人とも」 「「涼子さん、お久しぶりです」」 「涼子姉さん、俺は?」 「ふふふ、真士君はちょっと前あったでしょ」 オレ達の所に涼子さんが来た。 「見ての通り今は結構混んでいてしっかりとした話は後になるけど、またバイトに来てくれるのね」 「はい、・・・雇ってくれればの話ですけど・・・」 「・・・」 突然黙り込む涼子さん。 「涼子さん・・・ダメ、ですか?」 「前の通りのスケジュールになるけど、それでよければ。 ・・・それと真士君はせめて週五回は出てくれなきゃダメよ」 「涼子姉さ〜ん・・・今度は大丈夫だよ」 「ふふふ、どうかしら?」 「あ、お姉ちゃん達いつ来たんですか?」 美奈ちゃんが俺達のテーブルに来た。 さっきからこの店の看板レベルがこのテーブルに集中してるな・・・ 周りの客(特に男)から怒りの視線が来てる。 ま、あずさが隣にいるからかな。 多分昔の俺がこの情況を見たら同じ事をするかも・・・。 「ミーナ。さっきついたばかりなの、そろそろ注文しないとね・・・ ・・・ ・・・ ・・・でお願い、あと、前言ってたお勧めのデザートを食後でね」 「はい、確認を取ります。 ・・・ ・・・ ・・・でよろしいですか?・・・かしこまりました。」 「ゆっくりして行ってね」 涼子さん達は仕事へ戻って行った。 「・・・」 真士が黙って俯いてる。 「どうした真士?」 「・・・これで俺もキャロットで働けるんだなって」 真士・・・。 「・・・あっ! おまえビビッてるとか?」 「そんなに力まなくても大丈夫よ」 「・・・あぁ、二人とも一応先輩だしよろしく頼むな」 「何が一応だ! このっ!」 「耕治君!」 「あずさちゃん助けて」 真士があずさに助けを求める。 あずさ・・・。 「・・・許す(ニコッ)」 よしっ! 「ひぇぇぇぇぇ!!」 「お待ちどうさま、あれどうしたの?」 葵さんが私達のテーブルへ料理を運んできた。 「・・・ちょっと調子に乗りすぎちゃって・・・」 ちょっと騒ぎすぎた私達は涼子さんから注意を受けてしまったのだ。 「ははぁん、・・・後で涼子から反省文書かされるわよ」 「えっ!」 「マジですか?!」 涼子さんってしっかりしてそうだったけどそこまで・・・ 「・・・涼子ってばそういうところはホントきちんとしてる・・から・・・ あはは、アタシまだ仕事あるから・・・」 どうしたんだろう、急に? 「あの慌て方はただ事じゃないな、・・・ま、食べながら考えるとしよう」 耕治君の意見、あれ?真士君の顔が青ざめてる。 「真士君?」 「え、あ、あぁ・・・がつがつ・・・うまいな、これ」 「おまえなあ・・・」 「・・・さっきの涼子姉さんの視線に気がつかなかったのか?(ボソッ)」 涼子さん? きょろきょろ 普通に料理を運んでいるわ。 「「?」」 耕治君と顔を見合わせる。 「見なかったのか・・・それがいいのかもしれん・・・で、この後どこで時間つぶす?」 話題を逸らした。涼子さんの視線ってなんだったんだろう? 「急に話変えるなよ、ったく・・・時間をつぶすか・・・ゲーセンかな、どうあずさ?」 「ええ、いいわよ。丁度キャッチャーでとって欲しい物もあるし」 前みたいにミーナから頼まれていた物じゃなくて私が欲しい物。 「じゃ、決まりだな」 私達は楽しく食事を終えた後ゲーセンへ向かったのだ。 「結構時間つぶしたな」 「耕治、おまえ勉強しまくってた奴の腕じゃないぞ、あれ・・・」 そんなに対戦成績八戦七勝が気に食わないのか。 「あれってそんなにすごいの?」 あずさがオレ達に聞いてくる。 ま、あずさはあんまりゲーセンのゲームとかやらないからな。 「あのゲームは確か一月ぐらいから稼動してる奴だぜ、 ・・・受験真っ最中の奴に毎日通ってた俺が倒されるなんて考えられん! 耕治・・・あのゲーム、裏技でもあるのか?」 「・・・最近の格ゲーはだいたい似た技になってるからな、 偶然オレに一番あったキャラを引き当てて七連勝した。それだけだって」 もっともつかさちゃんからちょっとしたコツは聞いてるんだけどね。 真士と遊ぶ時にゲーセンは必須だからな、昨日電話で聞いておいてよかったぜ。 「・・・納得いかねえ」 あ、ふてくされた。 「耕治君、実はつかさちゃんにコツとかアドバイスとか受けてないかしら?」 ギクッ!! 「・・・はっはっは、何を根拠に、あずささん」 「・・・その口調が怪しい」 あずさには勝て・・・ないんだな・・・。 「じーーー」 「・・・その通りでございます」 「じゃ、じゃあおまえ、どれが使い易いかわかってたんだな!」 「ああ、コマンド表についてない技も少し・・・でもやったのは今日が初めては嘘じゃないからな、 最初の四勝はおまえが手加減してたかもしれないけど、残りは本気でやってただろ?!」 「ぐっ・・・さ、さぁ時間だし、キャロットへ行こう!」 ダッ 真士が駆け出した。 「お、おい!・・・ふぅ・・・いくか、あずさ」 「ええ・・・」 ぎゅっ オレ達は手を繋いで走り出した。 「久しぶりです店長さん」 「ご無沙汰しています」 私達は面接を前に店長さんへ挨拶に向かった。 「やぁ、久しぶりだね。きみは・・・確か前田君達と同期に面接をした・・・」 「矢野真士です」 「所で矢野君、確か君は双葉君の従姉弟だったよね、どうだいこの店は?」 「どうっていまわれましても・・・」 「スマンスマン、そんなに堅苦しい質問ではないんだ、何となくでもいいから」 「はぁ、・・・そうですね、耕治がバイトの時に結構来てたけどいいですよ、うまくいえないけど・・・」 しどろもどろに真士君が言う。 「真士の奴緊張してるのかな?」 耕治君が小さく私に聞いてくる。 「普通はするんじゃないかしら?」 「・・・そうだな」 私だって久しぶりに会って緊張してるんだから。 「・・・それでは日野森君、君はどうだい、久しぶりに来た店の感想は?」 「えっ、私ですか・・・そうですね、この雰囲気がいいです。この帰ってきたなあって言う・・・」 何言ってるんだろう私。 「そういってもらえて嬉しいよ、じゃあ前田君、君は?」 「オレは・・・あずさと一緒です。帰ってきたなって言うか懐かしいって言うか・・・」 耕治君はすぐに答えを出した。私に質問が飛んだところを見てすぐ考え出したのだろう、ずるいかも。 「なるほどね、・・・所で君達はいつから付き合いはじめたんだい?」 「「えっ?!」」 突然の質問、・・・というか、耕治君が私を呼び捨てにした時点で分かったと思うんだけど、 ・・・耕治君はうろたえてる。 「えっと・・・それは・・・」 真士君がやれやれといった感じで耕治君を見ている。 「・・・ふぅ、隠す必要なんて無いでしょ。 店長さん、私達キャロットのバイトが終わった直後から付き合ってるんです」 「ははは、実はその事は知ってたんだ。ちょっと初々しいカップルをからかって見たくなってね。 それにしても前田君、日野森君の尻に敷かれない様にしないといけないな」 えっ 「店長さん!!!」 「スマンスマン、美奈君が言うには、ラブラブ過ぎてからかえない、と聞いていたものだから」 ミーナ、本当のお兄ちゃんみたいで嬉しいって言ってたのはどこの誰よ、あとで覚えておきなさいよ! カチャ 「あ、3人とも来てたのね」 面接用の部屋が開く、その中から涼子さんが現れた。 「双葉君、私はこれで仕事に戻るよ」 「わかりました」 そう言って店長さんは仕事に戻っていった。 「それじゃ3人とも中に入って」 「「「はい」」」 私達は部屋の中に入っていった。 「3人とも一度面接を受けた事があるから確認だけするわね。 あずささんは週五日のウェイトレスでいいのよね、そうそう何日から出てこられるのかしら?」 「まだ合格が決まっただけで学校を卒業してないからすぐそのスケジュール通りには無理ですけど、 三月に入れば大丈夫です」 涼子さんによる面接が始まった。 最初はあずさらしい。 「そうね、三月まであと一週間ぐらいあるかしら、学校が休みの日だけ教えてくれる? その休みの間、三日ぐらいで勘を取り戻ししてもらうわ」 「はい、おねがいします」 イスの並び順から言って次はオレだな。 「前田君は週六日、職種は前回と同じ様にある程度自由に決めてもらうけどいいかしら? それから前田君と真士君は休み同じなのよね?」 「はい、それが何か?」 この展開からすると倉庫整理だな。 「もうすぐ荷物が届くの、その時に倉庫整理をお願いしたいのだけど?」 「俺達は後27、28と行って卒業式だから、その前だったら大丈夫だと思うよ」 「分かったわ、荷物は23日に届くのでその時に二人は倉庫整理をお願いするわね」 「「はい」」 いきなり倉庫整理か、今回は真士と一緒だし大丈夫だな。 ・・・あれ、誰か居ないような・・・!! 「涼子さん、神楽坂ってバイト辞めちゃったんですか?」 「貴方達が辞めるのと同じぐらいにね、一応夏休みだけって言う契約だったから。 神楽坂君から聞いてなかったの?」 「オレはあいつの事は全然知らないから・・・」 そう、不思議な同僚だった。 「神楽坂って言えば最近どっかの劇団で名前を挙げてきた男役でそんな人いなかったか?」 「神楽坂君って男の子でしょ?」 確かに少し華奢なところがあったけど確かにアイツは男だった・・・と思う・・・けど、 「実は男装して男の研究とかしてたりして・・・そんな事普通ないか」 自分で言って自分で落胆するオレ。 (本当はそうだったりする) 「ま、その神楽坂って人はもういないんだろ。その分俺が頑張ってやるから心配するなって」 倉庫整理の恐ろしさ、その身に味わえ、真士! 「話はこれくらいよ。それで、みんな今日は遅くなっても大丈夫?」 突然涼子さんが話を変えた。 「葵がね、3人の歓迎会を開きたいって言うの。ただ、葵の事だから夜遅くなるのは確実だし、 下手すると明日になっちゃうかもしれないけど、それでよければ来てほしいの」 歓迎会って名前の宴会か・・・ 「俺はもちろん行くぜ、耕治お前も行くだろ?」 真士は即答するとすぐオレにふってきた。 「どうしようかな? 行きたいけど・・・今夜は・・・」 大学合格するまでっていう約束だしな。 「寝るところなんて寮の一室の鍵を借りれば済む事じゃないか」 そうなんだけど、そうじゃなくて・・・。 「・・・どうする、あずさ?」 「どうするって、夜遅くなるって叔母さんに電話いれておけば大丈夫だけど・・・。 あの歓迎会は、・・・どうしよう耕治君」 うわっ、堂々巡りして選択権が俺に戻ってきた。 「別にこれは強制じゃないからそんなに悩まなくても・・・」 悩んでるオレ達を見るに見かねて涼子さんが言ってくれた。 ・・・だったらいいよな。 「・・・じゃあオレ・・・」 「私行きます。耕治君も行くでしょ」 反射的に頷くオレ。 あずさ〜、俺がなんのために悩んだか判らなかったんだね。 よし、腹くくったぞオレ。 「涼子さん、オレ達で手伝える事ってありますか?」 「こ、耕治?!」 「まだキャロットが終わるまで時間があるんだ、その間ヒマしてるより何かやってたほうがいいだろ?」 バイトの勘を取り戻すには働くのが一番。 「そうね、表立った事は出来ないけど私達でやれることがあったら言って下さい」 あずさはオレの意見に同意してくれた様だ。 「いいの、本当に?」 「大丈夫です」 「一応一通りやってるんで裏方なら手伝う事が出来ると思います」 「分かったわ、店長に話して見るわね」 そう言うと涼子さんは部屋から出ていった。 「こうじ〜俺は何も出来ないぞ!」 横で文句を言う真士。 「お前は多分このうちに店内の案内をしてもらえるんじゃないか?」 多分その役目はオレかあずさにまわってくると思うけど。 「・・・それだったらいいか」 真士は納得したみたいだ。 「ところで耕治君、歓迎会行くのってあなたがそんなに悩む事なのかな?」 ぐっ!! 「お酒を飲まされて記憶が飛ぶのが嫌なのは分かるけど、それとは別の事で悩んでたみたいだし・・・」 「分かってると思うけど、おまえ、誤魔化すの下手だぞ」 そんな事分かってるけど・・・。 「は、ははは。い、いよいよ大学合格した訳だし、夜の町に繰り出せる訳で・・・。 そ、その。・・・つまり、ええっと・・・」 こんな事言えないよな。 付き合いはじめて半年ぐらいになるのにキス以外何もしていない。 あずさが、それは大学に合格するまでは止めておこう、という約束で今まで我慢してきた。 だから今夜は、・・・早い話、ヤリたいだなんて・・・。 「耕治君!!」 「ネタは上がってんだぞ!」 二人が詰め寄ってくる。 「え、えっと・・・」 「さあ」 「さあ」 「「白状しなさい(たまえ)!!」」 もうだめだ。 「・・・実は・・・」 ガチャ 「店長から許可が取れたわ、・・・何やってるの3人とも?」 「な、なんでもないです。じゃ、オレ仕込みしてきます。あずさ、真士の案内頼んだぞ」 言うが早いかオレは逃げるようにその場を後にした。 「あ、耕治君が逃げた!」 後であずさにこってりと絞られそう・・・。 「前田君どうかしたの?」 涼子さんが私達に聞いてくる。 「何か隠してるみたいなんですけど・・・さっぱり・・・」 本当に何を隠しているんだろう? 「あずさちゃん、こういう時は歓迎会で酒を飲ませて吐かせればいいって」 「でも、前田君お酒を飲みすぎると記憶が飛んじゃうわよ」 「前のときも後で必死になって聞いてきたの、オレ昨日なんかやったんじゃないかって」 「そうか、・・・でもあいつ、今夜とか夜の町とか言ってたな・・・ あずさちゃん、アイツと今日なんか約束があるんじゃないの?」 約束・・・? 「とりあえず、あずささんは真士君を案内してあげて、前田君の方はさりげなく当たって見るから」 カチャ 涼子さんはそう言って部屋から出ていった。 「・・・じゃ、いきましょう」 「耕治の事は?」 「後でちゃんと教えてもらうつもりよ」 「・・・出来れば、俺も教えてもらいたいんだけど・・・」 「話せる範囲でならいいわよ」 「わかった、じゃああずさちゃん、案内お願い」 「ええ、わかったわ」 私は真士君にキャロットの案内を始めた。 「逃げたはいいけど、歓迎会の時きっと勢いで言ってしまうぞ・・・」 そうこうしている内に厨房の前にやってきた。 「ま、なるようになれだ。・・・仕込み入りまーす!」 そう一言告げて俺は消毒液のほうへ向かった。 ぱしゃぱしゃ これで良しっと・・・ 「ちょっとこれやってくれ!」 「はい!」 声がかかったほうへ向かう。 「コイツとコイツをみじん切りで後のは皮むき、終わったら早苗ちゃんとこ行って皿洗いの手伝い。 ・・・そして今からオレに挨拶だ」 「・・・おねがいします」 「・・・帰ってきたな、前田」 「本格的にはまだですけど・・・」 オレの前にはキャロットの料理人、通称鉄人がいる。 名前は秘密らしく、みんなからも鉄人の愛称で親しまれてる。 「まあいい、前はあんまりこっちに来なかったからな、ガンガン行くぜ!」 「望むところです」 「ほぉ、お手並み拝見といこうじゃねえか」 鉄人はそう言うと火の方へ向かっていった。 「さてと、一気に片付けるか・・・」 オレは目の前にある食材を片づけて行った。 「ここが厨房、見て判る通りさっき逃げた耕治君がいるわね」 私は真士君の案内を始めた。 「ふーん、流石に本格的なところだよな、耕治頑張れよ!」 真士君の呼びかけに右手を上げて答える耕治君。 「お、あずさちゃん。そいつが一緒に来る新人って奴だな」 鉄人が私達に話しかけてきた。 「はい」 「矢野真士です、よろしくお願いします」 真士君が頭を下げる。 「オレはここの料理人、鉄人様だ、覚えとけ!」 「てつじん?」 「愛称みたいなものですよ、気軽にそう呼んであげて下さい。」 早苗さんが注釈をいれる。 あ、前よりずっとスリムになってる。 後で何をしたか聞いておこう。 「えっと、・・・」 「あ、私の名前ね、私は縁早苗、お皿を洗うのが一応メインでやっています。 それでも忙しい時になるとウェイトレスの手伝いもします。真士さんよろしくおねがいします」 「こちらこそ」 真士君、早苗さんに話しかけられてドキドキしてるみたい。 前はかわいいだったけど、今は美人って言った方がいいわね。 「それじゃ、次の所に行くわね」 「わかった」 私達は厨房を後にした。 「鉄人、終わりました!」 食材の下ごしらえを終えオレは鉄人に言った。 「よし前田、ちょっと来い!」 「なんです?」 なんか嫌な予感・・・。 がしっ 「おまえ、あずさちゃんと付き合ってるんだってな・・・どうだ、ヤったか?」 「ぐ、ぐぐぐ」 「ぐ、じゃわかんねえぞ、どうなんだ?」 鉄人にスリーパーホールドを決められて話せないんだって。 「鉄人、締め過ぎじゃないんですか?」 早苗さんナイス! 「そうか? 根性の問題だろ、お、皿来てるぜ」 「あ、そうですね、では」 ・・・前言撤回。 「どうだ、どうだ、これでも吐かねえか、えっ?」 「ぐぐ、ぎ、ぎぶぅ・・・」 「やっと言う気になったか」 や、やっと開放された。 「で、どうなんだ?」 「ケホッケホッ、まだです。まだなんにも・・・」 「そうか、まだ童貞君か・・・お前この半年何やってたんだ!」 「勉強ですよ、受験勉強が終わるまでって約束したんです」 「律儀だな、おまえ、・・・てことは今夜か・・・ちゃんとオレに報告しろよ!」 「何でですか!」 「オレは調理にかからにゃならん、その話は後でな」 そう言うと鉄人は行ってしまった。 ・・・何オレあんな事口走ってるんだろ、早苗さんはオレを見て笑ってる。 なんかこれから先大変そうだ、はぁ。 ガタッ 「ん?」 向こうの廊下で音がしたみたいだけど。 「前田、手伝え!」 「は、はい!」 後でいっか。 ガタッ 厨房の前で鉄人と耕治君の会話を聞いた私は店の裏まで走って行った。 「はぁ、はぁ・・・」 そう言えばそうだった。 約束してたんだ。 「待ってよあずさちゃん、どうしたんだよ?」 キャロットで一緒にバイトできるのが嬉しくて忘れるなんて・・・どうしよう。 ・・・どうしよう? 私ってそんなに耕治君と・・・エッチ・・・したかったのかな? あれ、どうなんだろう。 「あずさちゃん?」 でもでも、耕治君がどうしてもって言ったら・・・じゃなくて私はどうなの・・・かな。 「ニヤニヤしたり人生終わりみたいな顔してどうしたって言うんだよ・・・」 私はその・・・あの、・・・そうよ耕治君よ! ・・・でも耕治君は何も言ってこなかったし・・・。 そうだ、こう言う時は同じ男に聞くのが一番だわ。 「・・・ねえ真士君、男の子って普通、付き合い出したらすぐエッチしたくなるのかな?」 なに言ってるの私? 「・・・あ、ああ、あずさちゃん、いったい?」 「耕治君と約束したの、そう言う事は大学合格が決まったらねって」 「・・・」 「耕治君は約束を守ってくれた。いつも優しくしてくれた。大切にしてくれた」 「・・・よく考えたらそれってのろけ話だよな・・・」 「耕治君は私とエッチしたいのかな?」 私は耕治君とエッチしたいのかな? 「・・・ふぅ、だから耕治の奴にその話振ったら口を濁す訳だ・・・・・・、 男ってさ、エッチだからさ、・・・なんて言ったら良いかな・・・ はっきり言えば耕治は今まで我慢してたんだ、と思う。 女の子ってさ、そう言う事あまり考えないだろ、毎日電話で話す、毎日会う、毎日手を繋ぐ、 これで満足できるじゃないのか?」 「・・・最初はそうだったけど、・・・今は・・・毎日会いたい、ずっと耕治君の声を聞いていたい、 ずっと側で耕治君を感じていたい」 「だったら悩む事なんかないじゃんか、言っちまえよ耕治に。 今の言葉、包み隠さずはっきりと。アイツ待ってるんだぜ、きっと」 「でも、それって、・・・私がエッチな子って思われちゃうじゃない・・・」 「・・・それが本当の悩みかよ・・・」 疲れたように真士君が言う。 そんなに疲れないでよ。 「でもさ、耕治だって似たような理由で言えないんだぜ、きっと」 そ、そうなのかな。 「ただヤルためだけに付き合ったみたいだからって、男のプライドとしてかな? こんな時はどっちかが素直になるしかないと思うぜ」 結局はそうなんだよね。 「・・・今日、・・・なんとか言ってみる」 「・・・と言う事は、二人の初めては今日?」 そ、そう言えばこんな恥ずかしい事を相談してたんだ! 顔が真っ赤になってるのがわかる。 「あずさちゃん、・・・今日はそういうのって大丈夫なの?」 真士君の顔がにやけてる。 「(///)・・・も、もう、知らない!」 更衣室にしばらく居よう。 このままからかわれてたらおかしくなっちゃう。 「ふー、後ちょっとで店じまいだな」 柱にかかった時計を見てオレは呟いた。 「それにしても・・・」 コキッコキッ 「久しぶりにやると結構堪えるな」 もう、手元に食材はない。 仕込みは全て終わった。 今は洗った皿を棚に返してる。 一応オーダーの時間は終わってるからなんだけど・・・ 後ろの方で鉄人が、鉄人すぺしゃる!!、とか言ってなべを振るってる。 あの人は和洋中なんでもこいだからな、本当。 「これで終わりっと」 手元の皿の最後の一枚を片づける。 「前田君、もうあがっていいわよ」 「はい」 涼子さんから声がかかった。 これで後は歓迎会だけだな・・・ただで済むと思わないけど・・・。 「そうそう前田君、さっき急に飛び出したりしてどうしたの? よっかたら相談に乗るわよ」 「あ、ははは、はは、だ、大丈夫です。全然平気です」 「そう? 本当に何もなければ良いけど、あずささん達、疑ってたわよ」 「げっ」 どうすりゃ良いんだよ・・・。 「もうすぐ葵が終わるから四人で分担して買出しと部屋の準備に向かって。 これ鍵よ、預けておくわ」 「わかりました」 201号室、夏オレがいた部屋だな。 「私は片づけなきゃ行けない仕事があるから少し遅くなるから、先に始めてもらっていいわよ。 それじゃ、準備かんばってね」 そういうと涼子さんは行ってしまった。 それじゃ、あずさ達の所へ行くかな・・・どこにいるんだ? 「お、いたいた」 「真士、・・・あずさは?」 「いや、な、女の子にはいろいろあるんだよ、ははは」 「?」 なんか隠してるみたいだ。 「別に帰ったってワケじゃないし、入り口の辺で待ってればそのうち来るって」 「ああ」 どうもはっきりとしないな。 「所で、おまえさっき言いかけただろ。なに言おうとしたんだ?」 「ぐっ・・・」 まだ覚えていたか・・・。 「ほれほれ、早く言えよ〜」 なんだこの余裕、俺が言うのを楽しみに待ってやがる。 ・・・待ってる?内容もわからないのにか・・・まさか・・・。 「真士、おまえ俺と鉄人の会話聞いてただろ」 「な、なんの事かな〜?」 白々しく口笛なんか吹き出して・・・まてよ、真士が知ってたら、あずさも・・・。 「うわぁ!! やばい! 真士、あずさも聞いてたのか?」 「ぴゅ〜ぴゅぴゅ〜♪」 口笛で誤魔化そうったってそうはいかねえぞ! ゲシッ 「いてっ」 「それはいいから、どうなんだ?」 「聞いてたぞ、・・・と言うかまだだったんだなお前。いやー、仲間がいるって言うのは良いなあ」 「・・・」 「なんか反応しろよ」 「・・・」 「からかい甲斐がないぞ!」 「・・・」 「お〜い!!」 あずさ・・・こんなオレの事知ったら・・・はぁ。 「お待たせ〜」 「葵さん、あずさちゃん」 「あ、あずさ」 「こ、耕治君」 あずさはオレからさっと目を逸らす。 「耕治君達は部屋の準備をしておいてね、買出しは私とあずさちゃんで行くから」 「そんな〜、葵さ〜ん」 隣で真士が情けない声を出す。 「頑張ってね〜」 そういって葵さんたちは去って行った。 「あずさちゃん、話って何なの?」 葵さんに相談したい事があるって言ったんだっけ。 「・・・エッチって、どっちから言うものなんですか?女性から言った方が良いんですか? それとも男性が言ってくれた方が良いんですか?」 「また、ストレートな質問ね。耕治君にエッチしたいって言われたの? と言うか、まだなーんにもしてなかったのね・・・若いっていいわよねー」 そういって葵さんは笑った。 「・・・」 「ごめんごめん、そう言う事じゃなかったのよね。・・・そもそもどうしてそう言う事になったの?」 「それは・・・私達、キャロットのバイトが終わったぐらいから付き合いはじめたんです。 ・・・でも、すぐにっていうのが怖かったから・・・受験が終わるまでは止そうって言って・・・ それで・・・今日がその日なんですけど・・・私、約束忘れてて・・・その・・・」 「ふーん、でも約束思い出したから大丈夫なんじゃないの?」 「・・・それは・・・」 「深く考えすぎよ、今日だって涼子はみんなの寝る部屋分ぐらい鍵は持ってるのよ」 それってどう言う事? 「ま、あたしは遅くまで付き合ってもらうつもりだったから丁度良いんだけどね」 「それって・・・」 「そうね、付き合ってるんだから一緒の部屋でいいわよね、 みたいな事を言って同じ部屋に閉じ込めるから・・・その時、今の気持を思いきって言うと良いわ」 「葵さん・・・」 「あずさちゃんがそういうことで悩むって事は耕治君も同じ気持ちなんでしょ、 男から言ったって女から言ったって一緒、今日は…良いよ…、 ぐらいいっときゃすぐに襲いかかってくれるわよ、・・・じゃ、買出しよ。楽しい歓迎会になるわ」 私達はコンビニに入り買出しを始めた。 葵さんの言葉で上の空になってしまった私はちょっとハイだったらしい・・・。 「耕治、いいかげん元気出せよ」 寮までの道で真士がオレを励ましてくれる。 「・・・あずさ、オレの事、もう・・・」 「だから、そんな事はないって!」 さっきからこの事に関しては強気で言ってきてくれる。 「・・・どうしてわかるんだ?」 「は?」 「あずさがオレの事どう思ってるって、なんで判るんだ?」 「・・・それは・・・その・・・」 強気になる理由は一切教えてくれないが・・・。 「・・・ま、なんだ、こんな調子で部屋の準備したら、 前衛芸術みたいな変な部屋になっちゃうかもしれないんだぞ!」 「それ・・・いいかもな」 「耕治、元気出せって、な」 「・・・はぁ、あずさ・・・」 「あずさちゃんがおまえの事嫌いになるわけないだろ?」 「普通、節操のない男は嫌われるだろ、あんな事聞かれたら絶対そう思われる」 「うーん」 真士が隣でうなり出した。 「・・・」 「・・・」 何も言われないと考えが悪い方へ悪い方へ行ってしまう・・・。 あずさはオレの事が嫌いになって新しく彼氏募集中になって・・・真士が立候補して・・・ あずさがそれを受け入れて・・・だめだだめだ、・・・でも・・・。 「耕治、おまえあずさちゃんの事信用してないのか?」 「えっ?」 真士が急に真顔で俺に聞いてきた。 「あずさちゃんはそんな事でおまえのこと嫌いになったりするのか?」 「それは・・・」 オレの好きな日野森あずさは・・・ 「あずさちゃんさあ、おまえの話聞いた後すげえ悩んでたんだぜ、約束忘れてた、どうしようって」 あずさが・・・そんな事・・・。 「それのどこがおまえの事嫌いになるにつながるんだ? 彼女の方こそ嫌われてるって思ってるかもしれないんだぞ!!」 「真士・・・まだ、あずさの事・・・」 「多分、今は、友達としてだろうな・・・きっと、・・・」 「・・・そうか。・・・わかった、オレがあずさの事信用しなきゃいけないんだよな」 そして、今日は何もないわけだ。 「それだけ判ったらとっとと会場の準備するぞ!」 「わかった、走るぞ!」 「ああ、行くぜ!!」 「買って来たわよー」 葵さんと一緒に会場の部屋に入る。 「待ってました!」 「あずさ、荷物、持とうか?」 耕治君がいつもの笑顔で私を迎えてくれた。 「これくらい大丈夫、それにあとちょっとだし」 「そうか・・・歓迎会が終わったら話があるけどいいか?」 耕治君は私の側でそっと呟いた。 「丁度私も話たいことあったから・・・」 同じ様に私もそっとささやく。 「耕治君あずさちゃん、ないしょ話はおしまい?」 「え、え、そんなんじゃないですよ。な、あずさ」 「え、ええ」 「怪しいぞ、二人とも!」 缶ビールを片手に真士君が叫ぶ。 「アイツもう飲んでるよ」 「このアタシより先に飲むなんて言い度胸ね、負けてらんないわよ!!」 そういうと葵さんは自分の部屋へ駆け出した。 「どうしたのかな?」 「葵って変なけじめがあって、ラフな格好じゃないと飲めないんですって」 「涼子さん、仕事はもういいんですね」 「ええ、店長が先に帰ってくれって」 そういうと涼子さんは部屋へ上がって行った。 バタン 葵さんが戻ってきた。 「二人とも、今日は帰さないわよ」 葵さん目が据わってる。 「お手柔らかにお願いします」 「耕治君は?」 ぐぐっと詰め寄る葵さん。 「は、ははは、頑張ります」 「よろしい、じゃ、みんなのむのやめてー、ちゃんとはじめるわよー」 やっと歓迎会が始まるのだ。 「それではただいまより、再び戻ってきた耕治君とあずさちゃん、 新しく入って来る矢野真士君の歓迎会を始めたいと思います!!」 「うわぁぁい、葵ちゃんいいぞぉ!」 涼子さん早くも酔ってるよ・・・。 「では自己紹介どうぞ!!」 「え、えっと矢野真士です。涼子姉さんとは従姉弟で・・・」 「彼女は居るのー?」 「彼女なんて、そんな・・・」 アイツさっき酔ってたんじゃなかったのか? 「じゃあ真士君、アタシと涼子、どっちと寝たい?」 「いいっ!! いいんですか、本当に?」 「ただし、ちゃんと一人に絞ってね」 葵さんと涼子さんが真士に迫ってる、ありゃ蛇の生殺しだな。 「真士君、昔から私の事見てたでしょう?」 「あたしだって見てるわよね?」 真士のやつ壁際に追い詰められた。 「ど、どちらか一人・・・そんな恐ろしい・・・じゃなかったもったいない事できん!」 漢の選択だな、・・・俺はあずさ一筋だけど。 ・・・そのあずさはどうしたんだろう? あずさのほうを見ると・・・丁度あずさもこっちを見たのか目があった。 目があったオレ達は同時に視線を逸らす。 「こ、耕治君。・・・と、止めなくていいの?」 逸らした視線の先にたまたま真士がいたのかどうか判らないけど、 あずさはあの修羅場を止めたほうがいいか聞いて来た。 「・・・オレじゃ止められないと思うんだけど・・・」 「そ、そうよね。・・・こ、コップの中が少ないわね。注いであげる」 あずさがぎこちないもんだからオレの方もなんかギクシャクしちゃって・・・。 「お、・・・さ、さんきゅ」 トクトクトク 「・・・」 「・・・」 そのまま黙ってしまうオレ達。 「ちょっと、タンマ。まだ耕治たちの挨拶が終わってないって!!」 「それもそうね、・・・でも二人はラブラブカップルなのよ」 「私達の付け入る隙間はないわよ〜・・・ラブラブカップルにはこの鍵をあげて・・・」 チリーン 「さあ真士君」 「どっちと寝たい?」 「うわぁぁぁぁ!!!」 修羅場を逸らそうとした真士の作戦はむなしくかわされた。 そして目の前には隣の部屋の鍵が転がっている。 「ど、どうする?」 わけのわからない事を口走るオレ。 「・・・と、隣の部屋に・・・行く?」 あずさもなんだかわからない事を口ば・・・!! 「と、隣の部屋・・・行ったら・・・どうなるか・・・判ってるのか?」 「・・・耕治君は・・・約束を守って、今日まで待ってくれた。・・・次に約束を守るのは ・・・私だと思う」 「あの約束は・・・あずさに嫌われたくないから守ってただけで・・・」 「でも、私を大事にしてくれた。何か嫌な事があるとすぐに来てくれた。ケンカしたって・・・ 私が悪い時でも、最初に謝ってくれたのは耕治君だった」 それは単に尻に敷かれてるだけで・・・そんなたいそうな事じゃないし・・・。 「私はそんな耕治君にお礼がしたい」 「・・・だから隣の部屋か・・・」 「うん」 オレも、こういう大事なことは言わないといけないよな。 「あずさ、後で話したいって言ってた事なんだけど・・・」 「うん、何?」 「厨房でオレと鉄人が言った事聞いてただろ」 「・・・うん」 「オレはそういう関係にならなくても、あずさの事を愛していける」 「こうじ・・・くん?」 急にポカーンとなったあずさ。 「そりゃ今日、出来ればそういう関係になりたかったけど・・・あれって心の準備とかいるだろ、 だから、無理に今日する必要はないよ」 「・・・耕治君」 そう言うとあずさは落ちていた鍵を拾い上げ俺の隣に腰掛ける。 「ありがとう、・・・でもね、私は耕治君を感じたいの」 そう言うと輝くばかりの笑顔を俺に向けてくれた。 「あずさ・・・」 「確かに心の準備って必要だと思う。でも、自分の気持ちに素直になったら・・・」 「・・・」 「もっともっと、耕治君のこと好きになりたくなったから・・・何言ってるんだろう私」 「・・・」 本当は女の子にこんな事言わせちゃいけないんだよな。 「耕治君? ダメ・・・かな?」 「ゴメンあずさ」 「いいの別に、いきなり言った私が悪いんだし」 「そうじゃなくて・・・」 本当に謝らなきゃいけないんだ。 「えっ?」 「本当はオレがあのセリフを言うべきなのにあずさに言わせちゃって・・・本当にゴメン」 「私が約束を忘れちゃってた事が悪いの・・・耕治君が謝らなくても・・・」 「でも・・・」 「「「いいかげんにしろ!!!」」」 突然オレ達二人に声がかかる。 「のろけ話はもういい」 「早く隣の部屋に行きなさい!」 「見せ付けられる身にもなってよ!!」 「「は、はーい」」 俺達二人は脱兎のごとくその部屋を後にしたのだ。 カチャ 「はあ、はあ」 昔、私が使っていた部屋に入った私達。 私も耕治君も無言で、電気をつけると、とりあえず部屋の真ん中に背中あわせで座った。 「・・・追い出されちゃったな」 「うん」 背中に耕治君の温もりを感じる。 「・・・この部屋、なんにもないよな」 「うん」 クローゼット、ベッドに申し訳程度の布団。 「これじゃ、ムードも何もないな」 「うん・・・でも、またこの寮を使う時が来たら、もっと素敵な部屋にする」 私色に染めるんだ。 「その時まで止めとくか?」 「・・・耕治君は、そんなに私と・・・したくないの?」 「・・・本当は俺も怖いんだよな・・・同じぐらい興味もある。 それを上回るあずさへの愛しさも・・・あずさを感じたい」 「耕治君言ってる事変だよ」 「・・・後一歩の勇気が・・・欲しい」 勇気か・・・。 「・・・耕治君、私が貴方に勇気をあげるから・・・私に勇気を頂戴」 「えっ?」 「こっちを向いて・・・」 「う、うん」 耕治君が後ろを振り向く。 「耕治君、大好き」 ちゅっ 「あずさ・・・」 「耕治君・・・」 耕治君が私を横抱きにしベッドへ運んで行く。 今から私達は一つになるのだ。 ちゅんちゅん 「う・・・うぅん・・・」 「おはようあずさ」 朝日の差し込む部屋。 鳥のさえずりに耳を傾けながら、オレ達は朝を迎えた。 「こ、耕治君・・・いつから起きてたの?」 シーツを顔の半ばまで持ち上げたあずさが真っ赤な顔で言う。 「ついさっきだよ・・・あずさの寝顔が見れてお得だったけど」 「お、お、お得って・・・今度は絶対先に起きて耕治君の寝顔見るんだから!」 シーツを放しあずさが怒る。 「お!」 昨日たっぷり堪能した大きなふくらみが現れる。 「どこ見てるのよ!」 バシッ 「ははは、あずさは綺麗なんだからそんなに怒らなくても」 「恥ずかしいのよ!! シャワー浴びてくる」 「わかった」 シーツをずりながらあずさがベッドから降りる。 「今日はどうする?」 「私は一度家に帰りたいわ」 「どうして?」 「昨日着た物のまま・・・デートに行きたくないし」 「そういうものかな?」 「そうなの」 バタン 浴室のドアが閉まる。 あずさの次にオレもシャワー浴びるか・・・ 「しまった!!!」 「どうしたの?」 あずさがオレの大声に驚いて顔だけこちらに出す。 「一緒にシャワー浴びればいいんだ!!」 「バカッ!!」 ガチーン あずさの投げた石鹸は俺の頭を直撃する。 お約束通り・・・ぐふっ コンコン 「二人とも起きてる?」 涼子さんの声がする。 「はーい、ちょっと待って下さい」 カチャ 「身支度の方は済んだかしら?」 「耕治君の方がまだ・・・」 「そう・・・そうしてると新婚の夫婦みたいね」 夫婦・・・(///) 「涼子さん!」 「うふふふ、別にからかいに来た訳じゃないの。鍵なんだけど、店の方に持ってきてもらえるかしら? もう私行かなければならないの」 「わかりました」 「じゃあおねがいね」 そういうと涼子さんは言ってしまった。 「新婚夫婦・・・」 「どうした、あずさ?」 「きゃっ」 後ろから耕治君の声がした。 「ど、どうした?」 「な、なんでもないの。気にしないで」 「まあ、いいけど。・・・今日は何処へ行く?」 「ちょっと寄るところが出来ちゃった」 「どこ?」 チリーン 「鍵をキャロットに持ってきてくれって」 「それじゃ、モーニングはキャロットで決まりだな」 「うん」 「で、真士をどうするかだ」 真士君? 「一緒に行けばいいんじゃないの?」 「昨日の惨状が推測するに真士は酔いつぶれてる、そんな真士を連れて行くのはぜひ避けたい」 「それは、そうね」 「それに・・・」 「それに?」 なんだろう? 「今日はずっと二人っきりでいたい」 耕治君・・・ 「あ、そうだ。今日の夜ね、家で合格祝いのパーティーやるんだけど来てくれないかしら?」 「そう言えばこっちも今日の夜やりたいって言ってたぞ・・・どうする?」 「・・・みんなそろってどこかで食事・・・かな?」 「な、なんか婚約発表みたいだな・・・」 婚約発表・・・(///) 「・・・じゃ、じゃあ、あずさ・・・行くか」 「ええ」 カーテンの隙間より漏れる光で目を覚ました俺は、カーテンを開け眼窩の道を見る。 そこには、耕治とあずさちゃんが嬉しそうに手を繋いで歩いている姿があった。 前よりもさらにラブラブ光線を発している。 「うぅ〜ん」 さっきまでいたベッドに目をやると葵さんの姿が・・・ 昨日、俺なにしたんだ? それはおいおい思い出すとして・・・コップいっぱいの水を飲むと、再び眠りについた。 もちろん、床の上だが・・・。
あとがき スマン!!! 長すぎ、しかも終わりが終わりじゃない!!! あずさが、瑞希と成瀬川とかぶるかぶる・・・(←技量不足) ま、こんな話でも読んでいただけたら幸いです。 さらに感想をくれたら嬉しさのあまり近所で叫ぶかも・・・(←どアホ) ちなみに書こうと思った理由は、やっぱり二人は同じ大学でないと・・・って言う感じです。 エッチをしてなかった理由については、本編でタイミングを逃した二人はそのままずるずると 何もしない日々を送り、後一歩を踏み出せずに今日まで・・・みたいな。 ・・・18禁シーンですか? いつか技量が追いついたら書きたいと思っています。 追いついたらね。 この後、根性があればこの話を三人称で手直ししたいなと思っていますが、まず無理でしょう。 根性ないし・・・ま、ではではこの辺で・・・ あでゅー