It was a wound...



 ───このお話は盟友国aile(国主さち様)に感謝を込めて───



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※前書き
 素敵サイトaile様にて拝見した美麗絵を元に創作しました。
 意味深なI&Cですvv
 サイトマスターさち様にこのお話を捧げます
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出血が止まらない…!


王子の肩から止めどなく血が滲む。

王子が怪我をしている…?

キャロルはその抵抗を止めていた。
再三の王子の罠に怒り、そして苦しんで、発作のような抗い。
今は王都へ向けての途上の砦。
一室に置かれ、益々度を増すキャロルの反発に、
気をまた失うか、抵抗する事に疲れ果て、であれば相手にならないのだが、
怒りのまま王子がその儚くも抵抗を止めぬ身体を手懐けようとするのに、
泣き叫んで暴れていたキャロルが静まった。

乱れた髪、零れる涙はそのままに、キャロルは硬直していた。
痛々しい傷から青い瞳を離せぬまま、悲痛に白い面を曇らせて。

解けた傷当ての白い帯を王子が自ら取り除いた。

「もう幾月このように…」

「…ずっと?…こんな?」

恐る恐る震える声が尋ねた。
王子は痛みとともに吐(つ)いた溜息で答えていた。

どうして───
どうしてなの───?!

これは自分の兄が、未来の世界のもので負わせた傷だった。
キャロルは思い出した。
王子が時々辛そうにしていたことも。

何かしなくちゃいけない…?私は…?

尚増して悲痛に表情を曇らせながら、王子が包帯を取り終わるのを見ていた。
キャロルがおずおずと手を出しそれを王子の手から受け取る。
流れる血をその布で押さえ拭き取り、躊躇(ためら)いながらも傷口に宛(あて)がう。

「血を止めなきゃ…」

小さな声を零すと上背のある王子の肩先に腕を上げ、抑えることに力を込めた。
もう片腕も宛がい両腕で布を抑え、顔を伏して力を込めた。
王子がその左手を白い両手の上に置く。
そのままに長い時間が過ぎたように感じられた。
見つめる黄金の髪が何故時折震えるのか、そしてこの時間だけが己に唯一与えられた恵の時なのか…?
自問する思考を今は止め、王子はその長い睫を伏して瞳を閉じた。
短い時間だっただろうけれど、長く感じられた時間の後、ゆっくり双方が瞳を上げる。

「私、治せるかもしれない…」

王子は少し驚いて見せたが、次いで問う。

「やはりそなただけが知っているのだな?」

「ええ…」

息を呑むと一気に告げる。

「私はお医者様ではないから…。とても危険な事になるかもしれないけど…。
 この中に矢じりだけが残っているようなものなの…。
 それを取り出さないといつまでも痛むし出血するわ」

思い当たる節のある王子は真っ直ぐにキャロルを見る。

「それ以上は説明できないけど…早く取り出さないといけないけど…」

「何が必要だ?」

「ちょっと…考えてみるから待って」

着崩れた着衣を手早く直し顔を伏して考え始める。
摘出手術に必要なものをあれこれ考える。
メスにピンセット、傷の消毒液に、止血の布、痛み止めの薬に、麻酔…
どこまで揃うか心配だった。
清潔に煮沸して…
医者の介助がほしかった。

…王子に順番に方法を説明して?道具は用意してもらって…。
摘出手術をして、安静にして治るのを待てば?待てば治るのかしら?
何か、熱や病気に感染するかもしれない?
お医者様に免疫を高めるお薬をもらわなくちゃ!
室内で温かくして感染症を防がなくちゃ…
どれくらいで傷は治るだろう?傷が塞がるのはどれくらい?
熱が取れるのはどれくらい?動かしても良くなるのはどれくらい?

ごちゃごちゃになる頭を抱え、キャロルがふるふると身を左右に振る。

王子はそんなキャロルを腕の中に置いて
懸命に知恵を働かせている姿を好ましげに見つめていた。


2日かけて周到に準備がすすめられた。
キャロルは、寝台に腰掛け医師を4人従えた王子に対面していた。

「危険な事は充分承知してくれたのね…?」

「ああ、だがこれを治せるのはそなたしかいない。そうであろう?」

「ええ」

「このように医師もいる。心置きなく使うがいい。そなたは指示するだけでよい」

「分かったわ。それじゃ王子、これを飲んで」

麻酔に代わるものがないかと説明して調合してもらった薬湯や治癒の薬湯を手ずから王子に渡し飲ませる。

30分くらいで効いてくるかしら…

「皆さんはしばらく下がっていて」

医師たちを下がらせると、静かに目を閉じて横たわる王子を見つめた。
複雑な感傷に陥りそうになるが、すぐに先に説明したとおり傍らに腰掛けて脈を診た。

熱もない…。
どうか感染症になりませんように…。

指を組み祈りを呟いた。
キャロルの頬に王子の腕が伸ばされ触れた。
感じるのは優しさ。
大きな掌をおずおずと白い両手に受けながら視線を上げると、
王子の眼差しとぶつかる。
それは薬の為か儚げにも見えて。
キャロルは大丈夫と呟いて微笑んでみせることしかできず。
そうしてゆっくり視線を逸らすと、
道具を確認し自身の気持ちを落ち着かせると頃合まではまだ早かったが、
静かに戸口に近づくとキャロルは医師を呼んだ。
それからのキャロルは目を瞠(みは)るべきものだった。
その人体知識。
執刀を支持しつつ、流れる鮮血に震えながら動脈の止血を試みている。
痛みに耐える王子の腕に縋って励ます。
───手術は何とか無事終えることができた。
キャロルに対しての医師たちの驚愕の程は知れなかったが。
キャロルはそれどころではなく。
術後王子の身に残る汗を清める手は戸惑って震え、何度も眩暈を感じた。

王子は落ち着きをみせ安らかな寝息が聞かれる。
やっとキャロルは人心地つくのだったが。
すぐに熱が上がった様子に対応が急がれた。
発熱することはキャロルにも分かっていた。
これから2、3日は続くはずであり、これからが大変だった。

夕闇が辺りを包む頃だった。

上がり始めた熱に王子が熱く深い呼吸をしていた。
体力が失われていくのが分かっている。
その体にはもっと熱が必要で、体が戦えるうちに。
必要だと自分に言い聞かせ。
自身の衣を取ると腰掛に置き、すべてを取り去ったキャロルは、
震える手を抑えながら寝台に上がった。

身体を寄せると、王子をふわりとその胸に抱き入れた。

───熱を発しようと。


まるで自分が自分でないとしか感じられなかった。
王子の体は熱くとても大きかった。
眩暈がして、背筋が凍ること幾たびか。
何度も繰り返した後、キャロルは観念した。
深く息を吐いて静かに思い入った。

決して今まで…
できなかったわね…

貴方と…
すべて運命…?


銃声、流れる血、繰り返してきた問答。
キャロルの脳裏にこれまでの二人が蘇る。
そして今自分の手はその人の手を握り締めていた。

身を捧げて。
涙が零れるのを必死に堪(た)えた。
胸に当たる王子の熱い吐息。
今またクラクラする。

夫の名を口にしそうになったけれど。
なぜか自分が壊れそうで、ためらわれた。
また泣きそうになる。


「早く…良くなって…」


何度も心の中で呟き、時折掠れ声で呼びかけた。
朝までそれは続いた。






いつの間にかうとうとしてしまい、纏いつく熱さで目が覚めた。
重ねた掛け布の中で二人とも汗を掻いていた。
もう大丈夫かもしれない、そう呟くと横たわったまま腕を伸ばして王子の汗を拭く。
長い一夜だった。
王子の安らかな寝顔を見ると疲れは感じなかった。

まだ熱は必要よね…。

キャロルは身体を王子に沿わせる。
暫くして薄く目を開いて王子が覚醒した。
左腕だけでその腕の中にいるキャロルをぎゅっと抱き締めた。

「だめよ…王子!」

小声でキャロルが制する。

「まだ動いちゃだめ!まだ熱があるんだから…!」

慌てた様子が可笑しいとばかりに少し笑むと王子はまた瞳を閉じてしまった。
それから時折王子は目を開くが、そうこうするうちに何時間か経った頃、
汗も止まって体から熱さを感じぬようになった頃、
キャロルは王子を起こさないように寝台を降り、
畳んで置いた衣服を手早く身に着けた。

これで一安心と溜息を吐くと、医師を呼びに戸口を出て薬湯を持って来させた。
薬を与えたり、熱を見たり、脈を診たり、身を清めたり───。
看護はこの日も続いた。

翌日、王子が平常を取り戻すとキャロルに告げた。
今度はそなたが倒れるから休めと。
次の日からはキャロルは別室で休んでいた。

数日後、早くも順調な回復を見せる王子を明るい陽の光の中でキャロルは瞳に映していた。
風を切る音。
矢が風を切り裂いて、的を射抜くのを見ていた。
王子が弓を引いているのを静かに見ていた。
彼の回復は充分に実感されるものだった。

もう帰らなければ。
ここを出なければ───

意志を込めた視線を王子に向ける。
返される視線。

それは以前に覚えがあるもの───

いつかの力強い、そして陽の光に明るい色の瞳は───

商人なのかと問い───

”連れて行ってくれる”と思ったあの時の───




出会いから───
一からすべてはやり直され───
手に残る温かみに、キャロルは幾分、分が悪いのだった。







Fin.



(珠玉の美麗絵を描き出されるさち様に敬意と溢れる感謝を込めて)




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※あとがき

 さち様にはご承諾いただいて拙宅にてのUPをしております。さち様ありがとうございますvv
 拝見した作品は含みがあるのでその雰囲気に撃ち抜かれました!!

 し、触手が動く〜〜、家事が手に付かない〜〜っ!!と暫しのたうち回って、(爆)
 ノッてしまって、いや、ノらずにはいられず思い切って妄想を羽ばたかせ…文字にしたものです。あはは〜v

 そしてララは願っております…。「自然に排出」でお願いですから。今すぐにでも治る展開を希望!
 もう治ってぇ〜!!

 しかし管理人、看病すると恋するタイプ。(誰も聞いちゃいない…)
 キャロルをセーブするのに疲れました・・・。
 もう降伏vv(笑)

 この後の二人の攻防ってうまく思い浮かばず、ここでFin.

 キャロルちゃんは一言一句に拒絶のことなので。
 元気な王子はなんか道具使うわ、あらゆる強権を発動だわ、う〜〜脳が付いてかな〜い。(よろよろ)

 「願って叶わぬことはあらぬ」な王子。こちらを信条にしておりますv
 Sになります…。(爆)


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