★スタイラスによる音の違い
JAZZ好きのオーディオマニアは一家に一台ともいう程大人気のSHUREのV15タイプV。
この純正スタイラス(ステレオ仕様)には、VN35-E、HE、MRとあり、国産再発JICOからも接合針が各種出ています。
一般的には、「Eが最高、メキシコMR最低」と言われていますが、ことナポレコにはどのスタイラスが最高なのでしょうか?
アナログトレース時の聴感上ではやはりEの腰のすわった躍動感、それに準ずるHE(私は結構好みの音ですが、、)に比してMRは膜がかかった感じがします。
ちなみにJICO社の針は、「あれ、これってV15 TypeV?」と思わず仰け反った程全く別の音です。
(ただし別物と割り切れば、なかなか良いスタイラスだと思いますけどね)
比較ソース:

45R.P.M Audio Check (Mercury 45S-16) A1:Sidewinder
使用機器:SME 3009V+SHURE V15 TypeV+各スタイラス
・アームおよびカートリッジ固定でスタイラスのみ差し替え
・トレース時に発生する盤の摩擦熱を考慮し連続測定は実施せず、4日に分けてデータ収集
・各スタイラス共室温24℃、20分程度の慣らしトレース後測定
結果:JICO社のみ出力電圧が高いので(5V前後)抑え目に録音、その後ノーマライズ(音質を損なわない限りで最大に音量を上げる処理)を実行。
それぞれ微妙な出力電圧の違いは見受けられども、元々同じソースなので画面上では波形に大きな違いは発見できませんでした。
しかしよく見ると、JICO社のみ波形が異なることに気付きます。
それもとLRとも逆層になっているではないですか!!
(左右ではなくて、H、Lの逆層)。
うーむ、カートリッジ固定という事は当然シェルリードも固定なのに何故、、?
この違いが聴感上、全く異質の音である所以なのかもしれません。
それぞれをCDRに取り込み試聴すると、意外にもMRがアナログ本来のイナタさを表現出来ている事に気付きました。
それに比してE,HEは本来アナログトレース時よりもすっきりした聴感になりました(いわゆるデジタル処理された音)。
おそらくこれは私が使用しているサウンド・プロセッサーに要因があると思われます。
私が使用しているサウンド・プロセッサーSE-U55Xは、S/N110dbを誇るにも関わらずアナログの良さを充分に引き出す優れものです。(ただし使用した方はお分かりと思いますが、パソコンのOSおよびチップセットにかなり相性の激しい機器で、勝手が良くなった後継機は、あまりにもデジタルの音になりすぎ幻滅)。
S/N向上とアナログ近似音は相反するもので、ナポレコ化によって音がすっきりするのはやむを得ません。
しかしアナログ近似の為といって、GEバリレラRPX等、ヴィンテージのモノカートリッジ使用ではかえって不自然な音になります(実証済み)。
今回の実験において丁度良いバランスに変貌した嫌われ者MR、メキシコ万歳の結果となりました。
なお70年代後半〜のナポレコ化にはJICOが最適であった事も追記しておきます。
★オリジナル盤と再発盤
アナログ盤において、オリジナル盤と再発盤では、使用するマザーが違うため、音が異なる事は周知と思いますが、これらをナポレコした際の音の違いはどうなるのでしょうか?
音の違いが盤によってあからさまに現れる、天才録音技師として崇拝されているルディ・ヴァン・ゲルダーが担当するBLUE
NOTEレーベルから、GRANT GREENの人気盤「Talkin' About (4183)」で実験してみました。
比較ソース:オリジナル盤(Van Gelder刻印、耳マークあり) vs キング再発盤(K18P 9212)
(オリジナルリリース日 1964/9/11)
使用機器:フィデリティー・リサーチ社 FR-64アーム+Ortofon SPU-GE
結果:
カッティングレベルの違いを考慮して双方少々抑え気味に録音し、その後ノーマライズ(音質を損なわない限りで、最大に音量を上げる処理)を実行。
A1の<Talkin' About J.C.>の冒頭の1分程度なのですが、オリジナル盤の音の厚みが目に付きます。
LR共に音のマスタリング(カッティング)の幅の持たせ方において、主として中域に重点を置いているのが肉眼で確認出来ますね。
なるほど、これならナローレンジなヴィンテージオーディオの方が、最新高級オーディオよりも良く「鳴る」はずです。
対してキング再発盤は音の暴れもなく均一で安定していますが、線の細さは一目瞭然です。
仮にスタンパーが一緒であっても、この差異はマザーの違い云々よりも、リマスターする技師によって音が変わる、その人間の個性が出る事が視覚的にもお分かりになるだろうと思います。
次に東芝のCD(TOCJ-4183)をエンコードし、その波形を比較してみました。

オリジナル盤の音圧とキング盤のそれの中道ですが、波形の均一さ、まとまり具合はキング盤に近似しています。
そしてCD特有の、あるレベルでバッサリ切れていること(2万ヘルツと言われていますね)も、肉眼で確認出来ます。
やはり日本盤のカッティングは、アナログ、CDに関わらず品行法制な仕上がりになっているようです。
次に上記3サンプルを可変ビットレート(VBR)エンコード192kbit/secで処理したものを聞き比べて下さい。
★オリジナル盤 ★キング盤 ★東芝CD
PCスピーカー且つ圧縮後のファイルでも差異を感じられると思いますが、圧縮前のマスタファイルをCDRに取り込み試聴すると、正規に販売されている国産CDより、オリジナル盤をナポレコ化したものの方が、オリジナル盤をターンテーブルでトレースした音に近似している事実に驚愕!!
私はCDは、物理的にアナログより音質が劣っている媒体だとは思いません。
しかしこの実験を終え、私がモダンジャズ期のCDをほとんど購入しない理由は、国産、舶来物に関わらず、当時の息吹が感じられないマスタリングにあると感じました。
クリアなマスタリングを施せば施す程、JAZZアナログマニアの望んでいる「ガッツある再生音」からは遠ざかって行くのでしょう。
いわば、『音』であって『音楽』ではなくなるという事。
オリジナル盤には、当時の演奏と共に、当時の録音技師の技もパッケージされているのです。
当時の音源は、その結晶をローファイのまま(ノイズ減退処理やイフェクトを使用しない)取り込むことで、その息吹までも取り込める結果となりました。