2012年8月現在

Q&A 母語とは何か?       

 

Q:母語とは何ですか。

A:学者によって定義が多少違いますが、子どもが生まれて親から自然に学ぶことばです。同じ国でも親が使う生活言語によって子どもに受け継がれる言葉が異なる場合があるため、母国語と一致しないこともあります。

例1)公用語が多い国(インドやスイスなど)では、親の言葉によって、同じ国でも母語が違う。例2)日本生まれの在日韓国・朝鮮人の母語は日本語の場合が多い。母語と母国語と異なる。

 

Q:いま、なぜ、母語学習ですか。

A:日本の学校教育現場において「日本語教育が必要な子ども」が急増しています。即ち、日本語以外の母語(mother tongue / native language)が習得あるいは習得途上にある子どもが増えていることです。この子どもたちは「日本語ができない」のではなく「他の言語能力を有している」という観点を重視してその能力を育つためです。

 

Q:母語学習の必要性とは何ですか。

A:①第二言語(日本語)習得と認知的発達に有利:第二言語の読み書き能力や認知面における発達の基礎を成しており、母語と第二言語は相互に依存しているため(二言語の相互依存仮説:Cummins,1984)、第二言語の、特に学校の教科学習に関わる言語(学習言語)の発達のためには、母語の能力が重要となると指摘されています。言い換えれば、子どもの母語を無視し結果的に剥奪してしまうサブトラクティブなバイリンガリズムに置く限り、子どもは学力的に困難を抱える可能性が高いということであります。現在、子どもに対する日本語教育の課題として、教科学習と統合された日本語教育をめざすべきであることがあげられていますが、そのためには、母語の保持伸長をも考慮に入れる必要があると思われます。

②親子のコミュニケーションと誇りとして:言語は文化的アイデンティティの根幹をなすものであるため、母語を脅かすことは、親子のコミュニケーションに支障をもたらしたり、子どもの自尊感情を損なうことにつながります。「母語は社会の中で価値があるのだ」と子どもに誇りを持たせ、情緒的な安定を促すことにも役立つと言えます。
 ③人権の観点から子どもの当然の権利として:日本は国際人権規約や子どもの権利条約を批准しており、そこでは「自己の言語使用の権利」が言語的マイノリティーの人権として謳われています。この二つの条約は法的な実効力をもっていることから、これを実現するには母語教育を推進する必要があると指摘されています。(参考文献:『多様な言語背景をもつ子どもの母語教育の現状』石井美香)

 

Q:母語が獲得できる学習年齢とはあるのですか。

A:米国のマイノリティー言語教育研究家Thomas & Collier (2003) は、小学校4年まで母語による教育を受けていないと母語話者と競争できる学習言語を獲得するのは困難だと言われています。

Q:バイリンガルになるのですか。

A:バイリンガリズムは、社会的な状況に応じて大きくアディティブ・バイリンガリズム(additive bilingualism:加算的バイリンガリズム)とサブトラクティブ・バイリンガリズム(subtractive bilingualism:削減的バイリンガリズム)に分けられるといいます(Lambert,1975)。前者は母語の力を踏まえた上で第二言語を付け加えるというものであり、後者は母語が第二言語に置きかえられるというバイリンガリズムのあり方です。この二つのバイリンガリズムには、特に受け入れ社会における母語の社会的地位が大きく影響しているため、言語的マイノリティーの場合は、サブトラクティブなバイリンガリズムになりやすいといいます(Landry & Allard,1991)。つまり日本語が圧倒的に優位であるような日本の状況においては、多様な言語背景を持つ子どものほとんどはサブトラクティブな状況に置かれているため、母語保持が極めて難しいと言えます。(参考文献:『多様な言語背景をもつ子どもの母語教育の現状』石井美香)

Q:朝鮮語と韓国語は違いますか。

A:大韓民国では「韓国語」、朝鮮民主主義人民共和国と中国の朝鮮族では「朝鮮語」といいますが、同じ「ハングル」という文字を使っていて、話し言葉や文法は方言程度の違いに過ぎないです。

 

Q:幼児の場合は母語と生活言語(日本語)の二つ言語を同時に学ぶと言語障害になるのでは?

A:個人差が多いため一括ではいえないです。少ない学習時間なので、障害までとはいえないと思います。小さい時から自然に母語にふれる機会として活用してほしいと思っています。

 

 

 

 

set10_home.gif