アザラシ Sea Lion
カヤックを漕ぐ手を止めてふと横を見ると、アザラシが頭をポコンと水面に出し、何食わぬ顔して隣を泳いでいた。追いかけるそぶりを見せると海に潜って消えてしまうのに、小島に上陸し、知らん顔して貝殻など探していたら、いつの間にかまたやってきて、岩の上に頭をもたせかけ、ちょっと笑ったような、眠そうな瞳でこっちをじーっと眺めている。無関心を装ってシュノーケルを着け、海に入るとアザラシもついてきた。水面に顔を出したりまた沈んだり、姿が見えなくなったなと思ったら海底でじっと息をひそめていたりする。遊んでるのか遊ばれてるのか、アザラシってユーモアが分かるヤツなんだ。
日がな1日波打ち際に寝そべってゴロゴロしていたり、青い空に向かって鼻先を持ち上げた三角形の姿勢でジーッとしている巨体。オーストラリア南部、冷たい海に面した海岸には、丸々太ったアザラシの群れが住み着いている所がたくさんある。毛皮を取るために乱獲され、頭数が激減したのは過去の話。今では手厚く保護されて、アデレードやパースの街からわずか数時間の距離でも見かけることは珍しくない。彼らと付き合うコツは、向こうから近づいてくるのはいいけど、自分から近づいてはいけないんだとか。のんびりして見えるけれど、「海のライオン」は怒るとやっぱりどう猛らしい。
The Australia Web 掲載 1999