いつも笑わせてくれるポーリンちゃん。あれ、つぶれちゃったアジア人移民を止めろ! アボリジニへの福祉廃止! などと堂々と言ってのけて、オーストラリアの一般大衆にやんやの喝采を浴びている、ポーリン・ハンソン元連邦下院議員。このおばちゃんが率いる「ワン・ネーション党」が、クイーンズランド州の州議会議員選挙でいきなり30%近い得票率を得て大幅議席数を獲得したのは1998年のこと。「アジア寄り」を建前とするオーストラリア人のホンネを見せ付けた騒ぎではあった。
これほど笑える人はいない
まさに普通のおばちゃんが井戸端会議でしゃべっている感覚で、自分の主観を全然事実の裏付けも確認もなしに議会の場で言ってのけ、自分の無知・無教養をさらけ出せるポーリンちゃんはスゴイ。これほど笑える人はなかなかいない。でもオーストラリア・マスコミも笑って無視してりゃいいのに、あることないことでっちあげてあおってくれるので、結局はそれが「ワン・ネーション」の宣伝になっちゃったとも言えるだろう。普段「多文化国家」だとか耳触りのいいことを標榜して、オリンピックでもアボリジニの選手を前面に出して融和を演出して見せたオーストラリア。ところが、やっぱり白豪主義から完全に脱したわけではなく、実は人種差別もあればアジア人いじめもあるっていう現実をさらけ出してくれたという意味では、ポーリン・ハンソンの存在は意味があったと言えるかもしれない。
知り合いに、面倒見も良くとてもいい人である白人のおばちゃんがいる。アジア人である私や身近にいるパプアニューギニア人の子なんかにもとても親切なのだが、アボリジニや未婚の母など社会的弱者への福祉を減らすべきだ、アジア人の移民が増えすぎる地域は困る、など、ハンソンそっくりの主張をしているのを耳にしたことがある。もちろん本人は、自分が差別しているなんて思ってもみない。善良で気のいい、どこにでもいるおばちゃんなのだ。
偉大なる厚顔無知
日本だって右翼や過激派や恥さらしな政治家がたくさんいるのと同様、オーストラリアにもそういう人はいくらでもいるわけで、オーストラリア人が全部フレンドリーってワケではない。彼らは確かに悪気はなく、ただ無知・無教養なだけなのだ。「アボリジニは働きもせずに年金をもらって税金で飲んだくれている。けしからん」という人は、アボリジニが過去に白人に大量虐殺された歴史はもちろん、白人と同じ市民権が与えられたのはたった30年前、ずっと差別され続けてきて進学や就職もままならず、今だに乳幼児の死亡率が異様に高い、なんてことは考えようとも知ろうともしない。結局、どこの国だってこういう人たちはいるもので、例えば白人に対しては卑屈ダラダラになるくせに、東南アジア人や韓国人を平気で差別する日本人なんかは、無知・無教養さらけだしの典型だ。自分の無知・無教養を認識している人なら恥ずかしくてそんな言動はできないものだけど、無知より強いものはないのだ。
田舎者集団の井戸端会議
オーストラリアは国土が広大なだけに、都会をちょっと出れば1つ1つの町はほかから何百キロも離れて孤立している。だから関心事といったらほとんど自分の身の回りのことだけ、読むのは地元タブロイド新聞の超ローカルニュースだけ、という人が多いのも事実。特にハンソンの地元クイーンズランドは内陸部を中心にそうした田舎者の集団といっていい。必然的に、大都会の出来事は遠い国の他人事、社会的問題への関心は薄い。ちょっと知識があれば恥ずかしくて口に出せないような近所の井戸端会議レベルのことでも、無知をさらけだして平気でいられる。さらにこういう人たちは「自分は差別なんかしていない」と信じていることも共通している。
「白人はみんな、差別主義者なんだよ」と言った白人の友人がいた。確かに自分の肌の色とか英語がうまくしゃべれないとか、自分自身ではどうにもならないことで差別された経験を持たない人たちには、それがどんな気持ちがするものか、想像はつかないだろう。ただ、どこの国の人にだって、差別意識はある。「自分は差別しない人間だ」と堂々と言ってのける人の方が恐いと、個人的には思う。自分の中の差別意識を認識しているからこそ、なんでそんな意識がわいてくるのか考えたり、それを抑えようという意識が働くはずだと思うから。
「オーストラリアはアジアに侵略されようとしている」「日本人はアンチ白人で他人を認めない人々。こんな人たちにここオーストラリアに居てほしいと思いますか? 90%のオーストラリア国民と同様、私はノーと言いたい」 …。偉大なる厚顔無知の代表、ポーリン・ハンソンの発言は、確かにクソまじめで融通の効かないハワード首相なんかより、よほど面白いことは間違いない。マジメくさって正義ぶって彼女の発言を取り上げるのはもうやめて、徹底的に笑い飛ばしてくれるマスコミってないかなぁ。
ワン・ネーション党の公式ホームページ。めちゃくちゃで笑える主張をあなたはいくつ見つけられるでしょうか。
ご意見、異論、反論、ご批判その他はgonthecat@gmail.comまでどうぞ。
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